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信之の憂鬱

[1] スレッドオーナー: 修二 :2019/05/14 (火) 23:31 ID:nCbZKG2E No.27101
別の場所に少しだけ公開して削除した作品ですが、「中の人」から『最後まで読みたいから、頑張って書いて』と言われてまして、続けてみます。
エロ要素は少ないです。


[15] Re: 信之の憂鬱  やま :2019/07/02 (火) 15:25 ID:GSbr4UXQ No.27172
続きを楽しみに待ってます。
宜しくお願いします (^o^)

[16] Re: 信之の憂鬱  :2019/07/02 (火) 22:59 ID:.sagHw0Q No.27174
実際にあった出来事を基にしているので、エロ要素が少なくて申し訳ないです。
事実二割、妄想八割ぐらいでしょうか。
実用性には欠けますが、もうしばらくお付き合いください。

8 始まる

達也と佑子が立ち去ってから、俺達は元来た崖下の通路ではなくジャグジー側に出た。ずっと興奮しながら覗き続けていたカズだったが、心なしか元気が無いように見えた。
(佑子があんなになって、やっぱりカズはショックだったんじゃないか?)
「凄かったな・・・。ひーこが待ってるから、俺は先に戻るよ。邪魔はしないから、お前らは入っていけよ。んじゃ、お先に」
「あ・・・」
ショックを受けているのかいないのか、カズの反応はどっちだかわからなかった。
ジャグジーに二人きりで残された俺は、さっき見てしまった光景のせいでかなり気まずかった。
紗織はどんな気持ちなんだろう・・・。
俺が無言で頭を巡らすと、紗織は浴衣の帯を解いていた。
「え、ちょっと待って」
「ん?」
紗織はそのままするすると浴衣も下着も脱いで、裸になった。
「信之さんも一緒に入りましょう?」
ついさっき見たことは何も気にしていないという様子でそう言って、さっさと入ってしまった。
(この娘、何なの・・・?)
とんでもない光景を見たはずなのに、紗織は興奮した訳でも無く、平然と湯に浸かっている。だけど、さすがに紗織をここに残して、俺だけ先に戻る訳にはいかない。全て脱いで、正面に座るのもすぐ横に座るのも何となく躊躇われて、少しだけ離れた場所に俺は座った。紗織は俺を見つめ続けていた。
「伸之さんはそういうタイプじゃないって聞いてるんですけど」
「由美から?」
「真面目ないい人を演じている気がしますよ。それに、私のこと、避けてません?」
「別に避けてるわけじゃ・・・」
「昨夜も何も無かったし・・・」
「あのね、思いっきり爆睡してたよね」
「あれだけのイタズラされて眼を覚まさなかった人に言われたくないです」
「うう・・・」
「触ってもいいですか? いいですよね」
そう言いながら、返事を待たずに紗織は俺の胸に触ってきた。
「ふふ、筋肉すごーい。鍛えてるんですね」
「もう現役じゃないから必要無いんだけどな」
「素敵ですよ、鍛えてる男の人って。由美さんも・・・」
「なに?」
「何でもないです。私も鍛えたいんですけど、ぜんぜん育たないんですよねぇ・・・」
そう言いながら紗織は自分の胸を両手で揉んでいる。俺は紗織はBと見ていた。秀美もBかな。綾乃はCだ。あとの二人はDかEか・・・
俺が胸を見ていたことに気付いているはずの紗織が、俺の方は見ずにポツリと呟いた。
「裸で二人っきりなのに、なんで何もしないんですかね・・・」
(そんな言われ方をされちゃうと、余計に何もできないじゃないか・・・)
達也と佑子を見た後だ。何かをしても許されるのだろうという気はしていた。すごくわかりやすく、紗織はサインを出している。手を出しても大丈夫なのだろう。由美と隆弘も了解済みの気はする。
(でも、知り合いに手を出すっていうのもなぁ・・・)
「あのさ・・・」
俺はこの旅行で採用されているカップル入れ替えシステムのことを聞いてみようかと思っていた。くじ引きの時の暗黙の了解なんかじゃない。俺以外の参加者は事前に知らされていたに違いない。何より、修司さんと紗織は途中参加だし。
俺が疑問を口にしようとした時、突然すぐ近くから声をかけられた。泡立つジャグジーの音で足音は聞こえず、入り口に背を向けていた俺は全く気付いていなかった。

「あれ、先客がいたね」
「お邪魔だったかしら」
修司さんと綾乃だった。カズが『貸し切り』の札を外したんだろう。
(俺達をけしかけておきながら、何て危ないことをするんだよ!)
「きゃあー、綾乃お姉様ぁー。お邪魔じゃない、お邪魔じゃないですぅ」
紗織は立ち上がって手をバタバタさせている。前を隠そうという気が無いのか、この娘の羞恥心のハードルはもの凄く低いのだろう。
「さおりん、せめて手で隠そうよ」
修司さんと綾乃も温泉のついでにちょっとジャグジーを覗いてみたようだ。
「あ、水着じゃないのね」
「そうなんです。裸なのに、嶋田先輩ってば何もしないんですよぉ。何が足りないんですかねぇ・・・」
『足りない』と聞いた二人が同じことを思ったのは間違いないが、もちろん紗織には言えない。それに、理由は『胸が小さいから』じゃないし。
二人も裸になって、ジャグジーに入って来た。これまでに見た限りでは、綾乃は他人に裸を見せて平気でいられるような性格には見えなかった。
「あまり見ないでね」
タオルも無しっていうのが恥ずかしいようだ。でも、嫌がらずに入って来た。秀美もそうだが、去年会った時とは様子がずいぶん変わった気がする。それとも、みんなこの旅行では別人を演じているのだろうか。

「ところでさ、ノブ君とさおちゃんって、付き合ってんの?」
「い・・・、いきなり、直球で来ますね」
(修司さんと綾乃も付き合っているのは秘密だろうに、何で二人で来たんだ?)
「全力で、攻略中であります!」
紗織は何故か敬礼をする。敬礼を返す修司さんにだけは通じているみたいだ。
「へえ、紗織ちゃんの方が積極的なんだ」
「そうなんです。でも、嶋田先輩、女の子に興味無いみたいで・・・」
「伸之さん、やっぱりカズさんと・・・」
「だから、違うって」
「じゃあ、どうして?」
俺は少し困った。今朝の公式設定では二人をくっつけることは俺には内緒のはずだったのだが。それに・・・。
「さおりんには、彼がいるし」
修司さんと綾乃が顔を見合わせた。
「ノブ君、悩みがあるの?」
「え、あぁ・・・」
俺は、今回の旅行のカップル入れ替えという企画に戸惑っていた。
(全員、夫婦じゃない組み合わせで同じ部屋に寝るんだぞ。俺だけなのか? 修司さん達に悩みは無いのか? ・・・する、のか?)
この二人は真面目だから、最後の一線は越えないのかもしれない。でも、達也と佑子はもう・・・。由美は隆弘に、変態的なプレイをされるのか?
俺が考え込んでいると、修司さんが軽く言った。
「悩み事は、自分で解決しなきゃ、な」
「な、じゃあ無いですよ! 今の流れなら、『悩みなら聞くぜ』、でしょう?」
「あのね、伸之さん。他人に相談するのは、まだ早いと思うの。もう少し悩んでみましょうか。それに、聞き役は私達じゃないですよね」
修司さんはともかく、綾乃も変な反応だと思った。綾乃は俺の悩みに見当がついているのか? 確かにこれは紗織と話し合うべきことかもしれないが、この娘がちゃんと話を聞いてくれるのか、不安があった。

   *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *

部屋に戻ると、当然のことながら、まだ宴会は続いていた。さっきまでの飲んで騒いでの雰囲気とは変わって、静かに語らっているようだ。浴衣姿の奥様方が妙に色っぽく感じる。ていうか、顔が赤いせいか?
座椅子に背をあずけるように由美は座っていた。羽織を肩にかけているが、浴衣に乱れは無かった。すぐ横に隆弘がぴったりと寄り添っていたが、俺がいなかった時には、浴衣の合わせ目から手を入れるぐらいはしていたのかもしれない。何度も言うが、俺は隆弘がド変態だと・・・
「遅かったな」
「散歩でもしてきたの? ・・・はぁん・・・」
達也は座布団にうつ伏せになった佑子に『真面目な』マッサージをしていた。指圧であげた声が、あの時の声に聞こえてしまうのは俺の考え過ぎなんだろうけど、ついさっきまであんなに激しい行為をしていたようには見えない、今は穏やかな二人だった。
「温泉の後で露天のジャグジーがあることに気付いてさ、星空を見ながら語りあってた」
「へぇ、ジャグジーは露天だったのか。気付かなかったよ」
(いやいや、達也、お前も佑子と二人で・・・。)
突っ込もうかと思ったが、カズも紗織も黙っていたので、俺も聞き流すことにした。
「ノブ君もやってもらう? 冗談だと思ってたんだけど、達也のマッサージほんとに上手よ」
「嫌だね。男の体になんか触りたくねぇ」
「あ、ほら、やっぱり私に触りたいだけなんじゃない!」
「佑子も気持ちいい、俺も気持ちいい。何も問題無ぇだろ」
そう言いながら達也は腰の辺りを触っていた手を尻に。
「こらぁ!」
佑子は怒っている感じが全然しない。達也がたぶんわざとぎりぎりまで浴衣を捲り上げて足を揉み始めても、言葉と態度は全く別で、嫌がる素振りは見せずに身体を委ねている。
「ちょっと和ちゃん、どこ見てるの?」
エッチなことをされている佑子を見て興奮しているカズに、秀美が新妻らしいやきもちを焼く。・・・でも、佑子のマッサージ動画を撮影しているのはカズではなく秀美だった。
達也はしばらくきわどい辺りを触っていたが、これ以上エスカレートさせる気は無いらしく、佑子の浴衣を元に戻して今度は手のひらの指圧を始めた。
「ああ、それ・・・。なんかすごく気持ちいい」

さっきあんなものを見なかったら、二人はただ仲が良いだけの『職場の同僚』にも見える。それに触発されたのか、紗織が俺の方に向き直って正座しながら言った。
「嶋田先輩。私にもマッサージしてください」
「いや、それはさすがに・・・」
これだけ友人たちの目があるところで未婚の娘に触るのもなぁ・・・
「じゃあ、私がしてあげます」
「それもヤメテ」
「えーん、振られたぁ・・・」
「振ってないし。あ、そういうことじゃなくて・・・」
俺達のやり取りを見ていた佑子が、
「ノブ君、なんだか、さおちゃんと良い感じじゃない」
「え、そうかな?」
「お風呂の後ってことは、裸だよねぇ。二人っきりで裸でジャグジーで・・・『何か』してたのかなー」
軽く爆弾を投げる。
(何かしてたのは、あなたでしょうに・・・!)
「え、なに、あそこって水着着用じゃないの?」
秀美は風呂に行った後、カズが先に帰ったものと思って真っ直ぐ部屋に戻ったらしい。
「風呂入りに行ったついでなんだし」
それに、・・・と言いかけて、俺はやめた。途中から修司さん達が来たことは、ヒミツの二人を邪魔することになるから。
「あやしいなぁ」
「何もしてないって!」
内心のうろたえを隠して由美をちらっと見る。あれ・・・?
「・・・由美、具合悪いのか?」
ここぞとばかりにイジリにくるはずの由美が、おとなしくしている。変だ。
「ん、・・・少し、酔ったかな」
「外で風に当たってきたら?」
「一緒に行こうか?」
隆弘が軽く肩に触れた時、かすかに震えたように見えた。
「・・・いい。ここにいる」
風呂に行くまでは、わざと隆弘にしなだれかかったりして俺を挑発していた由美が、何かに怯えている。こんなキャラじゃないはずだ。隆弘が何をしたんだ。
隆弘が寄せたグラスに由美はおとなしく口を付ける。
由美はこんなに従順な女じゃないんだけどな。そういうキャラを被ったにしても・・・何か違和感がある。

思えば、今回の旅行は不自然なことだらけだった。
どう考えても、俺だけが知らされていないことがあるのは間違い無い。
しかも、俺が薄々そこに気が付いていることがわかっていそうなものなのに、それはまだ明かされる気配は無い。
俺がさっき見た光景は何だったのだろう。達也と佑子の不倫? 
普通に考えれば、あれは今回の旅行の『夫婦組み換え』の設定に従った、ただの下手な芝居のはずだ。まさか、芝居で本当にセックスするとは思っていなかったけど。
いずれにしても、少なくとも夫婦じゃない一組の男女二人がセックスしたのは事実だ。俺を含めて残り四組はどうなんだ?
俺が知らなかっただけで、他のみんなはもう『そういう関係』なんだろうか・・・
常識人だったはずの佑子の痴態を見て、さすがに乳児がいる綾乃やおとなしい秀美はそんなことしないだろう・・・という考えが揺らぎ始めていた。
別人を演じているのなら、普段だったら絶対にしないことだって・・・

そう言えば、あれから由美は常にチョーカーを着けていた。隆弘がSだとすると、あれは首輪の代わりのようなものなのかもしれない。だが、今はそのチョーカーが無かった。風呂から帰って来た時点でしていなかったが、入浴時に外してそのまま忘れているんだろう、位に思っていた。でも、隆弘がそれを許さないんじゃないかという気はしていた。
(チョーカーが下着と同じ色、ということは、まさか・・・着けていないのか? 下着を・・・。そういうサインなのか? 他にも何かされているのか? そうで無ければ、あの由美がこんなにおとなしくしている訳が無い。)
しばらくして、俺はようやく由美の違和感の正体に気付いた。飲むにしろ食べるにしろ、由美はさっきから全く手を使っていなかった。隆弘が運ぶままを口にしている。
腕を拘束されているんじゃないのか。由美だけが羽織をかけている理由もそれなら納得できる。S男ならやりかねないが、・・・俺の目の前でよくやる。
隆弘が俺を見て微かに笑った。セリフを考えるとすると、『楽しませてもらっているよ』、といったところか。

実は、隆弘にエッチなプレイを仕掛けられている由美に俺は激しく嫉妬していた。
俺にはできないが、どSな由美がS男に責められているのを見てみたい気もする。昨年のバーベキューの時の修司さんの寝取られ性癖告白に、気持ちがわからないと思っていた俺だが、今ならわかる。自分に少しでもこんな気持ちがあったなんて、意外だった。でも、実際に隆弘にエッチなことを仕掛けられて、おとなしくなってしまった由美の姿に新鮮な魅力を感じていた。いつも強気のこの女に、弱々しく『許して』とか言われてみたい。
一方で、由美をこんなにしてしまった隆弘には、底知れぬ畏怖を感じていた。実は、こいつはサディストには全く見えない。真面目で頭が良さそうで優しそうな男だ。達也やカズに比べれば会話も上品だし、物腰も柔らかい。そんな奴に由美はあっさりと落ちて、言いなりになっている。くじ引きで決まったからと言えばそうだけど、相手がカズや修司さんだったなら、たぶんこうはなっていない。由美は、後で何があったのか教えてくれるのだろうか。

俺も紗織に何かをしなきゃ、割りに合わない。そう思っていたら、隆弘に合図をされたわけでもないのだろうが、
「嶋田先輩、私もちょっと酔っちゃったみたい」
そう言って紗織が倒れ込んで来た。そのまま膝枕の態勢に持ち込む。
「かたーい。筋肉の枕だ」
「悪かったな」
「ううん、低反発でとっても寝やすい」
「ここで寝るなよ」
「駄目ですかぁ?」
「ここで寝たらみんなにいたずらされるぜ」
「どんなこと、されちゃうの?」
「もちろん裸にされて、身体には落書きだな」
「え、『肉便器』とか書かれちゃうんですか? いやーん」
「おま・・・! 」
俺は素早く周囲に目を走らせた。幸い、誰にも紗織の爆弾発言は聞こえていなかったらしい。さすがに変態隆弘の婚約者だ・・・
「何言ってんだよ・・・!」
「え、何のことですか?」
絶対にわかっているはずなのに、紗織は無邪気な笑顔。
「お前なぁ・・・。ほら、眠いんなら、部屋に行けよ」
「連れてって・・・」
紗織が俺を見上げながら浴衣の袂をつんつんと引っ張る。
・・・この娘には逆らえないと思った。
仕草とか表情とか・・・、自分が可愛いことを十分にわかっていて、それを武器に攻撃してくる。
(そういえば、由美にはこんな風に甘えられたこと無いかもなぁ)
「嶋田君、お姫様抱っこで連れてってあげたら?」
由美が首だけを横に向けて言った。
(もう、縛られているのは確定だな、こりゃ・・・)
「帰って来なくていいからな」

俺はもう一度この部屋に戻るつもりだったが、達也は帰って来るなと言う。
そんな気配は感じたことが無かったが、以前から俺抜きでこんなイベントをやっていたのだろうか。
考えたくはない。でも、俺以外の全員の振る舞いが少なくとも俺には『自然』に見えていた。
「じゃ、行くか」
俺はひょいと紗織を抱っこした。
「うーん・・・」
「なんだよ」
カズが首をかしげる。
「お姫様というより・・・普通に人命救助?」
「あのなあ・・・!」
紗織は俺を潤んだ眼で見ていたが、他の奴らには紗織の表情までは見えていなかったんだろう。


[17] Re: 信之の憂鬱  やま :2019/07/03 (水) 15:10 ID:k6Rk4eqU No.27175
更新、ありがとうございます。
少しづつ、楽しくなってきましたねー。

[18] Re: 信之の憂鬱  :2019/07/09 (火) 23:18 ID:7NgN/.W. No.27180
9 壁

お姫様抱っこで部屋まで連れて行き、ベッドに降ろしても紗織は首にかけていた腕を離さなかった。
「どうした?」
「終わるまで、質問は厳禁です」
「終わる、って・・・?」
「質問は、ナシ」
(これは、小悪魔の笑み・・・)
可愛い娘が俺に向かって笑いかけてくれているのに、俺はその笑顔の向こうに何か別の感情を感じていた。
強い口調ではないのに、紗織に勝てる気が全くしない。
納得はできなかったが、紗織が手を離してくれないのでとりあえず頷くしかなかった。ジャグジーで話題になった『悩み相談』をしたかったんだけど。
俺が納得してようやく紗織が腕を離してくれたので、俺は大部屋に飲み物を取りに行こうと思った。
「あん、行っちゃダメですよぉ」
「アルコール無しの飲み物、取って来るよ」
「ダメです。伸之さん、そのまま帰って来ないつもりでしょう」
「すぐ戻るって」
「ダーメ。それに、・・・ようやく二人っきりになれたのに・・・」
「あ・・・」
そうだ。昨晩は疲れてそのまま何もなく寝てしまった二人にとって、初めての二人だけの夜なんだ。
「二人でゆっくり飲みたいとか・・・、思いませんか?」
ベッドに横たわっていた紗織が身を起こしながら言う。俺は誰かに背中を叩かれた気分だった。紗織と二人でいる時も芝居を続けなきゃいけないのに。
(俺はこの娘と付き合うかどうか、という段階って設定なんだよな・・・)
「スパークリングワイン用意してあるんですけど、・・・一緒に飲みたいなー」
「ああ・・・」
「ちょっと待っていて下さいね」
紗織が洗面所から戻って来ると、手には氷水が入ったワインクーラーがあった。
「あっちに行きましょうか?」
窓辺のテーブルにクーラーを乗せて、向かい合わせに座る。冷蔵庫からは生ハムと白桃、チーズの盛り合わせが出てきた。
俺は確かにワインは好きだが、ビールも焼酎も好きだ。つまみはこんなオシャレなものじゃ無くても、するめでも冷奴でもイワシの缶詰でもピーナッツでも何でも良かったんだけど。
スパークリングワインのコルクを紗織はほとんど音を立てずに抜いて、俺のグラスに泡立つ液体を注ぐ。
(へえ、ずいぶん慣れた手つきだな・・・)
「かんぱーい!」

それからしばらくは他愛も無い話をしていた。設定としては、俺はこの娘と積極的に仲良くなろうとしなければいけない。というか、一線を越えなければいけないのだろう。でも、さすがにそれは・・・。出張先の飲み屋で出会った、名前も知らない相手ならともかく・・・。
ボトルが半分ぐらい空になった時、紗織が聞いてきた。
「信之さんは、私のこと嫌いですか?」
「嫌いだったら、こうしていないよ」
「そうかなぁ・・・」
紗織は不満げな表情だった。
ああ、そうだ。可愛い娘がこんな状態で待っていたら、普通なら一秒も考える必要は無い。でも、この娘は行きずりの相手じゃ無い。俺は結婚しているし、妻もこの娘の婚約者もすぐ近くにいる。しかも、二人とも俺達がこんな状態になっていることを知っている。内緒には出来ないんだ。分別のある大人なら、迂闊なことはするべきじゃない。特に、俺は紗織が未婚であることを気にしていた。相手が人妻でも、やってはいけないことに変わりはないが、結婚前の娘と寝てしまうのは、さすがにまずいと思う。迷っている間にも、ボトルはどんどん減って行く。
「ある意味、安心したというか、がっかりしたというか・・・」
(なるほどねぇ・・・)
「正直なところ、伸之さんがこんなに堅いとは思いませんでした」
「そりゃ、どうも」
「佑子さんじゃないと駄目だったんですかねぇ」
「さおりん、それは違うよ。まあ、佑子様だったら好きなだけ胸は触らせてもらうとは思うけど、その先は・・・」
「由美さんのことはどうなんです? 小池さんは、本当の変態さんですよ」
「それは感じた」
「ヒントも出してましたけどね。小池さんは、由美さんに・・・」
そうだ。奴は由美に・・・何かをするはずだ。そういえば、由美が外に行こうとしなかったのは、ひょっとして何か『電池で動く系』のヤツを仕込まれていたのか?
俺が紗織に何もしなくても、隆弘は由美と、ただのセックスじゃない、変態的なプレイをするとしたら・・・。
それでも、俺は紗織に何もしないのか?

「由美さんなら、縄も良く似合うでしょうねえ」
「な、縄かぁ」
「みなさんのいるところで始めてしまうかも・・・」
「まさか、・・・そこまでは無いだろ」
「気付いてたんですよね?」
「・・・腕は縛られてたんだろ。あと、下着も・・・」
「はい、おそらく・・・。でも、嫌がらずに従っています。伸之さんが気付いたっていうことは、他の皆さんも何人かは気付いているはずです。由美さんってMですか?」
「絶対に違うよ。あいつの性格はどSだ」
「・・・相手によって、MとかSは変わるんですよ。私だって、普段はどMです。前に付き合っていた人と、いろんなところで、いろんな人と、いろんなことを・・・」
「え・・・」
「あ、今のは忘れて下さい。言っちゃいけないところまで言っちゃいました」
隆弘の性癖は秘密ということなのだろうか。あ、隆弘は元彼じゃ無いんだっけ。
「これ以上の謎解きは明日の晩までお預けです。そして、夜のことは絶対に秘密です。お墓まで持って行って下さいね。何かがあったのか、何も無かったのか・・・」
「・・・わかった」
あそこまでしておいて、変態隆弘が由美とセックスをしないという可能性も残されていたが、俺は紗織とする。紗織が望んでいるのだから。何故かはわからないが。婚約者もいる可愛い娘が、既婚者の俺とセックスをしたがる理由がさっぱり理解できない。それに、他のカップルもそうだ。俺達は人並みにエロ話もできる間柄だけど、スワップなんてするようには思えない。
いや、俺だけが知らないだけで、やっぱり他の奴等は以前から・・・?
(くじ引きの結果では、佑子や綾乃、秀美が俺の相手だった可能性もあった。綾乃や秀美だったら、どうだったのか。佑子は・・・。)

ふと気付くと、紗織が俺の顔をじっと見ていた。考え事をしていて紗織のことを忘れていたらしい。
「あの、ごめんなさい。ずいぶん悩ませてしまいましたね。伸之さんがこんなに真剣に悩まれてしまうなんて、予想外でした」
「俺ってどんな風に思われてんの?」
「もう、質問はナシって言ったじゃないですか」
「まだダメなのか」
「だって、伸之さん、どMですもの。簡単には教えてあげません」
「Mじゃないよ」
とは言ってみたものの、紗織は相手にしていない表情だ。
紗織は俺のグラスが空になると、すかさずお代りを注いでくれる。
可愛い女の子と二人きり。その娘を俺は口説き落とさなければいけないのだが、その段階は既に過ぎている。俺が口説いていないのに、紗織はもう俺に落ちている。
「一本、空けちゃいましたねぇ」
紗織が手にしたボトルからは、逆さにしても何も落ちて来ない。
「足りないですか? やっぱり、凄くお酒強いんですね」
「もう、充分。さおりんだって、強いじゃない」
「そんなことないです。頭の中、ぐーるぐるですよ」
立ち上がった紗織が俺の側に回って来た。と思ったら、足がもつれて倒れそうになった。俺はとっさに手を差し伸べた、・・・つもりだったが、紗織を掴み損ねたばかりでなく、わざとでは無いが紗織を突き飛ばす形になってしまった。
「さおりん!」
慌てて抱き起こそうと立ち上がった俺も、酔っ払っていて足がもつれて倒れた。俺の目の前には怯えた紗織がいる。このままの勢いで倒れたら紗織を押しつぶしてしまう。・・・かろうじて手を出す程度の反射神経は残っていた。
「ごめん。大丈夫か?」
「やっと押し倒してくれた。はーとま―く」
「それは声に出さない。あ、そうじゃなくて、これは事故・・・]
「ん・・・」

紗織が頬に両手で触れ、そっとキスをしてきた。
拒むことはできなかった。
『キスまでならセーフ』って思ったのも事実だけど。

(ああ、この娘、キスも抜群に上手だ・・・)
特に激しいキスではない。優しく、蕩けるような・・・そんな感じだ。でも、紗織にキスをされて、俺は幸せだった。気持ち良いというか、嬉しいというか、・・・表現しづらいが、いつまででも紗織にキスしていて欲しいと思った。キスでこんな気持ちになるのは、初めてかもしれない。興奮するとかではなく、キスしていることが気持ち良かった。
長いキスから唇を離し、まだ頬を触りながら紗織が言った。俺はぼーっとしていて、紗織が見つめていたのにも気付かなかった。
「もっと早くキスまで持ち込めたら、伸之さんも悩まなくても済んだかもしれないのに、ごめんなさい」
「す、凄い自信だね」
俺はとても間の抜けた声を出してしまった。
「あら、その表情。元妻に見せてあげたいですね」
「うん、悔しいけど、・・・参った。キスだけなら、今までの人生で最高」
「うれしい。もっといじめてあげますね」
「だから、Mじゃ・・・」
再び唇を塞がれながら、俺の浴衣が肩脱ぎにされる。紗織の手を掴んでキスをやめてもらってから、俺は言った。
「あっち、行こうか」
「はい・・・」

ベッドの上では、俺が押し倒される番だった。紗織が俺の浴衣の襟元から中に手を入れる。そーっと鎖骨の辺りを触る。
「あ・・・」
自分の手なら平気なのに、俺は女の指で鎖骨の辺りを軽く触られるのが何故か弱い。その弱点を知っているのは由美だけのはずだ。
(こんなことまで話しているのか。)
「うふ、かわいい。女の子みたい」
巨人とか言っていたくせに。
俺は腕を頭の上で押さえつけられた。
「動かないでくださいね」
そして、紗織は俺の胸の上に馬乗りになり、俺の浴衣の帯を抜いた。
手首を帯で拘束されている間、俺は抵抗をしなかった。普段はどMだという紗織がSになって責めるというプレイに興味を抑えられなかった。どんなことをされるのか・・・
「こーんなに逞しい巨人が、どMなんて」
紗織は何だかすごく楽しそうだった。
俺は頭上で手首を帯で拘束され、はだけた浴衣を身体の下に敷いて仰向けに寝ていた。あとはトランクスだけだ。
「何て無防備なんでしょう。もう、責め放題ですねぇ」
俺は脱がされていたが、裸に抵抗が無さそうな紗織は、まだきっちりと浴衣姿のままだった。

ふと思いついたように紗織は俺の胸から降りると、スマホを向けた。
「ちょ、おい!」
「動いたらだめです。切り札は達也さんが握ってるんですよね」
「それ、ずるいよ・・・」
「エロマンガとか小説で良くあるじゃないですか。レイプされて写真で脅されて、って。ご気分は如何ですか?」
「良いわけ無いよ」
「私の言うことを聞いてくれるなら、絶対に誰にも見せませんから」
「・・・どうすれば良い?」
「別に、逆らわなければ、ひどいことはしません。痛いのは私も苦手なので」
紗織が俺の横に寝て、自分達にカメラを向ける。
「はい、良い顔して下さい」
みごとな『記念写真』だ。手を拘束され引きつった笑顔の被害者と、着衣のまま笑顔の加害者。その性別さえ逆なら、良くあるシチュエーションにも思える。
「もう、何て顔してるんですか。心配しなくても、ちゃんと気持ち良くしてあげますって」
「さおりんも・・・」
「私は、いいです。今日は伸之さんをいじられれば満足です」
「何か、やだなぁ」
突然、再び唇を塞がれた。紗織は俺の言葉なんて聞く気は無いんだろう。
(ああ・・・気が遠くなる・・・)
乳首を爪でかりかりと弄っている。俺はそこは特に感じる場所ではない。俺が無反応なのに、紗織はいつまでもキスをしながら乳首を弄っていた。
それよりも、俺は紗織に反撃したくてうずうずしていた。だが、腕は拘束されてしまっている。
もどかしい。触りたい。舐めたい。かじりたい。かき回したい・・・。
「何だか、もじもじしてますけど、どうしたんですか?」
(エロマンガなら、『感じてない』とか『いじわる・・・』とか言う場面だろうな)
それに、乳首なんか感じる場所じゃ無いのに、変な気分になりかけていた。
「俺もさおりんに、したいよ」
「必要ありません。伸之さんは、黙って私のいいなりになってくだされば良いんです」
どМのサディスト。優しく、俺をいじめる紗織。
キス以外のことはされていない。まだトランクスは脱がされていないし、そこに触れてもいない。これから、どれ程の時間をかけて責められるのだろう。俺は、セックスで味わったことの無い、初めての恐怖を感じ始めていた。一方的に感じさせられる恐怖。そして、いつまでもいかされないで生殺しにされる恐怖・・・。
紗織は気付いたらしい。いや、初めからそのつもりで・・・?
「うーん・・・これから気持ちよくなる人の表情じゃないみたい」
何も言えない。無邪気な笑顔が、逆に怖い。
嵌められた。紗織は自分が良くなることは要らないと言う。俺はこの娘に一方的に嬲られる運命なのか。


[19] Re: 信之の憂鬱  やま :2019/07/11 (木) 10:55 ID:cDooWLkg No.27182
更新、ありがとうございます。
遂に、一線を越えてしまうのでしょうか?

[20] Re: 信之の憂鬱  やま :2019/07/27 (土) 11:08 ID:nMN2ZLwk No.27197
あげます。
更新、待ってます!

[21] Re: 信之の憂鬱  :2019/08/07 (水) 21:30 ID:RcdB1yq6 No.27206
10 崩壊

「さおりん、こんなの・・・」
「伸之さん音を上げるの早過ぎますよ。まだ始まってもいないのに」
どれくらいの時間キスをしていただろうか。・・・まさか、キスだけでいかされたり?
「せめて、触ってくれない?」
俺は、トランクスじゃなければ『こんにちわ』しているはずの、下半身を見ながら言った。半分以上は、拒否される予感に絶望しながら・・・。
「あら、まだわかっていませんでした?」
(ああ、やっぱり・・・)
「質問の他に、要求も禁止です」
「えぇー」
そんなことだろうとは思っていたけど。
「キスはしてあげますよ」
今となっては、蕩けるようなキスも、辛いだけだ。
「キス、は」
紗織の唇が、俺の頬に場所を移した。いや、違う。
「して、あげ、ます、よ」
首筋、鎖骨、胸の筋肉・・・。場所を移してキス。
全身にキスの雨を降らせながら、忘れた頃にまた唇に戻って来る。
紗織が唇に戻って来ると、俺はほっとした。そして、幸せを感じた。また、キスしてもらえる・・・。
「さお・・・、いつも、こんな・・・?」
質問には一切答えない。嬉しそうに笑いながら、キスの雨は続く。なんだか本当に楽しそうだ。
過去に付き合った相手で、こんなに長い時間キスばかりしていた娘はいない。キスが好きな娘はいたが、気持ちが盛り上がってしまったら、結局は始まってしまうのが普通じゃないか。
感じる場所じゃないはずの乳首を紗織は舌と唇で弄ってから、胸の真ん中辺りから音を立ててキスを・・・
「あ、おい!」
密かに怖れていたことになった。紗織がキスマークを付け始めたのだ。これで明日も海だったら、・・・
(でも、こんなことになってるのは、バレてんだよな・・・)
今回は何故かイジラれキャラにされてるんだ。いまさら、恥ずかしいも何も無い。と思ったが、さすがに数が多すぎる。しかも、
「ひどいよ・・・」
「逞しい男の人の逆レイプネタっていったら、こういうのでしょう?」
「違うと思うぞ」
胸のキスマークが巨大なハート型を描いている。ただのキスマークよりも恥ずかしい。
「でも、嫌じゃないって顔してますよ」
「嫌だよ」
「泣かないで」
笑いながら、紗織がまたキスをする。
不思議な気分だ。恥ずかしくて、嫌で、もどかしくて、せつなくて。でも、この娘にキスをされると、癒される。好みのタイプとはまるっきりかけ離れているのに・・・。
まだ紗織のことは好きになれそうも無かったが、紗織のキスにはすっかり参っていた。
由美とはこんなに長い時間キスをしていたことは、たぶん無い。
俺達のセックスは子供を作るためのものでは無い。飽きないように、とはいつも思っていたが、完全に由美が主導権を握っている俺達だったから、新しい事を受け入れてくれるかどうかは危ない賭けだった。由美の機嫌を損ねたら、そりゃあ辛い日々が続く・・・。
でも、由美もあんな性格だから、喧嘩したとしてもあまり尾を引くことは無かった。大抵は俺が謝って、それで終わり。何事も無かったように元に戻るんだ。
自分に悪いところがあっても、それを認めたくはない。だから、俺が謝ったらそれで終わりにするつもりでいつも待っているんじゃないか。

「あの・・・、嫌なこと、思い出してしまいました?」
キスをやめた紗織が俺の顔を覗き込んでいた。
「ん・・・、何か幸せでさ・・・。さおりんのキスだけで、いろんなこと考えた。元妻とのこととか・・・」
「前の奥さんのこと・・・、考えていたんですか?」
「ああ、大好きだったからね・・・」
「今は、私のことだけ考えて」
「・・・ごめん」
「いいの。心に忘れられない女性がいる男の人を夢中にさせるのも、女冥利ですもの」
「さおりんはどうして・・・」
「こーら。どさくさ紛れに質問しようとしても、ダメですよ」
「ばれたか・・・」
紗織はあくまでもプレイとして、俺のことを好きになってくれているのだろう。
嫌じゃないんだろうか。隆弘の命令に従っているだけなのか。・・・質問を許されていないのがもどかしい。

『作品』はハートマークだけらしく、それからはキスマークが付くようなキスを紗織はしなかった。
全身にキスの雨を降らせながら、紗織のキスはとうとうヘソの辺りまで来ていた。もう、すぐそこだ。でも、やっぱりなかなか近付いてこない。
(じらされるの、ツライよ・・・)
紗織が再び口に戻って来てくれた。だが、軽くキスをして紗織は離れてしまった。俺は放置された気分でぼーっと天井を見ていた。
ふと見ると、紗織が見つめていた。何だか真面目な表情だった。
「伸之さん。・・・部屋、暗くしても良いですか?」
(え・・・。この娘、裸を見られるの、平気じゃなかった?)
「あ、良いけど・・・」
どうして、と思っても、もちろん質問には答えてもらえないので、俺は紗織の言う通りにするしかなかった。
後から思えば、紗織が聞いてきたということは、俺が拒否したら部屋は暗くしなかったのかもしれない。でも、その時の俺は紗織の言うがままだった。
カーテンをきっちりと閉め、照明を一つずつ消して行く。ついでにBGMの音量も少し大きくした。真っ暗になった部屋に、するすると衣擦れの音が聞こえる。

「念のため、目隠しもしますね」
「そんなことしなくても、全然見えないけど」
「慣れたら、見えるでしょ」
たぶん浴衣の帯だろう、紗織に目隠しをされた。平気そうなのに、何故見られたくないんだろう。でも、もちろん俺は質問はしなかった。答えてもらえるはずが無いから。
『チュ』と軽くキスをしてから、紗織は初めてトランクスに手を当てた。
「うふ、お待たせー」
最後までお預けかと半分は思っていたが、ちゃんとおさまりはつけてくれるらしいことがわかって、俺はほっとしていた。
「あらあら。ちょっと濡れてますねぇ」
くすくす笑いながら、撫で回す。
「我慢させ過ぎだよ」
「えー、何がぁ?」
「ほんとにイジワルだなぁ」
「いっぱい我慢したご褒美に、ちゃんと気持ち良くさせてあげますから」
「え・・・?」
「暴れちゃダメですよ」
「・・・ん、わかった」
トランクスを撫でていた手が握る手に変わった。
「かたーい。ここも筋肉なんですか?」
「違うし」
言葉も無く、トランクスが脱がされた。
「ちょっとぬるぬるしてるぅー。いっぱい我慢して、いい子ねー」
そう言うと、紗織はいきなり口に含んだ、・・・らしい。視覚を遮断された俺には触覚と聴覚だけが頼りだ。
わざとなのか、紗織はAVみたいな派手な音をたてている。由美も普通にフェラはしてくれるが、いつもはあまり音はさせなかった。
あれだけ長い時間のキスでじらしていたのに、こっちへの攻めはチロチロ舐めたりはしないのが不思議だ。
「さ、さおりん、激し過ぎ・・・」
「ん・・・まだ終わっちゃダメですよ」
「いや、ほんとにヤバい。すぐにいきそう」
「じゃあ、・・・最初はすぐに終わっても許してあげます」
ということで、紗織は手加減はしてくれなかった。とにかく俺をいかせることしか考えていないのか・・・?
あ、口だけで終わりにするつもりなのかも・・・。
達也と佑子はホントにセックスしてしまったが、紗織はそのつもりは無いのかもしれない。結婚前の身だし。
そろそろ、ほんとにヤバいと思っていた俺に配慮している筈は無いのだが、紗織は口での行為を止めた。
ベッドの上を動く気配がした。俺の上に跨ったことがはっきりとわかる。
(え、まさか、ホントにするのか?)
俺はこの期に及んでもまだ、紗織は挿入まではしない、手か、せいぜい口で済ませるものだと思っていた。ド変態の隆弘の婚約者が処女だとは思っていなかったが、するのは・・・。


[22] Re: 信之の憂鬱  やま :2019/08/08 (木) 14:32 ID:ZxxLQAgQ No.27207
いいところで、終わりますねー。
早く、続きをお願いします。
他の人も楽しみにしてる筈です!

[23] Re: 信之の憂鬱  やま :2019/09/11 (水) 12:40 ID:/O1MtWqQ No.27246
上げます!!
続きを楽しみにしてます。

[24] Re: 信之の憂鬱  けんけん :2020/05/08 (金) 01:58 ID:ddE4dVnE No.27492
いつも更新を待っております。頑張ってください!


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