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絆のあとさき 5

[1] スレッドオーナー: 小田 :2024/10/14 (月) 11:02 ID:J9iEAGI6 No.195459


予定を遥かに超えて、No.5まできてしまいました。
その理由となると、想定が甘かったの一言でしかありません。

一連の流れの出来事を取捨選択してはいるのですが、その繋がりを持たすために小さな出来事にも
焦点を当てたのが、原因だと思っています。
一年というそう長い期間ではないのですが、大なり小なり記憶に残る出来事も数多くあります。

数多の経験と年月を経て、心情の変化に戸惑い、立ち止まることも多々あるように感じられます。
変わらない、変えられない体への対応方法も、彼女なりに理解出来ているように見えるのですが、
そう簡単なことではないのかもしれません。

コメントを頂いた皆様、読んで頂いていると思われる皆様、遅々として進まない展開が続きますが、
今後共、お付き合い頂けますようお願いします。


[2] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2024/10/14 (月) 12:15 ID:J9iEAGI6 No.195462


続きです。




「オーナーじゃないのよ、コイズミ君ね?」
「説明がないと誰か分からないね。名前を口にしないのは、二人だけ、違うな、オーナーに
説明する時間を省いた、そうだろ?」
「それもあるけど、直ぐ傍に居るのよ。手を取ればいいんだもの」
「なるほど。情景に光が差したかな?」
「そんなに暗くはないのよ。あっ?そういう意味じゃないのね?」
「天然の使い方に不備があるだろ?はははっ」
「はい・・・続けるわね」


『私のスカートを捲り上げてくれる?腰までね・・・お尻は見えるように・・・いいわよ・・・
オーナーは私の前に。かがまないと見えないわよ』
『・・・こうか・・・脱がないのか?』
『紐パンと同じでしょ?脱がなくても・・・私が・・・これでいいでしょ?』

何も聞こえない数秒が、次の展開を待っているようです。

『・・・あぐっ!・・・もう!吸い付かないで・・・あうああっ、気持ちいいわ・・・』
『愛液が半端じゃないな・・・どうだ!マックスで逝きまくれよ』
『あああっ、あっ!?・・・ダメ〜!凄いの、いいわ!いいわ!!あああっ、あっあっあああぁ、
あう、ああっあぅ・・・』


「いいところでごめんね?」
「止める?恥ずかしい?はははっ」
「だって、ちょっとかな?説明しないと情景が見えないでしょ?」
「想像は出来るが・・・まぁ、聞こうか?」
「うん・・・オーナーがマックスって言ったでしょ?」
「そうだったかな?」
「あれ?おかしいなぁ、私にはハッキリと・・・ほんとに?」
「二通りの意味があるだろ?リモコンをマックスに設定する、マックスに逝かせる、どっちだい?」
「もう!ほんとあなただわ、うふっ。二つともかな?リモコンをマックスにして最高の絶頂を
与える、あれ?分かって聞いたでしょ?」
「まぁ、認識は必要だからね。確認かな?はははっ」
「些細な事でしょ?あなたらしくないわ」
「情景は明るい方がいいからね。暗いと余計な詮索も顔を出すだろ?」
「だからなの、あなたに聴いて欲しくて・・・あれ?不安があるから清廉潔白を強調してるって
思ってる?」
「そこまで頭が回るのなら、問題なさそうだね」
「ある訳ないでしょ?回さないでね?加熱したらボロが出るかも?うふっ」
「はははっ、ボロも隠しようだが、今のいずみにはそぐわないね」
「そうでしょ?清廉潔白ないずみなんだもの。あのね、オーナーはリモコンをマックスにして
コイズミ君に渡して・・・分かった?」
「いずみは両手が塞がってるんだろ?」
「そうよ、オマンコを開いていたんだもの。あれ?少し恥ずかしいかな?うふっ」
「だね、続けようか?」


[3] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2024/10/14 (月) 17:05 ID:J9iEAGI6 No.195475



『軽く逝った?どう?』
『・・・あぁあうあぁ、ううっ?軽く?・・・違うかな?』
『少し痙攣したな。どうだ!僕のペニスは、はははっ。もっとするか?』
『ナマがいいもの。ベッドでナマならもっと興奮できるでしょ?』
『その日まで妄想だろ?白状しろよ』
『うふふっ、想像にお任せしますわ。どうする?』
『ローターは止めて、アイスの前に潮吹きといこうか?』
『大変よ、お洋服が濡れるかも?』
『その覚悟がないと何もできないだろ?いずみちゃんはNGなしだろ?』
『そうだけど、いいのね?・・・あっ?!ゆっくり・・・ふ〜っ!・・・どう?』
『ヌレヌレどころか、ベチョベチョだな・・・どこに・・・』
『後ろの洗面台に置いたら?』
『いずみちゃんの愛液たっぷり、愛情たっぷりだろ?置くのがもったいないね』
『”愛”違いね?セックスの”愛”だもの。”愛情”は”愛欲”に置き換えて下さいね、うふっ』
『言えてる、いつも感心するよ・・・さてと、ローターに解放されたから、ユビマンで・・・
ペニスにするか?』
『それはベッドで。何度も言わせないでね?おつむに穴が開いてるって思うわよ』
『どういうことかな?』
『抜けてるってこと、分からない?』
『はははっ、抜くのはベッドでだろ?』
『空気もね?抜けてるでしょ?』
『バカってことか?』
『バカな人とはお相手はしないわ。そうじゃなくて、私の気持ちを考えてくれる人のことなの。
オーナーは気遣いの人なのに、時々・・・ねぇ、分かるでしょ?』
『そう言われたら・・・ユカもそのようなことを言ってたな』
『でしょ?分かったんだから、前に行こうか?うふっ』


「ねぇ、ユカさんの事が気にならない?」
「ジャパン君の存在かな?」
「でしょ?二人は仲良しかもしれないわ。ジャパン君が先にお店に入ったって言ったでしょ?」
「ユカさんがお目当て?」
「だからね、私達の事は気にならないのよ。でも、オーナーは何だか気になるみたいで、
おトイレに入るまで、チラチラ見てたから、そうだと思うの」
「オーナーの彼女じゃないんだろ?」
「うん、だから変だなって、そう思う私は鋭いと思わない?」
「ん?事情が分かればだが、特に気にすることもないだろ?」
「そこは気にするところでしょ?」
「ん?意味不明だね」
「単純明快だもの。事情は分からないのよ、でも、ハッキリしてることってあるでしょ?」
「二人を気にしてることか・・・おっ?もしかして?」
「あなたが聞かないから少し心配だったの。だって、お店の近くなのよ、コイズミ君にレコーダー
を仕込んだのは」
「オーナーは二人に気を取られていたから、注視されなかった、そうかい?」
「そうでしょ?何かに気付いていたら、質問するでしょ?そんなの何も録音されていないもの。
オーナーの目線も注意力も、私達にはほんの少ししか注がれていなかった証拠でしょ?」
「気にはなったが、いずみがそれを持ち出さなかったから、違和感はあったとはいえ、上手く
やり過ごせたと理解したよ」
「良かった!少し前に戻ったけど、あなたと意思疎通できたから、小さな不安も取り除かれ
ました、うふっ」
「気になる事があれば、注意力散漫になるのは致し方ないね」
「うふふっ、追認頂けて、嬉しいですわ、うふっ」
「あれだね、そこのところの説明を省くのは、強者だね?」
「あなただからよ。他の人なら先に話しておかないと、後々誤解の種にもならないとは言えない
でしょ?」
「難しいね?理由は?」
「斜めから見ようとするでしょ?だから、説明が遅くなっても、その時までには理解していると
思えるもの」
「今回は、灰色の脳細胞だったね?はははっ」
「一件落着?」
「だね、続けようか?」


[4] Re: 絆のあとさき 5  てっちゃん :2024/10/18 (金) 00:10 ID:CDIyuLjU No.195619
小田様

ご無沙汰しております。
いつも楽しみに拝読しております。

新スレッドアップありがとうございます。

お忙しいと思いますが、無理せず、続けて頂ければと願っております。

宜しくお願いします。


[5] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2024/10/19 (土) 11:40 ID:Nb4ToO/w No.195644


てっちゃんさん、コメントをありがとうございます。

お久し振りですね。
長いお付き合いになりますから、相も変わらない稚拙な文章には、そろそろ飽きられている
のかと、内心穏やかではありませんでした。

投稿当初の頃とは展開が大きく変わっていますから、興味を惹かれた時に持たれた感想とは、
かなり違った思いがあるのではないでしょうか?
私もここまで続くとは、全く想定もしていなかったのですから、何とも言えない不思議な
気持になります。

その年の出来事まで投稿する予定ですが、今投稿している季節は秋ですから、あと少しで
その年を終えることになります。
可能な限り、年末までに投稿を終えたいのですが、そう簡単ではないかもしれません。

投稿回数を増やすことは難しいかもしれませんが、温かく見守って頂ければ幸いです。


[6] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2024/10/19 (土) 16:34 ID:Nb4ToO/w No.195659


続きです。





『さぁ、始めるよ・・・うっ?ヌレヌレだものなぁ、愛液で溺れそうだよ、あはははっ』
『変なバカ笑いは止めてくれない?集中できないでしょ?うふっ』
『集中?いずみちゃんには似合わないだろ?いつでも、どこでも・・・NGなしなんだから』
『良かった!誰とでもって・・・あれ?控えてくれたの?』
『僕にも常識があるからね。驚いた?』
『もう一度ね?ほんとに良かったわ、常識のある人で・・・あぅ!?・・・あああぁあっ・・・
ゆっくり、お願い・・・』
『どうかな?常識的なら興奮も半減するだろ?一番奥と・・・前の二カ所責め・・・もっと腰を
押し付けて、もっと強く!・・・』
『いいの・・・そこ!そこ!・・・あああぁっああっ・・・いいの、いいの・・・
ねぇ、もっと速く・・・ああああっ、あうあぅああああっ・・・ダメ!ダメ!・・・うううっあぁ、イク〜!!・・・』


「何だか恥ずかしいなぁ。状況説明は?」
「避けたい?じゃないだろ?」
「うん、情景が見えないと暗いままでしょ?嘘偽りのないいずみを見せないといけないもの。
ちょこっと恥ずかしいかな?観られてる方が気持ちも楽だわ」
「じゃ、次回は鑑賞会?」
「それはないかな?あなたは黒子だもの。時間がかかっても、こうして白日の下に曝け出さないと
いけないもの」
「お利口さんだね?はははっ」
「もう!私のフレーズじゃない?あなたには難しいフレーズがあるでしょ?」
「急に言われても思い付かない、フレーズとはそういうものだろ?」
「うふふっ、降参?・・・いいわ、あのね、膣の一番奥、子宮口の下側ね、それと子宮口と
その周りを二本の指で同時に刺激するの。Gスポットじゃないのね。最初は、鈍くて重い興奮って
言えばいいかな?それが急に体の奧から湧き上がって来るの、その後すぐにGスポット責め、
もうあっという間よ、出る感覚って分かるのに、止めることも何も、何も考えられない状態ね、
出ると逝くが同じ感覚なの。でもね、潮吹きはエクスタシーの亜流だと思うの。
ほんとに逝くのはペニス、これしかないと思うわ。あっ?でも誤解しないでね?潮吹きも立派な
絶頂をもたらしてくれるの。ただ、一番じゃないってこと、男性を楽しませるプレイだと思うわ」
「女性はペニスで逝きたい、それに尽きる?」
「うん、私だけかもしれないけど、バイブとか媚薬とか、それって亜流なの、本命はペニス。
複合的なプレイであっても、それに尽きるわ・・・あっ?ごめんね?気になる?」
「まぁ、気にならないと言えば嘘になるね。それより・・・」
「それよりって?・・・二カ所責め?」
「難しい体勢だからね、方法論を聞きたいかな?はははっ」
「出たわね、それがあなたのフレーズ?」
「聞かせろよ」

”分かってるんでしょ?”と言いたげな微笑みを湛えた表情が、迫って来ます。

「”チュッ!”・・・うふふっ、そんなの難しいでしょ?オーナーって言葉に酔うタイプだと
思うわ。ベッドじゃないと無理ね、少なくとも、あの体勢では私がいくら協力しても不可能だもの」
「二カ所は時間差ってことだね?」
「分かってるんでしょ?ボルチオとGスポットを同時刺激なんて、両手を・・・あれ?指の事ね、
その指を二本ずつかな?挿入しないとできないもの。これって、経産婦じゃないと難しいと
思わない?」
「だろうね。屈んでは無理があり過ぎだね、やはりベッドしか、まぁ、寝る場所があればだが、
トイレでは不可能だね」
「オーナーって、テレホンセックスでもそうだと思うのね、言葉以上に反応するタイプ、妄想が
大好きなんじゃない?」
「はははっ、来月にはその素性がハッキリと見えてくるんじゃないか?」
「木下さんのエロ小説の?」
「直ぐそこだからね、それ迄はライトセックスで我慢だね?」
「我慢?・・・私?それってオーナーでしょ?」
「ん?・・・そうしとこうか?はははっ」
「はい、それでお願いします、うふっ」


[7] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2024/10/20 (日) 11:26 ID:FRqlMzaw No.195675



『うへ〜、出たね、ここまで飛ぶとは。見ろよ、濡れただろ?』
『・・・えっ?・・・あああっあっ・・・ふ〜、ごめんね?』
『いずみちゃんのだからね・・・もうグチョグチョ、ヌレヌレパンツだね、あはははっ』
『パンツ?・・・ほんとだ!穿き替えたいかな?』


「パンツを穿き替えた理由が分かったでしょ?」
「一々止めなくても、理解の範囲だからね」
「鮮明な情景は必要でしょ?」
「見え過ぎるまでもないだろ?腹八分目とか言うだろ?その程度でいいからね」
「難しいな?あなたの理解力ってホントに読めないのよ」
「任せるから、端的に。いいかい?」
「録音済みは変更も何もできないわよ。あっ?早送りね?」
「はははっ、お願いするよ」


『脱がせてやるよ・・・チュッ!・・・潮は愛液と同じだろ?』
『うううっ、吸い付かないでよ。オシッコじゃないって聞いたけど、私にはオシッコと同じ
感覚かな?でも、コントロールできないから、それって潮だからかな?』
『愛液だろ?膣の愛液とは違うかもしれないけど、正真正銘の愛液だよ』
『じゃ、愛液のシャワーなのね?沢山かかって嬉しいでしょ?』
『はははっ、ズボンがビショビショだよ。いずみちゃんが穿き替えたら、ズボンを脱いでお願い
しようかな?』
『いいわよ・・・バッグを取ってくれない?』
『・・・どこかな?』
『テーブルに置いてきたの。必要ないでしょ?』
『そうだな・・・まずはいずみちゃんのパンツを・・・そうそう足を・・・はははっ、サポート
だろ?シッカリしろよ』
『すみません』
『気にしなくていいわよ。オーナーって独りよがりだからね?』
『言われようだな・・・さてと、持ってくれるか?』
『早く!私のパンツでしょ?オーナーが脱ぐのはその後で、いいでしょ?』
『バッグだな?』
『そのまま持って来てね?』

微かに鈍い音が聞こえて、直ぐに、

『痛て!・・・おっ、背中が・・・』
『大丈夫?鈍い音がしたけど・・・立てる?』
『ここで立てないと、後で勃たないだろ?・・・はははっ、冗談もきついかな?』
『うふふっ、無理しないでね?』
『あぁ・・・』

ドアの開閉音が聞こえて、

『ごめんね?キスは?・・・いいのね?チュッ!・・・バッグは預かってね?おトイレを出る前に
さっきのモノをバッグに、いいわね?お礼は・・・あっ?・・・』

ドアが開いた音に反応したのでしょう、

『・・・ありがとう・・・どう?背中は?』
『きてるね、ここにも影響するかな?』
『まぁ!慰めてあげたいのに、残念だわ、うふっ』
『いずみちゃんのご厚意は、有難く受け取っておくよ』
『あれ?いいのね?』
『えっ?お終い?』
『だって・・・大丈夫なの?腰はプレイに影響するわよ。木下さんに叱られてもしらないわよ』
『背中だよ、だけど、腰にも・・・無理は出来ないなぁ、来月も直ぐだからね。その時までは
妄想のいずみちゃんだね、あはははっ』
『笑えるんだから、その時は元気になってるわ。そうじゃないと私も楽しめないでしょ?』
『そうだな・・・これだろ?』
『そうよ・・・えっと・・・あったわ・・・持っててくれる?・・・』


[8] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2024/10/20 (日) 15:04 ID:FRqlMzaw No.195681



「いいかしら?」
「引き延ばしたが、我慢できなかった?はははっ」
「妄想する?オーナーとは違うものね。ここで説明しないと私の沽券に関わるでしょ?」
「いずみプライドかい?」
「そうとも言うわね、うふっ。ほんとにいい?」
「見えない情景も現れてきたからね、グッドタイミングだよ」
「ホント?良かった!あなたに”止めるなよ”って、叱られないかちょこっと不安だったの。
ほんとだからね」
「信じるから、説明しろよ」

”ふ〜っ”と安堵の吐息を漏らします。

「青息吐息でなくて良かったね?」
「楽しんでるの?」
「そう見えるのならそうかな?はははっ」
「もう!・・・うふふっ、それがあなただって分っているのに、乗せられてしまうんだもの、
あれ?乗って欲しいかな?」
「もういいだろ?進めろよ」
「うん・・・私のパンツを脱がせて、コイズミ君に渡したのね。それは分かるでしょ?」
「ヌレヌレの?かわいそうだね。ん?そのような話しはしていなかっただろ?」
「彼って優しいのよ。振り返らなかったけど、笑顔で受け取ったと思うわ。だって、願っても
手に入らない貴重なパンツ、私はそう思うんだけど、どう思う?」
「有名人ならそうかもしれないが、無名もいいところだろ?普通に考えればあり得ないね。
僕の疑問は?」
「そうよね。私が指示したんじゃないけど、何だか悪いことをした気分だわ。
ところが、オーナーが持ってたでしょ?あのね、ヌレヌレのことね、パンツはずらしていたから、
殆んど濡れていないのよ。愛液が少しかな?コイズミ君、ジャパン君とセックスした時は、
全裸だったから、パンツに沁みも何も付かなかったと思うの。ローターの刺激で少しは、でも
ほんとに少しだから」
「強調しなくてもいいよ、推測は出来るからね。感性の違いと思えばそれで済む問題だよ」
「そうね、オーナーって大袈裟に言いたいのね?きっと妄想が大好きな変態なんだわ」
「変態は兎も角、いずみを楽しませる引き出しは、多い方がいいだろ?」
「うふふっ、言えてる。そう思えば喜ばないといけないのね?」
「喜んでいたじゃないか?正にその通りだね、はははっ」

”分かった?”という風に、キスしてきます。

「それが答えだろ?」
「うん・・・ちょこっと恥ずかしいかな?ではでは、次の疑問に移ります。
え〜っと、アレだわ、コイズミ君にパンツを渡して、ズボンを脱ぐジェスチャーをしたのね。
私にたしなめられて立ち上がろうとして、洗面ボウルに背中を打ち付けたの。鈍い音がしたから、
相当痛かったと思うわ。おトイレって狭いでしょ?洋便器と洗面台の間に三人が居るんだもの、
推して知るべし、でしょ?」
「僕のフレーズって言わないのかい?」
「はい、理解の範囲でしょ?そう難しいフレーズでもないと判断しました、うふっ。
あとは・・・バッグを受け取って、未使用のパンツを取り出してから、コイズミ君に渡したの」
「パンツにバッグか、大変だね」
「続きを聴いてくれる?」


[9] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2024/10/20 (日) 19:35 ID:FRqlMzaw No.195683



『・・・あのね、パンツをバッグに入れてくれない?』
『畳めないけど、いいですか?』
『いいわよ、そのままポンって入れてくれたら』
『ポンですね?』
『グダグダ言ってないで、早くしろよ、はははっ』
『すみません・・・”ポン!”、入れました』
『ありがとう・・・じゃ、私は・・・パンツを穿くわね?』

ほんの少しですが、何も聞こえません。

『はははっ、よろけるのもなまめかしいが、僕のようになったら大変だろ?掴まれよ』
『ありがとう・・・ふ〜、穿けたわ・・・チュッ!、うふふっ』
『はははっ、さてと、いずみちゃんの話を聞こうか?』
『おトイレを出てからね?』

ドアの開く音の直ぐ後に、小さく雑音を拾っていますが、その後は何も聞こえません。


「あれ?・・・ノイズも聞こえないから、スイッチを切ったのね」
「気を利かせ過ぎかな?」
「そうかも。おトイレの中だけだと思ったのかもしれないわ。それとね、テーブルに戻っても、
二人しか座れないでしょ?それもあって、録音できないかもって早とちりしたとも取れるわね」
「いずみの傍に居て初めてレコーダーの役目を果たせる、そう思ったのかもしれないね」
「理由は兎も角、レコーダーはここまでね。そこで話したことは、もう分かるでしょ?」
「先に聞いたからね。どうするかも打ち合わせ済みだから、再確認する必要もない。
ところで、何か忘れていないかい?」
「えっ?・・・あっ!アイスのことね、オーナーが背中を痛めたでしょ?それが気になっていた
から、忘れていたのね。コイズミ君から受け取って洗面台に置いたのはいいのよ、痛みかアイスか、
重みの違いね、オーナーは痛みを取ったのよ。だから、コイズミ君から”忘れ物”って差し出され
るまでは、忘却の彼方。でもね、私がパンツの穿き替えを持ち出さなければ、アイスを挿入されて
いたかも?そう思わない?」
「はははっ、それはないだろ?適当な理由を付けて、回避したと思うけどね。違うかな?」
「うふふっ、臨機応変ってこういう時に使うのね?」
「まぁ、そうとも言うかな?」
「だからね、アイスを食べながら、戸田さんに会った話をしたの。これで辻褄が合ったでしょ?」
「合わないことがあるだろ?」
「えっ?・・・なんだろ?」
「パンツの行方だよ」
「ほんとだ!・・・あのね、アイスってカップに入ってるのね。時間も経ってるから早く食べ
ないといけないでしょ?おトイレを出てオーナーと向き合って座って直ぐに、コイズミ君から
アイスの存在を知らされたの。テーブルに二つ取り出して、ユカさん、ジャパン君、コイズミ君
の三人分はね、コイズミ君と私で二人のところに持って行ったの。
彼に頼んでも良かったんだけど、おトイレの事ね、何だか恥ずかしいでしょ?言葉を交わしたら、
気持も落ち着くかなって。
そしたら、ユカさんが”可愛い声が聞こえていましたよ”って、そんなのあり得ないでしょ?
お店の片付けをしていたのよ。続けてね、”タイミングが良かったのね、ちょうどおトイレの
前をお掃除していたから”って、呆れて返す言葉もなかったわ。聞き耳を立てていたって白状
したのと同じでしょ?それが良かったのね、ずいぶん気持ちも楽になったの」
「その気持ちは分かるね。ところで・・・」
「パンツだわ、ごめんね?コイズミ君が犯人だと思っていたのね、携帯でオーナーから聞くまでは。
彼がバッグに入れたでしょ?それはいいのね、おトイレを最後に出たのが彼だから、その時に
ジャケットのポケットに入れたんじゃないかって思っていたの。
ホテルに向かいながら、あなたに掛けたでしょ?携帯はバッグの中だもの、パンツがないことは
直ぐに分かるでしょ?ところが犯人はオーナーだったってオチね。
アイスを持って行く時に、バッグは椅子に置いたのね、その時にオーナーが。そう考えるのが
自然でしょ?」


[10] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2024/10/20 (日) 22:06 ID:FRqlMzaw No.195686



「自白したんだから、経緯は必要もない。まぁ、子供じみた悪戯と処理したんだろ?」
「ほんと大人のすることとは思えないわ」
「楽しいオトコじゃないか?いずみの気を引きたい、そう見せているだけかもしれないが、
そうする理由は明白だろ?」
「戸田さんでしょ?」
「だね。僕のスタンスは話した通りだから、アトはいずみにお任せだよ」
「はい、了解しました・・・コイズミ君に明日のお昼休みに連絡するって話したでしょ?」
「そうだったね」
「遅くなったでしょ?あなたから掛かってくるし、少し慌てたのよ。私が悪いんだけど、なんとか
しないといけないもの。オーナーには戸田さんに連絡するって約束して直ぐにお店を出たの。
でも、ホテルには向かえないでしょ?坂道の歩道とは反対方向だもの。それにコイズミ君には
連絡するって話さないといけないし、小さくないパニックだったの。
それって分かるのね?彼が”そこまで送ります”って、気の付く子でしょ?
直ぐそこなんだけど、横断歩道の信号待ちの時に、そのことを話して”会える日を考えててね?”
って。そしたら、”キスしても?”って満面笑顔なの。ソフトに抱き付いて唇に触れたら、
”早く会いたいです”なの。これって営業トークじゃないでしょ?」
「次回で分かるんじゃないか?そこまで話さなくてもいいからね」
「うん、ごめんね?・・・でね、横断歩道を渡って少し歩いてから、急いで横断歩道まで戻って
坂道を上がったの。あなたと会ったコンビニのところから、お隣のホテルに入る前に、あなたに
掛けたの」
「慌ててる様には感じなかったが、それがいずみなんだろうね?」
「えっ?どういうこと?」
「過去には拘らない、前を向いているってことだよ」
「忘れぽいって聞こえるわ、そうでしょ?うふっ」
「天然の為せる業じゃないか?はははっ」
「訳分かんないでしょ?でも、それが私って自分でも納得だわ」
「結論も出たことだし・・・」
「私達の結論を今から出す?」
「出るかな?はははっ」


性的な接触には戻らず、ジョークを交えながら眠りにつきます。
いずみはベッドを移動することも、それを示唆することもなく、抱き付いたまま私より先に
眠ってしまうのですから、私への報告にはかなりのプレッシャーがあったのだろうと推測できます。


[11] Re: 絆のあとさき 5  てっちゃん :2024/10/24 (木) 22:49 ID:4QSaftFc No.195777
小田様

返信ありがとうございます。

週末は小田様の投稿を楽しみにしている読者の邪魔をしたく無く、平日の投稿を心がけていますが、平日は平日で時間が取れず、コメントが疎かになっていました。

小田様といずみさんの会話は、まるでレコーダーを再生しているかの様に詳細で、かつ、言葉を大事にしつつ行間を埋めるようなやりとりで、いつも感心しています。
一方で、そうなると、記憶に自信の無い私は、一旦立ち止まって振り返りつつ、繰り返し読まないと、状況を把握できなかったりもします。

ただ、前と違うのは、なんと言っても、現在のお二人の状況がわかっているからで、安心して読める点です。

これからも、その年の終わりとは言わず、投稿を続けて頂けたらと思います。

楽しみにしています。

[12] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2024/10/26 (土) 17:33 ID:1yqKVH5. No.195805


てっちゃんさん、コメントをありがとうございます。

会話中心ですから、状況説明が少ないと分かり難いかもしれません。
ひとえに私の投稿スタイルに起因する事なのですが、その都度、状況説明を挟むには
時間がありません。
私も気になっているのですが、なにぶん投稿時間に制約がありますから、
そこまで手が回らず、余計な神経を使わせているようで、申し訳なく思っています。

次の展開が始まりますが、性的な情景は少ないかもしれません。
心情に重きを置いた内容になると思っていますが、焦点の当て方一つで、
その方向性が決まりそうです。

翌年の出来事については、全くの白紙です。
今は、予定している出来事を完遂することに注力したいと思います。
その後、その判断をしたいと思いますが、仮に投稿するとしても、暫くの猶予を
頂くことになると思います。


[13] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2024/10/26 (土) 20:08 ID:1yqKVH5. No.195806


続きです。





コイズミ君とは翌週に会う予定だったようですが、週末は楊社長とのベッドインが決まっていた
ことから、翌々週の月曜日を提案したのですが、生理周期と重なってしまいます。
その日を逃すと月末まで会えないことから、コイズミ君の意向を確認して、その日に決めたよう
です。
その日はいつものように、午後11時過ぎに掛かってきます。


『仕方なかったの。長引かせる訳にはいかなかったの。だって、お礼でしょ?間延びするなんて
失礼にもほどがあるもの』

言い訳にしか聞こえないのですが、生理中を容認してくれたコイズミ君の優しさに感動したと、
いずみにしては少々大袈裟な表現です。
生理中の性行為でも、ほとんど抵抗がないのですから、私に対するコイズミ君の心情を語る材料
としては、有効に働いていると思います。

『はははっ、無抵抗だろ?』
『えっ?・・・生理のこと?』
『喜んでとは言えないだろうけど、気にならないんだろ?』
『うん・・・汚れないか、それだけ注意すれば・・・もう!分かって聞かないでよ。あなたの
思ってることを当てましょうか?』
『アナルだろ?』
『うふふっ、誰もそう思うわね、だから事前に用意して。喜んでくれたわ、それが嬉しくて・・・
女って、私だけかもしれないけど、喜んでくれることが大きな興奮に繋がるの。セックスって
お互いに喜びを与える神聖な行為だと思うわ』

達観しているとでも言えばいいかもしれません。
百戦錬磨のいずみとしては、かなり控え目で優しさに満ち溢れている様子が、その口振りに
現れています。
セフレとしての立ち位置を受け入れたであろうコイズミ君への気持ちが、その言葉に集約されて
いる様です。

『神聖?若いね?彼に合わせたとしか思えないフレーズだね、はははっ』
『笑わないでね?タクマさんよりも若いのよ。彼もまだ純粋っていう、あっ?名前が伊純なのよ、
ねぇ、名前と同じように純粋な気持ちがまだ残っていると思わない?初々しかった時を思い出して
お付き合いできたら、私の青春も焼き直せるかもしれないでしょ?』
『女風のセラピストだろ?シッカリ染まっていると思うけどね。青春の片鱗でも見れたら、
宝くじに当たった以上の驚きに腰を抜かすんじゃないか?』
『言い過ぎでしょ?セラピストってお相手の女性に合わすことから始まると思わない?』
『そうだとしてもだよ、セフレとしていずみの青春時代を蘇らせることが出来たとしても、それは
マヤカシに過ぎない。合わせることから始まるセラピスト根性の賜物だと思わないと、どんでん
返しを食らった時の立ち直りが、遅くなると思うよ』
『うん・・・そうよね、それも分ってお付き合いするから。幻の青春でも見れたらそれこそ儲け
モノでしょ?』
『はははっ、その覚悟があれば大丈夫だね。大いに楽しめばいいよ』

不確かですが、ある意味、ひろ子が何らかのブレーキ役として登場させられることも考えられます。
ひろ子を念頭に置いて、伸ばせられる羽でなければ何の意味もありませんから、その状況を理解
した上での青春回帰であるのならば、特に問題になるような事態には至らないと思います。

『あのね、ほんとに愛し合えたと思うの。あっ?体の関係ね、分かるでしょ?』
『聞かなくてもいいよ。何か話したいことがあるのかい?』
『うん・・・あのね、生理なんだけど、3日目だったのね。普通ならまだ多い日なのに、ほんとに
少なくて、”アレ?”って感じだったの。体調が悪いとか何もないのによ。でも、それも楽しめた
一因かなって思うの』
『主人にのろける?はははっ』
『あなただからなの。全て話さないと私が私じゃないって。それで・・・今思えばだけど、
先月も少し少なかったかなって感じなの』
『よく分からないが、いつも一緒とは限らないだろ?全くなければ、その状況は直ぐに理解出来る
が、そうじゃないんだから、気にすることもないように思うが、本人はどう思ってるんだ?』
『そうよね、気にするほどの事じゃないかもしれないわ。ごめんね?余計な心配を・・・あれ?
心配じゃないって話したのね?うふっ』

相変わらずの纏め方です。

その週は木下さんのエロ小説の元ネタとして3Pの予定だったのですが、生理日と重なるため翌週の
水、木曜日に変更になっていました。
翌週ならレストランは休みではないのですから、以前のように木、金曜日とすればいいと思うの
ですが、何故か同じ曜日になったのです。
ですから、コイズミ君と同じ週ではなかったことが、いずみに幾分気持ちの余裕も持たせたとも
思えるのです。

あくる週の乱交については、これと言った言及はありません。
ただ、オーナーは思っていたほど濃密ではなかったと、想像を軽く裏切られたと苦笑いです。
仕事を終えた後からの参加ですから、そうだったのかもと、少しの気遣いも見せる優しさも
併せ持っているいずみではあります。


[14] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2024/10/27 (日) 16:17 ID:U8u3oWpA No.195823



その日から暫くは、問題になるような事柄もなく、日にちだけが過ぎて行きます。

10月の最後の週、客先での打ち合わせを終えて、夜に東京に着きます。
私が東京に来たのは、石黒さんと約束があったからです。
その日、木曜日なのですが、いずみはオーナーのレストランでバイトと聞いています。
可能であれば、週二日と決めているのですが、その週は月曜日も含めて二日目です。
いずみからは、バイトについての言及も特に何もありません。
いずみの弁を信じれば、気に掛ける程の事でもないでしょうし、店に入れる訳でもありませんから、
その場の雰囲気でも分かればくらいの気持ちで、いつものホテルに向かいます。
石黒さんは午後11時過ぎにいずみと入れ替わって、ホテルに来る予定なのです。

空港からその駅に着いたのは、9時30分は優に過ぎていました。
ホテルまでは5分も掛からないのですが、その途中に、いずみがバイトをしているレストランがあり
ます。
ライトセックス付きと私達は揶揄しているのですから、穏やかではありませんが、全て了解済み
なのです。

そのレストランの直ぐ傍を通るのですが、テラス席で楽しそうに話している一組のカップル以外は、
何の動きもありません。
立ち止まって見れるはずもなく、店の中までは視界が及びません。
9時以降は客足も減少すると聞いていましたから、カウンターのところで雑談しているのだろうと、
小さく納得してホテルに向かいます。
そのレストラン以外にも数軒の飲食店が軒を並べているのですが、ほんの少し歩いたところにも
同じ様なテラス席を設けたレストランがあります。
その傍を通りながら、石黒さんにホテル近く迄来ていることを連絡するために、上着の内ポケット
から携帯を取り出します。
掛けようとして顔を上げた時に、テラス席の一番奥、バイトをしているレストランからは一番遠く
の席に、いずみと見知らぬ男性が談笑しているのが目に飛び込んできます。
二人共、私からは横顔が見れる位置関係ですから、いずみが注意すれば、私を確認出来ないことも
ありません。
少し速く歩いて、数段の階段を上がり、高級外車を展示している建物の前まで移動します。
チラッと見ただけなのですが、向き合ったテーブルの上でお互いの手を繋いでいたのですから、
それなりに親密な関係だと理解できます。
ただ、彼の事は何も聞かされていないのですから、事後連絡だとしても、連絡する時間は優に
あったと思える程の親密さと判断できます。

石黒さんにホテル前に着いた事を連絡し、私が再度連絡したら、いずみの携帯に掛けるように依頼
します。
キツネにつままれたような返答でしたが、快諾してくれます。
ただ、その理由は可能な限り今夜中に説明する約束をさせられます。


いずみに掛けます。
少しのタイムラグの後、

『どうしたの?何かあった?』

ハッキリと話していますから、席を立って通路側に出て来ていると思われます。

『ホテルの方を見ろよ・・・』


[15] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2024/10/27 (日) 18:40 ID:U8u3oWpA No.195824



そう言って、階段の傍まで戻ります。
案の定、通路まで出て来ているのです。

『・・・見えるか?』
『来てたの?驚かさないでよ』
『今ね。聞いているだろ?』
『あっ?サワちゃんと入れ替わるんだったわ。お楽しみの時間ね?うふっ』
『いずみも?』
『えっ?オーナーとは何も・・・あれ?もしかして、そうでしょ?』
『親密そうだったが、僕の知らない男性だね』
『あっ?ごめんなさい、まだ話していなかったわ。纏まったら報告するつもりだったの』
『僕が来ることは分かっていたんだからね。脇が甘すぎないか?』
『考えなかったわ。この通路を通ることは分かっていたのに、私としたことが』
『奥だから分からないとでも?』
『ううん、何も、ほんとよ、何も考えなかった・・・ほんと甘すぎるわ。あれ?隠すとかじゃない
から、見られても問題ないって、それでかな?テラス席に』
『どうでもいいが、時間は大丈夫だね?』
『サワちゃんでしょ?それは大丈夫よ。どうしよう、説明しないといけないでしょ?』
『だね・・・兎に角、バレたんだから早急に修復しないと、いずみの沽券に関わるぞ、はははっ。
取りあえず切るか?』


お互いの携帯を切って、近付いて来るいずみを待ちます。
その時、彼女の後ろから、先程の男性がついてくるのが見えます。
厄介なことにならないか、少々身構えるのですが、傍まで来たいずみに、

「どちら様?」
「えっ?・・・お友達の・・・戸田さんっていうの」

いずみにしては少々しおらしい表情を見せるのですが、それは強気に出れない相手なのかも
しれません。
やはり”戸田”の範疇なのかと思い知らされます。

「久し振りですね、お会いするのは。いずみさん、そちらの方は?」
「えっ?・・・どう言えば・・・」
「主人です。そう話さないと」
「えぇ・・・でも・・・」

いずみの表情は、何かを訴えているようですが、少なくとも話を合わせて欲しいように見えます。

「それは・・・驚きですね?いつですか?」
「申し訳ないが、あなたには関係ない事ですから」
「そう言われればそうですが。まぁ、驚嘆絶後ですね?はははっ」

少々大袈裟に嫌味も交えて返答します。
”驚嘆絶後”は、これ以上の驚きは後にも先にもないという意味合いですが、自然と口にした
フレーズなのですが、私の造語かもしれません。

「初対面とは思えない物言いですね?」
「いつもと変わらないですよ。そうだろ?いずみさん?」
「えっ?・・・えぇ・・・」

”困らせないで”とでも言いたげな目線を送ってきます。

「話にならないね。偶然会ったのなら、特に話もないだろ?」
「えぇ・・・そうかな?」
「そうですね。元気そうで良かったよ。また、いつか会える時があるかもしれないから、その時は
色々と話せればいいね」
「はい・・・その時は・・・」
「ないかもしれないだろ?希望的観測は空しいものだよ。じゃ、いいかな?」


[16] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2024/11/02 (土) 18:05 ID:KXGlItqg No.196017



”強制終了”と言いたげです。
これ以上こじらせると、後でいずみに嫌味の一つも言われるかもしれません。
それどころか、その男性との関係性も見えないのですから、これ以上のツッコミは、傷口を
大きくするだけかもしれません。
いずみはどう理解しているかは分からないのですが、私が戸惑っている以上の感情を現わせたと
思いますから、どのように対処するのかも含めて後で説明する筈です。

「じゃ、戸田さん、お元気で」
「あぁ、お互いね」


階段を下りて行く二人には、どことなく違和感を覚えます。
慣れ親しんだ夫婦の状況を作り出すには、かなりの無理があるように思えるのは、いずみが私の妻
であると分かっているからかもしれません。
いずみの腰に手を廻してエスコートするのは、明らかに私への挑戦と受け取れます。

どのような理由があろうとも、その男性の妻を演じているいずみには、不信感しかありません。


ホテルの玄関を入って直ぐに、石黒さんに掛けます。

『待ってたのよ、今か今かって、うふっ』
『待たせたかな?話したように、いずみに掛けてくれないか?』
『緊急?お仕事でトラブル、これでいいのね?』
『二度目になるからね、そこは頭において、いいね?』
『一度目は小田さんだったのね?』
『分かるかな?はははっ』
『状況は分かんないけど、このミッションをやり遂げます、うふっ』
『頼もしいね。じゃ、直ぐに掛かってくれないか?』


チェックインを済ませて、ロビーでいずみからの連絡を待ちます。
ところが、想定していた時間迄には、掛かってきません。
直ぐとはいかないとしても、とっくに20分は過ぎています。
フロントにいずみが遅れることを伝え、客室に向かうと決めた矢先に、いずみから掛かってきます。

『ごめんなさい、ほんとに遅くなって。信じられないわ、人って分からないものね』
『はははっ、分からないのはいずみじゃないか?』
『自分でも理解不能なの。ねぇ、もう直ぐホテルだから、ロビーなの?』
『遅いから部屋に行こうとしていたんだが、カードキーが面倒だろ?』
『そうよね。じゃ、ロビーね?』
『早く来いよ。お後が控えてるからね』
『うふふっ、サワちゃんに叱られないように、でしょ?』

携帯を切って玄関前まで移動するのですが、いずみの姿は見えません。
先程の通路が通れない事情、あの男性がまだ居るとしたら、遠回りするしかありません。
一旦坂道に出て、コンビニの前から隣のホテルに入り、私の待つロビーに来るのかと、思い巡ら
していると、

「あなた!ロビーって玄関のこと?うふっ」


[17] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2024/11/03 (日) 11:31 ID:tkPWP66A No.196028



元気ないずみの声が、背中に突き刺さりそうです。
振り返った私に抱き付こうとして、

「あっ?ダメかな?」
「いずみ?先程とは180度も違うね?そうだった、どちらが僕の奧さんなんだい?」
「どちらも・・・私達の夫婦関係に亀裂はありません、うふっ」
「ん?ダミー?」
「そうよ、私って優し過ぎるのかも?ねぇ、ここでお話しできないでしょ?」

午後11時に石黒さんと交代するまでは、優に1時間はあります。

「部屋で?」
「うん、目立たなくていいでしょ?」
「気になる?」
「うん、来ないとは思うけど・・・イヤでしょ?」

いずみの気持ちは分かるとは言え、私は戸田ですから、何とも不都合な現実です。

「まぁ、また会ったら揉めること請け合いだね?」
「”妻と話すな!”って大変よ」
「僕が主人だと言ったら、警察を呼ばれるかもしれない。妄想癖には逆らわないことだね」
「言えないでしょ?戸田さんなんだもの。そうよね、現実と空想の区別がつかない状態、
一つの病気ね?」
「空想?夢想か妄想じゃないか?どちらにしても、一種の精神病かもしれないね。
ところが、僕の奥様はそれに合わせているんだから、おかしいのは僕かなって錯覚しそうだよ、
はははっ」
「あなた、大きな声は。だから早くお部屋に・・・あなたが原因で急ぐなんて、ほんと可笑しいわ」


部屋に入って直ぐに、

「お話しの前に・・・いいでしょ?」
「ん?ハグ?」
「見たんでしょ?手を繋いでいるところを。その親密さがあなたに火を点けた、でしょ?」
「少なくとも多くの時間がそうさせたと思ったからね。初対面とは言えない状況だと判断した
結果の行動だよ」
「そうよね・・・ねぇ、歯磨き?」
「だね・・・待ってるよ」

いつものように上着を脱いでベッドに置き、窓際の椅子に腰を下ろします。
帰宅した時とかホテルの部屋に入れば、上着を脱ぎ腕時計を外すことが、いつの間にか習慣に
なっています。
腕時計を外すと、腕のその部分が薄っすらと汗ばんでいます。
10月最後の週なのですが、夜ともなると少し肌寒い日もありますが、その日は昼間の暖かさが
残っていたのかもしれません。
それでも、昨夜とは明らかに違っているのですから、少なからず緊張していたのかもしれません。
私自身は緊張と言えるような状況ではなかったと理解しているのですが、そう時間も置かずに
始まるいずみからの説明に身構えているとすれば、そうかもしれません。
今まで経験した事のない精神状態の男性との関係となると、その対処方法に戸惑うことも想定
できますから、そう考えれば原因の一つと言えそうです。


[18] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2024/11/03 (日) 14:52 ID:tkPWP66A No.196035



纏まらない思いを巡らしてぃると、バスルームから出てきたいずみが、

「ごめんね?あなたは?」
「キスはしていないからね。手を洗うだけで許してもらおうか?」
「いいの?空気中には・・・うふふっ、あなたでもイヤかな?お願いしてもいい?」
「ん?・・・まぁ、ご所望とならば、はははっ」
「はい、交代ね?・・・ねぇ、キスしたってどうして・・・あっ?歯磨きね?」
「恍けるなよ。なにかい、キスしなくてもエチケット?」
「でしょ?・・・キスはしました。でも、”チュッ!”って挨拶みたいなモノだもの。
性愛のキスとは違うのよ」

区別していると強調していますが、ソフトからハードには大きな障壁もありませんから、
あっという間に性愛のキスになる事は、いずみも重々分っている筈です。

「ニアリーだろ?」
「紙一重?そうかな?そうかも!うふっ・・・ねぇ、早く!」

後ろに回って、私の首に両手を巻き付けて、催促してきます。

「分ったから・・・時間の事もあるから、簡潔に説明できるように纏めて・・・
はははっ、頑張れよ」
「はい!・・・でも、困ったな?」

口とは裏腹で、既に纏まっている様な余裕の表情です。


歯磨きを済ませて、ベッドルームに入ると、全裸のいずみが、零れんばかりの笑顔で出迎えて
くれます。

「何かのイベントかい?」
「お洋服って何かを隠している様に思えるの。清廉潔白な私を見て欲しいから、恥ずかしさを
・・・あれ?信じないわね?うふっ」
「はははっ、隠す理由があるから先手を打ったんだろ?」
「打てません。受け取る方ですから・・・分かった?」
「いいよ、真面目に話さないか?まずは裸になった理由から」
「うん・・・隠すことは何もないってことなの。口ほどにモノを言うって何だった?」
「裸?いい加減にしろよ、怒るぞ!はははっ」
「綺麗な体って、口で説明するより訴えるものがあると思わない?」
「アラフォーだろ?サバヨミ過ぎだろ?」
「やはり目なのね?目だったら、年齢なんて関係ないかな?」
「少なくともいずみなら・・・はははっ、いずみフリークが顔を出したかな?」
「いいのね?目には勝てないかもしれない私の体を見て下さい。何もなかったことが分かる
でしょ?」
「時間帯と場所を考慮すれば、何かあったと思う方がおかしいだろ?」
「そうでしょ?おかしな男性との噛み合わないお話しって、ほんと可笑しかったわ」
「それを話すんだろ?」
「はい・・・では、ここからは経緯を話します。真面目にお話しするから・・・ねぇ、ベッド?」
「真面目にだろ?」
「そうだったわ、ベッドはサワちゃんとだもの・・・ちょこっと寂しいけど。
じゃ、椅子にしようか?」
「下着を付けろよ。僕と釣り合わないだろ?」

10月も下旬になると、装いも季節感が色濃くなってきます。
それでもブルーをチョイスするいずみは、ほんとに好きな色のようです。
淡いブルーの長袖のブラウスに濃紺のカーディガンですが、珍しくブラックウオッチのパンツを
着用しています。
当然下着も同色ですから、やり過ぎと揶揄されてもおかしくありません。


[19] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2024/11/03 (日) 16:07 ID:tkPWP66A No.196039



先程の椅子に腰を下ろして、下着を付けるいずみと話します。

「そうね、空振りだったかな?」
「誰ならホームランなんだい?」
「あなた以外の・・・私に関心がある男性かな?」
「さっきの?」
「大ありよ。でも、私にはかすりもしない人かな?」
「見えないね、手を繋いでいたのは蜃気楼かい?はははっ」
「心の蜃気楼かな?見た目とは違うってことね、分かるでしょ?」

事実と真実の違いに言及するには、彼との経緯を説明する必要があります。

「だね。さぁ、始めようか?」
「審判みたいね?」
「最後じゃないだろ?はははっ」
「最後の審判?ミケランジェロ?」
「まぁ、これが最後になるとは到底思えないけどね。ミケランジェロも数年かかったようだから、
途中の審判かな?」
「はい・・・これでいい?下着だけだから”途中”になるけど、うふふっ」

”途中”を強調したいようですが、それは無視して、

「途中なら最後まで戻すかい?」
「あなたと不釣り合いだから?そうね、少し待ってね?」

ベッドに畳んで置いていた服を身に付け、テーブルを挟んで私の前に座ります。

「いいわ、審判を始めて下さいな、うふっ」

全く臆することもなく、清々しい表情に変わりはありません。

「じゃ、自己弁護から。いずみの説明を聞こうか?」
「あなた・・・いい?」

私の手をテーブルに乗せるように促します。

「同じシーンの再現?」
「イヤでしょ?二番煎じは。というか、得体の知れない男性と同じシーンってあり得ないもの。
そうでしょ?」
「分って催促かい?」
「違うの。見た目は同じかもしれないけど、強い絆で結ばれているのはあなたと私、彼とは絆と
言えるモノは何もないの。あるのは深い溝が横たわってるだけ。でも、彼にお願いされて、
仕方なく・・・」
「そうは見えなかったが・・・」
「でしょ?見た目は同じの違いを説明したのに、分からない?」
「はははっ、強気だね?立場をわきまえてるのか?」
「あっ?ごめんなさい。でも、ほんとにほんとなんだから」
「一瞬だったが、楽しそうな雰囲気だったね。僕以外の第三者でも同じ感想を持つと思うよ」
「うん・・・そうして欲しいって。だから、お願いされたって。あれ?強気ないずみかな?」
「はははっ、借りてきた猫はマヤカシだったのかい?」
「違うもん。あなた以外の人なら、かなり強気・・・あれ?さっきは真逆だったわ。
あれって、お願いされた流れでそうなったの。ホントに私じゃないから、それは分かってくれる
でしょ?」
「後で証明すればいいじゃないか?今は経緯が先だろ?」


[20] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2024/11/04 (月) 11:02 ID:3U5hAgGs No.196055



繋いだ手に力が入ります。

「温かいわ。あなただけね?他の人とはどこか違うの、それが何なのか分からないけど」
「僕も分らないよ。いずみの言い訳としか聞こえないが、はははっ」

その温もりに触発されたのか、腕時計を外した時に感じた汗ばんだ箇所を注視します。

「どうしたの?」
「ん?・・・特に何も・・・」
「ここ?・・・腕時計の・・・少し日焼けの跡があるだけ、何かあるの?」

探求心が旺盛ですから、変に誤魔化せば時間の無駄になります。

「まだ汗ばむ季節だろ?いずみの温もりから連想しただけだよ」
「お昼間じゃないのよ。あり得ないでしょ?・・・あっ?もしかして、緊張してたの?
それで外したのね?」
「いつもだろ?まぁ、正直に話せば、いずみの指摘に近いかな?」
「あなたが?信じられないわ。でも、そういう時ってあるものね。さっきは数少ない緊張感を
味わった貴重な時間だったのね?」
「物は言いようだね。見えないモノには自己防衛が働くだろ?」
「うん、分かるわ・・・あれ?私がその原因を作った張本人かも?」
「だから、早く経緯を話せよ」
「うん・・・あのね・・・そうだわ、お名刺を貰ってるから・・・」

立ち上がろうとするいずみを制して、

「先に経緯だろ?それは後でもいいから」

少しいら立ってる風を装います。

「怒ってる?」
「だとしたら?」
「うふふっ、お顔には何も書いてないわよ。でも、全て私が原因だもの、経緯を話すわね」
「堂々巡りだろ?早く話せよ」

坐り直したいずみは、腕時計を着けていた私の左手首に右手を重ねて、

「今も話したけど、この原因は私にあるの。でも、元を辿ればオーナーに頼まれたことが発端なの」
「オーナー?じゃ、彼の知り合いか、店の客か、そんなところかい?」
「うん・・・お客さんなの。少し長くなるけど、聞いて下さい。
あの人ね、常連さんだったのね。1ヶ月に2〜3回くらいの来店だったらしいんだけど、あっ?
忘れるところだったわ、いつも奥さんと一緒だったの。いつからだったかは聞かなかったけど、
話の様子では1年ってことはないと思うの。だって、奥さんが亡くなられたのが、半年前だって
言ってたから」
「腰を折るけど、いいかな?」
「うん・・・」
「奥さんの代役かい?」
「夫って言ってたものね、分かり易い展開かな?」
「なるほど。読めてきたね、いずみ似の奧さん?そういう設定かい?」
「ほんとの事は分からないのよ。でも、写真を見せてくれたから、作り話でもないでしょ?」
「信じられる?」
「全てではないけど、そう思っても間違ってるとは思わないでしょ?あれ?あなたみたいだわ」
「はははっ、緩衝材かい?」
「うふふっ、真剣なお話しだけど、余裕のない精神状態だったら、間違ったことも口にしそう
でしょ?」
「言えてるね。続けてくれるか?」


[21] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2024/11/04 (月) 12:45 ID:3U5hAgGs No.196059



私の手首に置いていた右手を放して、手を繋ぐように促してきます。

「こうだったでしょ?」
「そこまでは・・・一瞬だったと話しただろ?」
「分からなかった?こうなのね、彼が強制的に両手を繋いできたの。その時に、”チュッ!”って。
その直ぐ後だったんじゃないかな?あなたが見た光景は?」
「光景?キスを見てれば情景かな?はははっ」
「あなたって細やかな気質の持ち主だった?この場合は、光景じゃないと真実じゃないもの」
「信じれば、かな?」
「信じなさい、でしょ?」
「命令?強制はその男性じゃなくいずみだった?」
「えっ?すり替えないで、うふっ。でも、手を繋いだのもキスも・・・半強制かな?」
「半自主的だろ?」
「だって、お願いされたんだもの。仕方ないでしょ?」
「笑顔でね?はははっ」
「それも含めて、分かって言わせるんだもの。あなたって偏屈者でしょ?うふっ」
「いずみはその妻だよ。まぁ、変態じゃなくて良かったかな?それなら淫乱いずみの再認定だ
ものね」
「皮肉れ者のあなたと素直な私、考えようではベストカップルじゃない?」
「はははっ、オス・メスの関係性とリンクするかい?」
「するでしょ?陰と陽、性格なんてそのものだもの」
「言われようだね。まぁ、不適切な発言とは言えないかな?」
「でしょ?続けるわね?」
「詳細は要らないだろ?聞いても始まらないからね」
「えっ?・・・でも、どうするの?」
「いずみも分ってるんだろ?」
「うん、結論はとっくに出しているのに、報告する前に見つかるなんて・・・あれ?泳がせて
後で責める事も出来たのに、どうしてなの?・・・そうか!私を信じてる証拠ね?」
「時間の無駄だろ?意味のない事はしないいずみだから、確たる理由だあると思ったからね」
「短い時間にそこまで考えられる?ほんとに?」
「信じない?」
「信じたい、かな?」
「信じなさい、かな?」
「うふふっ、あなたも強制してない?」
「自主性は大事だろ?」
「ほら!それって強制じゃない?」
「まぁ、人それぞれだろ?」
「うん・・・だからね、今夜で終わりにしようって思ってたの。それなのにあなたに突撃される
んだもの、計画が狂ってしまったでしょ?」
「綿密な?ほんとに?」
「もう!真面目に話さない?早くしないとサワちゃんと交代できないでしょ?」
「はははっ、じゃ、要領よく纏めてくれないか?」
「うん・・・今夜で3回目なの、会うのが。でも、彼はもっと前から私の事を意識してたみたいで、
オーナーにそれとなく話してたのね。でね、詳細は省くわね、オーナーにお願いされて、お話し
だけならって。会えるのはバイトの時だけ、オーナーが持ち時間を譲ったのね。
二人の間でどのような話しがあったかは分からないのよ。でも、彼の話が事実だとして、私で少し
でも癒されるのなら人助けになるかなって。それで・・・」
「人助けになったかい?」
「どうだろ?なったかもしれないけど、もう限界なの。相性ってあるでしょ?私には無理かな?
というか、普通の女性なら避けて通る人って感じなの」
「猫マタギ?」
「お魚じゃないのよ。立派な経歴の人だけど、私にも選ぶ権利はあるでしょ?」
「食べそうにならなかったのかい?」
「うふふっ、私を食べたそうにしてたけど、ミエミエでしょ?」
「キスだけで門前払いとは、如何ともしがたいものを感じるね」
「半強制って話したでしょ?いくら頑張ってもそこまで。その先ってあり得ないもの。
ねぇ、気付いていたでしょ?お洋服・・・これね?・・・」


[22] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2024/11/04 (月) 15:04 ID:3U5hAgGs No.196062



立ち上がって、ブラックウォッチのパンツを見せます。

「・・・"NO!"って言ってるのに、な〜んにも分からないの。自分中心に回ってる人だもの、
他人はどうでもいいって感じかな?」
「じゃ、人助けをしたんじゃなくて、僕に助けてもらった感が強いだろ?」
「あなたね、私一人で解決するつもりだったのに、とんだお節介だわ、うふっ」
「突撃は止めて、泳がせた方が良かったかな?はははっ」
「うふふっ、善意のお節介だもの、断わる事ってできないでしょ?ましてやあなただもの」
「やっと感謝の言葉が聞けたね、ホッとするよ、はははっ」
「ごめんね?ちょこっと遠回りしました」
「さてと、終焉の方法論は?」

今夜実行すると決めていたようですが、

「特に何もないの。私の気持ちをストレートに伝えて、終わりにしようって。無理なモノは無理
だもの、相手の気持ちを考えたら何も言えなくなるでしょ?だから、心を鬼にして・・・
あれ?優しさに満ち溢れた心なのに、鬼になれるかな?」
「なれるだろ?彼の前で戸田を演じさせたんだから」
「仕方なかったの。あの場で説明なんてできる筈もないでしょ?精一杯の・・・女神のお顔だった
でしょ?」
「はははっ、お助けマンの僕は、男神かな?」
「あれよ、白馬の騎士、それに違いないわ・・・あれ?ちょっとそぐわないかな?うふっ」
「差し詰め、タクマさんかコイズミ君のイメージだろ?白状しろよ」
「容姿は、かな?中身は誰とも比較できない程だもの。やっぱりあなたが白馬の騎士かな?」
「苦し紛れだろ?目の前に居るんだから否定的な発言はできないだろ?」
「うふふっ、そうかな?そうかも?」
「ところが僕の出現で計画が狂った、さて、どうするんだ?」
「そうよね・・・オーナーからの依頼だもの、彼に話して断わってもらうわ。それでいいでしょ?」
「まぁ、それが筋というものだね」
「うん・・・明日の都合のいい時間に掛けて・・・あれ?携帯?・・・あなた?」
「僕じゃないね。バッグの中から聞こえないか?」
「ほんとだ!・・・ちょこっと待ってね?」

立ち上がったいずみは、ベッドに置いていたバッグから、携帯を取り出します。

「あれ?オーナーから・・・彼の事かもしれないわ。出てもいい?」
「スピーカーに、いいね?」

椅子に腰を下ろし、携帯をテーブルに置いてから、私に笑顔を見せます。


『どうしたの?』

平然とした様子に、内心驚かされます。

『仕事だろ?』
『えっ?・・・どうして?・・・聞いたの?』
『大丈夫かな?』
『大変だったのよ。何とか纏まったけど、ホント疲れるわ』
『忙しいのは分かるんだが、少し話せるかな?』
『そうね、少しなら・・・』
『仕事なら仕方ないが、急に帰っただろ?仕事じゃなくて、その前に話してた男性と会っている
んじゃないかとかね、気にしてる訳だよ』
『昔の知り合いなのよ。偶然ってあるでしょ?お仕事でもいつどうなるか分からないでしょ?
意図的にお芝居なんてできないわよ』
『だろうな。そう話したんだが聞く耳を持たないってやつよ。そこまで忙しい筈はないの一点張り
でね』
『一応紹介したのよ。そしたら何て言ったと思う?』
『紹介って、その男性の名前を?』
『聞いていないの?』
『何も・・・興奮してて覚えていないんじゃないか?』
『傍に居るんでしょ?』


[23] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2024/11/04 (月) 21:39 ID:3U5hAgGs No.196075



私に目線を合わせて、ピースサインを送ってきます。

『テラスで待たせてる。いずみちゃんの承諾が取れないと話せないから、先に掛けたって訳よ』
『嬉しいわ、気を遣ってくれて。間違っても私の連絡先は話さないでね?』
『自分が可愛いからね、話す訳ないだろ?』
『お利口さんね。さっき話したこと、補足するわね?紹介した時ね、私の夫って言ったのよ。
理解を越えてるでしょ?唖然として何も言えなかったわ。ほんと理解不能な人って再確認させ
られたわ』
『ほんとか?夫婦ごっこは二人だけのプレイだろ?驚きだね』
『驚天動地って知ってる?ほんとあり得ないんだから。あのね、プレイって言わないでね?
知らない人が聞いたら勘違いするでしょ?』
『言えてる・・・どうだろ?代わるから、いずみちゃんの正直な気持ちを話してくれないか?』
『オーナーに話そうと思っていたところなの。私には無理ね、頼まれたから受けたけど、
疲れるだけだもの、お断りしたいわ』
『僕より、いずみちゃんが話した方が早いし、あきらめもつくだろ?それでいいかな?』
『そうね・・・いいわよ、代わってくれる?』

少しの間合いがあります。
いずみは私の目を真っ直ぐ見詰めて、ウインクして微笑みます。
何処までも余裕があるのには、ほんとに驚きです。

『代わるよ、いいかい?』
『いちいち聞かなくてもマイナスにはならないから、心配しないで』
『僕が頼んだことだからね。これが・・・』
『はい!ストップ!何度も言わせないで、心配しなくてもいいから。分かった?』
『分かったよ・・・』

二人が話しているような空気感が、携帯から流れてきそうです。
小さくない緊張感とでも言えばいいかもしれません。
いずみの表情が少し引き締まったように見えます。

『もしもし・・・』
『ごめんね?さっきは、緊急だったから。ぶち壊しね?』
『仕事なら・・・だけど、こんな時間に、信じられない思いだよ』
『このお話があった時ね、取り決めたでしょ?覚えてる?』
『私生活は干渉しない、だったかな?』
『住所も仕事も連絡先も何も聞かないって。会う場所と時間だけを共有すると決めたでしょ?』
『そこまでは・・・ホントに仕事なの?』
『見解の相違?そうなら私の見立て違いね。間違った判断だったって事なら、それでもいいわ。
意思疎通ができない人ならお話しなんてできないでしょ?私が仕事って言ってるのよ、それを
捻じ曲げようとするなんて、事実を事実として受け止められない自分勝手な人だわ』
『それは・・・困ったね。水入らずに水を差された思いが強くて、気になったこともあって、
それで・・・』
『歯切れが悪いわね。夫婦ごっこでは高飛車なのに、借りてきた猫なの?』
『アレはそういう設定だろ?』
『そうよ、お願いされたから、親身になってお話ししてたのに、それをナンなの、逆手に取って
疑心暗鬼の塊みたいに問い詰める?おかしいでしょ?』
『事実かどうか分からないだろ?』
『信じることが出来ないなんて、寂しい人なのね』
『言い過ぎじゃないか?さっきはキスも手も繋いで、楽しく話していただろ?』
『分からないの?強制したことが。合わせた私もバカだったかもしれないけど、少しでも癒され
たらと思ってなのよ。あのね、あなたの描いた絵は完成できないの。私には到底無理だから、
今ここでお断りします。それとね、さっき会った男性に夫って言ったでしょ?凍りつきそう
だったのよ。近い内に釈明しないといけないの、ほんとしらけるわ』


[24] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2024/11/09 (土) 11:58 ID:lRxF4OqQ No.196194



『それは・・・疑似夫婦の延長みたいなモノだろ?だったら、おかしくないだろ?』
『私は普通の人がいいの。その普通を普通に話せる、言い換えるとね、常識のある人とお話しが
したいし、あなたの望むその先も前向きに考えられるわ。分かったでしょ?もう一度言うわね、
あなたの描いた絵は完成までお付き合いできないの。下書きもできない内に、こうなって悪いん
だけど、お断りします』
『悪かったよ。修復できないかな?』
『往生際が悪いわね。引きずられる程のお付き合いじゃないでしょ?三日だとしても、数時間を
ご一緒しただけなのよ。思い入れは分かるわよ、でもね、私はあなたの奥様じゃないの。
過去と現実の境目に落ち込んでしまってるのね?しっかりしないと、未来は見えてこないし、
過去を引きずったままなら、現実なんて何も見えないわ。
過去は過去なの、分かってるのに受け入れられないんでしょ?時間が解決してくれるとでも?
元を絶たなければ、永遠に引きずったままなの。それって時間のパラドックスだわ』
『タイムパラドックス・・・過去は変えれないか?戻れるのなら、そうしたいが、私にはタイム
マシーンがないからね。分かったよ、理知的で素敵な女性に出会えて、幸せな時間を共に過ごせた
ことに感謝だね』
『持ち上げないでね?仮にね、今はそう思っていても、幸せを感じる時間はどんどん変化する
ものなの。少し前までは当たり前だったことが、今は存在などしないの。そんなことって経験ある
でしょ?だから、私の事など直ぐに忘れて、次のステップに進めるわよ。私との事もそうだけど、
過去の経験が未來への指針になるし、今より素敵な未来が待ってるの。
でもね、そうなるかどうかは、あなた次第なのよ。自分で未来への扉を閉ざさないでね?』
『教訓だね。いずみさんの忠告を胸に仕舞って日々邁進するよ・・・何だか説教されたみたい
だね、はははっ』
『良かった!少しでも通じたのなら、大成功だわ。あのね、生意気なことばかり言って、
ごめんね?』
『人生訓だね。有難く受け取っておくよ』
『短い時間だったけど、少しでもお役に立てたのなら、ほんとに嬉しいわ』
『勃てられなかったけどね?』
『えっ?・・・アレのこと?下書きもできなかったって言ったでしょ?前戯までは程遠かった
のよ。いつか機会があったら、色付けできるところまでは、頑張って欲しいわ』
『あれば、その時だね』
『そうね・・・じゃ、お元気で』
『いずみさんも・・・』

いずみの息遣いと吐息が聞こえてきそうです。


携帯を切って、私の左手、腕時計を着けていたところに、右手を触れさせてきます。

「どう?まだ汗ばんでる?うふっ」

いずみ自身の事象を、私への問い掛けに置き換えているのです。

「はははっ、どこだい?額?腋の下?」
「分かった?お股でなくて良かったわ。でも、ホント疲れるでしょ?とても気を遣ったのよ。
そう見えなかった?」
「余裕かと思ったが、かなり厳しい意見だったね」
「ああでも言わないと、納得・・・違うかな?表面だけでもいいから、理解したと言って欲し
かったの」
「彼の真相は・・・深い闇が横たわってると思うね。取り繕ったように見えるけど、彼の深層心理
までは、明らかにできなかったかな?何処か歪んでいるとは感じたが」
「私ね、奥様は亡くなったんじゃないと思うの。ほんとに短い時間だったのね、お話しできたのは。
あれ?キスとか手を繋いでとか思ってない?」
「見えないからね。いずみの自由自在だろ?」
「もう!今夜が初めてなのよ。信じなくてもいいけど、あなたならどうって事もない行為でしょ?」
「まぁ、それはいいから、理由を聞かせてくれるか?」


[25] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2024/11/09 (土) 14:56 ID:lRxF4OqQ No.196197



「理由って特にないかな?女の感って言うでしょ?正にそれなの。お話ししててどことなく違和感
があるのね。亡くなったのなら、楽しかった思い出とか色々と口にすると思うのね。
それなのに、何となく恨み節みたいな、忌避してるようなところも垣間見れるの。
あなたに会った時ね、何処か挑戦的だったでしょ?その時に、もしかしたらって。
もう分かるでしょ?」
「浮気?この場合は不倫だね。それで離婚か・・・自尊心が強いから亡くなったことにした、
そう考えれば辻褄が合うかい?」
「推測でしかないけど、そう思う方が自然だと思うの。それでも諦められないのね、だから、
奥様似の私がターゲットになったのね。偶然だとしても、一時の癒しが出来たと思えば、彼には
上出来でしょ?感謝の言葉の一つでも掛けて欲しかったわ、うふっ」
「強制はご法度だよ。まぁ、お互い様か?はははっ」
「うふふっ、やっと終わったかな?あなたへの報告もこれでお終い、それでいいでしょ?」
「そうだね・・・時間は・・・まだ少しあるね、どうしたい?」
「えっ?・・・サワちゃんに悪いでしょ?今夜の主役はサワちゃんなんだもの・・・
でも、ちょこっとはアリかな?」
「はははっ、勃つかな?」
「あれ?同じことを。お役に立てたら嬉しいわ、うふっ」

テーブルを挟んで、体を乗り出したいずみとキスを交わします。
その時、携帯に着信です。

「あれ?・・・まただわ?」
「オーナーだね。出ない訳にはいかないだろ?」
「そうね・・・時間も時間だから、サワちゃんに勃たせてもらってね?あのね、オーナーに
話そうと思っている事があるの。それを今から話して・・・まだ時間があるから、彼が帰って
いたら、お店に行ってもいい?」
「いずみの時間だからね、好きにしたらいいよ」
「うん、ありがとう・・・愛してるわ」


『どうしたの?』

先程と同じように、お決まりの文句のようです。

『帰ったよ。それを連絡しようと思って』
『いいのに。お店は大丈夫なの?』
『この時間だろ?開店休業だよ』
『そうね・・・もう会うこともないわね。オーナーに話そうと思っていたから、ちょうど良かった
かな?』
『話し?ナニかな?』
『彼って又来ることもあるでしょ?』
『来るなとは言えないからね』
『でしょ?それなら・・・また会うこともないとは言えないでしょ?だからね・・・』
『バイト?』
『今夜は冴えてるわね?』
『いつもだよ、違ったかな?あはははっ』
『寂しい?うふっ』
『当然だろ?バイトを辞めたら・・・そりゃ、寂しいに決まってるだろ?』
『三日間も彼に譲ったんだものね?寂しいだけなの?』
『誘ってるのか?あはははっ』
『オーナーに頼まれたのに、こんな結果になって申し訳ないって思ってるのよ。それに、バイトを
辞めるのも心苦しいし・・・埋め合わせしようかなって』
『優しいね、いずみちゃんは』
『だからね、今夜が最後になるでしょ?アレよ、木下さんとのアレは予定通りだから・・・
じゃ、いいかな?その時のお楽しみに取っておく?』
『いずみちゃんの気持ちを大事にしようかな?』
『取っておくってこと?』
『はははっ、寂しいんだろ?早く来いよ。慰めてやるから』
『寂しいのはお互い様でしょ?』
『つべこべ言わないで早く来いよ。今夜は嵌めて欲しいんだろ?』
『うん・・・ローターじゃなくて、いいのね?』
『立派なペニスを堪能させてやるよ。腰を抜かすなよ、あはははっ』
『お店では最後だから・・・いいわ。急いでいくから、待っててね?』
『超特急で!はははっ』


[26] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2024/11/09 (土) 17:38 ID:lRxF4OqQ No.196199



「あなた・・・ごめんね?そういうことだから」
「ライトじゃないってことだね?」
「うん・・・お店では初めてだけど。ホテルでも同じだから、今夜はヘビーに楽しみたいの」
「いいよ。早く行かないと時間が残り少ないぞ」
「あのね、サワちゃんが了解してくれたら、時間の延長をお願いしようかなって。
あなたにも・・・」
「了解だよ。石黒さんにはいずみから連絡する、いいね?」
「うん、お店に行く途中で・・・ごめんね?怒ってないでしょ?」
「はははっ、早く行けよ。オーナーを待たせたら悪いだろ?」

いずみの心情は理解できるとしても、少しナーバスになっているのは、石黒さんと私のベッドイン
が無関係ではないと思います。
ところが、石黒さんとの愛人関係は、いずみが推奨したのですから、何も言えない筈です。
また、義理堅いところもありまから、オーナーの依頼が道半ばならまだしも、端緒で破綻したの
ですから、彼への引け目を感じていると推測しても、間違っているとは思えません。
その二つが混じり合った複雑な心境を解消するために、ベッド以外ではセックスを拒否していた
オーナーに、いずみから誘ったのは自然な流れかもしれません。

立ち上がったいずみは、ベッドに置いていたバッグを抱えて、

「キスしたいのに、できないなんて何て不条理なの?うふっ」
「いいよ、好きなだけ、はははっ」

ドアのところまで来て、

「ごめんね?もうオーナーに気持ちが。嘘よ、いい?・・・”チュッ!”、うふふっ」
「いいのか?いずみルールは?」
「いいの。だって、あの人と”チュッ”ってしたでしょ?その延長だと思えばいいんだもの。
あなただって分らないでしょ?」
「オーナーにはそう説明する?」
「だって、いずみルールだもの。可能な限りでしょ?不可抗力もあるの、それがルールの基本
だもの。オーナーね、それを聞いたら猛ハッスルすること請け合いね。乞うご期待だわ」
「煽るのか?」
「自信を持たせるって言い換えたいかな?」
「そうか、この前のリベンジかい?」
「うん・・・そうかな?そうかも!」
「いずみに掛かった丸裸だね?」
「あれ?おトイレで裸に・・・なれるかな?」
「ほら!・・・」

ドアを開けて、

「・・・おっと!石黒さんに・・・」
「カードキーでしょ?バッグの中で彼女を待ってるわ」
「流石いずみだね。感心するよ」
「そうじゃないと、起業なんてできないんでしょ?うふっ」

捨て台詞とは言えないかもしれませんが、用意周到なところは見習う必要がありそうです。


先程の椅子に戻って、テーブルに置いていた腕時計を見ると、11時になろうとしています。
石黒さんとの約束は11時過ぎなのですから、いずみの交渉力如何では、12時も考えられます。
レストランの閉店時間は午後11時ですから、客を気にすることもなく性行為に臨めるのは、
二人にとっては願ったり叶ったりでしょう。


[27] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2024/11/10 (日) 11:40 ID:kiqzlcSU No.196207



いずみが部屋を出て行って10分程過ぎた頃に、彼女から着信です。


『どうした?』
『お店の近くなのね。サワちゃんね、12時頃に交代って約束してくれたの』
『強制だろ?』
『あなたの名前ってホント偉大だわ。抵抗できないのね、渋々承諾してくれたの。
会ったら、謝っててね?』
『僕が?』
『夫婦は一心同体でしょ?時間がないから・・・このままね?』

携帯を切らずに、そのままと言っているのです。
ライブ中継なのでしょうが、早晩見破られるのは必至ですから、何処迄聴かせるかいずみも
苦労しそうです。

小さく聞こえる足音のトーンが、変わります。

『あれ?オーナーは?』
『お待ちかねよ』
『おトイレ?』
『誰もいないと言っても、見られない所がいいでしょ?』
『ユカちゃんは?』
『いいの?この間の3Pの続き?』
『時間があれば・・・でも、おトイレでは無理ね?』
『いずみちゃんが終わるまでに、オーナーが射精するまでかな?できるだけ片付けを済ませて
おくわ。でも、時間は?11時は過ぎてるのよ』
『お仕事は済ませたから、今夜は特別ね?』
『スペシャル?おスぺ?』
『今夜は・・・本番かな?うふっ。アレね、テコキもあるかも?』
『二回戦も?時間は大丈夫なの?』
『12時まで。ユカちゃんとも楽しめそうね?・・・”チュッ!”・・・後でね?』

先程と同じような足音が、ほんの少し続きます。
小さく雑音が聞こえて直ぐに、”コン、コン”と小さくノック音がして、ドアの開く音が聞こえ
ます。

『お待たせ!・・・チュッ!チュ〜ッ!・・・うぐぐっ、遅くなってごめんね?寂しかった?』
『見ろよ、いきり勃ってるだろ?』
『うふふっ、指じゃない?おちんちんは?おじぎしたままでしょ?』
『いずみちゃんのフェラ待ち。待ち過ぎて寂しいって、チンコが怒ってるぞ、あはははっ』
『早過ぎない?パンツだけって。可笑しいわ、うふっ・・・うんんんっ、チュッ!チュッ〜!
・・・会いたかった?』
『したいんだろ?』
『うん・・・うぐぐぐっ、うぐっ・・・お洋服は?』
『カウンターの奧に椅子があるだろ?』
『そこで?分かったわ。待っててね?・・・チュッ!・・・もう!まだでしょ?』

先程と同じ様なドアの開閉音、それに続いて足音が小さく聞こえます。

”ガサ”と聞こえて直ぐに、とても小さな声で、

『切るわね、後で・・・』


[28] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2024/11/10 (日) 16:24 ID:kiqzlcSU No.196214



携帯が切れた後は、空気が淀んだように感じられ、望まない静寂が訪れます。

携帯を持って、ベッドに移動します。
少なくとも、20〜30分は静寂と向き合わなければなりません。
その間に、石黒さんに掛けてもいいのですが、見えない時間には到底勝てそうにありません。
ただただ、空調の流れを聞きながら、待つしかない様です。

ふと、先程の疑問が頭をもたげてきます。
疑似夫婦、夫婦ごっこと認識していたようですが、彼の名前は一度も口にしていません。
名刺を見せると言ったのですから、隠すつもりもない事は明白です。
それなのに、その理由は見えないどころか、携帯でのオーナーとのやり取りでも、二人共、口に
しないのは、不思議な気持です。
オーナーと口裏を合わせているのなら、それはそれで理解出来るのですが、その理由が分かりま
せん。
終わったことですから、目くじらを立てて追及するつもりも毛頭ありませんし、いずみもそれは
分っていると思います。
私が疑問に思ってると分っているでしょうが、時間の経過と共に、その思いが薄れていくことは、
間違いありません。

寝転んでいると、いつの間にか意識が薄れていきます。
どれ程の時間が経ったのか分からないのですが、携帯の着信音で意識が戻って来ます。
傍に置いていた携帯を手に取ると、11時3O分を指しています。
いずみなのは分かっているのですから、一気に目が覚めてきます。


『・・・うふふっ、良かったわ。頑張ってくれて、ありがとう』
『見られるのは気になるからね』
『木下さん?』
『まあね、いずみちゃんとヤレるのは嬉しいけど、今の方が断然頑張れるよ』
『こんなにも違うなんて、感動ものよ、うふっ・・・ねぇ、うふふっ・・・』
『誘ってる?』
『どうかな?・・・どう?』
『ヤルか?』
『うん・・・どうするの?』

数秒でしょうか、何も聞こえません。

『脱げよ・・・バンザイだろ?』
『さっきはいいって言ったのに・・・ここで?・・・うふふっ、ありがとう。二人共全裸、
いいのね?』
『気にするなよ・・・そうだな、手をついて・・・脚を開けよ』
『うん・・・ねぇ、キスして・・・グチュ!うぐぐっ・・・あう!いいわ!いいの!いいの!
凄い!・・・』

”ペチャペチャ”と愛液の摩擦音が小さく聞こえて直ぐに、”ドン!ドン!”と鈍い音が
リズミカルに聞こえます。
オーナーの声も息遣いも聞こえないのですから、息を止める程の集中力で腰を振っている様子が、
手に取るように分かります。

『うぐっ?・・・はははっ、相手が違うだろ?』
『うん・・・いずみちゃん・・・うぐっ、チュバー、チュチュチュー、うぐぐっ・・・』

ユカさんが傍に居たようです。
二人の話し声以外は何も聞こえなかった上に、それに集中していたため、彼女の存在を一瞬忘れて
いました。


[29] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2024/11/10 (日) 21:28 ID:kiqzlcSU No.196220



『ユカ!頭を抱いて・・・そうだ!動かない様に、いいか?・・・どうだ!イキそうか?』

その間も、ピストンの鈍い音は途切れることなく、続いています。

『あう!ううううっ!・・・凄いの!イキそう・・・あうあうあわわっわ・・・うんんん〜っ、
イクー!!』

一際大きな喘ぎ声を発して、逝ったようです。

『凄いわ、強く押さえないと・・・凄い痙攣、止まらないんだもの。笑ってしまうわ』
『二人がかりだからな。腰の動きを止めるのも大変だよ、あはははっ・・・落ち着いたら、
お掃除フェラだろ?・・・おっと!重いね、支えるのも一苦労だよ』

少し遅れて、

『・・・あうううっ・・・ナニが重いの?』
『気が付いた?・・・チュッ、チュッ〜!うふふっ』
『一瞬だけど、飛んでたかな?』
『失神?』
『うん・・・なにも聞こえなかったもの・・・えっ?あっ!?ごめんね?』

床に何かが当たるような音がして、

『ジュル・・・あれ?出さなかったの?』
『希望を叶えただろ?次は僕の番だろ?』
『えっ?・・・そんな約束した?ほんとに?』
『逝きまくってたから覚えてないんだろ?』
『うん・・・おトイレで?』
『もう一度聞くけど、何度も欲しいって言っただろ?』
『ほんとに?覚えてないかな?でも、凄かった、オーナーとは思えない、信じられない思いよ』
『これからマンションに行こうか?』
『それは・・・行きたいけど、時間が取れないの。でも・・・』
『したいだろ?』
『うん・・・どうしようかな?』
『体に聞こうか?・・・ほら!・・・気持ちいいだろ?・・・ユカ!回って来いよ・・・チュバ!、
二人で責めるからな』
『あああっ、あうあぅ・・・チュバ!チュバ!もっともっと・・・そこ!そこ!じらさないで!』
『じゃ、決まりだね?』
『今して、お願い!・・・ねぇ、挿れて!』
『マンションだろ?・・・ユカ!アナルに指を・・・そうだ!・・どうだ!同時責めは?』
『ダメ〜!ダメ!ダメ!・・・挿れて!!・・・』
『そうだな、頭が真っ白になってるだろ?聞えるか?』
『ん?・・・挿れて!お願い!・・・愛してるの、ほんとに愛してるから・・・』
『チンポ?あはははっ』
『チンポ?・・・そうよ、マンコに・・・いずみって言って!いずみのマンコって!』
『いずみ!マンションに決まりだな、いいな?』
『・・・ダメなの?』
『ベッドが良いんだろ?』
『うん・・・ベッドでしたい・・・でも・・・』
『口からチンポが出るくらい突いてやるから。嬉しいだろ?』
『うん・・・分かった・・・愛してね?』
『可愛いわ。ほんとのいずみちゃんを見たかな?』
『ねぇ、私達って仲良しでしょ?だからね、いずみって。ユカでいい?』
『嬉しいわ・・・いずみ、これでいい?』
『うふふっ、ユカも愛してね?』
『もういいだろ?早く服を着ろよ』
『うん・・・オーナーは早いんだもの。私はこれからだから、着せて欲しいな?ダメ?』
『はははっ、ブラウスとパンツだけでいいだろ?下着はバッグに・・・あはははっ、ノーパン、
ノーブラ、ブラブラさせて行こうか?』
『イヤらしいのね?それがいいのかも?』
『狭いから自分で着ろよ。カウンターから出て待ってるから。ユカも出ろよ』
『寂しいな・・・待っててね?』


[30] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2024/11/16 (土) 11:52 ID:vMmUPaEE No.196355



ガサゴソとかなり大きな音が聞こえて、か細い声で、

『5分後に電話して、お願い!』


テーブルに戻って、腕時計を着けます。
11時45分を回っていますから、15分程の性行為だったようです。

待つのはほんとに長く感じられます。
いずみの要請は理解できますから、それに従わないと石黒さんとの約束が果たせなくなります。
いずみが蒔いた種ですから、自分で解決させるのが本意ですか、この場合は致し方ありません。

しっかり5分後に掛けます。


『はい・・・えっ?ホントに?少し待ってくれる?』

少しとは言えない時間が過ぎていきます。
揉めているのかもしれませんが、自業自得だと小さくない怒りが込み上げてきます。

携帯はそのままですが、全く何も聞こえません。
少し経って、聞こえる足音が少し変わります。
もしかしたら、店に戻ったのかもしれません。

小さな雑音が聞こえて直ぐ、何かにぶつかったかのような音が聞こえます。

『いいわ・・・テーブルね?椅子を下ろしてくれる?早く!』
『いずみちゃん、誤解だよ。気を悪くしたのなら謝るから・・・』
『私も悪いんだから・・・早く済ませてくれない?』
『分かったよ。無理を言って済まなかった、だから・・・』
『スッキリしたいんでしょ?早く脱いで!・・・私も脱ぐから』
『ユカ!止めてくれないか・・・いずみちゃん、脱がなくていいから』
『オトコらしくないわね。ヤリたいって言ったでしょ?』
『いずみちゃん、もういいんじゃない?脱がなくても。一杯楽しんだでしょ?』
『わたし?そうかもしれないけど、オーナーは不満タラタラ、私の事なんて何も気にしない、
ただヤリたいだけのスケベ男じゃない?』
『男ってそういうものなの。いずみちゃんは分かっているのに、こじらせるんだもの。お仕事の
ことね、疑ったオーナーがほんとに悪いと思うわ。さっきの電話がなければ、マンションに
行ったでしょ?』
『その気だったのよ。私の気持ちが分からないなんて、ほんとしらけるわ。疑うにも程がある
でしょ?』
『僕が悪かったから、機嫌を直してくれないか?』
『心配なんでしょ?』
『戸田さん?』
『図星ね?私も非があるからお互い様でしょ?だから、何も話さないわ。今夜の事も何も・・・
これでいいでしょ?』
『有難い。じゃ、仲直りだね?』
『そうね。でも、木下さんとの乱交以外はもう会えないから。分かってるでしょ?』
『寂しいけど、了解だよ。アレだね、どうして名前を言わないんだい?』
『これもお互いね。オーナーはどうしてなの?』
『名前を口にしたら変人になりそうだから。いずみちゃんは?』
『同じよ。それが分かっていて紹介するなんて、オーナーも同じ穴の狢じゃない?』
『はははっ、言えてる。まぁ、セックスを認めてくれるんだから、彼よりは大きく許容されてる
と思ってるよ』
『思い過ぎない様にね?』
『今夜が教訓かな?』
『そうよ、胸に刻まないと。いいわね?』
『いずみちゃん、時間は?』
『ほんとだ!ユカちゃん、ありがとね。ユカって呼べる時が早く来ればいいのにね』
『うん・・・その時は・・・楽しみだわ』
『じゃ、今夜は楽しかったわ、うふっ』


[31] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2024/11/16 (土) 13:06 ID:vMmUPaEE No.196357



暫くと言っても、1〜2分でしょうか、足音が鮮明に聞こえます。

『怒ってる?』
『はははっ、驚くだろ?前戯が必要じゃないか?』
『ホントに?まことにすみませんでした、うふっ』
『待たせ過ぎだろ?石黒さんに早く連絡しろよ』
『あなたも・・・ごめんね?』
『言い訳は後で聞くから、石黒さんだろ?』
『はい!仰せのままに、うふっ』
『はははっ、切るぞ!』
『はい!直ぐ掛けます。あのね、サワちゃんと入れ替わったら、直ぐに掛けるから』
『時間がないだろ?要約が試されるぞ、いいね?』
『はい!頑張ります、うふっ』

全く堪えていると思える節は感じられません。
それがいずみであり、いずみなのですが、お灸も必要な時があると分からせなければ、また同じ
轍を踏まないとも限りません。

腕時計に目をやると、12時に差し掛かっています。
12時の交代は難しいとしても、何とか約束を守れそうです。
それでも、石黒さんがこちらに来た時の心情を考えれば、明るく迎えるのは不謹慎かもしれません。

いずみから掛かってきたのは、15分が経過した頃です。
携帯は、スピーカーにしてテーブルに置きます。
特に意味はないのですが、今から考えれば、一連の出来事に疲れたのがその理由だと言えそうです。
私が気付かなければ、少なくとも今夜は平常心で石黒さんと接していただろう時間を、いずみに
奪われたのですから、内心穏やかではありません。
ただ、いずみが性行為をしていた事実を咎めるつもりも追及することもないのですが、その過程に
問題があることは明白です。
そこは指摘しますが、当然の如く、いずみは分かっているのです。
どのように言い逃れるのか、ある意味、楽しみでもありますが、彼女が内実を白状するのかも
注視したいと思います。


『遅くなってごめんなさい。サワちゃんと交代しました。10分か15分くらいで、あなたのところに
・・・』
『少し時間はあるか・・・いずみ!いい加減にしろよ!』

一瞬、時が止まったような空気感が伝わって来ます。

『・・・あなた・・・ホントにごめんなさい。言い訳はしません、全て私が悪いの』
『反省してるのか?』
『はい・・・』

か細い声ですが、まだ余裕があるようです。

『聞こうか?』


[32] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2024/11/16 (土) 17:40 ID:vMmUPaEE No.196362



『はい・・・オーナーのところに行った事・・・サワちゃんに時間の変更をお願いした事
・・・オーナーのマンションに行こうとした事、全て私が悪いの』
『善悪の話じゃないだろ?欲望に負けたその気持ちが一番の原因じゃないか?』
『うん・・・』
『ぐうの音も出ないのか?』
『何も言えないもの。あなたに指摘されたそれが全てだもの、後悔しかないの。あなたに注意
されなかったから、調子に乗ってしまって。バカな私・・・ほんとに、ごめんなさい』
『誰かに示唆されたとは思えないが、オーナーと事前に決めていた、または、そうしようと
思っていた、どちらか。それ以外に理由があるのなら、話さないか?』
『オーナーとは何も決めていなかった、ほんとにほんとだから。でもね、彼を紹介した手前、
本音が言えないというか、私に察して欲しいような、そんな口振りだったの』
『具体的に話せよ』
『うん・・・私達が名付けたでしょ?ライトセックスって。諦められない様な雰囲気なの。
だからね、早く終わって戻って来てって。それが示唆だと言えなくもないかな?』
『かな?・・・示唆じゃないだろ?分からないのか?』
『ごめんなさい・・・誤魔化そうとか、そういうんじゃないけど、示唆ってあなたが言ったから、
そうかなって。出来たらそうして欲しいみたいな、曖昧だったけど、私にはそう思えたの』
『仮にだよ、戸田さんの前でこの件の説明を求められたら、同じ意見になると思うか?』
『・・・違うかな?オーナーは否定すると思うし、私はそうだって。きっと・・・分からない
けど、なすり合いになるかも?』
『”かも”とか、曖昧な返事はしない様に、いいか?』
『ごめんなさい。でも、ほんとに分からないの、そうなってみないと』
『じゃ、その場を設けてもらおうか?』
『えっ?・・・それは・・・戸田さんに話さないって、携帯で聞こえていたでしょ?』
『決めるのは戸田、僕だろ?いずみに任せているが、判断できないのなら、戸田が出るしかない
だろ?』
『でも・・・黒子でしょ?いいの?表に出て』
『分からないのか?曖昧な口調、優柔不断な態度、そんなことで何ができると言うんだ。
胸に手を当ててよく考えろ!』
『・・・そうだった、やるべきことはハッキリ分かっているのに、欲望に負けてしまって。
今この時からシッカリ判断できるようにします。謝って済ことじゃないのは分かりました』
『見えないだろ?』
『オーナーとは携帯で話した通り、今夜が最後。あなたに指摘されることを考えてじゃないの。
でも、木下さんとの乱交は約束通り。オーナーとのことはこれでいいでしょ?』
『正しい判断だが、減点が大き過ぎるだろ?どう説明するんだ』
『マンションに行くことね?・・・朦朧としていたから何を話したのか、ほんとに覚えていな
くて、オーナーが言ったことがそうだろうって。あっ?これはおトイレでの時ね?
もっとしたいって言ったのならそうだろうと思えて。興奮してたら言っていてもおかしくないもの。
それは分かるでしょ?』
『確認することもない、容認してる行為だからね。それじゃないだろ?』
『マンションの事は、話しの流れでそうなったかもしれないけど、違うわ、分かっていたの、
行けないことは。だから、その話しが出た時からタイミングを計っていたというか、急ブレーキ
なら怪我するかもしれないでしょ?流れの中に身を置いて、そっと方向を変える、それしかない
と思ったの』
『そうは聞こえなかったが、上手く誘導した?そう理解しようか?』
『うん・・・ありがとう。真実しか話していないのよ、それは分かってくれるでしょ?』


[33] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2024/11/17 (日) 12:38 ID:3ZgMVBeY No.196375



見えない事実を問い質します。

『そうだね。少し戻ろうか?』
『うん・・・気になる事でもあるの?』
『僕に聴かせたのは、カウンターの中だろ?』
『うん・・・ユカちゃんはカウンターの外に居たの、途中から入って来たけど。説明しなくて
ごめんなさい』
『まぁ、そうだろうとは思ったが。そこは狭いのか?』
『うん・・・あっ?オーナーが自主的に外に出たことなの?』
『いずみは何も示唆しなかっただろ?彼が出ないと、携帯には近付けないんだろ?』
『ユカちゃんと話してる時に、オーナーはお洋服を着たのね。ほんと早くて、マンションに
行って早くヤリたいって感じだったの。だって二回目は射精しなかったんだもの。
あのね、ユカちゃんに話し掛けたのは、じらすためだったの。ちょこっと不安だったけど、
上手くいって良かったわ』
『男の心理が読めてる?まぁ、いずみなら手車に乗せられるかな?はははっ』
『うふふっ、良かった!もう怒ってない?』
『どうかな?はははっ』
『あっ?あなたを乗せてるって思ってない?』
『乗せられる方が気が楽だろうね』
『ほんとだ!・・・あれ?サワちゃんは乗せてないから、あなたが乗せたのかも?うふっ』
『いずみマジックかい?』
『だって、サワちゃんって、あなたには逆らえないでしょ?』
『ん?・・・ちょっと待ってくれるか?』


いずみの返事を聞かずに、物音のするドアに向かいます。
ドアノブに手を掛けようとした時、そっとドアが開いて、

「あっ?!分かった?」

笑顔の石黒さんが顔を覗かせます。

「ドアノブをガチャガチャさせてただろ?」
「だって、カードキーと相性が悪いんじゃない?何度目かよ、解錠できたのは」
「はははっ、タッチさせる位置だろ?」
「うん、慣れてないかも?・・・」

部屋に入るなり抱き付いてきます。

「・・・チュッ!・・・・うふふっ、久し振りね。会えて良かったわ」
「いずみが無理を言って悪かったね」
「いいの。小田さんに会えたんだもの」

私の左腕に両手を廻した石黒さんを、テーブルの傍まで連れて来ます。

「謝ったかい?」
「軽く・・・あれって謝罪なの?小田さんを出されたら仕方ないもの」
「だよね・・・聞こえたか?」

”えっ?”と呟いた石黒さんは、テーブルに置いていた携帯に気付いたようです。
彼女が口を開く前に、


『ごめんね、深く反省してるから・・・聞こえてる?』


[34] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2024/11/17 (日) 16:52 ID:3ZgMVBeY No.196379



私の耳元で、

「いずみさんと話してたの?」
「石黒さんが・・・」
「サワでしょ?うふっ」
「サワちゃんだったね。サワちゃんが来る迄の予定だったんだが、長引いてしまったね」

少し大きな声で、

「”だったね”って言わないで!寂しいでしょ?」


『待たされる私も寂しくなるわよ』

テーブルに両手をついて、携帯に顔を近付けた石黒さんが、

『聞き耳を立てていたのですか?』
『それしかないでしょ?他に何もしていないのよ』
『お話は終わりました?』
『そうね・・・あなた、サワちゃんが来たことだし、どうする?』
『もう一度、心から謝罪だろ?』
『うん・・・ほんとにごめんなさい。1時間も削ってしまった事、謝っても謝り切れないけど、
許してくれる?』
『どうしようかな?・・・いずみさんから何か提案でもないですか?』
『埋め合わせ?欲しいものがあれば・・・何でもって言えないけど・・・』
『分かりました。考えてからお返事するでいいですか?』
『いいわよ。今夜ね、色々とあったのね。原因は私にあるから・・・』
『いずみ!それじゃ分からないだろ?』
『うん・・・性欲・・・ちょこっと恥ずかしいけど、欲望に負けてしまって、それで遅くなったの』
『おかしな人と?』
『それはないの。オーナーと・・・ごめんね、自分勝手な事情で、サワちゃんの大事な時間を
使ってしまって。ほんとにごめんなさい』
『その人じゃなくて良かったかな?まだブレーキが掛けられるんだもの、大丈夫だわ』
『うん・・・あなた、話してたらもっと時間を削ってしまうでしょ?』
『そうだね・・・これで許してくれるかな?』
『はい!小田さんに頼まれたら断る事なんてできないもの。いずみさん、利用するのも考えモノ
ですね?』
『そうね、軽すぎた?』
『いずみさんらしくないもの。もっと考えるべきだと・・・偉そうなことを言ってすみません』
『いいのよ、今夜は・・・』
『明日からは・・・手加減をお願いします』
『そうね・・・朝食は主人と、私はタクシーで幼稚園経由で出社するから、始業時間まで二人で
過ごしたら?』
『ほんとに?いいんですか?』
『できる範囲の一つ目かな?今はこれしか言えないけど、分かってね?』
『はい、ありがとうございます』
『じゃ、主人をよろしくね。お休みなさい』
『はい、お休みなさい』


椅子に坐っていた私の手を取った石黒さんは、

「いずみさんって、しおらしいところもあるんですね?」
「はははっ、それがいずみだよ」
「どういうこと?」
「変幻自在だと認識していないと、足をすくわれるよ」
「変り身が早い・・・そう言えば、そうかもしれないわ。お話ししてても、他の事を考えている
って思える時も。お話の流れなんて関係ないみたいに、急に思い付きを話すこともあるの」
「だろ?真剣に取り合わない方がいいかもしれないね、はははっ」
「それでも、それでもね、”そんなのでいいの?”って思える様なアイデアを纏め上げる手腕は、
驚きでしかないわ」
「摩訶不思議がお似合いかな?」
「ほんとだ!でも、明日からが心配かな?」
「手厳しい?だったら僕の名前を出せばいいんじゃないか?」
「そんなことできないわ。私がさっき言ったのよ、忘れてるなんて考えられないもの」
「執念深くはないから、それは心配しなくていいよ。明日になったら忘却の彼方だよ、大丈夫、
請け合うよ」
「それならいいけど。難しく話すって、いずみさんも言ってましたよ。それって、いずみさん
だけかと思っていたのに、私にも。何だか嬉しいかな?」
「馴染んできた証拠かもしれないね」
「うん、きっとそうよ。ホントに嬉しいわ」


[35] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2024/11/17 (日) 21:17 ID:3ZgMVBeY No.196385



本心なのかと思えるのですが、疑う意味も見い出せない程の距離感を感じています。
マリアさんの差し金だと推測しても、究極的には、いずみを守ることがミッションなのは、間違い
ありません。
当然、関係者としての私も擁護されるに値すると判断されていることも、十二分に分かっています。
私も含めた関係者がいずみを守る、言い換えるのなら、警護の意味合いかもしれません。
少し大袈裟な表現になりましたが、それだけ価値があると認められている証拠とも取れます。

「今夜の事は僕からも謝らないといけない。僕をダシに使うのを許したからね、申し訳ない。
いずみに代わって何なりと要望を聞こうかな?」
「いいの?でも、それはいずみさんにお願いしないと、筋が通らないわ。
小田さんとは普通に接して、愛人としての、何と言えばいいのかな、お勤め?古い?」
「はははっ、難しく考えなくていいんだよ。今まで通り・・・ん?今夜は違ったが、今からそう
すればいいんじゃないか?」
「うん・・・では、シャワーから今夜が始まります。早く行こうよ!」

既に日付は変わっているのですから、悠長には構えておれません。
明日の午後の出社予定なのですが、この様子では一日休むことになりそうです。

月一回と決めてはいるのですが、私の仕事の都合とか、今夜のようにいずみの横槍などで、
約束を果たせてはいません。

”今まで通り”と私が口にした流れかもしれませんが、ほんとに普通の性行為、特筆できるような
前戯も体位もありません。
性行為だけをクローズアップすれば、長年生活を共にした夫婦の営みのように思えてきます。

「不思議なんだが、サワちゃんが妻のように感じられるよ」
「えっ?ほんとに?嬉しいなぁ・・・でもそれって、いずみさんが他の男性と関係を持っいる
ことに起因するんじゃない?」
「かもしれないが、穏やかな気持で事に臨めるのは、精神衛生上には非常に好ましいことだよ」
「事に臨むって言う?セックスをするって言えないの?この石頭が!うふふっ」

仰向けに寝ている私の左側で、隙間もない程体を密着させている石黒さんが、こぶしを振りかざ
して、私の頭に下ろしてきます。
いずみの前では、それなりの緊張感を持っているようですが、私と二人の時は、かなりリラックス
していることの現われでしょう。

「はははっ、痛くも何もないね。手加減し過ぎだろ?」
「痛く感じるか、そうじゃないかは、小田さんの受け取り方なの。私が小田さんの許容範囲なのか
知る手がかりかな?うふっ」
「試した?」
「うん・・・試しました」
「で?」
「必要なかったかな?だって、私を妻って・・・信じていいの?」
「サワちゃんの気持ち次第じゃないか?はははっ」
「そういうことね?それなら永遠の妻って言えそうよ」
「有難いが・・・」
「いずみさんでしょ?」
「代わりはいないからね。唯一無二の存在だよ」
「分かるわ、ほんとに尊敬してるの。でも、いずみさんって普通じゃないわ。見た目と中身が
違うって言うでしょ?清楚で・・・どう言えばいいのかな?優しそうかな?それね?お話ししたら
真逆なの。驚きを通り過ぎて笑いそうになるのよ」
「大袈裟だね?まぁ、間違ってるとは言えないが、あれほどギャップが大きいと不信感を持たれる
こともあるようだね」
「分かるなぁ、”ほんと?”って・・・そうだわ、今夜のお相手の男性も、きっとそのギャップに
驚いたと思うわ」
「携帯で話してたね。聞いてるのかい?」


[36] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2024/11/23 (土) 11:37 ID:kyJyjI0c No.196525



「”ライトセックスの代わりにはならない”って、嘆いていたの。”オーナーの紹介だから仕方
ないけど、今夜で終りにしたい”って」
「計画的には見えなかったが。まぁ、僕の登場がそれを助長させたかもしれないね」
「お助けマン?夫婦ごっこって、呆れる発想だわ。そうでしょ?」
「彼は本気だったみたいだよ。”いずみの主人”だと言ったからね」
「笑ってしまうわ。そんな人だとは何となく分かっていたけど」
「ん?・・・何となく?」
「あれ?・・・勇み足?」
「知ってるのか?」
「いずみさんには何も話していないの。相性が良くないとか言ってたし・・・初対面の時からなの。
最初からベッドインのつもりだったみたいなのね、いずみさんは。”出鼻をくじかれた”って、
呆れ顔だったわ」
「オーナーが持ち上げていたんじゃないか?それを真に受けたいずみか、分からないではないね」
「なんか、お人好しのところもあるでしょ?純真無垢みたいな、違うのにそう思わせる仕草とか。
”ほんとにアラフォーなの?”って聞きたくなることもあるでしょ?」
「あるね、大ありだよ。誘っているつもりはないんだろうけど、今夜はオーナーを誘っていた
けどね。そう思わせる雰囲気作りが上手いというか、自然にそれができるんだから、並みの男なら
太刀打ちできないね」
「撃沈?・・・ゲキチンかな?」
「ん?字が違う?」
「そう!・・・激しいオチンチンで、激チン・・・あれ?それならいずみさんが撃沈だわ、うふっ」
「まだ修行が足りないね、はははっ・・・」


他愛ない会話は、ほんとに心が癒されます。
いずみの性事情を一瞬でも忘れられるこの時も、来年にはどうなっているか、この時点ではまだ
分っていません。
石黒さんが口を滑らしたか、意図的かは分からないのですが、いずみが”変な人”と認定した
その男性と石黒さんとの関係性が気になります。

「・・・ところで・・・」
「今夜の男性でしょ?お話しするつもりだったの。さっきも言ったけど、いずみさんには話して
いないから、内緒ね?」
「話さない理由があるのなら、後で聞かせてくれないか?何はともあれ、その男性との関係を
聞きたいね」
「”何はともあれ?”・・・うふふっ、兎に角でいいんじゃない?」

いずみから私の話し方を聞き及んでいる証拠でしょう。
少しの嫌味も含まれている様に受け取れるのは、私のひがみかもしれません。

「まぁ、細かいことは気にしないで、おおらかにお願いしようかな?」
「はい!了解です・・・なんか、天然っていいですね?」
「ん?意味不明だが・・・」
「そうでしょ?ナニを考えてるのか分からなくても、スルーしてもらえるでしょ?」
「損得じゃないだろ?持って生まれた気質だからね、それだけで人間性を測れないよ」
「いずみさんになりたいのに、天然は無理かな?」
「拘っていないか?逸れている、逸らせている、どっちだい?」
「初めて会って直ぐにベッドインの予定がダメになったって、顔色も変えずに、普通通りって
言えばいいかな?いくらなんでも帰って直ぐに話さないでしょ?なんか、天然っていいなって、
そう思わない?」
「はははっ、期待が大きかったんじゃないか?それだけ失望も大きい、分かるじゃないか?」
「それはね。開口一番って私にはできないわ、性行為しか頭にないって思われるでしょ?」
「だから天然なんだよ・・・ん?僕に認識させたい?そうだろ?はははっ」
「気にならないんだもの。なんか、羨ましいかな?」
「それはさておき、いいかな?」


[37] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2024/11/23 (土) 15:31 ID:kyJyjI0c No.196526



「ごめんね?愚痴ぽくなって・・・交際クラブのこと話したことがあるでしょ?」
「マリアさんの依頼とか、その男性なの?」
「あの時は急遽だったでしょ?同じ人じゃないの。いずみさんね、名前を話さないのよ。
私も聞かなかったけど、お話しする時って、”誰誰さんが”とか、それが普通でしょ?」
「天然だから?」
「違うと思うわ。意識して避けてるって感じなの。なんか〜、相性の問題みたいな、そんな感じ
かな?」
「長続きしないと判断したからかもしれないね」
「きっとね。その人ね、私も好きじゃないから、名無しでいい?」
「はははっ、もう会うこともないが、サワちゃんは?」
「困るのね。お断りしてるんだけど、社長も大変だと思うわ」
「続いてるの?」
「1ヶ月は会ってないかな?いずみさんと会うようになってから連絡がないけど、いずみさんと
決裂でしょ?明日からが心配だわ」
「彼の性癖は分からないが、結婚ごっこじゃないだろ?」
「なんか、陰湿かな?」
「名前も話さないのに同じ人物とは、そこからだろ?」
「それなの。いずみさんが会う男性って気になるでしょ?」
「任せてるからね・・・ん?サワちゃんが?」
「私だけ?そうよね、大きな心かしら?」
「はははっ、進めろよ」
「いずみさんが初めて会った夜、その人が自撮り、ツーショットなのね、それを送ってきたの」
「彼から?いずみにしては安易だね、ほんとに?」
「オーナーさん経由なの。安易じゃないでしょ?」
「なるほど。それを?」
「初めて会ったのにツーショットってサービスし過ぎでしょ?」
「優しいからね、はははっ」
「いずみさんを愛してるものね?」
「サワちゃんの前では言えないかな?はははっ」
「なんか、新しい夫婦関係みたいな、それもアリね?」
「愛人?」
「それは私、いずみさんはセフレでしょ?」
「時の流れがそれを決めると思うね。もう暫くはそのままがベストとは言えなくても、ベター
なのは間違いないと思ってるよ」
「私はベストでしょ?」
「疑いの余地もないよ、はははっ」
「それって疑いがあるってことの裏返しでしょ?」
「思い取り様だね。信じて間違いないと思わないと、前向きにはなれないだろ?」
「性善説?」
「今夜のこと?」
「ほんと普通、なんか、いいなって。長く寄り添った夫婦みたいな、とても素敵なセックス
だったわ」
「裏返し?」
「えっ?・・・分かるの?」
「感慨深げだからね。真逆が普通になっている、違うかい?」
「その人とは・・・ほんとスケベなの。口にするのも恥ずかしいけど、話そうかな?うふっ」
「はははっ、話したいんだろ?」
「いずみさんも嫌いな人だもの。共通の嫌悪感を分って欲しいかな?」
「聞こうか?」
「プロフィールは?」


[38] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2024/11/23 (土) 22:04 ID:kyJyjI0c No.196529



「いずみからは何も聞かされていないが、マリアさん経営の交際クラブに登録なら、紳士、
スケベ紳士かな?」
「ほんと大変なのよ。社会的地位がある人って、変態が多いって社長が話してた通りかな?
さっきも言ったけど、名前は省くわね?あのね、中堅製薬会社の部長クラス、あっ?一緒だわ。
小田さんも変態?今までは違うかな?でも次からは変身する?」
「はははっ、その体力も気力もないよ。長年寄り添った夫婦じゃないか?」
「信じていいのね?」
「性善説だよ。後はサワちゃんの心の中だね」
「なんか、それって自己責任なの?」
「全て、いずみも僕も、お互いの行動には全責任を持って対処する。はははっ、大袈裟だね?」
「私も意識して行動します。至らぬところは、注意喚起をお願いします。
真面目過ぎたかしら?」
「それくらいがちょうどいいんだよ。少しでも気を抜くと、荒波に翻弄されること必至だからね」
「荒波って?荒れ狂う性行為ってこと?」
「まぁ、いずみに聞いてみるんだね。的確に返事してくれると思うよ」
「思い出したら聞いてみるわ。どうする?彼の性癖を話す?」
「夫婦ごっこ以外の?」
「いずみさんとの関係以外かな?」
「任せるよ。特に・・・」
「聞きたくもない、でしょ?」
「はははっ、読み易い?」
「うん・・・やっぱり話そうかな?変態って色々あるでしょ?どれだけあるのか分からないけど、
変態の程度を数値化してお答え下さい。いい?」
「無理難題だね。まぁ、聞こうか?」
「あのね、パーツ責めが好きなの。分かるでしょ?乳首とかオマンコね。
どうしてあんなに熱意を示せるのか不思議なの。乳首もオマンコも他の女性と大差ないでしょ?
私が初めての女性なら分からないでもないけど、そう思わない?」
「はははっ、程度ものだろ?全く同じなのはない、じゃ、その違いは?そこがミソなんだよ」
「些細な違いでしょ?」
「マニアにはその違いが大いに興味をそそられる、それが性癖と言われる所以じゃないか?」
「百人十色なの?」
「人それぞれだろ?サワちゃんも経験あるだろ?」
「うん・・・同じ性癖の人はいないかな?微妙に違っているというか、それが個性でしょ?
性癖とは違うように思うけど」
「極端に傾注していなければ、普通の範囲、それを越えれば性癖、それ以上なら変態、こういう
図式だと思うね」
「小田式分類なの?」
「はははっ、思い付きだよ。実際のところ、そういう分類があるのかも知らないよ」
「じゃ、”小田式性行動の思い付き分類”、これなら絵にならない?」
「ここだけにしてくれないか?いずみに聞かれたらバカにされそうだからね」
「なんか、あの人って性癖はとっくに飛び越えていると思うわ。もう立派な変態よ」
「その度合い?数値化?」
「難しいかな?・・・乳首は弄ぶって感じなの。オマンコはね、クスコ、知ってるでしょ?
小田さんなんだもの」
「僕も変態の領域?差し詰めサワちゃんは予備軍かな?」
「性癖と変態の間ってこと?理解できないかな?うふっ」
「あれだよ、変態の相手をしているのなら、予備軍と言われても仕方ないだろ?」
「それじゃ、いずみさんは淫乱ってことね?」
「確定的変態ならね?・・・ん?僕か?」
「あの人とは分れたし、小田さんは・・・私と同じ予備軍じゃない?」
「はははっ、同じ土俵なら安心して相手ができるね」
「なんか、お似合いだと思わない?」
「心穏やかな時が過ごせるから、そうかもしれないね」
「相思相愛かな?いずみさんには聞かせられない秘め事かしら?」
「サワちゃんと二人の時はね。さてと、続けるか眠るか、どうする?」
「変態のこと?」
「クスコから派生しただろ?」
「もういいかな?小田さんは分かってると思うから。でもね、変態の人を共有したなんて、口が
裂けても言えないわ。いずみさんには話さないでね?」
「サワちゃんが変態の相手をしたこと、これからもあるかもしれないこと、聞かなかったことに
するよ。いつも可愛いサワちゃんであって欲しいからね」
「なんか、嬉しいかな?可愛いサワちゃんは、いずみさんに話して欲しいかな?」
「はははっ、とっくに知ってるよ。いずみも可愛いと言ってるから、売り込む必要もないよ」
「私は二人の愛人なんだもの。なんか、意識して損しちゃったかな?うふっ」

仮に、いずみがその男性とベッドを共にしていたら、変態の嵐に遭ったかもしれないのですから、
早期に断わりの判断をしたのは、賢明だったと思います。
いずみの弁を信じれば、私の存在は必要なかったことになりますが、大きなキッカケになった
ことは、ほぼ間違いないと思っています。


[39] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2024/11/24 (日) 15:07 ID:w0nkkFsM No.196546



1ヶ月前のいずみと同じように、ベッドの移動も、それを示唆することもなく、私より先に
眠ってしまいます。
二人共、特に意識しているとは思えないのですが、私をオアシスとして活用しているように
感じています。
いずみの激務は石黒さんから聞き及んでいますし、公私共にいずみをサポートする石黒さんも、
想像以上のプレッシャーに休まることのない日々を過ごしていると推測できますから、
微力ながら私が存在するそれだけで役に立つとすれば、これ程嬉しいことはありません。
また、側面支援の一助にもなるのですから、当面はオアシスとしての立ち位置を堅持しつつ、
推移を見守りたいと思います。


いずみが譲歩してくれたのですから、ホテルのレストランで朝食を摂ります。

「なんか、初めてかも?こんなに落ち着いて食事できるなんて、夢みたいだわ」
「大袈裟でもないかな?」
「毎朝って戦争だもの。いずみさんが朝帰りの時なんて、分刻みなのよ。もう”死ぬ〜!”って
感じ。いずみさんは”イク〜!”でしょ?雲泥の差、月とスッポン、提灯と釣り鐘、まだあった
かな?」
「はははっ、ほんとご苦労様だね。いずみも”死ぬ〜!”って喘いだかもしれないから、
同音異語だね?」
「あれ?・・・使い方が変かな?でも、そうだもの。全然意味が違うでしょ?」
「快楽と地獄程の差かもしれないね」
「ほんとだわ。地獄は大袈裟かな?苦痛なら許されるでしょ?それを味わったんだもの、小田さん
との快楽は批判されないでしょ?」
「胸を張って・・・まぁ、そこまでは言えないが、正当な権利かな?はははっ」


午後帰社と決めていたのですが、拍子抜けしたとでも言えばいいかもしれません。
1ヶ月前は午後から会議があったのですから、拘束される理由も明白でした。
今回は、私の意思で行動を決めることが出来るのですから、何とも緩く自分に甘い決断かも
しれません。と言っても、仕事から逸脱するのではありませんが、自分を納得させるには
材料不足かもしれません。

思い立ったらとか言いますが、発注先の会社に出向くことは、何ら問題にはなりません。
立場上、頻繁に訪問する意味も理由もありませんが、慣れ親しんだ会社ですから、歓迎して
くれることは、考えるまでもありません。


石黒さんとは、8時にレストランの前で別れます。
その会社の社長には、1時間後、9時過ぎに最寄りのJRの駅に着くことを連絡します。
約束もしていなかったのですから、その駅から会社までは、タクシーを利用する旨を伝えます。


「久し振りですね?」

通された部屋は相も変わらず散らかった状態ですから、忙しさの程度が分かるというものです。

「そうだね・・・どう?進捗状況は?」

担当者から報告を受けているのですから、実情は理解しています。

「分かってるんでしょ?」
「はははっ、実情視察じゃないから、気にしない様に」
「それじゃ・・・あっ?アレですか?」

”ん?”と一呼吸置いてしまいます。
それでも、知らない振りは見せません。

「次の?まだ見積段階だろ?」
「違いますよ。聞いていないんですか?」
「ん?・・・誰からも報告は受けていないが・・・何かな?」


[40] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2024/11/24 (日) 18:11 ID:w0nkkFsM No.196549



私の関知しないところで話しが進んでいるとは到底思えないのですが、そうであるのなら、
社長から間違いなく私に確認の連絡が入る筈ですから、全く何のことか見当もつきません。

「恍けてるんじゃ?」
「はははっ、そう見えるかな?」
「違うんですか?・・・内緒だったとしたら、参ったなぁ〜」
「誰なんだ?その内緒話は?」
「僕から聞いたと話さないで下さいね?」
「身近な人のようだが・・・」
「でも、僕しかいないから、参ったな、バレバレじゃないですか?」
「話さなければいいだろ?約束は守るから聞かせろよ」
「それなら・・・いずみさんなんです」
「いずみ?・・・理解できない展開だね」

どう考えても、繋がりがあるようには思えないのです。

「驚きましたよ。部品の加工の問い合わせだったのですけど、どういった装置に使用するかは、
話せないと言ってましたが」
「そうか・・・いずみが東京の会社で働いていることは、話したかな?」
「それとなく・・・地元の会社とも繋がりがあるとは言ってましたね」
「いつかは分かるとは思っていたが、僕の口からじゃないところが驚きだね」
「いずみさんらしいですね。仕事も詳しくは教えてくれなかったのですが、スケッチ程度の
図面で、一目瞭然なんです。
機械加工では対応できない代物でしたから、お断りしたんですが、”どうしてできないの?”
の一点張りで、納得してもらうのに、いや、納得したとは思えなかったですね」
「いつのことかな?」
「あれは・・・1ヶ月くらい前でしたか、"明日訪問するから、依頼内容はその時に話す"と、
ビジネスライクって言うんでしょ?いずみさんらしくない、いずみさんだとは思えない話し方
だったですね」
「顔を合わせても?」
「それなんですよ。電話とは真逆、いつものいずみさんでしたから、一安心だったのですが、
強情だなって、すみません。管理職なら仕方ないですよね」
「役職も?」
「一緒に来た女性が、彼女も美人でしたから、そういう意味では楽しかったのですが、
いずみさんを”課長”と呼んでいましたから」
「そうか・・・で、その図面は?」
「持ち帰りましたよ。マル秘扱いとか言ってましたから、他言無用と念を押されましたね」

10月一日付けで、課長になったのですから、その直ぐ後だったようです。
それにしても、認識の甘さを露呈したエピソードだったようです。
加工技術に精通していると言っても、保有する工作機械がそれに適しているとは限りません。

「勇み足だった様だね。気持ちが早やったとしか思えないが」
「忙しそうでしたよ。打合せ中にも何件か電話がありましたから」
「それで、会社名は?」
「”仕事を発注する時があればその時ね”と、笑顔なんですから、反則ですよ」
「やられたね?はははっ」
「図面はパソコンで表示ですからね、図面右下に社名が。アルファベットの頭文字でしたが、
それだけですから、調べてはいないですね」
「発注はあり得ないだろ?だから、気にもしないかな?」
「再度問い合わせがあるとは思えないですからね。あれから1ヶ月でしょ?どこかの会社に
発注していてもおかしくないですよ」
「形状とか、覚えてるかい?」
「あれですよ、電子部品の部類だと思いますね。機械屋が関与するものじゃないですよ」
「はははっ、一目瞭然かい?」
「そうですね。どうして僕のところにと思いましたよ」
「焦りかも知れないね。まぁ、認識不足の尤もたるモノじゃないか?」
「かもですね?」

私に話さない理由があるとしたら、そのこと自体を忘れているとしか思えません。
ふとしたキッカケで、思い出すかもしれませんから、その時まで胸の内にしまって置くのが
良いようです。





P.S.:性的な内容ではないのですが、仕事のエピソードの一コマとして、挿入しました。


[41] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2024/11/24 (日) 21:54 ID:w0nkkFsM No.196551



秋も深まった11月末に、明日香ちゃんから驚きの連絡があります。
昼休みに掛かってきます。


『どうした?』
『大変よ。ほんと驚いたんだから』
『驚愕?驚天動地?どちらだい?』
『そんなのんきなことを言っていていいの?』
『じゃ、どう言えばいいんだい?』
『もう!いずみちゃんから何か聞いていない?』
『いずみから?聞いていたら驚く事かな?』
『何も知らぬは亭主とか言うでしょ?』
『はははっ、知らぬは亭主ばかりなり、だろ?・・・ん?不貞行為は容認してるだろ?』

デスクで話しているのですから、不貞行為のところは声を抑えます。

『埒が明かないってこういうことを言うのね?よく聞いてね?いずみちゃんが孕んだって。
妊娠したのよ、驚き意外になんて言えばいいの?』
『・・・そうか、そうなる事もある程度は覚悟していたが、まさかだね』
『100%の避妊ってないんでしょ?』
『確率的には・・・その情報は?』
『分かるでしょ?柊さんから』

可能性について危惧してはいたのですが、現実にそうなったのならば、当然、驚愕な事実として
受け止めなければなりません。
いずみも”ないとは言えない”と、腹を括っていたのですから、驚くのもおかしなものです。
数人の男性と関係を持っているのですから、普通に夫婦生活を送っている人達とは、性行為の
回数も、濃密さにおいても、比較すること自体、理に適っていません。
愛欲を貪った結果がそれだと言われれば、返す言葉もありませんが、曖昧な予測が現実として
目の前に姿を現したことは、やはり驚愕でしかありません。

避けられない事実にどう向き合うか、早急に対応策を考える必要があります。
そうは言っても、いずみに確認することが先決です。
幸いなことに、今週の木曜日の夜に、石黒さんとの約束があるのです。
彼女には悪いのですが、急遽時間を譲ってもらわなければなりません。

『出処は、楊さんだね?』
『そう言ってたわ。どうするの?堕すしかないでしょ?』
『そうならね。まず、いずみに確認するのが先決だろ?いずみに連絡はしていないだろ?』
『できないもの。かずちゃんに知らせて、どうするか聞きたかったの』
『木曜日に東京に行く予定があってね、いずみも知っているから、その時に聞くことにするよ』
『分かったわ。聞いたら直ぐに連絡してね?心配だもの』
『まだ分からないんだから、気を揉むのは、結果が分かるまでお預けにしないか?』
『孕んでいたらでしょ?それまでは・・・でも、気になるわ』

明日香ちゃんといずみの関係は、今もって知られていない筈です。
柊さんがいずみを嫌うその理由も分ってはいるのですから、感情の高ぶりからつい口を滑らしたと
推測しても、間違っているとは思いません。
明日香ちゃんから連絡があったのは、その週の火曜日ですが、その前の土〜月曜日の三連休を
利用して、綾見ちゃんに会いに行っていたのですから、その内の数時間は、柊さんとベッドイン
だったと推測できます。
どのような状況で聴取したのかは、何も話さなかった明日香ちゃんですが、それどころでは
なかったのでしょう。
平静を装っていた私ですが、内心は穏やかではなかったのですから、明日香ちゃんが柊さんから
どのように聴取したかまでは気が回らなかったのは、何とも不甲斐ないと小さくない後悔が
頭をもたげます。

明日香ちゃんとの携帯を切って、直ぐに石黒さんに掛けます。
時間は12時50分を回ったところですから、問題はないと判断したのです。


[42] Re: 絆のあとさき 5  :2024/11/27 (水) 22:25 ID:ZDfSMpfU No.196585
小田さん、こんばんは。
約束の1ヶ月になって、やはり楊が動きましたね。
この動きがいずみさんを巻き込んだ事なのか。
「オレの子供を産んでほしい。」と、言われていた。
そうでなければ、小田さんに報告しないで楊に先に報告するのは
おかしいと感じる。(11月の土日、三連休は帰ってきている。?)
いずみさんも妊娠したかもしれないことを感じていたと思う。
このことが次の年の事に繋がるのではないないかと感じました。

それともフェイクか?いずみさんの相手に対する優しさから
これはないように思うが。

寒暖差が激しいこの頃です。私は体調を崩しました。(風邪です)
小田さんは忙しい生活が続いているようですね。
体調に十分気をつけてください。
続報を待っています。


[43] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2024/11/30 (土) 11:32 ID:GJAcknbc No.196635


シンさん、コメントをありがとうございます。

風邪ですか?
気温差の変化が大きい日々が続きますから、体調管理が難しいですね。
お体には十分注意されて、元気な毎日を過ごして下さい。

妊娠騒動には、”なるほど”と納得させられます。
シンさんの推測通りか、読み解いて頂けたらと思います。
その前に小さなひと騒ぎがありますから、妊娠騒動の結末までは、
少しの辛抱?をお願いします。

少し複雑なのですが、新たに登場する人物がキーかもしれません。
ヒントは、女性です。

なんだか大袈裟な展開が待っている様に感じられるかもしれませんが、
期待は裏切られることも多いですから、平常心?でこれからの展開に
お付き合い下さい。


[44] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2024/11/30 (土) 12:59 ID:GJAcknbc No.196637


続きです。




『嬉しい!小田さんから掛かって来るなんて』
『予想外?はははっ・・・ん?名前を出しても・・・いずみは?』
『お仕事なの。お昼ご飯って言えないかな?食堂には行かなくて、私が買ってきたおにぎり
だけなの』
『そうか・・・食事は大事だから、そこはシッカリ管理をお願いするよ』
『なんか、いいなって。私にも・・・あれ?電話って、何かあったの?』
『お願いがあってね。今週の木曜日の予定なんだが・・・』
『えっ?ダメになったの?』
『そうじゃなくて・・・いずみに問い質したいことがあってね。少し時間を譲って欲しんだが』
『あっ?・・・それって、まだ話していなかったのね?忙し過ぎるんだもの、仕方ないかな?』

石黒さんも知っている?いずみから話すとは思えないのですが、妊娠が発覚してから日数が
経っているように聞こえます。
そうであるのなら、何らかの手掛かりを掴んでいるのかもしれません。

『知ってるのかい?』
『だって、私も関係あるんだもの』
『ん?理解が追いつかないが、まぁ、そういうことだから承諾してくれないか?』
『遅くなったけど、いずみさんを叱らないで下さい。私が余計なことを・・・お願いします』
『叱る?意味不明だが、それも考慮して話すからね』
『じゃ、私は待機でいいの?』
『9時過ぎから1時間くらいかな?その後はいつも通りに、そういう予定でお願いするよ』
『はい・・・木曜日?いいのかな?』

独り言のように、聞き取れないほどの小さな声です。

『ん?・・・木曜日がどうとか、何かあるのかい?』
『ううん、何も・・・なんか、何もなければいいのにって』
『まぁ、いいか。このことはいずみには内緒だよ』
『でも、私の時間を譲ったこと・・・あれ?問い質すってこと?』
『まぁ、サワちゃんの時間を削るんだから、身構えるだろうけどね。だから、当日、ギリギリに
連絡するつもりだよ』
『考える時間を与えないってこと?だから、私も知らない振りね?』
『僕の電話で驚いて、渋々いずみに譲る、この構図でいこうか?』
『いいのかな?なんか、悪だくみに加担してるみたい』
『はははっ、善意の行動だよ。じゃ、いいね?』
『はい、分かりました』

半ば不服のようにも聞こえますが、お互いの思うところは一致していると認識しているようです
から、私の要望を聞き入れてくれたのでしょう。
ところが、私には共通の認識ではないところで、何かが独り歩きしているように思えるのです。
石黒さんの曖昧な返答が何故か気になるのは、思い過ごしではないと思うのですが、事実は
その日までお預けです。


[45] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2024/11/30 (土) 16:50 ID:GJAcknbc No.196639



その日、木曜日は定時より早く退社して、空港に向かいます。
午後7時前のフライトですから、定刻通りなら8時には羽田空港に着きます。
いつものホテルまでは30分程ですが、簡単な夕食を摂る時間も考慮すれば、1時間は必要です。

チェックインを済ませて、2階の出発ロビーに上がって行きます。
数ヶ月前にるみさんと会ったこのフロアーには、何故か懐かしく温かな思い出が敷き詰められて
いるように思えるのです。
フランクで人付き合いの良い女性です。
もう会うこなどないと思いながらも、辺りを見渡してしまうのですから、気になる存在なのかと
苦笑してしまいます。
そう言えば、11月の乱交には参加していたと、いずみから聞いた事を思い出します。
木下さんのエロ小説も大詰めにきているのですから、残されたあと一回までには、どのような展開
が待っているのか、いずみも気を揉んでいるようです。
気にする理由も分らないではありません。

今日は11月最終週の木曜日です。
その前の週の水曜日の夜から木曜日の朝まで、休憩もままならない程ハードだったと、少し疲れた
声で、木曜日のおやすみメールの時に報告してくれます。


『驚いたの、分かる?』
『はははっ、唐突だろ?分かる訳ないだろ』
『ほんとだ!プレイもそうなんだけど、ホテルじゃなかったの。驚くでしょ?』
『ん?変更?』
『そうなの、オーナーのマンションで。”やっぱり来ることになったね”って。
これって、オーナーが画策したと思わない?』
『木下さんを説得したのか、元々その予定だったのか、どちらにしても戸田は関与できないね』
『でしょ?先月ね、おトイレでしたでしょ?録音されていなかったけど、オーナーのマンション
の話はしていたの』
『トイレの中はブラックボックスだったね』
『録音は難しかったでしょ?キャミとパンツね、する時はパンツは脱いだけど、バッグは持ち込め
ないもの』
『そう言えば、カウンターの中で全裸になったんだね?』
『うん・・・バックから・・・話さない方がいい?』
『今夜の報告に関係があるとか、話した方がいいと思うのなら、お任せだよ』
『うん・・・その時ね、発射しなかったでしょ?マンションに連れて行ってそこでって思って
いたのね。昨夜からの乱交の時ね、休憩した時に教えてくれたの。次はここだから、先に知りたい
だろって、優しいところもあるんだって思ったの。
だって、木下さんは何も教えてくれないのよ。昨夜会った時に、”今回は、オーナーのマンション
だから”って。”知ってるだろ?”って感じだったの。それで分かったの、昨夜までに私を
オーナーのマンションに連れて来るように指示されていたって』
『それでか、いずみを説得していたのは。結局は当日になっただろ?』
『可笑しいのよ、オーナーって私にね、”マンションの事は知っているよね”って強くアピール
するの。私もバカじゃないから、その意図って分かるでしょ?だから、曖昧だけど合わせるように
話したの。だって、オーナーが可哀想なんだもの。木下さんは知ってか知らずか、”そう”って
感じなんだもの。あっ?このお話は乱交前ね、分かるでしょ?』
『休憩の時と順序が逆だね?』
『うん・・・マンションの事なんだけど、前回のホテルではオーナー、ユカちゃん、私の3人
だったでしょ?今回は、るみさんも参加したから、4人だったの』
『ん?男性はオーナーだけ?』
『女性3人がメインのプレイだったの。オーナーは脇役かな?』
『ソフトプレイ?』
『そう思うでしょ?ハードもハード、一番きつかったけど、最高に興奮したかな?まだ残ってる
感じ』
『そうか、ホテルではできないプレイ?』


[46] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2024/11/30 (土) 20:48 ID:GJAcknbc No.196642



『マンションの見取り図ね、ちょこっと大袈裟だけど。二つのベッドルーム、リビング・ダイニ
ング、それにね、プレイルームの3LDKかな?それがね、プレイルームね、木下さんと初めて会った
あのマンションと同じように、SM用の拘束具、性具などが壁一面に飾られているの。
私ね、経験があるから驚くようなことでもないでしょ?でも、木下さんにね、”あの時は・・・”
って、少し恥じらいながら、抱き付いてキスしたら、”今夜はもっと楽しめるよ”って、
私だけじゃなくるみさん、ユカちゃんにも聞こえるように。
お部屋を一通り案内してくれたのね、オーナーが。それも段取りに入っていたみたいで、木下さん
の顔色を窺いながらって感じだったわ。
あのね、プレイルームで木下さんにキスしたでしょ?私達は手を繋いで、木下さんの意向なのね。
私が中心の作品でしょ?だから、作者と一番近い距離感であって欲しいって。
それって心もってことなの、体の接触密度だけじゃなく、心も重ね合えるようなそんな雰囲気を
保って欲しいなの。分かるような気がするでしょ?』
『大正か昭和初期の小説には、愛人をモデルにした作品が出回っていたようだね。まぁ、木下さん
は望まないだろうけど、その愛人と情死、究極の愛の表現かもしれないが、現実的ではないと
思うね』
『情死って心中と同じなの?違うでしょ?愛し合う男女の自殺だもの。あれ?心中もそうかな?』
『定義付けは機会があればだね。どう思うんだ?』
『気持ちはそうかもよ。ただね、性行為で”シヌ〜!”なの、分かるでしょ?』
『はははっ、いずみは”イク〜!”だろ?今回は、”シヌ〜!”に変換かい?』
『演技ではできるのよ。でも、エクスタシーには勝てないもの。”イク〜!”って喘いでいる
みたいなの。”ダメだね、NGなしのいずみちゃんでもNGがあるんだね”って、笑うんだもの。
それとね、もう一つあるって言われたの。何だと思う?』
『木下さんになって・・・プレイルームでのことかい?』
『そうよ・・・難しいわね?お話ししていく過程で答えが見えてくるかもよ、うふっ』
『プレイを話すのか?』
『聞きたくない?』
『特に・・・ただね、今も話したように、それに纏わる心情とかが見え隠れするのなら、無駄では
ないね』
『ネトラレの人って、根掘り葉掘り聞くんでしょ?』
『僕じゃないだろ?仮にそうだとしても、傍にいずみが居ないのなら、何の意味もないからね』
『嬉しいわ。愛してるのはあなただけだもの』
『続けるんだろ?』
『うん・・・あれ?ちょこっと待ってくれる?』

私の返事も聞かずに、携帯から離れたようです。
短くない時間が経過します。

『ごめんね?オーナーから・・・怒ってる?』
『その理由を見付けられないだろ?』
『ごめんなさい。何も言わなかった私が悪いの。ホントにごめんなさい』
『謝るような事をしたのはいずみだろ?だからね・・・』
『元に戻してもいい?』
『やり直し?』
『はい、いいでしょ?』
『任せるよ。だが手短に、いいかい?』
『はい・・・じゃ、始めるわね?・・・”あっ?携帯が鳴ってるの、出てもいい?”・・・
あなたね、”あぁ、誰からだ?”・・・私、”ちょっと待ってね?”・・・バッグに入れていた
から、小さな着信音なの。あなたには聞こえなかったと思うの・・・私、”オーナーから、
どうしよう?”・・・あなたの番ね、お返事は?』
『はははっ、出てもいいと言った?希望的観測で動いただろ?』
『勇み足でした、ごめんね?・・・あなたと話しているのに勝手に出てしまったこと、許して
くれる?』
『まぁ、気付いただけでも儲けモノだね。その気持ちを忘れないように、いいかい?』
『はい・・・でね、ここから現実が始まります、うふっ』
『ブラックボックスの説明はないのかい?』
『聞こえなかった?』
『冗談のつもりか?』
『違うの。ホントに・・・聞こえなかったのね?』
『疑う?まず、誰からか確認して、僕の判断を仰ぐ、それが先決だろ?』
『プラクティスだけど、そうしたでしょ?もう間違わないから。それでね、お話ししたこと、
その続きを再現しようと思うの』
『はははっ、いずみ一人では・・・ん?”掛け直す”と話したのか?』
『あなたが許してくれたら、そうしたいかなって』
『オーナーには?』
『お仕事の途中だから、纏まったら掛け直すけど、時間がかかるようなら明日の夜にって、
お返事したの』
『時間は?』
『そろそろかな?・・・ねぇ、どうすればいい?』
『ブラックボックス?』
『うん・・・同じ様にはいかないと思うけど、極力頑張ります』
『じゃ、いいか?だけど、短く済ませるように、いいね?』


[47] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2024/12/01 (日) 10:49 ID:Yqtib.4. No.196653



携帯を操作しているのでしょう、ほんの少しの空白が思いのほか長く感じられます。

『おっ?掛かって来るとは思わなかったよ』
『それで遅かったの?ナニをしていたのかな?うふっ』
『いずみちゃんの想像通りだよ、はははっ』
『イヤらしいことね?そうでしょ?』
『あはははっ、それより仕事は?』
『アレ?誰かさんが言ってたでしょ?仕事より楽しい事があるって。違った?』
『僕を優先?それはないだろ?一に仕事、二に仕事、三、四がなくて五にセックスだろ?』
『可笑しいの。五にセックスって何なの?同じ土俵じゃないでしょ?仕事なら三、四も五も
仕事なの。面白がって言ってるの?それとも理解が足りないの?』
『キビシ〜!セックスが一番だった。これは恐れ入りました、あはははっ』
『はい!はい!そうしときましょうね?じゃ、元に戻って、何だった?』

ここからが会話の始まりのようです。

『仕切り直し?』
『そうね、さっきのはなかったことに。いいでしょ?』
『正直に話すと、いずみちゃんと話したかったかな?言わせたいんだろ?』
『うふふっ、女に言わせるのって、男らしくないでしょ?』
『おっ!そういうことか?話したかったのか?あはははっ』
『だから、お仕事を急いで片付けて・・・分かるでしょ?』
『同じ気持だったとは思わなかったね』
『同じじゃないでしょ?だって、オーナーから掛かってきたのよ』
『少しの差だろ?』
『どうかな?うふっ。掛けようと思ったキッカケは?』
『話しただろ?・・・おっ?最初からか?体調が気になったからだよ』
『それって本音?』
『それをキッカケにとは思ったよ。だけどね、体調が気になったのは本当だからね』
『ホントなら嬉しいわ。正直に話すわね、大変だったのよ、お仕事が。ほとんど寝なかった
でしょ?頭が回らなくて、どうしようって、オーナーを恨んだわよ。信じる?』
『だから気になった。分かるだろ?』
『怒ってるか気になった?それが本音なのね?』
『そうかもな?あはははっ』
『笑って誤魔化さないの。あれでしょ?小田さんが頭に浮かんだ、それで火消しのための言い訳を
用意したんでしょ?』
『それもあるかな?言い訳は何も考えなかったが・・・』
『探りを入れた?そうでしょ?』
『ところが、いずみちゃんも話しがしたいだろ?おっ?!それは僕を叱るためじゃないだろ?』
『どうかな?うふっ・・・うふふっ、大丈夫よ。オーナーの優しさに免じて許してあげるわ』
『嬉しいね。優しい?初めて聞いたかな?あはははっ』
『驚いたのよ、オーナーの隠れた一面を見た思いだわ』
『それが僕なんだから。誤解も甚だしいよ、はははっ』
『昨夜、夜中かな?その時でお終いなら寂しいわよ』
『あるのか?次はないと思っていたよ』
『木下さん次第でしょ?画策したのは分かってるんだから』
『それもこれもいずみちゃんのためだよ、信じる?』
『オウム返しは止めて下さいな、うふっ。違うでしょ?オーナーのためでしょ?』
『ベッドの希望を叶えてやったんだぞ。社長を説得するのは大変だったんだから』

いずみが誘導していることは、丸分りです。
二台並べた携帯で話していることもお見通しですが、見えないとはいえ、時々舌を出している
だろうことも推測に難くありません。


[48] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2024/12/01 (日) 14:04 ID:Yqtib.4. No.196655



『事前に決めていたことは分かったわ。プレイの前後は、木下さんとは抱き合ったりキスしたり、
ソフトに愛撫も。いつもはあまりしないのに、変だなって。プレイが終わったら木下さんと
ベッドインでしょ?でも、”今回はオーナーと楽しんで”って、おかしいでしょ?』
『社長はるみさんとユカと3Pなんだから、たまにはいいんじゃないか?おっ?!嫉妬してるのか?
はははっ』
『そんな訳ないでしょ?いつもと違うから疑問に思っただけだもの』
『僕が画策したと?』
『優しいオーナーだから、嘘はないでしょ?』
『信じてくれるのか?それなら真実を話そうかな?』
『優しいと思ってる時間は刻々と過ぎてるの。早くしないと怒りに変わるわよ』
『怖いね。いずみちゃんの真実かな?あはははっ。あれだよ、いずみちゃんとは今年末まで、
残すは12月だけだろ?それだが、年末は時間の調整が難しから、今回が最後になる可能性が
高いらしい。だから、プレイも今までしなかったオンナ3Pにしたとか、社長はそう言ってたね。
女の恥部を曝け出すプレイにしたいから、手伝って欲しいと頼まれてね。それで、いずみちゃん
とのベッドインが決まったって訳だよ』
『木下さんが方針を変えるなんて考えられないわ。何か抜けてない?それを信じろと言うの?』
『分かるか?分かるな。アレだよ、交換条件ってやつだね。僕からじゃないが、そういう素振り
はしたよ。前から話していたことを社長が実現してくれた、これが真実でなくて何が真実なんだ?
はははっ』
『前振りが叶ったって事?』
『社長は理解が早いからね。何度も話し難い事なら尚更だろ?いずみちゃんと双璧じゃないか?』
『木下さんに失礼でしょ?私と比べられるなんて10年は早いわよ』
『言えてる。何歳違いだったかな?』
『そういう意味じゃないでしょ?比較対象にもならないの、分かった?』
『そうだな・・・社長は先々を考えて行動するからね。それも、いずみちゃんと似てると思うけ
どね』
『ナンなの?主体が見えないでしょ?』
『来年の事だよ。何も聞いていないかな?』
『エロ小説、違った、官能小説の元ネタは今年末まで、それだけよ。何か計画があるの?』
『オンナ3Pは来年の布石なんだな。疑問に思っただろ?』
『オーナーが経緯を説明してくれたでしょ?まさか、私が・・・あり得ないでしょ?』
『ユカを主役に、レズの美しさと妬みだったかな?それを小説にしたいと、その前哨戦だよ』
『それなら、本戦は関係ないわね。私は誰かのダミーなの?』
『それは社長に聞かないと。まだ話していないだけかもしれないな』
『知ってるんでしょ?優しいオーナーは何処に行ったの?』
『そろそろ怒りモード突入かな?』
『木下さんと同じように交換条件が必要なの?』
『人聞きが悪いだろ?おっ?誰も聞いていないか、あっはははっ』
『余裕ね?いいわ、木下さんに直接聞くから。来年の事をオーナーに聞いたって話すけど
いいのね?』
『脅すのか?』
『だったら?困るんでしょ?話したことがバレたら』
『口止めはされていないが、まぁ、話さない方がいいだろうな』
『オーナーと木下さんとの関係って、とても親密なんでしょ?』

聖域に切り込んでいきます。
彼等の関係が分かったところで、特に有益になるようには思えないのですが、近い将来に実現
予定の起業の行く先に、影響を与えるかもしれない事象だとすれば、知っておいて損にはならない
と判断したのでしょう。


[49] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2024/12/01 (日) 15:42 ID:Yqtib.4. No.196657



『いずみちゃんとベッドインできただろ?念願かなって嬉しかったのは本当だし、いずみちゃんも
それに反応してくれただろ?予想以上に楽しめたし、社長の愛人とこんなに深く愛し合えるなんて、
想像もできなかったからね。普通ならトイレでする程度しか味わえないんだが、社長には頭が
上がらないというか、まぁ、そういうことだから、交換条件とか言ったけど、社長から切り出して
くれたのは有難かったよ』
『私も深く愛し合えて嬉しかったの。ホントに優しく愛撫してくれるんだもの、時間が止まって
欲しいと思ったのよ。それって分かるでしょ?』
『話したいのはこのことかな?あはははっ』
『恥ずかしいのよ、大きな声で笑わないでよ。でもね、私ね、官能小説に関わってきたでしょ?
木下さんとの関係って、それが終わったからって直ぐに切れるものでもないの。
オーナーは何も知らないと思うけど、聞かれても今はお返事できないけど、木下さんとの関係は、
まだ続くのは間違いないのね。それなのに、来年の官能小説に関わらないとしても、
もしかしたら、声が掛かるかもしれないでしょ?急にって心も体も準備できないもの。
だからね、そのさわりでも知っておいた方がスムーズに入れるでしょ?それに、オーナーとも
どうなるか分からないもの、交換条件で続くことってあるかもしれないでしょ?
だから、聞かせてくれない?二人だけの秘密なんてワクワクしない?子供のような感覚って楽しい
と思うわ、そう思わない?』
『攻めるね?あれだよ、口止めされていないって言ったけど、話さない、話す筈もないと社長は
思ってる。今までがそうだったから、信じてくれてると思う。さてと・・・』
『私は?信じられないの?ベッドでの事を思い出せば、信じてもいいと思わない?』
『セックスもピロートークも最高だとは思ったが、信じてもいいのか?』
『口は堅いわよ。あれ?オーナーのアレには負けるかも?うふっ』
『はははっ、それだよ、それにやられるんだから情けないの一言だね』
『これからも楽しくお付き合いできるかもしれないでしょ?情けないことにはならないと思いた
いの』

ほんとに攻めまくってるって感じです。
そこまでする理由も意味もないと思うのですが、いずみの性格が前面に出ていると思います。

『口の堅さ・・・僕のよりも硬くないかもしれないが、信じることにするよ』
『硬いわよ、歯が当たると・・・あれ?歯が負けるかも?』
『嬉しいね。次があれば試したいね、あはははっ。じゃ、話そうか・・・社長の愛人、
いずみちゃんの様に期間限定じゃなくてね、愛人がいるんだよ、それも二人。驚かないだろ?』
『そうね、なくはないって感じかな?ステータスと思ってる人も多いみたいよ』
『色々あってね、二人は仲が悪くて、それでだ、僕が預かってるんだよ。誰か分かるだろ?』
『えっ?・・・ユカちゃん?そうなの?』
『愛人同士って仲がいいはずないだろ?それなのに、レズらせるって社長も何を考えているのか、
それを僕に押し付けるんだから。仕方ないんだな、これが・・・僕のマンションは社長が所有し
てるんだよ。ここまで話せば分かるだろ?』
『交換条件って、ユカちゃんの説得なのね?ご褒美が私。でも、それで良かったかな?ほんとに
楽しめたもの、うふっ』
『信じていいのか?』
『信じないと何事も始まらないって言うでしょ?私達も次のステージに行けるかも?かな?』
『あはははっ、濁すところが渋いね?来年の楽しみに取って置くかな?』
『その時から始まると信じたい?かな?うふっ・・・聞いてもいい?もう一人の愛人って?』
『いずみちゃんは知らないと思うから、名前は話さないけど、子供もいるんだよ。ユカにはいない
だろ?これも険悪な理由の一つなんだな。その二人に性行為をさせるってどういう神経なんだか、
ユカの説得はこれからだから気が重いよ。最高のご褒美を頂いたから、やるしかないんだが、
とっかかりが難しくてね、悩みが尽きないよ』
『最高のご褒美って、最高の誉め言葉だわ。ホントに嬉しい、傍に居たら・・・
あれ?思い出すでしょ?』
『濡らしてるだろ?欲しくなった?』
『どうかな?・・・ちょっと待ってね?』


[50] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2024/12/07 (土) 11:23 ID:LKPNupfo No.196749



ほんの少し、何も聞こえません。

『聞こえる?』

非常に抑えた声です。

『ん?・・・離れたのかい?』
『うん、長くなってごめんね?でも、貴重な証言を得られたでしょ?』
『だね。どうするんだ?』
『昨夜のプレイを話させようと思ったんだけど、もう十分でしょ?収束させてもいい?』
『任せるよ』
『はい、少し待ってね?』


今度も同じように、少しのブランクの後、

『ごめんね、スエットだから時間が掛かってしまったの』
『想像出来ないな、いずみちゃんのスエットは、はははっ。どうだった?ビチョビチョだろ?』
『それがね・・・オーナーが時間を掛けて可愛がってくれたでしょ?だからね・・・』
『出尽くし?寂しいね、はははっ』
『早とちりは嫌われるわよ。思い出して歓喜の涙があふれてるの、凄いでしょ?』
『それは・・・我慢できるのか?』
『一人はイヤだって話したでしょ?だからね、オーナーとお話しが終わったら、気持ちを切り替え
て早く寝たいの。もう限界だもの、分かるでしょ?』
『同じだな。ホント疲れたが、気持ちのいい疲れかな?』
『同じよ。でも、寝ないと明日のお仕事が大変よ。元気に頑張ってこそ、楽しみも倍増すると
思わない?』
『アレか?そうだね、早く寝るか?はははっ』
『その日まで元気でね?おやすみなさい、チュッ!』
『はははっ、おやすみ』

”ふ〜っ!”と小さくないため息が聞こえてきます。


『終った・・・ごめんね?ほんとに長くなって』
『疲れただろ?昨夜からの事情も垣間見えたからね、早く寝た方がいいよ』
『なんかドッと疲れが出てきたみたい。昨夜から今朝まで性行為漬けだったのに、疲れたって
不謹慎でしょ?』
『その元だろ?』
『快楽?・・・そうよね、気持ちいい疲れって言えなくもないけど、それはその時だけだもの。
お仕事には半端なくのしかかってくるんだもの。睡眠ってホント大事だって再認識させられたわ』
『分かっていて、そうなったんだから自業自得だろ?はははっ』
『オーナーとの?否定できない程の興奮と快楽かな?でも、同じ様な状況は考えられないかな?』
『考えない事だよ。そうなる事があればその時に判断すればいいからね。今は何もかも忘れて寝る
こと、いいね?』
『何もかもって、あなたはそれに入らないもの。あっ?”忘れる”で思い出したわ。木下さんの
愛人って萌音さんでしょ?オーナーが言ってたこと、ユカちゃんには子供がいないって気になら
ない?』
『気にしても始まらないだろ?男女関係の機微は、僕達でこねくり回してもどうにもならない
からね』
『そうね・・・何もかも忘れて、あなたは忘れずに、寝るわね?』
『スエット?はははっ』
『パジャマでした、うふっ。あのね、スエットって言った方がダサい感じがするから、それもアリ
かなって』
『見た目より中身、頑張れよ』
『うん・・・愛してるの。おやすみなさい』


[51] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2024/12/07 (土) 14:26 ID:LKPNupfo No.196750



翌日の昼休みに、いずみから携帯に掛かって来ます。


『ごめんね?お昼休みに』
『何かな?』
『言い忘れたことが・・・覚えてる?』
『ん?・・・何だったかな?それより、ひろ子を迎えに行くんだろ?』
『お昼ご飯を食べて、今からお迎えなの。その合間に・・・怒ってる?』
『急がないんだったら、まぁ、いいか?』
『あのね、あなたって急に出張とかあるでしょ?明日の事も分からないんだもの』
『それで?ないとは言えないね、聞こうか?』
『私のNGのことね、”シヌ〜!”が”イク〜!”になることね。それともう一つあるって、
覚えてる?』
『木下さんか、それを?』
『うん、気になってお仕事もはかどらないの、うふっ・・・ホントだと思わないでしょ?』
『早く話せよ、昼休みが終わってしまうぞ』
『プレイルームの事ね、床はタイル張りで濡れてもいい構造になってるの。ベッドも同じね、
分かるでしょ?排泄プレイ用なの。それじゃなくて、あのね、ドッグショーも。
私は出来ないってお返事したから、それがもう一つのNGなの。ホントは経験してるのにね、
これって嘘も方便かしら?』
『なるほど。そういうことなら、いずみ以外は・・・そういうことか、そうだろ?』
『濁していたけど、丸分りなの。お顔に書いているんだもの。あれ?私も見透かされていたかも?』
『一応否定したんだから、それはそれで一件落着でいいだろ?』
『うん・・・あのね、ユカさんと犬ね、オーナーがその時の事を聞かせてくれたの。時間があれば
あなたに話したいかなって』
『特に聞きたくもないが、何か含んでるだろ?』
『うん・・・”来年のオンナ3Pに犬も絡ませることもあるかな?”とか、曖昧なんだけど、見学し
ないかって』
『あれか・・・アトの?』
『ピロートークって言えないモノね、うふっ』
『それだろ?』
『お誘いは危険が一杯でしょ?木下さんの意向もあるし、誘い方の手腕が試されそうね?』
『断る手腕も大事だからね。受けるにしても、体験はダメだからね』
『うん、分かってるから、もう絶対にしたくないの。人生が変わる経験は一度、あれ?一度じゃ
なかったわ』
『はははっ、それだけか?』
『はい・・・サワちゃんが車を回してくれるのを待ってる時に思い出したから・・・あっ?!
来たから・・・愛してるわ、うふっ』


るみさんならありそうに思えるのですが、ユカさんもと思うと私の想像以上に体験してる女性も
少なくないのかもしれません。
柊さんもここで体験したのかもしれません。
ただ、狭い世界の話として無理矢理解釈すればですから、一般的にはごく少数の女性に限られる
と思います。
その話しが今後も出てくるかは、神のみぞ知るです。


[52] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2024/12/07 (土) 16:50 ID:LKPNupfo No.196754



11月最終週の木曜日に戻ります。


羽田空港からその駅に着いたのは、午後9時に少し届かない頃です。
ホテルに向かいながら、予定通り石黒さんの携帯に掛けます。

『時間通りですね?』
『無理を言って悪いんだが、打ち合わせ通りでいいね?』
『はい・・・なんか、驚かないといけないでしょ?でも、いずみさんは傍に居ないんです』
『ひろ子と?』
『もう帰って来ると思うんですが・・・』
『出かけてるのかい?』
『8時前だったかな?携帯に掛かってきたの。驚いていたから約束とかはしていなかったと
思うけど。9時には帰ると言って出掛けたの』
『何時に出たの?』
『少し前なの。カモフラ―ジュだと思うのね、とても近くのビルに居るなんて言えないでしょ?』
『なるほど。いずみの出没エリアは決められているからね』
『駅に着いたところなの?それとも・・・』
『ホテルに向かって歩いているんだが、誰か知ってるのかい?』
『うん・・・まだ話していないみたいだから、私からは。いずみさんに聞いて下さい。
問い質すってその事でしょ?』

共通の認識と思っている石黒さんですが、本丸は違うところにあります。
それは話せませんから、曖昧な返事しかできません。

『まぁ、それなら・・・帰って来たら連絡するように話してくれないか?』
『でも、小田さんが話すって・・・あっ?ダメかな?』
『この間はなぜか濁していただろ?このことと関係あるのかい?』
『それも含めて、いずみさんに聞いてもらった方がいいと思うの』
『じゃ、サワちゃんに聞いたからって、いずみに掛けるけどいいよね?』
『うん・・・私の時間を譲ることを説明するんでしょ?』
『予定通りにはいかなかったが、途中で会えるかもしれないからね』
『入れ違いになったら、連絡するわね』
『そうなれば・・・じゃ、一旦切るからね?』


話ながら、いずみの居そうなところを思い描きます。
横断歩道の坂道か隣のホテルのコンビニの前、この二カ所に絞られます。
少なくとも、オーナーのイタリアンレストラン近くには行く筈はないでしょうし、私がホテルに
向かう通路も避けることは分かり切っています。
私に話すとしても、過剰な反応は極力抑えたいでしょうから、誰かは分からないとしても、
会っているところは見られたくないのは、当然と言えば当然です。
日本庭園も候補には挙げられるのですが、所要時間を考えれば、可能性は全くないと言えそうです。

石黒さんは何も話さなかったのですが、いずみから口裏を合わすように指示されている筈です。
いずみが仮に遅れた場合、石黒さんがその時間稼ぎをすれば、私にバレることもありません。
ところが、石黒さんとは打ち合わせ済みですから、それを知らないいずみが石黒さんに何を指示
しても、全く無駄というものです。


腕時計に目を落すと、9時を回ったところです。
約束を守るのならば、姿を見せてもおかしくありません。
横断歩道の坂道を上がて、隣のホテルのコンビニが見えるところまで来るのですが、それまでに
バッタリ会うと予測したことが、バカらしくなる光景が目に飛び込んできます。


[53] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2024/12/07 (土) 22:21 ID:LKPNupfo No.196757



中年の男性と会っているようですが、彼から少し離れて携帯で話しているのです。
その相手は、石黒さんしか思い描けません。
どれ程話したのか分かりませんが、私が確認した時には話し中だったのです。

少し離れたところから様子を見ることにするのですが、携帯を切って、その男性に話し掛けて
直ぐに彼から離れ、こちらを向くのですが、少し歩いてから振り返り、小走りで戻って抱き付いて
キスを交わします。
ほんの短い時間ですが、別れを惜しむように繋いだ手をゆっくりと放していきます。
手が離れたのが合図だったように、先程よりも早く歩き出し、私がいる坂道の歩道に通じる小道
にやって来ます。
その男性から見えないところまで少し戻って、いずみを待ちます。

「いずみ!」
「えっ?・・・あなた?どうして?」
「現行犯だな、はははっ」
「えっ?・・・見てたの?」
「どうも意思疎通が上手くいかないね、どうしてだと思う?」
「それより、サワちゃんでしょ?」
「今話していたのは、彼女かい?」
「うん・・・あなたが来たから早く帰って来てって、ホテルの方に居ると思ったのに。もしかして、
サワちゃんに聞いたの?」

私と突然会ったことで、気が動転して口を滑らしたとしか思えません。

「少し時間がかかるようだから、コーヒーを買ってホテルに向かおうと思ったら、この始末だろ?
どう説明するんだ?それと、石黒さんに聞いたとは何をかな?」

石黒さんから聞いたとは、口が裂けても言えません。

「何って・・・見たんでしょ?」
「開き直るのか?」
「そうじゃないけど、サワちゃんが待ってるでしょ?説明は明日でもいい?」
「まぁ、それでもいいが、いずみに聞きたいことがあってね」
「いいけど、サワちゃんはどうするの?」
「今から了解を貰うよ。それでいいだろ?」

予定通りいかないのが、予定なのかもしれません。
直ぐに携帯に掛けて、打ち合わせ通りに事を進めるのですが、いずみが私の傍に居るのは、
予想もできなかった予定外と言えそうです。

「石黒さんに了解を貰ったから、ホテルに行こうか?」
「うん・・・ちょっと待ってね?まだ居ると大変でしょ?」
「困る事は何もないだろ?お友達の戸田さんだろ?はははっ」
「あなたね、戸田さんがお気に入りなの?」

そう言って、先に歩いてコンビニの前を確認します。

「いいわ、大丈夫みたい」

私の左腕に手を廻すこともせず、辺りを警戒しながら、二人並んで隣のホテルに入ります。
入って直ぐ左手に、フードコートがあります。

「あなた、コーヒーは?」
「そうだったね。コンビニに戻るかな?」
「コンビニは危険かな?ここでもテイクアウトできそうよ、どうする?」


[54] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2024/12/08 (日) 12:34 ID:0zZJuRxw No.196771



入口前に設置された各種の店の紹介ボードには、世界的に有名なチョコレートメーカーの
名前も見て取れます。

「じゃ、この店にするかな?」
「うん・・・いいのね?」


先に入ったいずみが突然止まります。
振り返った顔には焦りの色が現れています。

「あなた・・・戸田さんに、ごめんね?」

そう言って向き直ったいずみの前に、先程の男性が立ちはだかっているのです。
そう見えたのは、こちらに非があると思わせるだけの勢いを感じたからです。

「いずみさん、話しが違うだろ?」
「えっ?・・・そうだけど・・・そこでバッタリ会ったと言っても信じない?」
「先程の電話は・・・後ろの人だろ?」
「違うと言っても信じられない?」
「無理過ぎだろ?」
「今の状況ならそうかもしれないけど、信じないと何事も前には進められないでしょ?」
「見え過ぎだろ?信じろと言う方がおかしいよ」
「そうよね、そうかもしれないわ・・・紹介してもいいかしら?」
「要らないよ。もうどうでもいいから」
「そうね、それなら聞きたいんだけど、ここで何をしていたの?」
「何って・・・疑うのか?」
「そうでしょ?疑いの目があるから様子を見ていたんでしょ?戸田さん、彼ね、戸田さんって
いうのね、何年も前からのお友達なの。コンビニのところから、私達の様子を窺っていたんで
しょ?私達が戻って来たから、慌ててフードコートに隠れたのね?お見通しなんだから。
いい、信用できないのならそれはそれでいいの。口では何とでも言えるけど、こういった状況でも
私を信じない、違うわ、疑うのなら、これからのお付き合いも難しくなるわ。というか、無理と
しかお返事できないもの」
「いずみさんがどう言っても事実は変えられない。だから、同じ気持ちを変えることは出来ない」
「無理ってことね?いいわ、それで。じゃ、ここまでね」
「あぁ、それでいいよ。戸田さんと言いましたね?気を付けた方がいいですよ、騙されない内に
手を引いた方が得策ですから。老婆心ながらご忠告迄」

返答に困る忠告なのですが、少し遅れて、

「十分気を付けます。ご忠告を有難く受け取ります」

私の返答が聞こえたのかは分からないのですが、憤懣やるかたなしを体一杯に表現したとでも
言えばいいかもしれませんが、疑心暗鬼のまま、その場を立ち去ります。

「正しい忠告かもしれないね」
「彼が?」
「少なくとも、今のいずみは信用に値しないからね。彼の見る目は鋭いね、はははっ」
「あなたね・・・間違ってるとは言えないかな?ここで議論はご法度でしょ?」
「迷惑だね。そそくさと退散しようか?」

コーヒーの予定を変更して、ホットチョコレートにします。


[55] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2024/12/08 (日) 14:40 ID:0zZJuRxw No.196774



「予定は未定にして決定にあらず、だね」
「あなたね、未定ってことでしょ?難しく言っても同じなのよ、うふっ」
「言えてるね。今夜は未定だったのか?」
「どういうこと?」

話ながら、フードコートから一階に降りて、隣のホテルに向かいます。

「彼だよ」
「未定も未定、予定もしていなかったのよ。あれ?経緯を説明しないと・・・もしかして、
彼の事なの?聞きたいことって」
「そうだとしたら」
「分からないの、サワちゃんが連絡したとは思えなくて。それとなくとはあるのよ、私からじゃ
話し難いこととか、でも、ナニも示唆しなかったし、そうだとしてもあり得ないもの、
あなたに連絡するなんて」
「漏れる筈がないか・・・何も知らなかったんだから、石黒さんは口が堅いのかな?はははっ」
「何か疑ってるみたいね?ほんとに知らなかったの?」
「二人がキスしてなければ、スルーしたかもしれないね」
「やっぱり・・・終わったことだもの、全て報告、あれ?白状の方がお似合いかな?うふっ」
「余裕だね。まぁ、事後承認にしては時間が経っているように思うね」
「時間?・・・回数かな?」
「ん?・・・まぁ、アトのお楽しみだね、はははっ」
「叱られるのは私なのよ、今は笑わないで欲しいな」


チェックインを済ませて、部屋に入ります。
会った時から手に持っている紙袋が気になっていたのですが、落ち着いてから質問するつもり
でした。

ウールのハーフコートを脱いだいずみは、私からコートを受け取り、一緒にクローゼットに収納
します。
半袖のニットのワンピースですから、体の線がほどよく浮き出ています。

「ほ〜、ブルーじゃないのかい?」
「コートはそうでしょ?ワンピースはね、少しの冒険も許されるかなって、信じる?」
「先程の彼じゃないんだからね、聞くまでもないだろ?」
「うふふっ、歯磨きね?」

私の返事も聞かずに、バスルームに消えていきます。


一ヶ月前も同じように窓際の椅子に腰を下ろし、いずみを待ったことが思い出されます。
客室は変わっても部屋内部の調度品はほぼ同じですから、気を遣うことなく安心して過ごせる
のは、有難いことです。

数分もしない内に、いずみが戻って来ます。

「あなたと交代ね?」
「キスしてなくてもエチケットだったかな?」
「空気中の・・・そう話さなかったかしら?」
「ディープキスのいずみなら否応なしだろうけどね」
「あなたって・・・そんなの分からなかったでしょ?あれ?時間を計ったの?うふっ」
「そこまで暇じゃないよ。雰囲気かな?その後の事は夢にも思わなかっただろうね」
「夢を見させてあげたの。だから、夢を見られただけでも幸せだと思わない?」
「僕にバレたから、強気な姿勢を堅持してるのかい?」
「強気とかじゃなくて、あの時のキスはね、早く帰ろうとしてるのに呼び止められたからなの。
ほんと焦ったわよ、サワちゃんからあなたが来てるって。
キスって安定剤みたいなものでしょ?不信感を打ち消すには最適なの。少しディープに、あれ?
そう見えた?難しいわ、キスのテクニックって」
「見せ方?見られてるとはつゆ知らずだろ?何も考えていなかったと思うけどね」
「あなたが居るなんて・・・でも、他の人が居ても同じかな?だって、急いでいたんだもの。
それだけあなたの存在が大きいってことなの、何かあっても誤解がないようにしないといけない
もの」
「誤解が生じる展開だったね?」
「だから、お断りしたでしょ?あなたに報告しなかった私が悪いんだもの。でもね、隠すとか
そういうつもりはホントになかったの、それは信じてくれるでしょ?」

お決まりの言い訳です。


[56] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2024/12/08 (日) 16:14 ID:0zZJuRxw No.196777



「聞き飽きたね。だけど、超多忙なのは理解しているから、おとがめなしにしようか?」
「嬉しいなぁ・・・でも、歯磨きはおとがめありよ、うふっ」

後ろから首に両手を巻き付けて、左頬に唇をそっと触れさせます。

「催促のキス?・・・ん?今夜の方が優しいかな?」
「先月の事を思い出してるんでしょ?あの時より優しい?」
「今夜はキスのオマケ付きだからね。不都合な事実でもあるのかい?」
「何のこと?・・・このことじゃないのは分かったけど」
「終わったことだが、まずは経緯の説明からだろ?その後に本題に入ろうか?」
「うん・・・気になるけど、ほんとに何か分からないわ」
「じゃ、歯磨きだね?」

立ち上がった私に、

「ナニか分からないけど、清廉潔白だって全裸にはなりません。ご了承下さいね」
「はははっ、確かに。何も見えないと身構えるだろ?裸より鎧じゃないか?」
「イヤな人ね?ほんと何のことか分からないから、何だか不安だわ。でもね、その理由が分から
ないと不安にもなれないでしょ?だから、それまでは不安未満でお話しさせて下さいな、うふっ」
「身に覚えがなければ、何も気にすることはないからね」
「うん・・・でも、気になるわ」


ベッドルームに戻ると、テーブルに置いていた私の腕時計を手に取って見ているのですが、
何だか焦点が合っていない様です。

「どうした?」

椅子に腰を下ろしながら、いずみの顔を覗き込みます。

「考えても何も出てこないの。あなたに叱られることかなって、探しに行っても何も見付けられ
ない。一ヶ月前も今夜も、同じ様な展開でしょ?でも、それ以外に何もないから、探すところ
も分らなくて、だから、何も見付けられないの。もうお手上げかな?」
「五里霧中かい?」
「私の気持ちは、暗中模索かな?・・・あなたの腕時計ね、私の左手首に着けたら汗ばむかなって、
おかしいでしょ?」
「はははっ、二番煎じは頂けないね。緊張感の表現に同じ手を使うとは、いずみらしくないだろ?」
「あなたならって・・・まだ緊張感には程遠いかな?だから、呼び水に腕時計を。おかしいよね?」
「不安未満だろ?それは後にして、今夜の経緯を説明しろよ」

一ヶ月前の事を鮮明に覚えているからこそ、同じ様な展開から出口を模索しているとも取れます。
ただ、私が持っているカードをいずみが探しにも行けない状況だとしたら、不安が増幅するのも
理解できなくもありません。

「うん・・・見えないモノにはアトで対応することにするわね?では、今夜の事を説明します。
と言っても、一ヶ月前の事と同じ様な展開でしょ?結果論だけど、何だか笑ってしまいそうね?」
「相手が代っても?まぁ、結論からすればそうかもしれないね。ただね、一ヶ月前に見たのは光景、
今夜は情景、この違いはハッキリしてると思うが、説明できるかい?」
「あなたの思ってる通りだと思うわ。今夜の人は情景、情を交わした人なの。それも前のように
3日じゃないの。驚いたでしょ?」
「文学的だね。木下さんとのピロートークなら理解できるフレーズかな?」
「うふふっ、関係を持ったって言えば良かった?あなたが情景って、だから、あなたのワードを
尊重したのよ」
「有難いね・・・確か、時間じゃなく回数とか言ってたね?」


[57] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2024/12/14 (土) 12:01 ID:J9iEAGI6 No.196844



「この前は3日だけど、合計しても10時間にも届かないの。それは話したでしょ?
でね、今回はその後すぐからなの。一ヶ月だったけど、昨夜までに6回会ってて、最初から
ホテルに。軽率だと思うでしょ?」
「まぁ、フィーリングが合ったのなら、それはそれでいいと思うが・・・」
「報告でしょ?」
「いずみに任せてるから、相手の男性が誰であっても文句は言わない。その理由は分かるだろ?」
「私を信じてくれてるから。それに甘えていたのかもしれないわ。いくら忙しくても、あなたと
会えない日が続いても、メールで報告できるのに、ほんとにごめんなさい。
脇が甘いって注意されたこともあるでしょ?それを忘れたんじゃないの。言い訳になるけど、
社会的地位って言えばいい?高級交際クラブの会員になれる人なのね、プロフィールも申し分
ないし、初めて会ったその日から意気投合したっていうか、お話しもとても楽しくて、関係を
持ったのも自然な流れだったの」
「ん?・・・とっかかりから話さないと何も見えないだろ?その流れに行き着くまでの布石が、
まるで分からないね」

ハッとした表情から、何かを思い出したように笑顔に変わります。

「ねぇ、手を繋いでもいい?」
「ん?これも二番煎じだろ?最新ならキスじゃないか?」
「そうだけど、あのキスはお別れのキスなんだもの。あなたと出来る筈もないでしょ?」
「おかしいだろ?まだバレていない時なんだよ、何か隠された事実があるのかい?」
「あなたってほんと鋭いんだから、驚かされるわ」

私との摩擦を和らげる目的が、見え隠れする発言です。

「持ち上げてるのかい?」
「うふふっ、ないとは言えないかな?」
「じゃ、手の内を見せてもらおうか?」

持っていた腕時計を、私の左手首にそっと置いて、

「緊張感って人それぞれでしょ?私は・・・分からないわ、体全体かしら?」
「痙攣も緊張も同じ扱いなんだろ?はははっ」
「うふふっ、そうかも?・・・小刻みに震えるんだもの、元を正せば同じかもよ」
「手首の僕とは比較もできない?女性ならではの感性じゃないか?」
「全てが緊張と痙攣なのね、オンナの性ってそういうモノじゃない?」
「卓越したご意見をどうも。それより・・・」
「逸れました・・・元に戻すわね?あのね、サワちゃんからの提案だったの」
「石黒さん?あの男性を推奨したってことかい?」
「うん・・・先月の3日だけの人、あれ?これがほんとの3日天下ね?うふっ」
「はははっ、彼は明智光秀かい?分かるけどね、逸れないでくれないか?」
「ごめんね。あなたも知っての通り断ったでしょ?そのあくる日の金曜日ね、いつものように
サワちゃんに羽田空港まで送ってもらう車の中でね、そのお話しがあったの」
「タイミングがいいね?偶然とは思えないが・・・」
「でしょ?疑ってもおかしくないでしょ?でも、オーナーとサワちゃんが繋がってる確たる証拠
って何もないモノ。アレだと思うのね、バイトは出来なくなった、言い換えるとライトセックス
はできないでしょ?私の小さな癒しだったことは本当なの。オーナーって粗野なところもあるけど、
私の気持ちを優先してくれる優しいところもあるのね。それって戸田さんがそうさせているのかも
しれないけど、ほんとのところは分からないとしても、気遣ってくれるのは事実なの。
それがなくなったでしょ?ポカって穴が開いたような、あれ?ナニか想像しなかった?」
「はははっ、愉快に話せるのはいいけどね、その穴じゃないだろ?」
「違った?うふっ。心の穴ね、何かね、無気力になったように見えたらしいの。
少し寂しい気持はあったのよ、あの人じゃなくオーナーとの・・・なんて言えばいいかな?
性的な接触だけじゃなくてね、お話しも楽しくて、少しかな?惹かれるところも・・・
あるでしょ?人間味っていうか、そういうところかな?」
「ん?・・・後悔してる様に聞こえるけど、本音は違うんだろ?」
「そうよ。木下さんとの乱交ではシッカリ本番してるんだもの。だから何となくなのに、疲れてた
のもあると思うの。でも、サワちゃんにはそう見えたと思うのね。それで、さっき話した人と
会うことになったの」
「はははっ、飛び過ぎだろ?」
「ほんとだ!・・・終わったことだから、そこはいいかなって。彼のプロフィールも申し分ない
って・・・」
「そこじゃないだろ?石黒さんと彼との関係だよ。それを知って信用できると判断したんだろ?」


[58] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2024/12/14 (土) 14:41 ID:J9iEAGI6 No.196846



その事を隠すつもりだったのかは分からないのですが、マリアさんと石黒さんが繋がっている
事に気付いているのかもしれません。
そうだとしたら、確証が掴めないから、私には言及しないと言えそうです。

「うん・・・サワちゃんね、以前に交際クラブに在籍していたことがあったらしいの。
今は関係ないのね、本人がそう言ってるんだから、信じるしかないでしょ?でね、その時
お付き合いしてた男性にバッタリ会って、お食事をご一緒したのね。話の中で、楽しくお話が
できる知性的な女性がいれば紹介して欲しいって」
「いずみに白羽の矢かい?」
「そうなの。オーナーのレストランでバイトを始める少し前だったらしいのね。話そうと思って
たら、私のバイトが決まってしまったのね。それで、その男性にはいるにはいるけど直ぐには
無理って。そしたら、会えそうになったら連絡して欲しいって返答だったって。
サワちゃんは無理かなって思ってたらいいの。だって、オーナーの紹介でしょ?変な人って
あり得ないでしょ?」
「当たらないモノだね、はははっ」
「ほんと、そうよね」
「それじゃ、渡りに船かい?」
「人聞きが悪いでしょ?セックスに飢えてるみたいだもの」
「本心を突かれると狼狽えるだろ?」
「突かれるまでは半信半疑だったかな?それって、狼狽えるとも言える?」
「気持ちが定まらないのなら、そうだろ?で、突かれたら?」
「疲れるくらい突かれたかな?うふっ」
「若くないとお見受けしたが、羨ましい精力だね、はははっ」
「きっとお薬ね?聞かなかったけど、何だか悪いでしょ?分かって聞くって人が悪いでしょ?」
「それに嵌まった?」
「嵌まりそうだったかな?」
「だった?」
「うん・・・初めての日ね、フィーリングが合ったらベッドインもアリかなって思っていたの。
サワちゃんから彼の性癖とか聞いていたから・・・えっ?ノーマルだけど、アナル好きなのね。
私なら対応可能でしょ?当然私の事も・・・でも、プライベートは一切関知しないって約束なのね。
会ってお話ししてセックスする、いわゆるセフレの関係だけって取り決めてから会ったの。
お互いにそのつもりだから話が早いでしょ?」
「そこは分かるが・・・」
「ごめんね?何度か会えば少しずつ仲良くなるでしょ?それが自然なことだもの。だけどね、
何なのか分からないんだけど、ちょっとした違和感って言えばいいのかな?
スムーズなようで引っ掛かるような、セックスはとても興奮するし、何度も逝かされるんだけど、
あの後かな?11時には帰らないといけないでしょ?だから、セックスの後は余り時間がなくて、
ピロートークもままならないのね。私が気にしてるからかもしれないんだけど、上手くかみ合わな
いような、気が散ってるからとかじゃなくて、何となくね、彼も上の空って感じもするの。
気にしなくてもいいかなとか思っていたんだけど、それがそうなのかは分からないんだけど、
今夜、急に連絡があったこととリンクするかもしれないと思ったの」
「急遽?未定とか言ってたね?」

いずみが抱いていた違和感が、明かされようとしています。


[59] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2024/12/15 (日) 11:33 ID:d5TopSjc No.196870



「約束なんてしていなかったのよ、昨夜会ったばかりだもの。連絡があるなんて思いもしない
でしょ?」
「次に会う日を決めていなかったのかい?」
「私から連絡することになってるのね。レストランのバイトは、可能なら週二回って決めてたのね
・・・えっ?覚えていないの?」
「任せてるからね。曖昧だったかな?はははっ」
「嬉しいかな?でも、頭の片隅には置いていて欲しいの。そうじゃないと、私の行動が把握
できないでしょ?」
「任せてるんだから、今夜のように何かあった時に、説明すればいいじゃないか?」
「何もなければスルーでいいのね?」
「そう話しただろ?」
「再確認かな?うふっ。それでね、電話の内容なんだけど、私ね、お化粧ポーチがなくなってて、
探したのよ、でも見つからないから、ホテルに忘れたのかなって思ってはいたのよ。
でも、どう考えてもおかしいの。次に会った時に聞こうって思っていた矢先なの、彼から掛かって
きたのが」
「ホテルに忘れてた、そうかい?」
「うん、渡すから会えないかって」
「親切じゃないか?」
「そう思うのは素人なの、うふっ。私ね、記憶力がいいって知ってるでしょ?」
「注意力が優れているとは思うけどね、記憶力はイマイチじゃないか?」
「そう思わせてるのよ。恍けるって大事なファクターだと思わない?」
「天然?違うな、エセ天然だろ?」
「分かってるんでしょ?本物とエセが混在してるって」
「本物ならリアル、反対語はフェイクだろ?エセと本物の使い方は正しいかい?」
「あなたね、どうでもよくない?言葉遊びしてたら、また遅くなって・・・あれ?あの時は私が
・・・今度も私だと思われるでしょ?」
「オーナーは噛んでいないんだから、誤解はないだろ?はははっ」
「急ぎます、うふっ。でね、その前から違和感があったって話したでしょ?昨夜まで6回会ったって
ことも」
「毎回ベッドインだろ?いずみの言う違和感がどうもしっくりこなくてね。その違和感は性行為
そのモノじゃなくて、付随する何かなのかい?」
「そう!それなの。前戯も申し分ないのね、アソコも時間を掛けて愛撫してくれるの。
微に入り細に入りって感じで、きめ細やかな性格なんだって、嬉しかったの。
あなたならあそこまでは・・・あれ?でもアソコに御執心なのは変わらないかな?うふっ」
「比較はご法度だろ?僕は比較対象外なんだろ?」
「ごめんね?その方が分かり易いかなって。探求心は甲乙つけがたいかな?」
「早くしろよ。僕の話ができないじゃないか?」
「端的に話すとね、匂いフェチじゃないかと思うの。あなたもそうでしょ?あっ?でも、それって
昔の事だけど」
「興奮させて興奮する手段なんだろうけど、二次的?一時的かもしれないが、そうなら同時進行的
に見せて、その実、彼の方が昂奮してるという構図かもしれないね」
「それなの。最初の頃はそういう仕草は見せなかったのよ。でも、昨夜とか、その前ね、脱がせた
パンツのクロッチの匂いを嗅ぐのよ。露骨でしょ?引いてしまうと思わない?」
「引かなかっただろ?分かって見せてるんだよ。そうだろ?」
「分かる?私が軽くかわすって分ってるのね。変に恥じらいを見せたらカマトトって揶揄されそう
だもの。そんなお歳じゃないでしょ?」
「分かるね。匂いフェチは相手女性の協力が必要不可欠だろ?」
「協力できなかったの。だって、ひろ子ちゃんをお風呂に入れてからでしょ?綺麗に洗ってから
洗濯済みのパンツを穿くんだもの。アソコの匂いなんて付着しないわよ。そうでしょ?」
「パンツと化粧ポーチとの関連が見えないが、急がないか?」
「昨夜ね、時間が無くなって慌てて帰ったのね。11時までにはお部屋を出るって話しているの。
日付が変わる前には帰りたいからって。嘘も方便でしょ?」
「いいから、急げよ」
「うん、私が先にバスルームに。一緒だったらついってこともあるでしょ?その時にお化粧ポーチ
を隠したと思うの」


[60] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2024/12/15 (日) 13:01 ID:d5TopSjc No.196873



「ん?バスルームだろ?シャワーは?」
「時間がなかったから、おトイレだけ。だって11時になろうとしていたんだもの。
ほんとは少し遅れても問題ないでしょ?だけど、厳守って知らしめないと、誘惑の魔手が
伸びてくるかもしれないもの。だから、何も考えないでお部屋を飛び出したって感じね。
時間も時間でしょ?誰かに遭っても気にしないって自分に言い聞かせて。
電車とかタクシーとかなら気になるわよ。でも、歩いて10分程だから、気にならないもの。
でね、あくる日のお昼休み迄全く気付かなかったの」
「やっと辿り着けたが・・・」
「パンツとの関連でしょ?」
「彼から掛かってきた時間だろ?それで読めそうだね」
「分かるの?確か、お風呂に入る前だったから8時少し前だったかな?・・・そうか!私の移動
時間から判断してこの時間に掛けてきたのよ。あのね、今夜の帰宅時間を聞かれたの、
いつもより少し遅くなるから、早くて7時半くらいかなって。
ピロートークの時なのね、裸で抱き合ってお話しするでしょ?何も考えられない空白の時間と
思ってるのよ。そうはいかないもの、見えない違和感を感じながらシッカリ考えてお返事したの。
雑談みたいなモノでしょ?ピロートークって。だから、まさか掛かってくるとは、思いもしな
かったわ。その時から、計画していたことになるでしょ?」
「だね。今まではシャワーを済ませてからだろ?移動時間を考慮して、その時間を与えないように
考えたんだね」
「知能犯?」
「少し薄いけど、そうなるかな?」
「9時って決めているからでしょ?10時に変更って言えば良かったかな?」
「そうならどう返事するのか聞きたいね?はははっ」
「頼まれても実現できないでしょ?彼の思惑は理解できたし、違った終わり方だったけど、私は
お終いにするつもりだったの。そうでしょ?ミエミエの浅はかな計画に乗せられる私じゃないもの」
「僕が見たのは、いずみが携帯で話していた時だからね。その前はブラックボックスだろ?」
「今夜もって誘われたの。セックスはイヤじゃないのよ、でも、下心丸出しって興醒めでしょ?
シャワーしていないアソコとパンツのクロッチを見たい、舐めたいって言ってるのと同じでしょ?
そう言ってくれたら協力するのに、卑屈なやり方って我慢できないもの。
それでね、お断りしようと思ってる時に、サワちゃんからあなたが来たって、携帯に。
慌てたわよ、だから、急用ができたって。お断りも何も、あなたに叱られないかそれだけだったの」
「なるほど、やっと辿り着けたね。ご苦労様、はははっ」

左手首に乗せられた腕時計は、9時40分を過ぎています。

「何時なの?・・・もうこんな時間?」

いずみも時間が気になるのでしょう。

「この前のようにはできないからね。かいつまんで話すから、YESかNOで返事してくれるか?」
「うん・・・やっぱり緊張するかな?」
「経緯は後で話すから、いいね?」
「はい・・・」

私の目を見詰めるいずみの瞳に、翳りは見て取れません。
それでも緊張を抑えられないのか、少し冷めたホットチョコレートを口に運びます。
その時を待つのは、数秒でも長く感じられるものです。


[61] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2024/12/15 (日) 15:58 ID:d5TopSjc No.196874



私も同じように、一口飲んでから、

「じゃ、聞くからね。今現在妊娠してるかい?」
「えっ?!妊娠って、あり得ないでしょ?NO!です。ほんとビックリさせるんだもの。
出処は?教えてくれるんでしょ?」
「楊さんだよ」
「ほんとに?どうしてそう思ったんだろ?・・・でも、直接は絶対にないから、はは〜ん、
柊さん経由明日香ちゃんでしょ?」
「だね。間違いないね?」
「神に誓って・・・あれ?生理の事をあなたに話したことがあるでしょ?それかもしれないわ」
「楊さんにも?」
「うん・・・11月の日程は1ヶ月前には決まってるのね、あなたも知ってるでしょ?
それがね、生理期間の終わり頃に、急遽変更になったの。”大丈夫か?”って聞かれたのね、
あなたに話したようにほとんどないから、”大丈夫”ってお返事して、当日になったの。
汚れたらいけないから、色々と用意したのよ。でも、何の問題もなくいつも通りに過ごせたのね。
ただ、楊さんも気にしてるみたいで、あまり激しくしなかったのもあるかもしれないけど。
ピロートークでね、”大丈夫だったね?”って楊さんが。”先月も同じようにほとんどなかった
から、孕んでいるみたいだわ”って、お返事したの。それが独り歩き・・・あっ?そうかも?
そうだわ、きっと。大変なことになるかも?どうしよう・・・」

何かを思い出して、妊娠とリンクしたようです。

「どうした?妊娠と関係あるのか?」
「うん・・・明日香ちゃんから聞いたのはいつなの?」
「今週の火曜日の昼休みだったね。それが?」
「同じね・・・あのね、木下さんから話しがあるからって。急いでるみたいだったけど、お互いの
時間が合わなくて、金曜日の昼から、午後1時過ぎって決めたの。
もしかしたら、このことかもしれないでしょ?」
「いずみを孕ますとか言ってたものね。本気じゃないとは思っていたが、木下さんも驚いた、
違うな、慌てふためいたんじゃないか?」
「きっとね。シッカリ避妊してるんだもの、あり得ないでしょ?」
「まぁ、100%はないんだから、ないとは言えないだろ?」
「危険日は極力避けてるもの。安全には安全でしょ?」
「木下さんは危険日と思ってるんだろ?心理状態を見る意味では、その設定は間違ってるとは
言えないね。でもあれだよ、自己申告なんだから、木下さんも真に受けてるとは到底思えない
けどね」
「そうよね。言葉と心理の見極めかな?エロ小説でも大変な努力がいるのね、うふっ」
「バカにしちゃいけないよ。何を成すにも努力は怠れない、いずみなら分からない筈はないだろ?
はははっ」
「うふふっ、ほんとだ!木下さんってほんと真面目なんだもの、笑ってしまう程なのよ。
それが彼の持ち味だと思うわ」
「1時にしたのは分からないでもないが、フライトは?」
「1時間ずらしたの。木下さんとは1時間もあればいいかなって。遅くても4時には空港に行けると
思ったからなの。サワちゃんにはひろ子ちゃんを迎えて、直接空港にって、話しているから」
「木下さんの話がそれなのか、はたまた他の事なのか、明日の午後まで分からないね」
「うん・・・あのね、上のホテルの新館ってあるでしょ?あそこのロビーで待ち合わせなの」
「新館?木下さんと個人的には会ってないだろ?」
「うん、エロ小説の乱交の時ね。あなたに話していなかったけど、2〜3月前から新館になって
るの。楊さんとは変わらないけど。あれね、どうして本館って言わないんだろ?」
「分からないが、旅館との差別かな?はははっ」
「笑って誤魔化すなんて、あなたらしくないわ、うふっ」
「ホントに分からないからね、笑うしかないだろ?ところで、新館とは謳ってないだろ?」
「ほんだ!・・・ホテル名の前に、”新”が付いているだけね。新館って言ったらいけないの
かな?」
「はははっ、困らすなよ。気にするほどの事でもないだろ?アレだね、そのホテルになった
理由は?」
「うん・・・どうしてだか分からないけど、誰かに遭うことを避けるためじゃないかな?」
「いずみも目立たなくていいか・・・気になるが、僕も参加とはいかないしね。どうするかな?」


[62] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2024/12/15 (日) 21:38 ID:d5TopSjc No.196877



日本庭園を囲むように3棟のホテルが配置されています。
”新”と名付けられたホテルは、私が利用するホテルから、徒歩10分程のところにあり、
日本庭園の3棟のホテルの中で、そのホテルが一番近いホテルになります。

「明日は半休なの?」
「考えていなかったが、そういうことなら離れて様子を見ることにしようかな?」
「知ってるの?ロビーって広いわよ。長方形って言えばいいかな?椅子とかソファーが沢山
置かれてるから、分からないように様子を窺うことは出来ると思うの」
「それなら、明日、石黒さんを送り出してから、日本庭園の散歩がてらに、確認して来るよ」
「そうね、それがいいかも!うふふっ。あなたが傍に居ると思うだけで安心できるもの」


今回は約束通り、いずみは10時過ぎに石黒さんと入れ替わります。
いずみが部屋を出て、石黒さんが来るまでに、明日香ちゃんに連絡します。

午後10時少し前ですから、まだ起きていることは分かっています。


『どうだった?』

私の第一声も聞かずですから、待ちに待っていたと思います。
それは偏に、柊さんの確信を持った物言いによるところが大きいと思われます。

『気を揉んでいたみたいだね』
『心配でしょ?そうだったら大変だもの』
『避妊してなかったらそりゃ大変だろうけど、そうじゃないんだよ』
『それじゃ、妊娠してなかったのね?』
『そうは言ってないだろ?避妊してると言っただけだからね』
『もう!のらりくらりと、いずみちゃんなら鉄拳をお見舞いされるわよ』
『はははっ、心外だって怒ってたから、その鉄拳は明日香ちゃんにお見舞いされるかな?はははっ』
『良かった!ほんと心配していたんだから。直球で返してくれないと、余計な事を考えてしまう
でしょ?』
『柊さんも余計なことをしたものだね』
『いずみちゃんを好きじゃないでしょ?だから誰かに話したかったのよ。例えば、利害のない
私とか。ほんとは利害だらけなのにね、可笑しいわ』
『だね・・・他に誰かに話したとか言ってなかったかな?』
『いずみちゃんを、”マンションで好き放題していた人を覚えてる?”って聞くの。
”見学した?”って返したら、その人だって。木下さんが孕ましたってことでしょ?
”明日香ちゃんは関係ないんだけど、お灸を据えたいと思わない?”って、意味深で陰湿な様子が
何となく伝わってくるというか、そういう感じだったの』
『お灸を据える?・・・そうなら、木下さん本人に知らせるより、もっと大きな効果を期待する
のなら・・・木下さんの奧さん、そう思わないか?』
『考え過ぎでしょ?事が大きくなるだけだもの。あっ?!そうか!それが狙いね?』
『マズいことにならないか心配だね。それだが、明日の午後に木下さんに呼ばれてるんだよ。
きっとこの話だろうといずみは不安がってたね』
『東京に居るんだから一緒に・・・それは無理ね、説明するのに時間もかかるし、理解できない
かもしれないでしょ?』
『理解?ネトラレじゃないけど、それを理解できる人なら、話せば分かるだろうけど、そうなると
楊さんとの関係にも言及しないと全貌が見えないだろ?それはあり得ないんだから、僕は遠くから
見守るしかないと思うし、何かの助けになれるのなら、携帯電話を活用することもやぶさかでは
ないだろ?』
『うん、そうなるのね。後はかずちゃんにお任せね?事なきことを祈ってるわ』
『全身全霊で・・・はははっ、行き当たりばったりになると思うが、まぁ、頑張るよ』
『結果は報告してくれるでしょ?』
『明日の夜にできれば。じゃ、おやすみだね?』
『うん・・・愛してるわ、いずみちゃんでした、うふっ』


[63] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2024/12/21 (土) 11:54 ID:x8bomWrk No.196975



携帯電話をテーブルに置いて、立ち上がります。
帰ったいずみに、先程の男性から掛かってこないか気になるのですが、啖呵を切って帰った
のですから、自尊心があるのなら、おいそれとは動けないでしょう。

窓の外を眺めながら、明日の様子を思い描くのですが、修羅場と化さないかそれが心配ではあり
ます。
木下さんには萌音さんという愛人がいますし、二人の間には、ひろ子と一歳違いの女の子を
もうけています。
それに、オーナーのマンションには愛人のユカさんもいるのです。
彼の奧さんが二人の愛人について何も知らないとしたら、いずみだけがクローズアップされる
ことになり、甚だ不公平ではあります。
仮に妊娠騒動に発展すれば、木下さんの出方次第では、いずみも黙ってはいないでしょう。
そこまでは思い描けるのですが、実際のところ、木下さんから要請されたとは言え、話しの内容
は全く違うことかもしれませんが、明日香ちゃんから聴取した内容を吟味すれば、いずみの
妊娠が焦点なのは間違いないと思います。
ところが、いずみは孕んでいないとはっきり否定したのですから、揉めることもないかもしれ
ません。
ただ、二人の愛人を知っていたとしても、いずみの妊娠騒動となれば、彼の奥さんも黙っては
いないでしょう。

明日香ちゃんから聴取した内容を、少しでも早くいずみに知らせれば、心の準備もできると思う
のですが、その反面、眠れない一夜を過ごすことになるのならば、明日に延ばした方が得策かも
しれないと、纏まらない頭のまま、携帯に手を伸ばした時に、ドアの開く音に気付きます。
ドアに近づくと、満面笑顔の石黒さんが飛び付いてきます。

「わっ!・・・驚いた?」
「はははっ、見え透いた冗談かい?」
「分かったの?残念だわ。だって、今回は一回で解錠できたんだもの。小田さんはベッドルーム
に居たんでしょ?聞こえてるなんて思いもしなかったわ」
「テーブルの傍に居たけどね、サワちゃんがそろそろ来る頃だろうと、耳を澄ませていたからね」
「私を待っていたのね?嬉しいかな?」
「はははっ、約束したんだから、その時間が来れば気になるだろ?」
「そうなの?なんか、損した気分ね」
「はははっ、いずみから聞いたよ。分かるね?」
「小田さんの問い質すってその事じゃなかったの?」
「座ろうか?・・・それとも、後に・・・どうする?」
「シャワーにしない?愛されてからでもいい?夫婦の・・・分かるでしょ?」
「夫婦か、一ヶ月経っても失われていない夫婦の営み。はははっ、あれだね、誰かさんが経験した
疑似夫婦かもしれないね。性交渉までには至らなかったから、疑似でも夫婦と名乗るのは
おかしいね?」
「私達が正真正銘の疑似夫婦でしょ?間違いなくセックスするんだもの。なんか、一ヶ月が
とても長く感じられたのに、こうして抱き合ってるのよ。いずみさんと入れ替わったみたいだわ」
「入れ替わったじゃないか?」
「うん・・・ホントに入れ替わりたいかな?・・・あっ?!いずみさんには内緒ね?」

冗談とも本気ともつかない口振りには、何故か親しみを感じます。
以前から感じていることなのですが、いずみの若かった頃を彷彿させる立ち振る舞いには、
懐かしさも蘇らせてくれます。


[64] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2024/12/21 (土) 16:51 ID:x8bomWrk No.196980



「内緒が多過ぎないかい?」
「えっ?あれのこと?・・・話せないでしょ?変態だなんて。あれ?言い過ぎたかな?」
「そう言えば、あれからどうなったの?」
「ねぇ、そのお話しはピロートークで。今は二人の貴重な時間なの、いずみさんに邪魔され
ない、ほんとに大切な時間なんだもの」
「まぁ、そうかな?今頃くしゃみしてるんじゃないか?」
「違うかな?何事にも流されない・・・あれ?少しはあるでしょ?流されるところが。
でも、直ぐに修復するのよ、なんか、天然って大きな武器になってると思うわ」
「それもオンナの武器かい?」
「立派な・・・小田さんも立派な武器を持ってるでしょ?」
「嫌味かい?誰にも負ける武器なら武器とは言えないだろ?」
「私には大事な武器なの。なんか、いずみさんって非武装地帯って思いません?」
「それなら武器じゃないだろ?」
「だからオンナの武器なの。何処からでも攻められるオープンな雰囲気、これが武器でなくて
何が武器なの?」
「なるほど。攻め易いが落とせないか。そう考えれば、立派な武器だね、はははっ」
「上手く取り込むのね。でも、とても自然なんだもの。いずみさん自身は特に意識していないと
思うのに、気が付いたらがんじがらめって感じなの。でも、不快感どころか快感に納得させられる、
そんな感じなの。天然ってホントに大きな武器になると思うわ」
「天然が武器の講義は、ここまでにしようか?」
「類稀ないずみさんにしかできない芸当ね?なんか、羨ましいかな?」
「かもね?はははっ」

石黒さんとの話の中心には、いつもいずみがそのポジションにいます。
どうしても、いずみに行き着いてしまうのは、石黒さんの意識がそうさせている様です。

先月と同じ様に、長年寄り添った夫婦の性生活を再現したように、大きな刺激もなく、平穏な温も
りに、その多くが占められていると言えそうです。

「僕に合わせてるのかい?」
「これが夫婦のセックスかなって思うの。でも、いずみさんは同じじゃないと思うの。
どうしてって聞かれても、理由は分からないんだけど。でも、きっと同じじゃないと思うの」
「思いたいんじゃないか?」
「でも、ほんとに違うでしょ?」
「はははっ、同じ人なんていないだろ?姿形が違うように、性癖も性行為も同じじゃないだろ?」
「私ね、交際クラブとかそのようなお仕事でしか男性を知らないの。分かるでしょ?セックスの
ためにセックスをする、そういうお付き合いでしか知らなかったの。
小田さんの愛人だけど、夫婦を意識してベッドインなんて初めてなの。疑似夫婦よ、分かってる
んだけど、この時はニセモノでも夫婦でいたかなって。おかしいでしょ?」
「結婚願望?」
「ないかな?いずみさんのようにキャリアになりたいの。その先ね、もし結婚を考えるのなら」
「じゃ、僕とは結婚生活の予行演習かい?」
「いずみさんと同じかな?何だと思う?」
「ん?・・・分からないね・・・あれかな?保険?」
「あっ?そんなこといずみさんに聞かれたら、大変よ。冗談でも言ったらいけないわ・・・
教えましょうか?いずみさんもそう思ってるって私の推測だから、違ってたら謝ります。
あれなの、オアシス・・・感じるものがあるでしょ?」

ないとは言えません。
何年も前に、いずみと話した記憶が蘇ってきます。


[65] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2024/12/21 (土) 21:09 ID:x8bomWrk No.196982



「なくはないかな?・・・ところで、ピロートークで話すと言ったのは、何処に行った?」
「やっぱり!いずみさんも同じなんだって嬉しいわ。そうだった・・・あの男性とのその後
でしょ?」
「大変なことにならなかったのかい?」
「いずみさんとのことね、いつものように社長に報告したの。私も嫌っていたことは社長も
知ってたの。それでね、出禁って言うの?交際クラブから締め出したの。どういう理由なのかは
教えてくれなかったけど、また私が会うことも無くなったから、ほんとに嬉しかったわ。
いずみさんはね、奥さんが亡くなったんじゃなくて、離婚したんじゃないかって。
パーツ責めの変態でしょ?それが原因で逃げられたと思ってたのね、でも、いずみさんには
話せないから、”そうなの?”ってお話を合わせたの」
「良かったじゃないか?考えようだけど、いずみサマサマかな?はははっ」
「ほんとそうかも?私が嫌ってるだけじゃ、出禁は無理だったかも。ホント偉大だわ、
いずみさんって」
「人徳かもしれないね」
「なんか、守られてるって感じ。ホントに羨ましいわ」

前にも書きましたが、石黒さんのフレーズがその全てを物語っていると思います。

「いずみのようになりたいんだろ?羨むだけでは成就するとは思えないね」
「はい、頑張ります・・・なんか、小田さんとこうして会えるのも、キャリアアップの道程だと
思ってるの」
「はははっ、武器にもならない僕だよ。よりによって僕なら、早く乗り換えた方がいいんじゃ
ないか?」
「今夜は乗らなかったわ、乗られるだけじゃダメなの?」
「乗り換えないのなら、乗られても文句は言えないね、はははっ」
「はい!乗り換えません。いつも乗って欲しいです・・・あれ?少しはお楽しみのバリエーション
は必要かも?」
「乗りたい?」
「小田さんにお任せです。私は俎板の鯉なの。お好きなように料理して下さい」
「じゃぁ、パーツ責め?はははっ」
「小田さんとお話ししてると時間を忘れそうだわ。忘れないうちに、お話ししておかないと
いけないでしょ?」
「今夜の男性かい?」
「いずみさんから聞いてるでしょ?」
「サワちゃんの紹介とはね。まぁ、タイミングよくって感じは否めないね」
「感じるものがあった?そうでしょ?」
「いずみもそう言ってたよ。タイミングが良過ぎると。僕以上に鋭いからね、見破られない様に、
いいかい?」
「小田さんは見破った?」
「裏があるんじゃないかとは思ったが、話せるかい?」
「この前の男性から類推したんでしょ?」
「交際クラブ、これがヒントだろ?」
「間違いない人を紹介するのが、私のミッションだったの。結果は期待外れだったけど。
でも人選には関わっていないのよ。だから、少しは気持ちも楽なんだけど、結果は結果だもの。
社長も残念がってたわ」
「もう報告済みかい?」
「迅速に報告、それもミッションかな?」
「ん?いつの時点で?」

いずみと話せるほど時間があったとは思えません。


[66] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2024/12/22 (日) 11:43 ID:o0.Gfgyg No.196989



「掛かってきたの。怒り心頭って感じで。騙された、あんな女を紹介するなんて、
仕事が男かって。直ぐに小田さんと会ったって分かったの。謝るしかないでしょ?」
「マリアさんには?」
「迅速報告って言ったでしょ?何とかするから気にしなくていいからって、笑ってたわ。
社長って太っ腹でしょ?色んな引出しを持ってるから、対応力も半端じゃないの」
「なるほど。少し前に戻るけどね、その男性を紹介したのは前の男性と別れた翌日だろ?
これもタイミングが良過ぎないか?」
「用意周到ね。いずみさんが初めてその男性と会った日に、自撮り写真を送ってきたって
話したでしょ?これも迅速報告ね、交際クラブ登録で、しかも私がお相手してる人でしょ?
どうなるかはすぐに分かったから、次の人を用意したの。バイトの穴埋めなんだけど、
いずみさんが必要ないのなら、お断りできる仕組みも考えて。流石でしょ?社長って凄いなって
思ったわ」

確かに”凄い”の一言です。
業種は違っても、先々を読む能力、感性は、いずみと共通するところも多くありそうです。

「そうでなければ、人の上には立てないだろ?立派なものだね」
「なんか、いずみさんもそうなるだろうって、応援してるの」
「希望的観測は空しいものだと、誰かさんが言ってたね」
「誰かさんって?」
「聞く?」
「普通でしょ?」
「聞き流さないのは、鋭い注意力を持ってるからかな?」
「普通じゃない?」
「普通?理解が出来ないのは、歳の差かもしれないね、はははっ」
「そうかな?誰なの?」
「はははっ、気休めにはならないか?」
「もう!教えてくれないの?」
「一ヶ月前の結婚ごっこの男性だよ。とても辛辣だったね」
「分かるかな?でも、もう会うこともない人ね・・・あのね、聞きたいことがあるの、いい?」
「普通に?はははっ」
「拘らなくてもいいでしょ?普通は普通なんだから」
「聞こうか?」
「普通にって言わなかったから、普通に話すわね、うふふっ、可笑しいの・・・なんか、
いずみさんに問い質すって言ってたでしょ?」
「だね。ある疑惑が持ち上がってね、明日の午後にならないと、はっきりした事は分からない。
それしか返事はできないが、いいかな?」
「いずみさんね、明日の午後は木下さんと会う予定なの。それと関係あるのね?」

金曜日のフライトの予約変更、ひろ子を迎えて空港まで同行、遅れて来るいずみをひろ子と待機
など、いつもと異なる行動パターンですから、その理由を話さない訳にはいかなかったのは、
理解できます。

「まぁ、そうだね。いずみから何か聞いていないかい?」
「いずみさんね、ポカーンって感じなの。呼ばれた意味も理由も分らないって。
12月のRは取り止めになる予定って聞いてるし、その事なら電話でもいいんだから、全く分から
ないって」
「ん?アール?」
「知らないって、小田さんに話していないのね。なんか、嬉しいかな?」
「いずみと二人だけの秘密かい?話せないのなら聞かないよ」
「秘密とかじゃなくて、長々と説明する手間が省けるでしょ?だからRって」
「そのアールだよ。それの説明だろ?はははっ」
「もう!分かりました。あのね、乱交のR、分かるでしょ?」
「和洋混合かい?」
「なんか、乱交って英語ではorgyでしょ?でも、乱交のOってナニって感じでしょ?それでね、
木下さんのエロ小説用乱交を、Rにしようって二人で決めたの」
「納得の説明だね、はははっ」
「なんか、バカにしてる?」
「できないだろ?愛妻と愛人には、はははっ」
「いいの?いずみさんに話しても?」
「僕がバカにされるだろうね、そう思うだろ?」
「だからなの。お返しかな?」
「明日の結果は、月曜日にでも聞いてみるといいよ。もしかしたら、驚愕って腰を抜かすかも
しれないね」
「ナンなの?とても気になるんだけど。気を持たせるって人が悪いわ」
「まぁ、その時のお楽しみだね、はははっ」


[67] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2024/12/22 (日) 14:32 ID:o0.Gfgyg No.196992



翌日の午前7時前に、石黒さんは帰って行きます。
彼女とはわだかまりなく話せると思うのですが、マリアさんに筒抜けだろうことは疑う余地
もありません。
聞かれて不都合なことはある筈もなく、仮にあるとしたら、その部分は伏せる様にするつもりです。

朝食後、いずみが木下さんと会う予定のホテルに向かいます。
そのホテルは”新”と名乗っているのですが、楊社長といずみが利用しているホテルとは、
大きな違いはありません。
あるとしたら、そのホテルの地下にコンビニが用意されていることです。
宿泊客には好都合でしょうが、そのホテルとしては、小さくない違和感を覚えます。

私はなだらかな坂道を上がり、地下のレストランに通じる入口からホテルに入ります。
一階の玄関まで行かなくても、坂道の途中から地下に入れるのですから、これを利用しない手は
ありません。
一階へはエレベーターを利用して、ロビーに着きます。
いずみが言っていた通り細長いロビーですが、通路幅も広く、静寂の中に落ち着いた雰囲気が、
とても気持ち良く感じられます。
玄関ドアは二カ所あり、フロントに近い方が、正面玄関のようです。
地下からのエレベーターは、客室とはまったく関係ない場所に設置されています。
レストラン用と考えれば、そうかもしれません。
エレベーターを降りてロビーに入っても、フロントが直ぐには見付けられない程の距離感です。
フロントまでのその長い通路に沿って、ソファーが設置されています。
三人掛け用のソファー、L字型の2×2用のソファー、それぞれの傍には椅子も用意されています。
そのようなブースが5つはあるでしょうか、午後には木下さんといずみが、ここで会う約束をして
いるのです。
明日香ちゃんと話したように、木下さんの奧さんも姿を見せると思うのですが、そうでなければ、
妊娠騒動ではないと断言できそうです。
それがメインテーマでなければ、R以外は見当もつきません。

フロント前を通って客室用エレベーター前まで来るのですが、いずみに連絡する予定だった時間に
差し掛かって来ます。
引き返して、フロントから最も離れたブースのソファーに体を沈めます。

いずみに掛けるのですが、思いのほか早く出ます。


『あなた?どうしたの?』
『今話せるかな?』
『いいけど、もう直ぐ会社に着くから』
『手短に。今日の午後だが、木下さんの奧さんも来るかも・・・』

カットされるのですが、急に抑えた声に変わります。
運転している石黒さんに、聞かれたくないのも頷けます。

『想定済みだから。誰かが、犯人は分かってるわ。その人が奥さんに告げ口して、
そう思うんでしょ?』
『蛇足だったね、はははっ』
『ううん、ありがとう。ねぇ、約束の時間前に会えない?』
『打合せ?』
『あなたの顔が見たいの。少しでも落ち着けたらって』
『何時だ?』
『12時30分頃、どこにする?』
『昼食は?』
『おむすびかな?うふっ』
『じゃ、日本庭園を散策しながらだね』
『それじゃ、本館の庭に出るドアのところで、いい?』
『本館?いいよ、はははっ』

私をオアシスだと言った石黒さんの指摘が、いみじくも当たったようです。
私の顔を見たいだけとは到底思えませんから、何らかのすり合わせをしたいのだろうと、推測でき
ます。


[68] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2024/12/22 (日) 16:59 ID:o0.Gfgyg No.196996



午前中は時間がありますから、先程引き返したエレベーターホール前を通って、日本庭園を
散策します。
見慣れた景色ではあるのですが、何故か心が和むのは、私が日本人だからかもしれません。
一周して先程のホテルに戻り、ソファーに腰を下ろして、午後の展開を思い巡らすのですが、
主題が決まっていないのですから、中途半端な推測しかできません。

チェックアウトの時間が差し迫っているのでしょう、一人また一人とロビーに人影が増えてきます。
急に賑やかになったその方角に目をやると、東南アジアの某国のパイロット、CA等10数人以上が
キャリーバッグを引いて、フロント横の玄関前に集まって来ます。
このホテルを定宿にしているのでしょう、空港までのバスを待っている様に見えます。

12時までは1時間以上もありますから、ここにいる理由もありません。
ロビーの雰囲気も分ったのですから、投宿先のホテルに戻って、会社への連絡を数件済ませて、
フライトの予約をするのですが、遅い時間は取れそうにありません。
午後4時までなら空席もあるのですが、それ以降は満席なのです。
仕方なく、その時間に決めるのですが、いずみとは1時間以上も早いフライトになります。

11時にチェックアウトを済ませて、隣のホテルのフードコートに向かいます。
昨夜、ホットチョコレートをテイクアウトした店で、コーヒータイムです。
11月末にしては暖かな一日になりそうです。
暫く時間を潰してから、昨夜、いずみとその男性が話していたホテルのすぐ傍のコンビニで、
サンドイッチとホットコーヒーを購入します。
その足で、JR駅前から出ているホテル専用循環シャトルバスに乗り、いずみとの約束のホテルに
向かいます。

約束時間の10分前に、待ち合わせ場所に着きます。
いずみはまだ来ていないのですが、私達のセオリー通りなら、姿を現してもいい筈です。
ドア越しに日本庭園を見るでもなく、何となく眺めていると、

「あなた!ごめんね、遅くなって」

ハーフコートの前を開けたままですから、急いで来たのが窺えます。
その下は、ニットのセーターとパンツの組み合わせです。

「今来たところだからね。セオリーだろ?」
「ちょこっと遅れたセオリーね、私は」
「時間がないから、行こうか?」

何度か散策したことがありますから、建物の配置などはそれなりに分っています。
小川を渡って少し行ったところの東屋まで来ます。

「ここにしようか?」
「私もそう思っていたの。コンビニの袋がお昼ご飯?」
「はははっ、寂しいね、サンドイッチとコーヒー、いずみはおむすびだろ?」
「楽しいわよ、お外で食べるのって」
「さてと、食べながら話そうか?」

二人並んで座ります。

「聞こうか?計画があるんだろ?」
「大袈裟でしょ?でも、あるかな?」
「30分もないんだから、急ごうか?」
「できるだけ録音しようと思うの。それとね、携帯を繋いだままも。あなたに聴いて欲しいから、
そうしようと思うの」
「どちらかでも有効に働けば、真実と事実が分かると思うね」
「うふふっ、私の事実は何もないってことだもの。木下さんは一安心だろうけど、奥様が来れば
一波乱あるかもしれないでしょ?」
「いずみが孕んでいない事を知らなかったならという、前提がいるけどね」
「オンナ遊びは容認してるみたいな、そんな感じだから余り気にしないかもしれないでしょ?
でも孕んだとなると、甘い顔は出来ない、そういうスタンスで責められそうだわ」
「まぁ、いずみの証言ですんなり矛を収めるかもしれないだろ?」
「そうならいいんだけど。見えないって何か不安だわ」


[69] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2024/12/22 (日) 18:24 ID:o0.Gfgyg No.197000



食べ終わって直ぐに、いずみは日本庭園を通ってそのホテルに向かいます。
私は玄関前に戻り、シャトルバスに乗り、遅れてそのホテルに着きます。
打ち合わせ通り正面玄関ではなく、フロントより離れたもう一つの玄関からロビーに入ります。
そこからは、フロント迄が一望できますから、いずみが何処にいるかも、目を凝らせば見つける
ことが出来そうです。

時間は午後1時を過ぎているのですが、いずみどころか、木下さんの姿も見えません。
ただ、ソファーに座っているとしたら、近く迄行かない限りその判別は出来そうもありません。

少し近付こうとした時、いずみから着信です。


『見える?フロントの前を歩いてるの』
『分かったよ。遅いね、もう会っててもおかしくないだろ?』
『佐々木小次郎かな?おトイレでお化粧直し。綺麗な奥様って好きでしょ?』
『余裕だね?』
『紛らわしてるの。何だか緊張してきたわ』
『木下さんは?』
『ソファーに座ってると分からないでしょ?あなたが来るまでに会ってたら、私を捜すことに
なるもの。それならバレる事も考えられるでしょ?だから・・・』
『佐々木小次郎?』
『そう!・・・あっ?手を振ってるの見えるでしょ?』

私の居る所から二つ目のブースに居るのが分かります。
L字型のソファーに並んで座っている中年の男女、木下さんと奧さんなのは間違いないでしょう。
私からは二人の背中が見えますから、いずみが座れば、彼女の横顔が見れる位置関係です。
案の定、予測した通りのところに腰を下ろします。

私はすぐ傍のL型のソファーに、携帯で話している風を装いながら、いずみと同じ向きに座ります。

携帯をバッグに入れたのでしょう、ガサゴソと不快な音が聞こえます。
挨拶らしい声も聞こえるのですが、小さ過ぎて判別できません。
少しして、音声が聞き取れるようになります。

『呼び出して悪かったね』
『お話があるとか・・・』
『いずみさんと言いましたね?』
『はい・・・お話しは?』
『何か隠していることはないかしら?』
『・・・なんのことか、具体的に聞かせてもらえませんか?』
『不躾で悪いんだけど、お金なの?』
『おいおい、それは言い過ぎだろ?』
『あなたは黙ってて!いいわね?』
『お金?私が?』
『図星でしょ?』
『意味不明ですわ。お金を要求するとでも?そもそもその理由は?聞かせて下さい』
『この人のオンナ遊びは容認してますの。だから、あなたが、いずみさんね、関係を持ったと
聞かされても驚くなんてあり得ないの』
『ご存知なんですね?』
『いずみさんの事は、この件で初めて聞かされたの。以前にも同じようなことがあってね、
大変な思いをしたから、そうならないように手を打ったのに。その真相を知りたくてね、
こうしてお会いしてるの』
『真相とおっしゃられても何のことだか。ねぇ、話してくれないの?』
『参ったね・・・考えられないから、僕じゃないと説明してるんだが』
『奥様に?』


[70] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2024/12/28 (土) 12:16 ID:oCUlTrYE No.197094



『あなたは黙っててくれる?お金を必要としている様には見えないけど、そうなら犯罪になるって
お分かり?』
『その理由も聞かされないで、犯罪者呼ばわりですか?名誉棄損で告訴もできますから、
それでもいいんですね?』
『まぁ!ご立派な事。ありもしない事をでっちあげて、金銭を要求するのは立派な犯罪ですのよ。
お分かり?』
『失礼ですが、何度もお聞きしている私がいつまでも冷静にいられると思いますか?
こうしてお話ししてる時間が無駄に流されていくのは耐えられません。
何を根拠に金銭を要求していると思われるのか分からないのですが、これ以上無駄話にはお付き合
いできません。まだ、引っ張られるのなら顧問弁護士に引き継ぎますが、それでいいですね?』
『済まないね、いずみさん・・・決め付けは良くないんだが、話しが飛躍してしまうところが
あってね、もう少し冷静に話せないかな?』
『今なんと?顧問弁護士とか、ほんとに?』
『えぇ、それが何か?』
『会社を経営されてる?』
『これからですわ。今は地固め、木下社長にも色々とお世話になっていますの』
『そういうお付き合いなのね?夜職ではないのね?』
『そう見えますか?もしかしたら愛人とでも?』
『ごめんなさい、先走ってしまって。決め付けはいけないと分かっているのに、許してくれる
かしら?』
『こうしてお会いしている理由を聞かせて頂ければ。いいですか?』
『ほんとにごめんなさい。ある人からいずみさん、その時はお名前も聞かなかったのね、主人に
聞いたら分かると。お聞きしないと始まらないから、呼び出しってもらったの。単刀直入にお聞き
しますね?妊娠されていますか?』

一瞬、時が止まったような不穏な空気が伝わって来ます。

『・・・えっ?私が?・・・可笑し過ぎるわ。何処を持ってそう思えるのかしら?
ほんと、可笑しいわ』
『そう言っただろ?あり得ない事だからね』
『ほんとなのね?』
『疑うのなら、産婦人科に行きましょうか?奥様も一緒に。もし、妊娠していなかったら、どう
責任を取られるのか、聞かせてもらえますか?』
『責任って・・・疑って悪いんだけど、ほんとにほんとなのね?』
『何度も言わせないで下さい。先程も話しましたが、私にとっては貴重な時間を割いてこの場に
来たのです。ですから、無駄な時間を過ごせるほど暇ではありませんわ』
『分かりました、いずみさんを信じますわ。気分を悪くさせたのなら謝ります。私達の事情が
事情ですから、あり得ないとは思っていたのですが、そう聞かされると一抹の不安が湧いてきても
おかしくないでしょ?そうよね、あなた?』
『だから、僕じゃないと何度も・・・』
『嘘じゃなかったのね?』
『嘘?・・・認められてる身だよ、裏切ることなど考えもしないよ』
『あなたでも・・・他の誰でもなかったのね?』
『そういう口の利き方って、失礼じゃないですか?あたかも・・・』
『ごめんなさい、安堵したら気が緩むのね。余計な詮索は無用ですわね』
『プライバシーって繊細そのものでしょ?入り込まれたら、気持ちのいいもじゃないのはお分か
りでしょ?』
『そうですね、私達の事情もそうですから。実はいずみさんにお話ししていないことがあって、
当然主人からですが。あなたから話したら?』

木下さんが戸惑っているのか、何も聞こえない数秒が経過します。


[71] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2024/12/28 (土) 15:31 ID:oCUlTrYE No.197096



『・・・あれだね。話さなかったのは、知られたくなかったのがその理由だが、話せばその理由を
聞かれると思ってね、実は・・・』
『じれったいわね、私が話すわね?』
『任せるよ』
『この人ね、愛人がいるの。女好きなのは分かっていたのね・・・ごめんなさい、あなたのことは
・・・』
『気にしないで下さい。お仕事上といっても関係を持ったのは事実ですから』
『そう言ってもらえたら・・・その愛人に子供を産ませたの。私も了承してのことだから、
それはそれでいいのね。でもね、ほんとは許せない事でしょ?私が知った時は、臨月に入って
いたのよ。許すも許さないも、そんな悠長なことを言ってる場合じゃなかったから、
仕方なくなの。でも、またそうならないとは言えないでしょ?だから、主人に避妊してもら
ったの』
『パイプカット?・・・木下社長が言った嘘の意味が分かったかも?ですね』
『嘘はついていないよ。これで分かっただろ?』
『そうね・・・あの子も何もないものね。そう考えれば、妊娠なんてある筈もないわね。
もっと冷静にならないと、恥をかいただけね。ほんと恥ずかしいわ』
『分かって頂ければ、私も足を運んだ甲斐がありますわ』
『ほんとにごめんなさいね。貴重なお時間を取らせてしまって。もしお時間があれば、お食事を
ご一緒できないかしら?』
『お夕食ですか?』
『お詫びもあるのですが、あなたの事をもっと知りたいと思って。楽しくお話しができそうです
もの』
『申し訳ないのですが、先約がありますの。お誘いは嬉しいのですが、次に機会があればその時に
でも』
『無理は言えないわね・・・じゃ、機会があれば、それでいいですね?』
『えぇ、その時が楽しみですわ』
『じゃ、私はこれで・・・あなた、いずみさんにお話しがあるんでしょ?』
『ないことはないが・・・』
『あなたを疑って悪かったわ。だから・・・分かるでしょ?』
『そういうことなら・・・いずみさん、少しは大丈夫かな?』
『えぇ・・・少しなら・・・奥様!根も葉もないデマを流した人にお灸を据えて下さいね。
不謹慎極まりないと伝えて頂ければ、私の気も少しは晴れると思いますから』
『必ず・・・次にお会いした時にご報告するわね。じゃ、私はこれで・・・』

立ち上がった木下さんの奧さんは、数歩歩いてから振り返って、木下さんを呼んだようです。

『何かな?少し待ってくれないか?』
『えぇ・・・言い忘れかしら?』

淡いグリーンの少し長めのワンピース、手には深緑のウールコートを持っています。
今日の気温にはそぐわないようなコートですが、帰りが遅くなるのなら、そのつもりだったのなら、
妊娠疑惑は初めから信じていなかったと思えるのです。
木下さんの相手をした女性の素性を見定める、そのためのお膳立てだったように受け取れます。

木下さんが立ち上がり、いずみに背中を見せたその隙に、私の方に顔を向け、曖昧な表情を見せ
ます。
次の展開が見えないと言いたげです。
私は頷いて、右手で持った携帯を左手人差し指で指し示し、そのまま体をずらして、いずみに背中
を見せます。

『分からないが、引き続き監視だね』
『お願い!』


[72] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2024/12/28 (土) 16:49 ID:oCUlTrYE No.197099



小さな声でもシッカリ聞こえますから、バッグは分からない程度に開いているのでしょう。
何も聞こえない数秒が続いて、

『二人揃ってフロントに行くみたい。もしかしたら・・・』

顔を上げてフロントに目線を移すと、いずみの言った通りなのです。

『奥さんが濁していただろ?』
『そういうことね』
『粋な計らいじゃないか?』
『お詫び?』
『眼鏡にかなった、そういうことだろ?』
『どうしよう、考えてもいなかったわ』
『木下さん次第かな?いずみなら手の平に乗せられるだろ?』
『奥様の計らいを無下に断れないでしょ?そうなってもいい?』
『木下さんとはまだ続くからね。あまり時間がないだろ?手短に切り上げるように、いいかい?』
『フライトを遅らせて良かったわ。これがほんとの怪我の功名ね?』
『おっ?フロントを離れて、そこで別れるみたいだね。ここからは、携帯は危険だね。
一旦切ろうか?後はいずみの判断に任せるよ』
『うん・・・そうなるまではこのままでいいでしょ?何もないかもよ、うふっ』

予測していなかったとはいえ、直ぐに切り替えられるのは、天性のモノかもしれません。

戻って来た木下さんは、先程のソファーに腰を下ろします。

『フロントに行ったのは分かるだろ?』
『奥様が?』
『食事の代わりに、お詫びの印だそうだよ』
『いいの?木下さんの事を達観してる?』
『見る目があると思ってるのは確かだね』
『私なの?』
『どちらもかな?・・・どうする?』
『お話があるんでしょ?あれって、フェイクなの?』
『妻はね・・・』
『じゃ、あるのね?ここでは?』
『人の目もあるし、見られても差し支えは何もないが、落ち着いて話せるかな?』
『何か含んでる?』
『含んだ方がいいかな?』
『少しって言ったでしょ?1時間なら構わないけど、お話しが先でしょ?それなら・・・
それは無理じゃない?』
『含まない事にしようか?』
『そうね・・・時間の余裕って大事でしょ?』
『じゃ、行こうか?』
『お話しって何だろ?お手柔らかに!』

二人揃って立ち上がります。

私に視線を送ってから、バッグに入れている携帯を切ります。
いずみは、待っていた木下さんの左腕に右手を廻して並んで歩き出します。
向かう先は分かっているのですから、ここから後は、いずみの報告を待つしかありません。


[73] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2024/12/28 (土) 19:04 ID:oCUlTrYE No.197101



腕時計は午後2時前を指しています。
羽田空港までは30分程ですから、フライトまでの時間を考えれば、十分余裕はあります。
その待ち時間が私の楽しみではあるのですが、”忙しいって嘘でしょ?”と何度もいずみから
嫌味を言われています。
時間、空間の楽しみ方は人それぞれでしょうし、それに口を挟まれたくないのは誰しも同じだと
思います。
ところが、今回は石黒さんとひろ子という存在が、私の自由を奪うことになりそうです。
フライトの時間は1時間以上離れているのですが、2時30分頃に空港に着いたとしたら、
その時間までに二人は空港に到着していても何らおかしくないのです。
いつものように出発ロビーでコーヒーなどと悠長に構えてはおれませんから、できる限り素早く
チェックインを済ませて、ゲートまで急ぎます。

無事にゲートまで来たことが、”無事”と表現すること自体、不思議な気持になります。
ひろ子とは、東京では絶対に顔を合わせないと決めているからです。
二重生活なのは間違いないのですが、いずみの仕事による東京滞在なのですから、私と三人の
生活の場ではないと知らしめるためでもあります。
東京には仕事でもプライベートでも、年に何回も来ていますから、偶然に遭遇することもないとは
言えないのですが、いずみの行動を事前に把握することで、ニアミスも避けられているのです。

ゲート前の椅子に坐って、愛用の雑誌を読んでいると、いずみから着信です。
腕時計に目をやると、3時を回ったところです。


『どこなの?』

唐突なのはいつものことです。

『僕の事より・・・』
『あっ?!ほんとだ!重大なお話しじゃなかったのね。だから、大事なあなたの事が気になる
でしょ?』
『纏めるね、はははっ』
『ホントはね、ひろ子ちゃんかな?』
『僕は二番手かい?』
『ひがまないの。二人の宝物でしょ?願っても叶わないのに、神様が授けてくれたの。
感謝しかないでしょ?』

すこぶる機嫌がいいのには、木下さんの存在が見え隠れします。

『無罪放免がそうさせてるのかい?』
『そうって?いつもと変わらないでしょ?・・・あれ?最初から何もなかったんだもの。
因縁を付けられるって初めての経験かな?』
『大袈裟だろ?事実誤認程度の軽傷だね』
『そうかな?そうかもしれないわ・・・あなたね、まだお返事してないでしょ?』
『そうだったね、ゲート前だよ』
『ひろ子ちゃんとニアミスはなかったのね?』
『気を遣うよ。早く東京から引き揚げて欲しいね、はははっ』
『まだ少しは・・・思い出したわ。木下さんのお話しって何だか分かる?』
『軽くいなされたね。まぁ、話し難いことは分かるが、雲を掴むような話なら見当もつかないね』
『重大なお話しじゃないって言ったでしょ?』
『それでもね、皆目だよ・・・ん?来年もエロ小説に関わる、これかい?』
『それって前に話したでしょ?まだどうなるかは分からないって。木下さんはまだ決めていない
みたいだけど、要請されると思うわ。それじゃないの?降参?』
『木下さんだから、それから離れられないだろ?その関係とは思うが・・・』
『近いかな?・・・分かった?』
『詰め切れないね。降参だよ、はははっ』


[74] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2024/12/29 (日) 15:24 ID:D5JiWbII No.197114



『分からない人が笑う?おかしいでしょ?うふっ。ではお返事です。あのね、私の性遍歴を
書いてみないかって』
『重大じゃないかい?』
『だって、お断りしたんだもの。そんな時間ってないに等しいでしょ?あれ?あなたみたいだわ。
それならお話以外の時間ってあったと思うでしょ?』
『含まないと言って含んだのかい?』
『ちょこっとかな?』
『木下さんもオトコだね、はははっ』
『皆同じでしょ?合わすかかわすかは、私次第。どうなったと思う?』
『かわすが”交わる”のかわすなら、合わすと同じ意味合いじゃないか?』
『ほんとだ!・・・でも、交してはいません』
『はははっ、もういいよ。それより何処に居るんだ?』
『ちょこっと待ってね?木下さんとのことを報告させて下さい。いいよね?』
『あぁ、要領よく』
『ホントは含んでいないの。腕を組んでお部屋まで、それって見られたでしょ?あのまま、
ほんとよ。お部屋に入って”チュッ!”ってキスしたけど、いつも言ってる挨拶のキスなの。
窓の傍の椅子に坐ってお話しって思ったの。そう思うでしょ?だって、お話しなんだもの』
『じゃなかった?』
『うん・・・ベッドで。誤解するでしょ?”含んでいるじゃないか?”って。違うの、お洋服を
着たままベッドヘッドにもたれて。手は繋いだわよ、”ピロートークと同じような状態で
話そうか”って、木下さんが。
今日の事を謝ってくれたの。妊娠騒動の出処については何も言及しなかったのね。それって、
私が分かっていると思ってるからだと理解したの。
奥様が”あの子”って話していたことね、オーナーから聞いていたでしょ?だから聞こうとは思わ
なかったの。違ってたら驚愕だったけど、ユカちゃんの事だもの、一安心かな?あれ?奥様じゃ
ないのに、うふふっ』
『違う女性でも驚かないだろ?気になっていた事実もクリアーしたんだから、今夜は枕を高くして
寝れるんじゃないか?はははっ』
『思うのね、最初から疑ってた訳じゃないって。木下さんを信じてるのね、あなたも感じるものが
あったでしょ?』
『会話の一コマと、服装から類推したらね。いずみと話したかった、素性を知りたかったと
思えるね』
『間違った女性を選ばないと信じてても、ってことでしょ?妊娠疑惑でお金を要求する女性なの
か、見極めたかったのね?もしかしたら、私達と同じように仲の良いご夫婦かもよ。
そう思わない?』
『かな?・・・報告は?』
『先に話したから、それだけかな?』
『いずみの執筆の話に?それだけ?』
『うん、1時間かな?3時にはホテルを出たいって話していたから』
『まだあるだろ?全て話さないと自分を裏切ることになるんだろ?』
『うん・・・なんだろ?来年の事ね、教室の物件とかも話したわ。お仕事は幼児教育のことだけ、
他の事は何も。ただね、私の執筆の事ね、木下さんらしくないのよ。食い下がるっていうの、
他の人ならしつこいって思える程なの。木下さんだから許せるみたいな、そういう人っている
でしょ?例えば、あなたとか?うふっ』
『比較対象?朝令暮改もいいところじゃないか?』
『あれ?ごめんね?失言です・・・怒ってる?』
『それだけか?』
『食い下がられたのが長かったかな?でもね、1時間って長いようで短いような、お話しには
微妙な時間かな?でも、しっかり話せたから、ジャストタイムだったと思うわ』
『3時に?』
『気になるの?時間のこと』
『そうじゃないが、時間を決めて話したと言って欲しかったね』
『ほんとだ!さっきも話したけど、3時までにはホテルを出たいって。ほんとよ、だからそれに
収束するようにお話をしたの。ねぇ、怒ってるの?』
『それが全てか?』


[75] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2024/12/29 (日) 18:31 ID:D5JiWbII No.197117



『うん・・・あなたは気にしないから話さなかったんだけど、挨拶のキスって言ったでしょ?
それとね、お部屋を出る時にお別れのキス、それだけよ、接触した・・・あっ?手を繋いだ
ことも話したでしょ?・・・あのね、少しは含みたかったみたいなの。でも、そっとかわしたから
分かったみたいよ。だからそれ以上は・・・ホントにほんとだから。
あのね、あなたの言いたいことって分かるの、妊娠疑惑が晴れて気が緩んで、そういう展開に
ならなかったのか、それを危惧してるんでしょ?私ね、何度も指摘されてきたでしょ?
もう流されないって心に誓ったの。手始めって言ったら木下さんに失礼なんだけど、組し易い人
でしょ?そういう意味ではプラクティスだもの』
『話の表層は見えてるからね。見えない部分を話すのが真の報告だろ?』
『ごめんなさい・・・だったら、話していない私の気持ち、まだ決めてはいないから、いいか
なって。あのね、執筆の事ね、断わったのは断ったのよ。でも、木下さんに食い下がられて、
”急がないから考えて欲しい”って、その時に曖昧なお返事をしたかもって、ちょこっと後悔
してるの。あなたに相談するのもいいかなって、曖昧な気持だったわ。
木下さんには色々と協力してもらってるでしょ?それもあるのね、やっぱりあなたに相談した
いし、これからの事も含めて対応を決めたいの』
『もっと早く話さないと。報告は事象だけではダメだろ?分かったか?』
『はい、分かりました・・・ねぇ、まだ怒ってる?』
『僕の質問に答えたらね?はははっ』
『何だったかな?・・・あれね?空港行の電車待ち、ホームに居るの。騒がしいでしょ?』
『並んでいないんだろ?』
『だって、並べないもの。ホームの隅っこで一人寂しく、嘘よ、うふっ』
『4時頃だね?空港に着くのは』
『あなたは機上の人ね?・・・あれ?ひろ子ちゃんね、展望デッキに居るって。あっ?!真っ先に
話さないといけないのに、ごめんね?』
『僕は二番手だからね、はははっ。僕の前に掛けたんだろ?』
『だって、宝物なのよ、一番大事だもの。あなたも大事だけど、二番で我慢してくれる?』
『慣れてるからね、二番は居心地がいいよ、はははっ』
『ひがまないでね?』
『あぁ、大阪空港で待ってるよ』
『いつものところね?あれよ、ひろ子ちゃんが展望デッキで手を振ってくれるかもよ、うふっ』
『はははっ、通路側だから、見れないのは残念だよ』
『ホント残念ね?じゃ、待っててね。愛してるわ』

比較的長く話していたのですが、いずみとひろ子のフライトまでには十分時間はあります。


搭乗開始のアナウンスがあり、私のグループ名を呼ばれる少し前に、石黒さんから掛かって来ます。

『お疲れ様です、うふっ』
『ナニかな?』
『いずみさんから連絡はありました?』
『ついさっきまで話していたが、緊急連絡かい?』
『木下さんの事、聞きました?』
『執筆の事かな?』
『断ったらしいんですけど、私からもお願いして欲しいって』
『ほ〜、執着してるね』
『でしょ?何か裏があるように思いませんか?』
『どうだか・・・蓋を開けてみるまでは分からない、そういうスタンスで臨めばいいとは思うね』
『なんか、切羽詰まってるような、そんな雰囲気も感じられたかな?』
『いずみはそうは言ってなかったが』
『本人には見せないかな?なんか、気になったから連絡したの。何もなければいいけど、
心配し過ぎね?』
『だね・・・僕の声が聞きたかった?はははっ』
『直球?でも、そうかも?うふふっ』


私以外は、いずみへの連絡は午後11時30分過ぎからと決めています。
ただ、緊急連絡については、石黒さんの携帯と決めていますから、彼女に連絡が入ったのは理解
出来ます。
仕事中は、全て、石黒さん宛となっていて、私でさえもそのルールを厳守しています。
ですが、事前に取り決めていれば、それに捉われることもありません。





注記

以前、いずみは、エロ小説の乱交以外では、木下さんと会っていないと書きましたが、その当時、
今回の件を投稿するか迷っていたのは事実です。
ですから、整合性に問題があるかもしれませんが、ご了承下さい。


[76] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2024/12/31 (火) 18:23 ID:rhgaMG7s No.197166



妊娠疑惑の一件から、これといった出来事など、いずみから聞かされることもなく、12月末日に
差し掛かって来ます。

その日は、楊社長との約束が最後になる日なのです。
世の中は、クリスマス一色に彩られています。
いずみは、楊社長と12月末の木曜日の夜から金曜日の午前中まで、二人で過ごす予定なのですが、
金曜日の午後1時に私が呼ばれています。
今までと同じなら、いずみは午前7時前にそのホテルを出るのですが、最後ということもあって、
午前中一杯迄ホテルで過ごすことになります。

私は金曜日の朝早く移動し、空港で軽い昼食を摂ってから、そのホテルに向かいます。
楊社長と過ごす最後とは言え、何とも複雑な思いが込み上げてきます。
性行為で結ばれる二人には、特に何の感慨もありません。
ただ、事後の二人に会うことには、少なくない抵抗を感じます。
嫉妬と言えるものは、忘却の彼方なのですから、それではないと断言できます。
それなのに、スッキリしない気持は何なのか、自問しても帰って来るのは、こだまと化した自分の
情けない声なのです。


約束の10分前に、指定されたカフェに着きます。
何度か、ここで楊社長と会ったことが走馬灯のように蘇って来ます。

入口を入ると、ウエイトレスが近付いてきます。

「小田様ですか?」
「えぇ・・・」
「お待ちになられています。コートをお預かりします、こちらへ・・・」

ネームプレートは”野田”です。
何だか懐かしくもあり、小さくない後悔が思い出されます。

一番奥まったテーブルですから、以前と全く変わってはいません。
ウエイトレスの待機場所からは、死角になっていますから、以前のように、多少のお遊びも可能
ではあります。
背中を見せて坐っている楊社長に、ウエイトレスが屈んで耳打ちすると、ゆっくり立ち上がって、
振り返ります。

「久し振りですね。お呼び立てして申し訳ない」
「最後と聞いていますから、この1年の総括など話されるのかと、少なからず期待しています」
「はははっ、まぁ、立ち話も、坐って下さい」
「えぇ・・・ところで・・・」
「いずみさんなら、トイレですよ。女性は大変ですな、はははっ」

以前にも同じパターンがあったことを思い出します。
通路側に座っている楊社長の前に腰を下ろします。

「遅れるのが常套のようですね?」
「嫌味ですかな?」
「いや、いや、そういうつもりではないのですが、約束の時間に揃わない理由が見えないのは、
何とも不思議なものだと、そう思ったからです」
「小田さんは時間厳守だと聞いていますが、少しの余裕も必要だと、そう思いませんかな」
「余裕を持たせるだけの時間は、優にあったと思いますが、如何ですか?」
「はははっ、小田さんらしい、一本筋が通ってる。だがね、張り詰めていたらポキッと折れる
こともないとは言えないだろ?そこは寛容な精神で対応するところじゃないかな?」
「いずみは私以上に時間には厳しいのですから、不思議だと思っても間違っているとは思えない
ですね」
「不思議?二回もですか?確かにその言葉通り、つかみどころがないというか、それなのに、
驚くような発想力の持ち主、それがいずみさんだね」
「話がすり替わっていませんか?」
「まぁ、まぁ、そう目くじらを立てなくても、もう直ぐ戻って来ますよ」
「時間にルーズなのは、信用できないと常日頃言っているのにですよ。何か訳があるんでしょ?」
「だから、もう直ぐ分かるよ、はははっ」





注記

ここからは、その年最後の出来事の始まりで、今年最後の投稿でもあります。

新しい年も引き続き投稿していきますが、そう多くはありません。
最後まで読んで頂ければ幸いです。


[77] Re: 絆のあとさき 5  :2024/12/31 (火) 20:33 ID:En7fsfuw No.197173
小田さん、今晩は。
お忙しい中、投稿を続けて頂きありがとうございます。
いよいよ、「絆のあちさき」も最終にさしかかりましたね。
本当にご苦労様です。よいお年を。


[78] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2025/01/04 (土) 12:29 ID:3U5hAgGs No.197248


シンさん、コメントをありがとうございます。
加えて、明けましておめでとうございます。

新年を迎えるにあたって、感慨深いものがあります。
それは、本投稿の完遂迄、残り少なくなっていることです。

一年と決めて投稿を始めたのですが、この有様です。
計画性の無さを露呈ているようで、ちと恥かしくもあります。

このような私に、長きに亘って温かい言葉を掛けて頂き、
感謝に堪えません。

では、最後まで読んで頂けることを願っています。


[79] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2025/01/04 (土) 13:24 ID:3U5hAgGs No.197252


続きです。




楊社長を見詰める私の瞳に、満面笑顔のいずみの姿が映って来ます。
驚いた事に、いずみと並んで、それも微笑を湛えた柊さんも、続いて映し出されます。

「ごめんね?遅くなって。時間厳守だったでしょ?」

最初は私に、次に楊社長に話し掛けている様です。
楊社長と顔を見合わせて、どちらが口を開くのか、一瞬、戸惑います。

「小田さんからだね、はははっ」
「時間を守らないのは、常套かと議論していたところだよ」
「まぁ!嫌味なの?あなたらしくないでしょ?」
「だったら、時間厳守だろ?」
「そうだけど・・・話してもいい?」

楊社長に同意を求めます。

「先に、時間厳守。いずみさんの言った通り10分前に来たよ。以心伝心かな?はははっ。
柊とも久し振りだろ?いずみさんもそうだったから、時間を忘れて・・・まぁ、仲直りには
時間がかかるからね。まぁ、そういうことだよ」
「いいのね?私から話さなくて」
「今ので分かっただろ?・・・突っ立ってないで座らないか?」
「えぇ・・・」

戸惑ういずみに、

「まだ引き渡しは終わっていないだろ?はははっ」
「そうね・・・じゃ、社長の隣に」
「待ってくれよ。移動するから・・・」

奥の席に移った楊社長に、柊さんが、

「社長、私はこれで・・・」
「そうだったね。いずみさんと仲直りできたかな?」
「えぇ、わだかまりもなにも、綺麗さっぱり流せましたから、仕事上でもギクシャクすることなく
楽しく働けると思います」
「じゃ、証拠だね?」
「はい・・・いずみさん、これからも仲良くしてね?」

屈んで、いずみの頬に唇を触れさせます。

「違うだろ?ほんとに仲直りしたのか?」
「そうよね、いずみさん?」
「社長はね・・・いい?・・・チュッ!うふふっ、これでしょ?」

柊さんの頬を両手で挟んで、彼女の下唇に唇を重ねます。

「まぁ、いいだろ?濃厚なプレイは鑑賞したからね。じゃ、後で連絡してくれるか?」
「はい・・・小田様、お時間が取れましたら、お相手をさせて頂けませんか?」
「一年前に、そのような話しがありましたね?いいお返事が出来るか分かりませんが、考えて
おきます」
「はい、朗報をお持ちしています。では、社長、後ほどご連絡します」
「あぁ、早く行きなさい、はははっ」


[80] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2025/01/04 (土) 17:51 ID:3U5hAgGs No.197265



柊さんがカフェを出るや否や、ホットコーヒーが運ばれてきます。
そういう設定だったようですから、話しの中でも、私の意識が及ばない事柄が、隠されている
のかもしれません。

柊さんが私を誘ったのは、単なる挨拶程度だと理解するのですが、以前は楊社長の命を受けて
いたのですから、今回もと推測しても、大きく逸れている様には思えません。

カップに一口付けた楊社長が、

「ここのコーヒーは口に合うといくか、小田さんも納得でしたかな?」
「まぁ、そうですね」
「さてと・・・1時になったね。約束の10分前ではなかったが、時間厳守には間違いないだろ?」
「そういうことなら、そうなりますね」
「10分前にはここに居たかったの。でも・・・急な展開になって・・・」

楊社長の横顔に目線を合わせて、

「・・・お話ししても?」
「いつまでも仲たがいされていたら、直接関係ないとはいえ、仕事に影響しないとも限らない
だろ?」

私に向き直ります。

「私の認識では、社長のお話しとは少し違うの。彼女は関連会社に転籍になったでしょ?
顔を合わすこともほとんどなくなったのね。だから、彼女には失礼なんだけど、忘れていたと
言っても過言ではなかったの」
「いずみさん、社長は止めないか?柊もいない事だしね。引き渡しは終わっていないが、
フランクに話したいからね」
「フランクに?いいのね?」
「ベッドではそうだろ?はははっ」
「イヤな人ね。主人の前では控えて頂きたいわ、うふっ」
「これは失礼!まぁ、そのような雰囲気と言えばいいかな?分かるだろ?」
「気にしないで下さい。続けないか?」

以前のように体の接触もなく、それなりの距離感を保っていることからも、いずみの立ち位置は
楊社長の隣に座っているとはいえ、中間地点で方向を見定めていると言えそうです。

「彼女が何となく嫌っていることは分かっていたの。理由は・・・いいのね?話しても?」
「取り繕うことはないからね。思った通りに話さないか?」
「楊さんの愛人でしょ?それは今も変わっていないし、私が期間限定の愛人だとも認識してると
私は理解していたの。だから、二人の間に小さな気持ちのスレ違いはあっても、大きな摩擦は
ないと思っていたの。それがね、先月の事だけど、ある噂を流されて困った事態になったの」

何を指しているかは、直ぐに理解できます。
いつものように目で合図を送らないのは、表に出なかったとはいえ、私がその現場に立ち会った
事実を指しているからでしょう。

「小田さんに話していないのか?」
「楊さんの汚名になる事は、極力避けるのが愛人の務めでしょ?」
「それは有難いが・・・元はと言えば・・・違うのか?」
「私の話し方がいけなかったのは、そうなのよ。でも、飛躍し過ぎでしょ?」
「冗談交じりにだからね。柊の受け取り方に問題があったのは間違いないが、彼女も謝罪した
だろ?そのために時間を用意したんだからね」

二人で過ごす時間を、午前一杯迄延長した理由が分ってきます。


[81] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2025/01/04 (土) 23:05 ID:3U5hAgGs No.197273



「今朝になって急遽でしょ?ほんとは計画的だったって白状しないの?」
「今更だろ?彼女が来ると話したら、納得の表情に見えたからね」
「私が怒ってるって話したんでしょ?それ以外に何があるのって思うわよ」
「分かり易いか・・・まぁ、そうだろうね」
「だけど、楊さんが言ってた時間には来れなかったでしょ?それなのに仲直りって、
おかしくない?」
「フェイクなのか?」
「彼女は知らないけど、私は100%とは言えないかな?だって、時間どころか誰かさんとお楽しみ
の後ってバカにしてない?」
「分かったのか?」
「私はオンナなのよ。朝までヤッてた・・・あれ?ちょこっとヒートアップしたかな?
それって直ぐに分かるわよ」
「そういうつもりじゃなかったが、こちらも急遽だったのでね。仕方なくだよ」
「ほんとに?」
「信じられないか?」
「信じたい、かな?」
「だったら、信じろ、だね、はははっ」
「そうしたいわ。そうじゃないと、この一年間は何だったのって疑問しか残らないでしょ?」
「一杯残してくれたじゃないか?明日に繋がるか種を。違うか?」
「それってお仕事の事?それとも・・・」
「はははっ、その次は言わぬが花だろ?」
「そうね。どちらもそう思ってくれるのなら、やりがいはあったかな?うふっ」
「じゃ、信じるだね?」
「うふふっ、そうだとして話すわね。でもね、10時になるなんて誰が予測できるの?」
「色々と話すこともあったようだから、大目に見てくれないか?」

私が置いてきぼりにされてる感覚になります。
柊さんとベッドを共にした男性が誰であれ、私には関係ない事です。仲直りの説明にしても、
要領を得ていないのは残念です。

「済んだことには拘らないんだろ?それでいいじゃないか?」
「えっ?・・・うん、そうね。そうかもしれないけど、木下さんとは驚いたわ」

私には、忘却の彼方ほどの記憶しかないと言い聞かせます。
柊さんと木下さんが関係を持っていると聞いても、何ら驚くこともありません。
いずみを木下さんに紹介したのは、楊社長なのですから、推して知るべしです。
いずみが驚いたのは、他の理由かもしれません。

「ん?・・・聞いたのか?」
「おトイレで・・・だって、仲直りしたでしょ?それなら教えてもらってもいいと思わない?」
「なるほど。正直に返答するとはね」
「私が楊さんと会うことも、後で彼女が合流することも、木下さんが何も知らないのなら、
タイミングが良過ぎるでしょ?」
「私じゃないよ。柊しかいないが・・・そう考えれば、仲直りはフェイクとしか思えないね」
「もしかしたら、彼女から誘ったのかも?そう考える方が自然じゃない?」
「木下さんは何も知らなかった、そういうことかな?」
「木下さんって、私と甲乙つけ難いほど時間厳守の人よ。その時間が分っていたのなら、
10時にはならなかった。彼女がその時間までと話していたと思えば、納得でしょ?」
「8時と決めていたからね。そうなら、やっぱりフェイクか・・・困ったものだね」
「そうとも言えないかな?ほんとの事は分からないわよ。あくまでも私の推測だから、そう思って
聞いてね?・・・あなた、楽しい話じゃないけど、もう少し付き合ってね?」

”小田様”と呼ばなかったことで、いずみの立ち位置が、私に近づいていると知らせている様です。

「もういいだろ?仲直りがフェイクだったと分かったんだから」
「私の理解が正しいか判断して欲しいの。楊さんにも関係してくるでしょ?」
「ないとは言えないね。じゃ、聞こうか?」
「あのね、楊さんに叱られて、仲直りするように諭されたんでしょ?それで、今朝の時間を用意
した、そうでしょ?」
「その通りだよ。前々から気にはなっていたんだが、いい機会だろ?新しい年に似合わないからね、
いがみ合うのは」
「あのね、さっきも言ったけど、私はそんなに気にしていなかったの。
だから、とても驚いたわ・・・」

”あッ?”と小さく呟いて、楊社長に向けられていた視線が、私に移ります。


[82] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2025/01/05 (日) 11:36 ID:OvKfGr4I No.197300



「・・・何を話しているのか分からないでしょ?」
「仲直りをすることになった原因を聞いても、僕には意味があるようには思えないよ。
そうだろ、さっきから蚊帳の外なのは間違いないからね」
「あなたには関係ない、かな?・・・でも、疑いを掛けられるのって心外でしょ?」
「まぁ、それはそうだが、もう纏めてもいいんじゃないか?」
「どうだろ?小田さんもそう言ってるんだから、収束させないか?」
「だから、聞いて欲しいの。彼女の気持ちは分からないわよ。でもね、どういうことだか分かる?
彼女ね、お土産を持ってきたのよ」
「何もなかったが。隠れてもらった?その口振りなら気分のいいものじゃなかったのか?」
「いい?木下さんの分身、中出しは当たり前のことでしょ?それは私達もそうなんだから、
そのことじゃないの」
「なるほど。絡んだ時、69の時だろ?その時に出てきたか?はははっ、あいつもやるじゃないか?
おっ?空気が読めないと叱られそうだね」
「いいわよ。そこに隠された神髄があると思うの」
「はははっ、本質でいいだろ?誰かさんと間違えそうになったよ」

私の話し方を楊社長に話しているようで、少々腹立たしくなります。

「えっ?木下さんならもっと難しく言うわよ。これって木下さんの影響かも?」
「文学談義だろ?2人のピロートークを聴きたかったね」
「時間切れでしょ?もっと早く言ってくれてたら、できない相談でもなかったかもね、うふっ」

上手く纏めたようですが、真実は闇の中です。
問い質しても、いずみは木下さんで押し通すでしょうし、彼女の表情に変化は見られないこと
からも、事実そうなのかもしれません。
文学談義を楊社長が知っていることからも、それが正解のように思えてきます。
ただ、木下さんとのピロートークの内容を、全てではないとしても、楊社長が望む事柄に言及
しているとしたら由々しき事態ですが、ピロートークの軽い会話に仕事上の話などあり得ないと、
一喝されそうです。例え、あったとしても話す筈もない事は理解できます。
途方もない推測ですが、”文学談義なの”と、ひとまとめに報告している可能性の方が、
大きいようです。

「遅かりしかな?はははっ」
「彼女の話に戻るわね。おトイレでのことね、”誰なの?”って、少し強く聞いたら、”木下さん”
って。何も隠さずに話してくれたの。
さっきもそう話したでしょ?元はと言えば、楊さんと私の性行為が発端でしょ?
曖昧な私の発言が独り歩きしたのね。木下さんの発言を知っていてそれを聞いたのなら、
”木下さん”って断定してもおかしくないもの。そういう意味では、彼女は間違ってなかった。
事実誤認なのはそうなんだけど、そこには言及しないとしたら、彼女一流のジョークだと思うの。
そうでしょ?木下さんの分身を私の口に入れること、それは下の口でもあるのね。
もう分かるでしょ?”間違ってたかもしれないけど、これがそうさせたんでしょ?”って、
そう言いたかったのよ。素晴らしい発想だと思わない?」
「なるほど、そこまで考えるか。そうだとしたら、ジョークどころか嫌味の天才だね、はははっ」
「あなた・・・もう分かったでしょ?」
「孕んだ?・・・事実誤認?」
「うん、何もなかったの・・・後で話すから。楊さん、話してもいいでしょ?」
「構わないよ、何にもなかったんだから。柊の一人芝居、ただ、それだけだったということだよ」

力説とまでは言えないかもしれませんが、柊さんの思いを読み取ったと推測するいずみの瞳には、
晴れやかな自信のようなものを感じます。


[83] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2025/01/05 (日) 14:24 ID:OvKfGr4I No.197309



「私の理解って言ったけど、推測でしかないのね。どう思う?」
「正論だろ?彼女に聞いても首を縦には振らないだろうが。まぁ、ここだけの話でいいだろ?」
「仲直りは出来たと思うの。でも、100%じゃないって言ったのはね、ほんとセンスがいいんだもの、
嫉妬しそうなの。私にも彼女のような一流と呼べるセンスが欲しいわ」
「はははっ、ご謙遜を。全てにおいて一流だよ。疑う余地もないね」
「さっきの言わぬが花も?うふふっ」
「はははっ、言わせたいのか?」
「その事だけど・・・」
「そうだったね・・・小田さんに謝らないといけないことが、これも急遽決まったこと、違うな、
急遽依頼されたことなんだが、もう少ししたら柊から連絡が入る予定だから、その時に話したい
んだが、いいかな?」

”後で連絡する”と言った、柊さんの言葉を思い出します。
笑顔でいずみと話していた楊社長の顔に、少なくない翳りを読み取ります。

「えぇ、お任せしますが・・・いずみと関係があるのですね?」
「言わぬが花と言ったこと、その時の雰囲気を・・・」

いずみが割って入ります。

「お話しの流れだから、覚えていないでしょ?」
「さすがに・・・そうだね」
「でしょ?今私が言ったことね、これって何を指しているか分るでしょ?」
「急遽依頼されたことだね?」
「お仕事以外の事って話そうとしたの覚えてない?これもお仕事なんだけど・・・」

体を乗り出し、私の左耳に小さく呟きます。

「・・・お相手をすることなの」

それだけで、元に戻ります。

「詳しくは、その時に・・・ごめんね?」
「そういうことだから、小田さんとの話が終わっても、手打ちもできない。残念だが、理解して
くれないか?」
「事情が分からないとしても、まだ楊さんの手の内ですからね。そうしろと言われればそれに従う
しかないでしょうね」
「悪いが、お願いするよ」

頭を下げるのですから、苦渋の選択だったのかもしれません。

「いや、いや、そこまでは。楊さんらしくないでしょ?」
「はははっ、恥ずかしいですな。そういうところも併せ持っていると認識してもらえれば、
有難いですね」
「少しは時間があるんでしょ?2時過ぎって、そうなの?」

いずみは、それへと心の準備をしているのかもしれません。

「まだ少しは・・・何かな?」
「それじゃ〜、問題を出そうかな?・・・あなた、考えてね?」

楊社長から私に視線を移します。
張り詰めてきた空気感を和らげるためでしょうし、それはいずみ自身にも言える事だろうと
推測します。


[84] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2025/01/05 (日) 17:16 ID:OvKfGr4I No.197314



「ん?・・・あぁ、いいけど」
「あのね、彼女が2時間も遅れてきた理由って分かるかしら?あくまでも私見だからね。
同じなら嬉しいかな?・・・いいでしょ?」

最後のフレーズは、楊社長への確認です。

「落ち着くならね」

楊社長も、いずみの揺らぎを察してるようです。

「かな?・・・分かった?」

楊社長と私、二人と話すのですから、余計な思いに悩まされることもないでしょう。

「巌流島?佐々木小次郎かな?」

いずみと話したことを思い出して、彼女もそう思っていると推測します。

「じらすってこと?」
「違うだろ?額面通りだよ。その場に居なかったから、推測の推測だけどね。
柊さんは、時間に余裕があると困る問題、ストレートに言えば、木下さんと別れるその時に、
中出しをお願いしたと思うよ。精液は自然と流れ出すからね、当然、中に溜まるものもあるには
あるが、多くは流れ出す運命にある。残った精液の一部が子宮内に辿り着く。
この場合は、精子と言えばいいかもしれないが、まぁ、精液でいいだろ?膣内に残る精液を
できるだけ多くいずみに届けたい、そういう意味合いだと思うよ。
時間に余裕を持たせたくなかった、それが答えかな?」
「ジョークなの?それとも嫌味?」
「柊さんの性格は全く分からないから、憶測だよ、少なくとも性善説だと思いたいね。
仲直りが本当だとしたら、そう思わないと理解できないからね」
「ジョークね?私もそう言ったでしょ?彼女ね、ここのホテルではないと思うけど、とても近くの
ホテルに居たと思うの。もしかしたら、お隣のホテルとか?」
「そうかもしれないが、全ては柊さんの胸の中じゃないか?」
「そうね・・・楊さんは嫌味だったから、私達とは距離を置いてることになるわよ」
「はははっ、参ったね。仲の良いところを見せびらかすのか?」
「自然なの、私達には」
「相思相愛?・・・私ともだろ?はははっ」
「ベッドではね。もういいでしょ?私達の事には干渉しないでね?」
「今日で終わりなのは寂しいが、得るモノはホントに多くあったと、感謝しかない。
心からお礼を言うよ」
「本心なの?”言わぬが花”だけって言わないでしょうね?」
「さてと、逃げるが勝ちの時もあるだろ?いつかその日が来たら、本心を聞かせてやるよ」
「勝ち逃げ?」
「勝敗で言うのなら、いずみさんの大勝だよ。誰も文句が付けられない程だからね。
胸を張って・・・はははっ、今は張ってないか?」
「あの時はちょこっとジョークなのに。今は張りもしこりもありません。あれ?知ってるのに
聞くって、嫌味でしかないでしょ?やっぱり嫌味な楊さんなのね?」
「はははっ、やられっぱなしですよ、小田さん。いずみさんは実に楽しい女性、誰からも、
男性かな?言い寄られるのは自然な流れでしょうな」
「それが自然なのに、不自然に言い寄られても。天然とはそういうものだと理解して頂きたい
ですね」
「はははっ、言い得てる。一年の総括は今言った通りだね。文句の付けようもないが、早とちりも
少なくない。そこらあたりが改善されれば、振り回される社員も助かるが、それが却って、新しい
アイデアを生むことに繋がるんだから、不思議な能力の持ち主だと認めない訳にはいかない。
何も変えずに、このままが一番いいのかもしれないね」
「でしょ?うふふっ」
「それはそうと、一つ相談なんだがね、来年の事を言っても鬼は笑わないだろ?後1週間ほどで、
来年だからね」
「笑いたくても笑えないでしょ?もう決めてることだもの。アレでしょ?確証が欲しい、
そうよね?」
「はははっ、やり込められるね。いずみさんから聞いているとは思うが、弊社の社外取締役に
就任してもらいたいんだが、小田さん次第だと。今日、この話が出ると思っていただろ?」
「えぇ、呼ばれたのはこの話だろうと、そう思って来たのですが、楊さんの関心事は、柊さんと
いずみの仲直りかと、何処に比重を置いて話せばいいのか、戸惑いましたよ」
「はははっ、いずみさん、小田さんも嫌味が上手いね。これなら私側じゃないかな?」
「ジョークも得意なのよ。楊さんだから敢えて嫌味を選択したの。それが分からない?」


[85] Re: 絆のあとさき 5  :2025/01/09 (木) 08:45 ID:fhChrFi. No.197407
小田さん 明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。
楊と話し合いをするときは、本当に時間を守らないですね。
柊さんが遅れてきたのはただ単に小田さんいずみさんの
思っている通りでしょうか。
8時の約束なら8時に射精して急いでこれるとも思います。
これからのことが何か関係しているのでしょうか?
また、この日のひろこちゃんのことが気になります。
朝は食事をしに帰ったのでしょうか。


[86] Re: 絆のあとさき 5  てっちゃん :2025/01/11 (土) 01:47 ID:F59upkQU No.197467
小田様

遅まきながら、新年のご挨拶をさせて頂きます。

今年は年初から色々ドタバタして、コメント投稿ができていませんでした。

相変わらずのチェスのゲームの様な会話描写を毎週楽しみに拝読させて頂いております。

本編、佳境に入ってきた様ですが、本年もどうぞよろしくお願いします。

[87] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2025/01/11 (土) 12:49 ID:6hNJOGzk No.197475


シンさん、コメントをありがとうございます。

8時に決めたのは、三人で朝食を摂る予定だったと聞いています。
彼女はいつものように7時前に帰って、娘と朝食を済ませて、
8時にはホテルに戻っています。
ところが、柊さんから10時に変更の連絡があって、二人での朝食
だったようです。
因みに、娘との朝食では、ほとんど食していないと言っていました。

7時に帰ると決めたルールも翌年から変化していきます。
(楊社長との関係ではありません)
ですから、厳守とうたっていても、その都度の事象によって、
変わっていくものだと思います。
”絶対”は”絶対”にないと言われる所以かもしれませんね。

10時に変更になったその理由は、私が説明していますが、満足のいくものでは
なかったようですね。
事実はほんとに分からないのですから、稚拙な想像力を働かせるしなかったのも
事実です。

複雑な展開だと、説明が追いつかない場面もあるかもしれませんが、そこは
シンさんの英知で、想像の翼を広げて頂ければ、新しい展開が見えてくるかも
しれませんね。

まだ少しあと少し、そこまでお付き合い下さい。


[88] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2025/01/11 (土) 16:37 ID:6hNJOGzk No.197486


てっちゃんさん、明けましておめでとうございます。

年始からお忙しいようですね。
暇よりはいいと言いますが、忙し過ぎるのも考えものですね。

会話文は、兎に角緊張しながら言葉を選んでいます。
話し方の抑揚などを、平面的な文章で表すのは、とても難しいというか、
全く不可能です。
ですから、合いの手ではないのですが、息とか呼吸が漏れる様を、適宜挿入
していますが、不必要かな?と思いながらも続けています。
目障りかもしれませんが、ご了承下さい。

会話文で個性を出すのも一苦労です。
実像に迫りたいのですが、どうしても3次元的には表現できません。
VRとか生成AIで作成された動画のように、文章に生命を吹き込ます
ことが出来れば、一層実体に近付けられるのですが、私では、
所詮無駄な抵抗でしかありません。

最終コーナーに差し掛かっています。
残り少ないですが、最後まで読んで下さいね。


[89] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2025/01/11 (土) 18:05 ID:6hNJOGzk No.197487


続きです。




”水を得た魚”という諺がありますが、正に今のいずみがそれに当てはまりそうです。
いずみの胸中は分からないのですが、直ぐそこに来ている男性とのベッドインに、何がしかの
不安を抱えているように見えますが、全く違う事象なのかもしれません。
それを打ち消すために、必要以上に陽気に振る舞っているのかもしれません。

「はははっ、まだ引き渡しは終わっていないだろ?小田さん寄りに傾いていないか?」
「あれ?勇み足?でも時間の問題でしょ?」
「片付けないといけないことがあるだろ?」
「そうか〜、まだ時間がかかるのね?何時までだった?」

楊社長の横顔を見るいずみの表情から笑顔が消えます。

「それだが・・・」

話し出した時に、楊社長の携帯が鳴り響きます。
上着の内ポケットから携帯を取り出して、

「・・・来たようだね・・・」

いずみに顔を向けてから、携帯に出ます。


『私だ・・・予定通りだね・・・10分か・・・分かった・・・そうだ、いずみさん一人だ・・・
はははっ、彼とはその後で・・・まぁ、その時だね・・・分かった』


携帯を上着の内ポケットに戻しながら、

「柊からでね、先程の話をしないといけないが、時間がないからかいつまんで。いいかな?」
「えぇ、10分ならすぐですね。何時までか分かっていれば、その後で聞かせてもらっても
いいですよ」
「そうだね・・・私は予定があるから・・・5時までの約束なんだが、その後でいずみさんから
説明してもらう、それでいいかな?」
「5時なのね?引き渡しは」
「それが済めば完了だよ」
「はい、分かりました。お部屋は?」
「柊が全て手配済みだから、いずみさんはここで待ってればいい。分かるだろ?」
「えぇ・・・それじゃ・・・」
「小田さんだろ?」
「その時間まではどうすればいいの?」
「大人だろ?そんな心配などすることもないだろ?だがね、呼びつけておいて5時まで待てとは、
いくらなんでも虫が良過ぎるだろ?」
「妙案でも?」
「はははっ、二人の部屋を用意してるから、それで勘弁してもらおうか?」
「うふふっ、妙案なのに明日の午前中までなの?」
「愛し合う時間が足りないか、はははっ。仕事に支障をきたさないのなら、いつまででも好きな
だけ。任せるよ」
「優しいのね?でも、明日は土曜日だからお仕事はお休みでしょ?空気が読めない楊さんって
とても魅力的、何と言えばいいかな?」
「人間味じゃないか?」
「違うでしょ?人間臭さじゃない?」
「はははっ、泥臭い人間性だろ?」
「分かってるのに、それを見せないってほんとに素晴らしい人間性ね」
「やり込められるね。優しさだけを誉め言葉として受け取っておくよ。今日の事は謝るしかないが、
減点だけは免れたいね」
「気遣いの楊さんってとても魅力的、アレ?二度目ね?ありがとう、嬉しいわ。満点に加点なんて
できないでしょ?なんて言えば・・・超満点かな?うふっ」
「はははっ・・・さてと、そろそろ移動するか。小田さんも、いいですかな?」


立ち上がって通路側に出たいずみの傍に来て、

「どんな手を使ってもいいから、小田さんの承諾を貰ってくれよ、はははっ」

そう言って歩き出します。


[90] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2025/01/12 (日) 11:20 ID:XkAga69A No.197500



いずみの返答は分かっているという風で、振り返りもしないで歩き出します。
いずみも同じ思いなのでしょう、敢えて呼び止めもしません。

立ち上がった私に、

「終わったら直ぐに連絡するから。ごめんね?こんなことになって、ほんと無神経過ぎるわ」

無神経な張本人は誰なのか示唆もしませんが、私には分っていると思い込ませたい意図が、
見え隠れします。

「じゃ、後で・・・」

楊社長の姿を確認したのでしょう、振り返って直ぐに、抱き付いてきます。

「何だか落ち着かなくて・・・いいよね?」
「ん?・・・仕事と思えばいいじゃないか?」
「うん、あなたと話せて良かった!少し元気になりそうよ、うふっ」
「はははっ、平常心だよ。不安な時は不安でいい、無理しない気持が事を上手く運べる、いいね?」
「うん・・・愛してるの・・・チュッ!・・・」


コートを受け取り、入口を出たところで、楊社長が待っています。
話しながら、歩きます。

「話せましたかな?」
「えぇ・・・それで?」
「まぁ、夫婦の会話には立ち入らない主義でね、はははっ」
「そうですか、これも優しさですね?」
「そうならいいんだが、はははっ・・・部屋だが、フロントで確認してくれないか?
いずみさんと同じように、柊が予約しているからね」
「分かりました。お気遣いありがとうございます」
「固いね?」
「まだ早過ぎるでしょ?2時間もあるんですよ」
「はははっ・・・じゃ、ここで・・・」

楊社長は玄関に、私はフロントに向かいます。


3時に少し届かない時間でしたが、チェックインを済ませます。
広いロビーを横切って、椅子が置かれているエリアまで来て、ふと玄関前に視線を移すと、
ドイツ製の高級車が滑るように入って来るのが見えます。
楊社長の姿が急に視界に入るのですから、私からはデッドスペースになっているところで、
その車を待っていたようです。

運転手が降りて、後部ドアを開けると、柊さんに続いて体格の良い男性が降りてきます。
楊社長と一言二言話したのでしょう、握手して別れます。

柊さんとその男性が向かう先は、フロントです。
こちらに向かって来るのですが、広いロビーには大きな柱が設置されていますから、意識すれば
体を隠すこともできますが、それには目もくれずに、ロビーを横切って、椅子に体を沈めます。
当然なのですが、玄関からは背中が見える位置関係です。

私の横を通過するのですが、かなり離れていますから、そうと意識しない限り認識されることは
まずないでしょう。
私からは、右手前方にフロントに向かう二人が見えます。
玄関から見てフロントの奧が、エレ―ベータ―ホールになります。
私の目線の先、日本庭園に出るドアの手前右側が先程のカフェです。

チェックインを済ませて、フロントを離れた二人は、いずみの待つカフェに行く筈です。
私がいる近くを通らなければ、カフェには行けませんから、軽い緊張感が襲ってきます。
愛用の雑誌をブリーフケースから取り出して、顔を伏せて雑誌を読んでいる風に見せます。
仮に、柊さんが私を認識したとしても、声を掛ける事などあろうはずもありません。


[91] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2025/01/12 (日) 15:13 ID:XkAga69A No.197505



空気の揺らぎで通り過ぎたと判断するのですが、少し待って顔を上げると、カフェに入って
行く二人が見えます。
数分もしない内に、柊さんが姿を見せます。
私を一瞥したように思えるのは、意識過剰かもしれません。
先程よりも私から距離を取って、何事もなかったかのように、足早に玄関で待っている車に
戻って行きます。

その車がゆっくりと発進するのを確認して、顔を振り向けたその先に、いずみと先程の男性が、
こちらに向かって来るのが目に飛び込んできます。
表情も変えずに、その男性と話しながら近付いて来るのですから、ある意味、度胸が座っていると
いうか、場数を踏んでいるからできる芸当なのかもしれません。
不思議なことに、腕を組むこともせず、体が触れ合うこともない微妙な距離を保っているのです。
過去の事例から判断すると、どことなく違和感を覚えるのですが、それが何なのか全く分りません。

その男性と私は面識がありませんから、二人に顔を向けていたとしても、特に怪訝な様子を見せる
事もなく、また、柊さんのように距離を取ることもなく、私の前を通り、エレベータ―ホールに
入って行きます。
いずみの様子に違和感を覚え、不穏な空気感も察知したのがその理由ですが、私もエレベーター
ホールに急ぎます。
このホテルは、カードキーがなければエレベーターに乗ることは出来ません。
上着の内ポケットから、カードキーを取り出し、エレベーターホールに入ると、抱き合ってキス
している二人に出くわします。
私に気付いたのか、直ぐに離れるのですが、何となくバツが悪そうな雰囲気です。
私が傍に居ても、気にしないいずみですから、何とも不思議な光景です。

そう待たずに、エレベーターが降りてきます。
最初に降りてきたエレベーターに乗り込まなければ、不審者と思われても仕方ありませんから、
二人に続いて乗り込みます。

「何階ですか?」

冷静ないずみなのは、間違いありません。

「あっ?・・・10階をお願いします」
「まぁ!同じだわ・・・お恥ずかしいところをお見せして、ご気分は大丈夫ですか?」
「いや、いや、誰もいないとそうなるのも理解できますよ」
「そうだって?・・・でも、恥ずかしいわ。ねぇ、そうでしょ?」

”いずみなの?”と訊き返したくなります。

「そうだけど・・・もういいだろ?」

抱き合ってキスしていた様子は、全く感じられません。
何処かよそよそしく、交際期間が短いカップルのように見えます。

「そうね・・・お仕事ですか?」

驚きを通り過ぎて、唖然としてしまいます。

「えっ?・・まぁ、そんなところです」
「いずみさん、失礼だろ?」
「そうだけど、金曜日の午後でしょ?お仕事って気になるわ」
「いかがわしいとでも?」
「まぁ!ごめんなさい。お気を悪くなさらないでね?お聞きしたのはね、私達がどう見られて
いるか、気になったからなの」
「直球でも?」
「えぇ、聞かせて下さい・・・着きましたわ。いいかしら?」


[92] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2025/01/12 (日) 17:03 ID:XkAga69A No.197508



エレベーターが10階に着いて降りてからも、いずみは終わりたくない様です。

「一向に、僕と同じかと・・・後で来るんですよ。分かるでしょ?」

いずみの定番のフレーズで返します。

「ほんとに?同じだなんて、奇遇すぎますわね」
「同じことが二つですか?」
「お部屋の階数とアレね?」
「はははっ、楽しい方ですね?」
「いずみさん、誤解されますよ」
「お話しだけでしょ?事実は何も分らないんだもの。利害がないから楽しく話せるの。
分らない?」
「そうですよ。事実は何も分らない。アレはアレなのか、思い巡らすのも楽しいものですよ」
「そうでしょ?誤解も何も事実は事実なの。急いで事実を作ることって、気付かない壁を作る
ことになるの。そう思わないですか?」

いずみの意図が分かってきます。

「急がば回れでしょうね。何事にも根回しは必要だと思いますよ」
「人間なんだもの、感情の動物って言うでしょ?欲にまみれる前に、一歩下がって考える必要が
あると思うわ。分かるかしら?」
「・・・そうですね・・・いずみさん?」

終りにしたい男性と、終わりたくないいずみですが、立場上、いずみはここまでと悟ったようです。

「楽しかったわ。またどこかでお会い出来ればいいですね?」
「えぇ。無理は禁物ですよ」
「ご忠告をありがとうございます・・・行きましょうか?」

”抵抗はここまで”という風に、歩き出したその男性の左腕に右手をそっと添えて、数歩歩いた
ところで振り返り、右目を瞬かさせて、”ありがとう”と言っている様です。

二人はエレベーターホールに続く廊下を左に進んで行きます。
私は、反対の右側の客室ですから、倍速で離れていく感覚です。

部屋に入って直ぐに、手に持っていたコートと脱いだ上着を、ベッドに投げ出します。
2時間を潰すには、どうしたものかと思い悩むほどでもなく、とはいっても、何もしないのは
落ち着かないものです。
体も心も落ち着きを取り戻さない内に、携帯が鳴り響きます。
沈静化へと向かっていた時ですから、携帯の着信音が大きく感じられます。

石黒さんからです。


『どうした?』
『何処に居ますか?』
『どこ?逆に聞くけど、サワちゃんは?』
『いずみさんの秘書ですから、いつも近くに居ます。今はロビーです』
『世話係じゃなかったかい?』
『私は秘書だと思っています。いいですか?』
『何かな?』
『いずみさんの指示でお洋服を持って来たの。受け取ってくれませんか?』
『ん?・・・聞いてるのかい?』
『お部屋に居ることは。降りて来て下さい』
『エレベーターホールは目立つかな?ロビーの椅子に坐っててくれないか?』
『はい・・・うふふっ、堅苦しい?』
『硬くするのは早過ぎるらしいよ、はははっ』
『意味不明だわ。早くね?』


[93] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2025/01/12 (日) 22:21 ID:XkAga69A No.197510



ベッドに投げ出していた上着を着て、石黒さんの待つロビーに降りて行きます。
笑顔の石黒さんが、立ち上がって手招きするのですが、多くの宿泊客が行き来しているのなら、
それも効果があるかもしれませんが、全く持って不必要な行動です。
チェックイン開始時間を30分程過ぎているのですが、このホテルは混雑することもなく、
数人がその椅子を利用しているだけです。

「待たせたかな?」

テーブルを挟んで、彼女の前に座ります。

「ちっとも。会いたかったの、信じる?」
「はははっ、信じたいね」
「信じて損はないわよ」
「有益な情報とか?」
「なくはないかな?うふっ」
「いずみの?」
「小田さんの中心はいずみさんだもの。なんか、寂しいでしょ?」
「じゃ、僕もだね」
「今頃ベッドインかな?」
「なるほど。連絡があったから・・・ん?それ?」

彼女の左側にキャリーバッグが置かれています。
右側から近づいたのですから、それには気付かなかったのです。

「お洋服と着替え・・・下着など一式かな?」
「今日の事は、どこからどこまで知ってるんだい?」
「いずみさんから聞いた事だけ。それ以外は何も、ほんとよ」

彼女に限っては、嘘を言う理由も見付けられません。

「じゃ、聞こうか?」
「昨日の夜から楊社長とでしょ?だから、携帯に掛かってくるなんて考えもしなかったのに、
何時頃だったかな?小田さんに掛からなかった?」
「僕に?・・・彼との許可を取る?楊さん絡みなら話す必要もないからね」
「その人の事って、さっき知ったんでしょ?」
「そうだが・・・イントロがあるみたいだね」
「あるわよ。小田さんが知らないってことは、いずみさんは話していなかった。楊社長の関係
だからって、話さないのはおかしいでしょ?」
「サワちゃんも知ってたんだろ?」
「なんか、話さない方がいいみたいな、そうだと思ったのよ。それで・・・」
「今日が初めてではないんだろ?」
「なんか、いずみさんね、小田さんに聞かれたら正直に話して欲しいって」
「他力本願?以前ならそうだったかもしれないが、今のいずみには考えられないが」
「もうないと思っていたからだと思うの。分からないけど、小田さんとね、今年の総括をしたい
って話していたの。だから、楊社長との約束が終わったら、全て話すつもりだったんじゃない
かな?」
「それが突然に?」
「昨夜がそうだったの。楊社長も困惑だったみたいなの。だって、今日の午後1時に小田さんを
呼んでいたでしょ?その時に、終了宣言する予定が変更でしょ?その後の予定が狂ったって」
「いずみから聞いた?」
「戻るわね?午後の11時を回った頃だったかな?お洋服を用意して欲しいって。その時に教えて
くれたの。楊社長が困っている事とか、予定が狂ったとか。よく分からないんだけど、
いつもなら連絡事項だけなのに、色々と説明してくれるの。なんかね、私に気を遣ってるみたいな、
だから、余計なことまで聞かせてくれたんじゃないかって」
「ひろ子と朝食後、持って帰った?」
「一緒にホテルまで・・・ひろ子ちゃんも。それから幼稚園でしょ?大変だったわ。
いずみさんね、何だか疲れた表情、セックスだけじゃないって何となく分かるの。
少し不安もあるような、いつものいずみさんじゃないって直ぐに分かったわ」


[94] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2025/01/13 (月) 11:35 ID:DKB63IC2 No.197519



私もそれは感じていたのですから、何か隠された理由があるのかもしれません。

「僕にもそう見えたね」
「えっ?2人に会ったの?」
「偶然エレベーターでね。信じるかい?」
「偶然?違うでしょ?」
「必然ではないかな?意図的かもしれないね」
「曖昧な表現って似合わないっていずみさんが。私もそう思うわ」
「意識的に置き換えるよ。何も聞かされていなくて、これからベッドインには不信感しかない
だろ?だからね・・・」
「偵察?」
「まぁ、他人を装って少し話せたのが良かったかもしれない。いずみの表情も少し明るくなった
からね」
「なんか、不思議な夫婦だなって。世の中にいるって考えるだけでも、疲れそうだわ」
「済まないね。その夫婦にお付き合いさせて、はははっ」
「笑うところじゃないでしょ?でも、なんか羨ましいかな?」
「真似はダメだよ。まぁ、真正もお薦めできないね。ところで・・・」
「お洋服でしょ?」
「着替えたのかい?」
「おトイレで・・・その人の好みなの。下着から全て・・・疲れるでしょ?そこまで神経を使う
なんて」
「僕が会った時は着替えていたのか、それは分かるね。今までならミモレ丈が殆どだっただろ?
それなのに足首まであるんだから、”アレ?”と思っても不思議じゃないだろ?」
「その人専用なの。でも、何回も会ってないのに、そこ迄要求するって図々し過ぎない?」
「彼の事は夜にでも説明するだろうね。総括なら必然だろ?」
「5時までって聞いてるの。だから、それまでに着替えを届けて欲しいって。これね?」

左側に置いていたキャリーバッグの上に左手を置きます。
私がカフェを出て、柊さんの案内でその男性が来る迄の間に、連絡したと思われます。

「朝と同じ?」
「うふふっ、それはないでしょ?洗濯済みの下着とお洋服、着替えた下着はお洗濯完了ですわ」
「だね。思慮に欠ける発言だったかな?はははっ」
「うふふっ、変わらないわね。ねぇ、その人って?」
「見た目しか分からないが、体格の割にはシャイな印象だったね」
「小田さんより少し若いって、そうなの?」
「40代後半ってとこかな?気になるかい?」
「だって、いずみさんの秘書だもの。知らないことがあったら大変でしょ?」
「今知ったのは、遅きに失するんじゃないのか?」
「だから、情報を集めてるの。今より遅いことはないでしょ?」
「ああ言えばこう言うかい?はははっ」
「小田さんとのお話って、どこか違うのね。何だと思う?」
「受け取り方の違いだろ?感性の違いと言えるかもしれないね」
「もういいわ。この距離感がとても気持ちいいから、ずっとこのままでいたいわ、うふっ」
「5時まで?」
「いいの?お部屋で?」
「仕事する気分じゃないしね。話し相手にでもなってもらおうかな?」
「お仕事はほんとにいいの?忙しいっていずみさんが」
「いずみより忙しくないし、僕には付帯事項がないからね、はははっ」
「付帯事項って、お相手することなの?」
「仕事絡みには色々あるからね。究極の付帯事項じゃないか?」
「気にならないんでしょ?ほんと余裕ね?」
「カラ元気だよ。それももう終わりだからね。その男性との関係が気にならないとは言えないが、
まぁ、見えないモノには警戒心が働くだろ?」
「見たくても見れない状態ね?うふふっ」
「時間潰しに付き合わすのは悪いんだが・・・」
「ねぇ、お部屋もいいけど、お天気がいいでしょ?日本庭園をお散歩しない?」
「2時間弱も?」
「それなら、行ったことあるかな?水族館は?」
「知ってはいるけど、大人だからね」
「バカにできないわよ。時間があれば行ってみる?」

石黒さんをロビーで待たせて、そのキャリーバッグを部屋に運びます。


[95] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2025/01/13 (月) 14:51 ID:DKB63IC2 No.197527



日本庭園に出たのは、4時には少し届かない頃です。
いずみ達と入っていたカフェの入口を右手に見て、通路正面が庭園に出るドアです。
館内の暖房は程よく気持ちのいいものでしたが、夜のとばりが近付いているこの季節は、
温度差を意識してしまいます。

石黒さんとの話の中心は、やはりいずみになるのは致し方ありません。
ゆっくり歩いても30分程で散策出来ますから、負荷がかかる程の距離ではありません。
ただ、池の周辺を除けば、坂道も多くそれなりに心地よい疲れを感じます。
明りが灯された遊歩道を廻り、途中通り過ぎた東屋に戻って、そこで休憩することにします。

「気持ちがいいね」
「本音なの?」
「ん?・・・何か含んでる?」
「いずみさんのこと気にならないの?」
「ならないと言えば嘘になるが、さっきも話しただろ?容認してるんだからね」
「それにしてもよ、得体の知れない人でしょ?」
「僕にはね。サワちゃんは何も聞いていないの?」
「口が堅いかな?話したくないみたいだから、聞くにも聞けないでしょ?」
「それじゃ、いずみの報告待ちだね」
「うん・・・寒くなってきたわ。ロビーに戻らない?」
「だね・・・そろそろかな?」

腕時計を見て、5時に近付いていることを確認します。

「気になるんでしょ?」
「時間がね、はははっ」
「理解できないわ。小田さんの頭の中を覗いてみたいわ、うふっ」
「変態がバレるから、それは止めてくれないか?」
「もうバレてるもの。なんか、いずみさんって時間にはうるさいでしょ?小田さんの影響なの?」
「どうだろうね。時間厳守には人一倍気を遣ってるのが分かるよ」
「厳しいわよ、時間以外でも。集中力って半端ないもの」
「まぁ、人それぞれだろ?さてと、戻ろうか?」

立ち上がった私の左腕に両手を廻してきます。

「いいけど、小川を渡るまでだよ。誰に見られるかも分からないからね」
「うん・・・さっきは手を繋いでくれたでしょ?温もりって、体を重ねなくても感じられるんだ
って、なんか、嬉しかったかな?」
「曖昧だね。中途半端は嫌われるぞ、はははっ」


ホテルに入ったところで別れます。
私は部屋に戻り、石黒さんはロビーで待機です。

いずみが主導していれば、約束の10分前に連絡が入る筈ですが、5時というのもハッキリ決まって
いる訳ではありませんから、ここは辛抱強く待つしかない様です。

ところが、5時10分前に携帯が鳴ったのです。
何と驚くことに、いずみからです。


[96] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2025/01/13 (月) 16:09 ID:DKB63IC2 No.197530



『驚いたよ。時間厳守かい?』
『私は正確無比なオンナなの。約束は守るのがルールでしょ?』
『元気なようだが・・・』
『お時間にはお部屋に行くから待っててね?』
『あぁ・・・ん?』
『楽しみでしょ?早く会いたい?』
『はて?・・・意図が見えないが・・・』

少しのタイムラグの後、

『次の約束があるって分かったでしょ?』
『嘘じゃなかった・・・残念だよ』
『裏ってあるでしょ?私はそういうオンナなの。分かった?』
『プロの女性じゃないと聞いていたが、社長に担がれたのかな?』
『それは分からないけど、清廉潔白じゃない事だけでも理解してくれたら、間違った事には
ならないわ』
『信じられないんだが、信じるしかないようだね』
『私より若くて美人で聡明な女性って掃いて捨てる程いると思うわ。勘違いも甚だしいって
分ったでしょ?』
『理想の人だと思ったが、まだ信じられないよ』
『私はシンデレラにはなれないの。ガラスの靴にあなたが思い描く理想を詰め込まれても、
その靴を履けるだけの気高さなんて持ち合わせていないの。理想はいいのね、でも私には
それに応えられる知性も理性も何もないの。だって、求められたら股を開くオンナなのよ。
目を覚ましてね?あなたにはそぐわないの、分かったでしょ?』
『そうだね・・・時間がないんだろ?』
『あっ?忘れるところだったわ・・・ごめんなさい、込み入ったお話しだったの。待たせて
ごめんね?』
『僕には聞かれていない、そういう設定だね?』
『はい、遅くなったけど、できるだけ早く行くから・・・まぁ!硬くして待っててね?うふっ』
『了解!まぁ、難しいだろうけどね』
『じゃ、切るわね?』


男性の声が聞き取り難かったのですが、ニュアンスからそうだろうと判断しています。
理由は何であれ、断わったことだけはハッキリと伝わってきます。
不安そうな表情の意味が解き放たれる時が、直ぐそこに来ている様です。
私と会って直ぐに、その事に触れない筈はありません。
開口一番、最初のフレーズを推測するのですが、”ごめんね”しか思い描けません。
全く予備知識がないとは、こういうことを言うのかもしれません。

5時10分を過ぎた頃、ドアの開く音に気付きます。
携帯に掛かってくると思っていたのですから、不意を突かれた思いです。
カードキーを柊さんから受け取っていたのでしょう。
そう言えば、フロントでは私用に一枚しか渡されなかったのですから、その時に気付くべき
だったと、今思えば全て計画的だったと思わずにはいられません。

窓際の椅子に坐っていたのですが、ゆっくりと立ち上がり、ドアに近づきます。

何も言わずに抱き付いてきます。

「どうした?」
「だって・・・終わったと思う?」

先程の威勢は何処に行ったのかと、聞きたくなるくらい落ち込んでいるようです。


[97] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2025/01/13 (月) 18:34 ID:DKB63IC2 No.197532



「ん?・・・見えないね?」
「うん・・・あなたに話していなかったから、どうしようってそれが気になっていたの。
でもね、それ以上って言えばいいかな?あの人を怒らさない様に諦めさせるって、考えるだけで
気持ちが落ち込んでいたの」
「問題はふたつかい?」
「うん・・・他にあるの?」
「あるね・・・僕には」
「何も考えられないかな?」

いずみには珍しく涙目になっています。

「座るか?それからだね・・・水は?」

いずみを座らせてから、冷蔵庫からペットボトルを取り出し、グラスに注ぎます。

ラウンドテーブルにグラスを置いて、いずみの前に座ります。

「さてと、長くなりそうかな?」
「うん・・・あの人のことを話さないといけないんだけど、今年で終わらないと困ったことに
ならないか、それが心配なの」
「理由は分からないが、断わっていたし、彼も了承したように聞こえたが。違うのか?」
「そういう人なの。その時は分かったって言うんだけど、日にちが経つと元に戻るというか、
自分の言い分を押し通そうとするの。そんな人っているでしょ?」
「自分勝手、我儘、そんなところか?」
「うん・・・年齢って人間形成には関係ないみたい。子供と同じ感覚なの」
「欲しい物は欲しいか。今はいずみか?」
「うん・・・あのね、求婚されてて、断わっているのに、今夜も同じなの。どう言えばいいの?
結婚なんて出来ないのに、シングルマザーでしょ?結婚してるって言えないから、強く言えなか
ったの。今日ね、後であなたと会う予定になっていたでしょ?これを使うしかないと思って」
「裏の秘書か?」
「そう思った時ってあったでしょ?楊さんの指示ならお相手する、それが裏の秘書だって。
でも、そんなの現実的じゃないって分かったし、事実そうだったでしょ?でも、それを使うしか
ないと思って」
「清廉潔白とか言ってただろ?いずみをそういう目で見てるのなら、かなりダメージを受けたと
思うが、彼の印象はどうだった?」
「お顔がゆがんだのは見逃さなかったわ。でも、直ぐに笑顔に戻るんだもの。信じられないと
言ってたでしょ?半信半疑だと思うの。だから、まだ解決できていないと思うの」
「なるほど。話を戻す前に、アイデアを出さないか?」
「えっ?・・・アイデアって?」
「ダメ押しだよ。僕は表に出れないだろ?・・・オーナーを利用できないかな?」
「もしかして・・・オーナーとしてるところを見せるの?それも、プロの女性として、そういう
こと?」
「彼なら喜んで乗ってくるだろ?」
「うふふっ、乗りたいってうるさいくらいよ。でも、設定も何も思い付かないわ」
「今夜の予定は聞いてるかい?」
「6時からお食事、明日のお昼には移動するって聞いてるけど」
「部屋はそのままか?」
「うん・・・気が変わったら来ないかって。懲りない人でしょ?」
「自信満々?」
「あのね、楊さんと懇意にしてる会社社長の息子なの。将来は社長でしょ?そのことから性格も
分ると思わない?」
「だね・・・彼に連絡は出来るね?」
「うん・・・私のは教えてないけど。でも、どうするの?」
「ユカさんにも協力してもらうかな?」


[98] Re: 絆のあとさき 5  修司 :2025/01/15 (水) 16:39 ID:70E9FaAw No.197592
小田さん

新年を迎えて 年末年始の長期連休 3連休とお休みが続きましたね

そろそろ 仕事も本格的に動き始めたと思います。

レスは 妨げになるので入れないのですが、久々に入れさせていただきました。

まだ、寒く寒暖差がおおきいですね お体にお気をつけて 

お仕事、投稿をよろしくお願いいたします

拝読者より!


[99] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2025/01/18 (土) 11:32 ID:f9nBfaWM No.197657


修司さん、コメントをありがとうございます。

お久し振りですね。
引き続き読んで頂いているのは、ほんとに嬉しいです。

インフルエンザが蔓延しているようですね。
インフルエンザではないのですが、彼女も咳が止まらず、年末から正月の三が日までは、
ほとんど寝ていました。
幸いなことに熱もなく、6日に掛かり付けの内科医院で投薬を処方してもらってから、
回復に向かっている様です。
まだまだ、寒い日が続きますから、体調には十分気を付けて風邪を引かない様に
注意して下さいね。

この投稿もそう長くはありません。
いつまでとは言えないのですが、早ければ2月末までには最終回を迎えられると
思っています。

では、引き続き投稿していきますので、最後まで読んで頂ければ嬉しいです。


[100] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2025/01/18 (土) 14:36 ID:f9nBfaWM No.197665


続きです。





この時は曖昧な設定だったのですが、いずみと話しながら具体的な計画に辿り着きます。

「レストランは11時までだろ?早めに切り上げてもらって、11時30分にはユカさんが彼に連絡、
名無しの権兵衛でいいんだね?」
「うん、それでいいでしょ?」
「前にもいたね、変な人が名前みたいな。彼の設定は?」
「要らないわ。彼でもあの人でも、それがお似合いだと思うもの」
「好きじゃない?」
「嫌いよ。楊さんの指示だから仕方なく、信じてくれるでしょ?」
「今回は信じられそうだね?はははっ」
「もう!それでどうするの?」
「下のホテルを使おうか?そこで売春してることにする。ユカさんが彼を誘いだして、
下のホテルに連れて来る。オーナーと絡んでいるところに立ち会わせるとか、そうだな、
次は彼だから終わるまで待たせるとか、こういう設定はどうかな?」
「管理売春みたいね?」
「あっ!もし騒ぎ出したら、マリアさんに助っ人をお願いする。どうだい?」
「シャイだから、騒ぐことはないと思うわ。現実を観て諦めてくれるといいけど、あれ?
現実じゃないわ、架空のお仕事だもの」
「エゴが強いだろ?イヤでも諦めるよ」
「売春婦と結婚したいなんて言えないでしょ?諦めるしかない、そうよね?」
「まぁ、上手くいくかはいずみ次第だね?」
「売春婦になり切るのね?・・・王さんとはそういう関係だったもの。出来ない事はないかな?」
「経験が役に立つとはよく言ったモノだね、はははっ」
「あなたね・・・そうだもの、こんなことはしたくないけど、ヤルしかないわね」
「禍根は残したくないが、まぁ、仕方ないだろ?あれだよ、その事は楊さんに一言も触れずに
自然消滅すると思うよ」
「そうね。きっとそうよ、そうならないと私の明日が見えなくなるもの」
「はははっ、大袈裟だな」
「だって、来年は飛躍の年にする計画でしょ?大袈裟でも何でもないの。引きずられることだけは、
避けたいもの」
「ある意味総括だね」
「総括って?」
「今日が一年の締めくくりだろ?それなのに、噴いて湧いたように横槍が入ったのは、偶然とは
思えないが、真実は分からない。
今日の日を、それも最後の日だと彼が事前に知っていたとして、来年の社外取締役の件を知らない
としたら、来年は会えないかもしれないと焦りが募るだろ?考え過ぎかもしれないが、あまりにも
偶然過ぎると思わないか?」
「そうかも・・・もしかしたら、そうだったら、ジョークの天才どころか嫌味の根源、私に対する
諸悪の根源は・・・ほんとにそう思う?」
「なくはないね。いずみが最初に指摘した通り、100%はあり得ないと理解すべきじゃないか?」
「性善説は覆された、そう思わないと辻褄がが合わないわ。嫌いになったらそう簡単には・・・
なのね?妊娠騒動に続いて仕掛けられたと思えば、そうかもしれないわ」
「楊さんに叱られた腹いせとも取れるが、そこまでヤルには、いずみ以外の要因もあるのかもしれ
ないね」
「何だろ?何だと思う?」
「推測でしかないが、楊さんの愛人に終止符を打ちたいと思っていたとしたら・・・」
「乗り換え?・・・あの人がいくら頑張っても私と結婚できない事は、彼女は分かっているんだ
から、私を諦めさせる計画ならそうかもしれないわ」
「逆説的かもしれないが、いずみに断られるのは間違いないんだから、彼の心に空いた穴を埋める
手段に出ないとは言えないだろ?」
「仮にね、二人が関係を持っていたとしたら・・・私がそうなんだから、ないとは言えないでしょ?
私が断わる事が前提にあるんだから、そう難しいことではないかもね」


[101] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2025/01/18 (土) 20:59 ID:f9nBfaWM No.197674



「柊さんがどこ迄読んでいるかは分からないが、彼の性格を的確に把握しているとしたら、
いずみの断わり方まで推測しているかもしれないね。相当ダメージを与えないと諦めないこと
までも分かっているとしたら、その後の対応まで準備しているかもしれない。
ただね、あくまでも推測の域を出ないんだから、これ以上の詮索は意味がない。
僕が推測したように、乗り換えは少々飛躍しているかもしれない。楊さんとの関係に亀裂が
入っているのか、それさえも分らないんだから、いずみを困らせる以外の付帯事項は、考えない
方がいいかもしれないね」
「そうね・・・関連会社に転籍になったでしょ?楊さんが決めたことだけど、私がいなければ
そうはならなかったでしょ?その頃から、違うわ、私が楊さんの愛人になったその時から
嫌悪感を持っていたと思うのが、自然だと思わない?」
「だね・・・まぁ、本人に聞けないんだから、仮に聞けたとしても、曖昧な返答しか返ってこない
だろうから、考えるのは止めようか?」
「時間の無駄ね?」
「ただね、彼の事を考えると、やるせないの一言だね」
「私が悪いの?」
「欲しいものはそう簡単には手に入らない、世の中の通説だろ?見る目がないのか、見たくない
のか、まぁ、甘過ぎるんだろうね?」
「社長の息子ってだけで、そう思われるのは心外だと思うけど、私の目からもそれが正しいと
思うわ」
「体を重ねないと分からない事実かい?実感がこもっているね、はははっ」
「何とでも言って下さいな、うふふっ・・・」

今夜の計画を練る時間はたっぷりあります。
ただ、時間があるからといって、完璧な計画が出来るとは限りませんが、今年最後の大仕事に
なるのは間違いないでしょう。
その前に、今、目の前にある疑問から解消していく事が先決です。

私が切り出そうとした時、

「・・・あのね、問題が二つって話したでしょ?」
「僕に彼との関係を話していないこと、彼を諦めさせる、この二つだろ?」
「うん・・・一つ目は理解できたでしょ?二つ目はこれから計画する、それでいいよね?」
「出会いから今日に至るまでの経緯は説明しないのか?」
「あのね、サワちゃんから聞かなかった?」
「話し難いことは彼女に話させる、そういうことか?」
「そういうつもりじゃ・・・お洋服を届けた時に、できる範囲で説明してってお願いしたの。
それで、大よその経緯が分かるかなって。私から話すのがイヤだとかそういんじゃないの。
あの人との関係を切る方策を考えたかったから、その時間を削りたくなかったのと、あなたが
言った他に問題があるってことね、それの説明をしないといけないかなって。
それでね、一つ目はいいかなって」
「なるほど。こうしようか、三つ目の問題の後に、彼との経緯を要約して話す、それでいいね?」
「はい・・・三つ目ってこれの事でしょ?」

私の違和感は既に察知していたと思っていたのですが、私に会う前から説明するつもりだった
ことが窺えます。

そっと立ち上がって、ワンピースの裾を持ち上げます。

「分かっていたのかい?」
「だって、こんなの見たこともないでしょ?」
「長いね、彼が?」
「私なの、あの人の趣味じゃないの。あの人はね・・・ちょこっと待ってね?」


[102] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2025/01/19 (日) 10:44 ID:Nb4ToO/w No.197691



ワンピースの背中に両手を廻して、ジッパーを下ろします。
妖艶な仕草なら片手を胸のところに置いて、ゆっくり脱いでいくと思うのですが、いずみは
一気に床まで落とします。
今までのワンピースは、タイトまでではないのですが、ソフトに体の線が浮き出る程度でした
から、ジッパーを下げても床まで落ちることはありません。

「これなの」
「ん?・・・シースルー?見慣れた光景じゃないか?」
「ガーターベルト・・・今時と思わない?」

指でつまんで持ち上げて放します。

「はははっ、懐かしいね。覚えてるかな?」
「パンツが先かガーターベルトが先かでしょ?」
「いずみってホント度胸があると思ったね」
「定員さんに聞いた事ね?」
「高級下着店だろ?知らない人が来るとは思えないから、可笑しかったと思うよ。
含み笑いしてただろ?」
「だって、おトイレの事なんて考えもしなかったもの。あの時だけなら、どちらでもいいもの」
「まぁ、間違ってはいないが、実用も必要だろ?」
「それなの。あの人には実用なのよ。これも含めてだけど、シースルーの下着じゃないと興奮
しないって言うのよ」
「実用と言う?はははっ」
「セックスアイテムなの。性癖って人それぞれでしょ?する前から興奮したいタイプなの。
お洋服の下がこうなっているって想像するのが興奮に繋がるらしいの」
「精神的生き物だね。即物的とどちらが好きかな?はははっ」
「えっ?・・・あなたが好き。どちらも併せ持ってるでしょ?」
「かわされたね。即物的は少々自信がないが、まぁ、できる範囲かな?」
「精神的にカバーしてくれるから、私は大満足だもの、うふっ」
「はははっ、逸れないで進めてくれないか?」
「あなたとは違う下着フェチかな?」
「明日香ちゃんを思い出すだろ?」
「ブルセラ?あなたと違うって言ったでしょ?」
「推して知るべし、はははっ」
「あなたが逸らしてるのよ。匂いフェチではありません。分かった?」
「なるほど。それじゃ・・・」
「やっと話せるわ。このワンピースは私が選んだの・・・」

床に落としたワンピースから足を抜いて、ベッドに置きます。

「・・・このままでもいい?」

そう言って、椅子に戻ります。

「セクシーな奥様かな?」
「うふふっ、あなたと合わないわね。でも、少しの間だけ。お話が終わったら着替えるから、
それでいいでしょ?」
「ワンピースの意味だね?」


[103] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2025/01/19 (日) 12:11 ID:Nb4ToO/w No.197692



「うん・・・あの人ね、お洋服には関心がないの。セクシーな下着、エロいじゃないのね、
品のあるセクシーかな?それに興味があるの」
「高尚な趣味だね。裕福な生活だからできるか、羨ましくもあり羨ましくもない、かな?」
「どっちなの?曖昧でしょ?」
「裕福は羨ましい。しかし、セクシーな下着には興味がないから羨ましくない、かな?はははっ」
「うふふっ、裕福って?ほんとは関心ってないでしょ?」
「あまりかな?」
「普通に生活できればいいんだもの。その普通が難しい、人それぞれ、裕福が普通の人もいるもの。
あれ?このホテルは・・・あなたには普通?」
「いずみだろ?僕には普通とは到底言えないね」
「私達って生活レベルが違うの?」
「それは困ったね、はははっ」
「いつも同じよ。その時々によるんだもの。裕福の定義って難しいわね」
「あるんだよ世の中には。金融資産で区分けされてるからね。いずみは、二社から給料を貰って
いるから、富裕層に入るんじゃないか?はははっ」
「あなたね、お金持ちの話じゃないでしょ?富裕層って雲の上の存在だもの。気にするって
おかしいでしょ?」
「戻すか?」
「戻りました。あのね、体にフィットしてなくて、間延びしたくらいルーズだと思わない?」
「似合ってるかと聞かれたら、即座に”NO!"だね」
「でしょ?」
「抵抗?」
「そうなの・・・この問題は解決したとして、彼との経緯に戻ってもいい?」
「セクシー下着も出てくるかな?はははっ」
「はい、お望みなら、うふっ」
「まぁ、どうでもいいが、始めてくれるか?」
「・・・いい?」

私の右手に両手を被せるように、そっと置きます。

「何かの合図かな?」
「繋がっていたいの・・・あっ?2人と繋がったって思ってない?」
「否定はできないね。僕は手だけかな?」
「あとでね、時間があるでしょ?繋がりたいかなって」
「3日ルールは無視かい?」
「未使用なら?・・・ねぇ、その時にお話しするから、今は・・・」

ラウンドテーブルを挟んで目の前のいずみは、どこか白々しく妖艶な雰囲気を醸し出しています。
夫である私ではなく、性的な対象として私を見ている様に思えてきます。

「いずみ!起きてるか?」
「えっ?・・・覚醒ってこと?」
「目が虚ろだぞ!大丈夫か?」
「あ〜、そうかも?雰囲気ってダメなのね、まだ温もりが残ってるでしょ?傾きやすいかな?」
「傾きはいいが、斜めから見る目は持っているだろうね?」
「うふふっ、ごめんね?これだから心配なんでしょ?もう大丈夫!・・・あのね、ほんの少しかな?
寝たのは。楊さんも最後でしょ?疲れたと思うわ、うふっ。その後で柊さん・・・
そして、あの人でしょ?」
「僕もその流れかい?」
「ごめんね、流されそうになって。覚醒は完了しました。今からお話しに戻ります」

そうは見えないのですが、徐々に目が覚めてくると思います。


[104] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2025/01/19 (日) 15:51 ID:Nb4ToO/w No.197704



「聞こうか?」
「あのね、今年の春頃だったでしょ?秘書として働き出したのは。夜の接待には出席しても
お相手はしないって。プロの女性を用意していたこと、覚えてるでしょ?」
「公務員だったかな?僕が目撃したのは」
「そうだった?覚えていないけど、ごめんね?あのね、多くのお客様と会ってるでしょ?
だから、記憶って曖昧なの」
「記憶が負けるとは思えないが。それで?」
「5月の終わり頃だったかな?それも曖昧ね?記憶ってこの場合は回想でしょ?」
「思い返すからかい?」
「うん・・・あの時も会食の接待だったのね。あの人とはその時が初めてだったの。
プロの女性も用意していたのよ。でも、どうしても私をって、楊さんも根負けして、仕方なくって
感じだったの。そういうこともあると思っていたでしょ?だから、楊さんに頼まれたら断る理由も
何もないもの。それで・・・」
「気に入られた?」
「うん・・・その時はこのような下着じゃなかったのね。お仕事でしょ?だから、フルバック
だったのね。少し恥ずかしかったかな?」
「最初からリクエストはしないだろうから、2回目から?」
「あのね、今日で3回目なの。少ないでしょ?・・・あっ?サワちゃんから聞かなかった?」
「何回も会ってないとは言ってたね。昨夜からの事は話してくれたが、彼の事は話したくない
みたいだから聞けなかったと言ってたね」
「求婚されてるって言えないでしょ?」
「だね・・・まぁ、綱渡りに似てるかな?・・・ん?初めて会った日に?」
「おかしいでしょ?・・・セックスはホントに普通なの。正常位で中出し、これってほんとに
普通でしょ?結婚ってこういうモノって決めている様な、そんな雰囲気なの。セックスだけじゃ
ないのよ、話しの端々にも、結婚生活の日常がお顔を出すって感じで、結婚ってこういうパターン
って決め付けてる様な雰囲気だったの」
「ピロートークにしては、重くないかい?」
「そうでしょ?取り留めもない軽い会話ならピロートークって言えるのに、しっかりお話しする
って感じだったわ」
「社長の息子と聞いたが、数ヶ月経っても3回しか会ってないとは理解に苦しむね」
「融通が利くと思うでしょ?それがね、ほとんど日本にはいないから、私と会う時間が設けられ
ないって」
「海外展開?どの分野かな?」
「海外雑貨の輸入販売って言ってたわ。彼自身もバイヤーを兼ねてるのね、本業はアパレル関係
なの。共通してるでしょ?」
「ん?・・・独立してる?それとも会社の一部門?」
「輸入雑貨は社長だと言ってたから、独立してると思うわ」
「仕事の事情は分からないとしても、楊さんとの関係なら問題になるような人物ではないだろ?」
「うん、それは問題ないと思うし、とても真面目な感じなのね、好感が持てるでしょ?」
「その真面目さが受け入れられないんだろ?」
「未婚だとしても結婚は無理かな?だって息苦しい毎日って私には到底耐えられないもの」
「自由自在に考え行動するタイプだからね。首輪を付けられるのはあり得ないか、その方が
・・・」

カットされます。

「失踪しなくていいんでしょ?うふっ」


[105] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2025/01/19 (日) 17:07 ID:Nb4ToO/w No.197706



「分かってるんだから、始末に負えないね、はははっ」
「縛られない方が縛られるってあなたは分かっているんだもの。私の気質を見抜いているでしょ?」
「自由ほど不自由なモノはない、そう理解して間違いないだろうね」
「うふふっ、あなただわ。感心するしかないでしょ?」
「イヤイヤみたいだね?はははっ」
「でもね、楊さんとは全く関係ない業種でしょ?気にならない?」
「異業種交流会じゃないか?」
「そうだとしてもね、かすりもしないでしょ?・・・あっ?!楊さんはブリテッシュトラッド、
あなたと同じだから、社長と意気投合したのかも?そうだと思わない?」
「会食は彼だけじゃなかったのかい?」
「ほんとだ!彼は付き添いみたいな感じだったかな?社長のお父さんと二人だったの。
お仕事の話は何もしていなかったと思うけど、お洋服では盛り上がっていたかな?彼は全く関心が
ないみたいで、手持無沙汰って感じだったわ」
「一緒に来た理由が分からないが、それだけじゃ接待はしないよ。何かあると見て間違いない
だろうね」
「うん・・・そう思うけど、今夜で3回でしょ?それらしいことは何も・・・」
「いずみのアイデアとリンクさせるつもりなら、考えられなくもないだろ?」
「その頃はまだ何も・・・先に手を打つって感じなの?」
「先々を読んで展開する、それが鉄則だろ?」
「うん・・・私の思い付きが製品になってるって不思議な感じなの。そう言えば、他の業種とも
交流を持っているって楊さんが話してたわ」
「ピロートークだろ?」
「分かる?これって軽いお話しなの?」
「そう見せて実のところって感じじゃないか?」
「やるわね、楊さんも、うふふっ。でも、性行為中もお仕事から離れられないのなら、何か寂しい
わね」
「離れてる時はあるだろ?射精の瞬間は間違いなく・・・」
「精液ね?その瞬間だけは興奮と快感で満たされるんでしょ?・・・あれ?私も満たされるんだわ、
精液で、うふふっ」
「いずみは、物理と心理面の二方向から快感が打ち寄せて来るんだから・・・」
「楊さんの比じゃないんでしょ?分かるんだからね?うふっ」

ピロートークではないのですが、このようなライトな会話からも、私達の日常が垣間見れると
思います。

「さてと・・・計画に戻るか?」
「オーナーでしょ?この時間帯は忙しいって相手にしてもらえないかな?」
「いずみでも?」
「誰でも・・・お仕事には厳しいのよ。信じる?」
「信じたいね」
「私との関係?」
「それも含めて」
「うふふっ、同じことを何度も。好きね、私達って」
「はははっ、じゃ、9時過ぎかな?」
「うん・・・ねぇ、お食事にしない?」
「6時過ぎれば動ける、そういうことだろ?」

腕時計は、6時をとっくに回っています。

「会食が始まってるから、顔を合わすこともないでしょ?」
「だね。じゃ、早く着替えろよ。時間は待ってくれないぞ」
「はい・・・少しの間、窓の外を見ててくれない?」
「見られたくない何かがあるのかい?」
「何もないから・・・何かあった後なら・・・分るでしょ?」
「はははっ、分かったよ。ここはいずみマターでいこうか?」

よく分からない繊細さとでも言えばいいかもしれません。
恥かしさの基準が何処かズレていると思えるのは、天然の仕業かもしれません。


[106] Re: 絆のあとさき 5  にせ医者 :2025/01/20 (月) 08:00 ID:sYfa./BQ No.197726
小田さんへ
お久しぶりです。
他の人にはどうでも良いことなんですが、来月ガンの手術をすることになりました。
人生いろいろありますね。
元気な内に最終話が見られることを期待しています。
一度でいいから本物の「いずみ」さんにお会いしたかったです。


[107] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2025/01/25 (土) 14:34 ID:YuiHDxyM No.197876


にせ医者さん、コメントをありがとうございます。

手術ですか・・・どのように声を掛ければいいのか、迷ってしまいます。
私も癌の手術をしたことは、過去の投稿で書いています。
今も一年に一度の検査(造影剤を注入してのCT、超音波検査/エコー)を受けています。

癌と診断された時はそれほどのショックでもなかったのですが、その日の夜は
涙が止まらなかったことが思い出されます。

セカンドオピニオンで他の病院でも検査を受けたのですが、結果は同じでした。
その病院で手術を受けたのですが、数年前に改装したこともあって、最新の医療機器を
導入していることが決め手になりました。

癌と診断されてから、約1ヶ月後の手術でしたが、その前日のドクターとの面談で、
手術の成功率は50%と聞かされたのですが、特に何も感じなくなっていたと思います。
俎板の鯉としか表現出来ないのですが、それでも、不思議なのですが、”死”は
全く意識しなかったですね。
ステージは1〜4に区分されていますが、私の場合は、ステージ3.5でしたから
末期癌に限りなく近い状態でした。
でも、こうして投稿できるのですから、それほど心配したものではないと思いませんか?
昔と違って医療技術も格段に進歩していますから、心配は不要とまでは言えないかも
しれませんが、気持ちの持ち方一つで不安な気持ちも軽減されると思います。

にせ医者さんの事は何も分らない私ですが、一つ言えることがあるとしたら、
”希望を失わない事”、それに尽きると思います。

お元気になってここでお会いできると信じています。
頑張って下さい!


[108] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2025/01/25 (土) 15:54 ID:YuiHDxyM No.197879


続きです。




テーブル越しにソフトにキスを交わしてから、二人同時に立ち上がります。

窓の外は、昼間と見間違うほどの灯りと漆黒の闇が交差する、喧騒と静寂の世界が広がっています。
楊社長との約束も数時間で終焉を迎えようとしています。
感慨に耽るつもりは毛頭ありませんが、この一時に、気持ちも体も弛緩してくるような錯覚に
襲われます。
まだ終わらせないといけない事案も控えているのですが、いずみの演技次第だとしても、
そう難しい事でもないように思えてきます。

「あなた・・・あれ?振り返ってくれないの?」
「ストリップを見せてくれなかっただろ?はははっ」
「今からでも遅くない?あなただけに用意したのよ」
「ん?・・・」

振り返った私の目に、いずみの服装、いや、衣装が飛び込んできます。

「嘘だろ?・・・」

呆気に取られて、次の言葉が出てきません。

「驚いた?ねぇ、驚愕?驚天動地?どちらかしら?」
「はははっ、セクシーサンタかい?」
「だって、今夜はクリスマスでしょ?」
「イブは楊さんとか・・・まさか?」
「違うわ、絶対にないの。あり得ないでしょ?」
「そうだね・・・そうならサンタにはならないか・・・」
「そうよ。クリスマスの事なんて何も話していないわ。楊さんは全くよ、それより・・・
私の口に言わせたいの?うふっ」
「最後か・・・それどころじゃなかった?」
「うん・・・何も隠すことなんてないの、あなたには。でもね、話せるけど、話さない方が
いいってこともあるでしょ?」

そう言って、動けない私に近付いて来ます。

「そうだね。今日は驚きの連続だよ。心臓に悪いだろ?はははっ」

私の腰に両手を巻き付けて、

「強心臓のあなたが?信じられないわ、うふっ・・・あれね、望まない驚きと思いもよらない驚き、
どちらがお好きですか?」
「はははっ、どちらもいずみだからね、返答に困るよ」
「選べないのは、何があっても受け入れてくれるってこと?」
「いずみだからね。聞くまでもないだろ?」
「嬉しい!・・・チュッ!・・・うふふっ、愛してるの。ホントよ、あなたしかいないんだもの」
「”信じる?”って聞かないのか?」
「聞きません!・・・ねぇ、セクシーサンタはお好きですか?」
「好きになりたいね、はははっ」
「あなたって・・・いいわ、お食事に行きましょうか?」
「着替えはそれだけじゃないだろ?」
「はい、コートを着たらサンタじゃなくなるでしょ?」
「はははっ、早く着替えろよ。サンタは今夜の楽しみに取って置くかな?」
「うん・・・ストリップを観る?」


[109] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2025/01/25 (土) 18:35 ID:YuiHDxyM No.197880



石黒さんから受け取ったキャリーバッグの大きさに違和感はありました。
サンタの衣装どころかコートまで用意していたのですから、驚きを通り過ぎて呆れてしまいます。
真冬の夜なのですから、コートは必要不可欠でしょうが、ホテルのレストランなら半袖のニット
でも快適な温度設定になっています。

「はははっ、さっきの恥じらいは?」
「えっ?恥ずかしいって言った?」
「だね。僕が間違ってたよ、深読みし過ぎたね、はははっ」
「サンタの着替えを見せたらサプライズにならないでしょ?」
「恥じらいの基準に大きな差があるようだが、そもそもいずみの辞書に恥じらいはなかったね?」
「恥辱なのね?それはないかな?でも、恥骨はあるわよ、うふっ」
「やるね。参りました、はははっ」
「うふっ、観ないの?」
「見せたい?」
「かな?」

ベアトップでマイクロミニですから、体を隠す部分は必要最小限と言えそうです。
そのままでも人前に出れないことはありませんが、いずみはいざ知らず、普通の神経の持ち主なら
眉をひそめるだけのインパクトはあります。

「どう?かわいい?」

スカートの裾を少し持ち上げて、セクシーポーズを見せます。

「パンツが見えそうじゃないか?」
「見えてる?」
「ん?・・・紐パンかい?」
「見えないのね?」
「アレだね、アラフォーとは思えないよ、はははっ」
「無理過ぎ?」
「僕だから?」
「うふふっ、あなただけ。可愛い私はあなただけのモノなの、分かる?」
「出たね。ダメ押しには抵抗できないよ」
「念押しと言って欲しいかな?うふっ」
「言葉遊びはここまでにしようか?」
「うん・・・ねぇ、見えないでしょ?」
「パンツ?見えないね。目が悪くなったかな?」
「うふふっ、見えないでしょ?」

スカートを捲って、その下を曝け出します。

「はははっ、反則だろ?議論以前の問題じゃないか・・・そういうことなら・・・」
「分かった?」
「分ったから、早く着替えろよ。楽しい時間は短いだろ?大仕事が待ってるんだから、気を引き
締めないとね」
「うん・・・はい!・・・見慣れた裸でごめんね?」

サンタの衣装の下は裸、全裸です。
ブラもパンツも着けていないのですから、私が言ったように反則も反則です。


[110] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2025/01/26 (日) 10:52 ID:1yqKVH5. No.197896



着替えたいずみの服装は、カジュアルに纏められています。

「パンツね?シンプルで若々しいでしょ?」

ポロシャツ、ウールのクルーネックセーターにパンツの組み合わせなのですが、私達がドライブ
する時の服装に合わせたとしか思えません。

「東京では見かけない服装だね」
「覚えてる?ドライブした時の・・・」
「キャップとサングラスがあれば完璧だね」
「うふふっ・・・行きましょうか?」
「ここのレストランかい?」
「会うことはないと思うけど、危険は避けたいでしょ?」
「ん?・・・じゃ、下の?」
「天ぷらか和食、どちらがいい?」
「オーナーのレストランの近くだよ。それこそ・・・なるほど、そういうことか」
「分かった?キャップもサングラスも用意してるから。完璧でしょ?」
「スニーカーも?完璧すぎるだろ?はははっ」

キャリーバッグは魔法の扉のように思えてきます。

「あっ?忘れてたわ。お部屋の予約をしないと・・・空いてるかな?」
「金曜日だよ、満室に決まってるよ。おっ?売春部屋が・・・ここは頂けないね?」
「いやよ、あなたとのお部屋だもの。ほんとにどうしよう?」
「持つべきものは夫というだろ?」
「えっ?友でしょ?・・・あれ?もしかして・・・ほんとに?」
「午後1時に会って、”はい、さようなら”とはいかないだろ?名うての楊さんなんだよ。
推して知るべし、だろ?」
「それじゃ、予約してるのね?」
「部屋を用意してくれるとまでは読み切れなかったが、可能性はないとは言えないとは思ったね」
「ナンなの?持って回ったような言い方って、うふっ」
「はははっ・・・さてと、低層階でも納得してくれるかい?」
「はい、十二分に。計画倒れになるところだったわ。あなた様様ね?うふっ」


ホテル専用の循環バスに乗って、駅前まで降りて行きます。
乗車時間は数分ですし、ロビーでバスを待てばいいのですから、コートを持たずに部屋を出ます。

夕食は私の希望を取り入れて、和食の店です。
天ぷらの店は何度か行っていますし、いつも並んでいる和食の店には、入れる筈もないと思い
ながらも、万が一の淡い期待が功を奏したのかもしれません。

その店を出たのは、午後7時30分頃です。
ホテルへのメインルートはオーナーの店の横を通ることになりますから、遠回りして隣のホテル
から向かうことにします。

「少し寒くない?」
「コート?」
「うん、着れば良かったわ」

なだらかな坂道を登って、コンビニの前まで来ます。


[111] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2025/01/26 (日) 12:10 ID:1yqKVH5. No.197898



「ここってイヤな思い出の場所だと思わない?」

私の左腕に両手を巻き付け、体を密着させてあたかも寒そうに見せるのですが、それ程でもない
様に感じます。

「イヤな場所だから、密着させるのかい?」
「えっ?・・・あっ?!あれね、怖いと感じたら何かにしがみつきたくなるでしょ?それと同じ
かな?」
「藁をも掴む?・・・ん?溺れてる?」
「溺れそうになる手前だったかな?」
「匂いフェチの彼かな?」
「イヤでしょ?コソコソするのって。オトコらしくないもの。オトコは直球で勝負、これでしょ?」
「沁みパンを用意してとは言えないだろ?」
「そうかもしれないけど、やり方があるでしょ?卑屈過ぎるモノ」
「まぁ、間違ってるとは言えないが、プライドがそうさせたかもしれないね」
「変なプライドは捨てて、裸で勝負、これでしょ?」
「はははっ、いつもそうしてるじゃないか?」
「あれ?藪蛇?」
「はははっ、少しどころか大いに緊張してるだろ?」
「あなたが傍に居ないのよ。私が一人で指示を出さないといけないんだもの。あれね?主役と監督、
両立させるのって難しいわ・・・あっ?分かった?」
「あちらを立てればこちらが立たず、それかい?」
「勃てるのは一人、オーナーだけでいいんだわ。あの人が勃てたら大変なことになるでしょ?」
「尻尾を巻いて逃げ出すと思いたいね。まさかオッタテるなんて思いもよらないよ」
「大丈夫ね?」
「こちらもタテて欲しいね?はははっ」
「うふふっ、私達ってほんとおかしな夫婦なのね?」

緊張状態の時は、無言は禁物です。
気持を心の奥に閉じ込めてしまう恐れがあるからです。
つまらない話でも、口にすることで気持ちも和らいでくると思っています。
特に、歩きながらの軽い会話なら、体と心に穏やかな刺激を与えてくれることを、私達は身を
持って経験しています。

目的のホテルに行く裏ルートと呼べばいいかもしれませんが、先月も同じルートを経由している
のですから、私達には表のルートと言えそうです。

「ここを通ってホテルに向かうこと自体、おかしな選択だと思わないか?」
「だから、おかしな夫婦なのね?うふっ」


チェックインを済ませて、部屋に入ります。

「ねぇ、1時間以上もあるけど、オーナーにはそれとなく話しておいた方が良くない?」
「8時前か・・・金曜日だからね、忙しくしていないか?」
「うん・・・でもね、何もしないと緊張が高まらない?」
「分かるが・・・じゃ、掛けてみるか?」

窓際に置かれているラウンドテーブルを挟んで、向き合って座っています。
携帯をテーブルに置いて、

「スピーカーにするわね?」


[112] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2025/01/26 (日) 15:43 ID:1yqKVH5. No.197902



何度かコールしても出そうにありません。

「クリスマスだもの、忙しいんだわ。あれね、9時過ぎが正解かしら?」
「だね・・・段取りを考えないか?」
「うふふっ、もう決まってるでしょ?私の中では描けてるから大丈夫よ」
「自信だね?」
「カラ元気なの。自分を鼓舞しないとやり遂げられないんだんもの。あなたに頼ってたら、
これからのお仕事なんて何も出来ないでしょ?」
「その意気だね。頼もしいよ、はははっ」
「笑わないでね?ほんと大変なんだから、うふっ」
「余裕だろ?」
「ナイナイ、ナイナイづくしよ。何もないと思わないと何もできないでしょ?」
「無の境地かな?」
「うん・・・何もないの。私の存在も何もないの。何もない世界での出来事、夢の中と言えば
いいかも?終わったら跡形もなく消え去っている、そういう展開にしたいの。
あの人のことも綺麗さっぱり忘れる、そうじゃないと、お芝居をする理由も意味もないもの」
「分かるよ。そういう存在なんだね?彼の事は」
「そうよ、あなた以外は、色々と過程があったとしても最後には消え去る人達なの。
残るのは心から愛する・・・アレ?ひろ子ちゃんが抜けてたわ。ダメね?まだ修行が足りないの
かしら?」
「はははっ、力が入り過ぎだろ?リラックスして事に臨まないと」
「事に?ほんとだ!・・・あなたもタテないと、そうでしょ?」
「僕も?僕をだろ?」
「ごめんね?これからの事に気を取られていたのかも?うふっ」
「あれだよ、今夜の事が終わったら、未使用部分にお願いするかもね?はははっ」
「うふふっ、オーナーにもよく言っておきますわ、挿入個所を間違わない様にって。
戸田さんが挿入するからって、口が裂けても言えませんわ、うふっ」
「少しは落ち着いたかな?」
「うん・・・こういうのって無駄じゃないってよく分かるわ。ホントに大事なことだなって
思うもの」

テーブルの上で結んでいた両手を解いて、そっと立ち上がり、私の頭を抱えてお腹に引き寄せます。

「温かいわ・・・あなたが私の中にいるみたい」
「まだ入ってないけどね、はははっ」
「うん・・・でも、あなたが居ると思ったら元気になれるでしょ?離れていてもあなたを感じられ
るんだもの、強い気持ちを貫き通せそうよ、うふっ」
「そうだね・・・頑張ればそれだけ自信に繋がるからね」
「自信って積み重ねでしょ?これもそれになるのかしら?」
「どのようなことでもだよ。やり遂げることが次の自信に繋がる、それが全てだね、頑張れよ」
「うん・・・波風が立たない様に・・・それが一番大事でしょ?」
「楊さんに関係する人だからね。細心の注意と大胆な行動、相反することかもしれないが、
両立できるように、いいね?」
「両立?・・・あれ?さっきは私が・・・以心伝心ね?」
「あちらを立てれば・・・おっ?」
「オーナーかしら?・・・」

テーブルに置いている携帯に着信です。
右手で私の頭を抱えたまま、左手を伸ばして携帯を取り上げます。

「・・・あなた、オーナーだから」
「あぁ、戻るか?」
「うん・・・出るね?」

先程の椅子に腰を下ろしながら、携帯をテーブルに置きます。


[113] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2025/01/26 (日) 21:28 ID:1yqKVH5. No.197905



『ごめんね?忙しいんでしょ?』
『それだよ、直ぐに出れなくて済まないね。どうかしたのか?』
『話せるの?』
『難しいかな?後でもいいか?』
『9時を回ればいい?掛け直すけど』
『もう少し遅く・・・9時30分頃にしてくれないか?』
『分かったわ。お仕事頑張ってね?』
『いずみちゃんの声を聞いたら元気になるだろ?はははっ』
『じゃ、その時に』
『待ってるよ、はははっ』


「元気そうだね?」
「いつもああいう感じよ。裏がないというか、あるかもしれないけど、それを見せないところは、
流石って思うわ」
「オーナーシェフだろ?当然と言えば当然じゃないか?」
「そうよね、そういうところは、私も見習わないといけないかも?うふっ」
「いいところは大いに吸収すればいいが、物まねではダメだからね」
「自分のモノにする、でしょ?・・・あれ?11時を回ればオーナーのモノになるのね?うふっ」
「はははっ、そう見せるんだろ?オーナーは見せないが、いずみは見せる、相反する気持ちだね」
「両立は難しいでしょ?」
「MMFなら可能だろ?はははっ」
「DP?」
「まぁ、僕には縁のない事だね」
「うん・・・ねぇ、計画の事だけど・・・」
「どうした?」
「あなたださっき言ったでしょ?シュミレーションしようかなって」
「出来上がってるんじゃなかったかい?」
「そうなんだけど、念には念をって言うでしょ?」
「あぁ、まぁ、そうだが・・・」
「でもあれね、舞台装置はあるのに、出演者がいないと何もできないかな?」
「僕と二人なら・・・ん?セックスするのかい?」
「気が紛れるかなって。でも、それはダメね?あなたと愛し合うのは上のホテルじゃないと。
このお部屋の設定は、売春部屋でしょ?仮定のお話しでもあり得ないもの」
「いずみ、疲れてるんだろ?思考が右往左往してるように感じるよ。あまり時間がないが少し
寝ないか?」
「うん・・・そうかも・・・少しだけかな?寝たのは。あなたはどうするの?」
「特に寝る必要もないが・・・」
「ねぇ、傍に・・・一緒に寝ない?」
「添い寝?」
「うん・・・いつもとは逆になるけど、私が眠るまで起きてて欲しいかな?」
「はははっ、少し前もいつも通りだと思っていたのに、いずみが先に寝てしまっただろ?」
「ホント?嘘でしょ?・・・うふふっ、ごめんね。そんなこともありました、うふっ」
「1時間程だから、熟睡は無理かもしれないが、思考回路が正常に戻ることが期待できると思うね」
「うふふっ、あなたね・・・ベッドは窓側にしたいの。オーナーとは壁側のベッドに。
あの人がお部屋に入って来ても、壁側のベッドなら直ぐに見えないでしょ?窓側なら近付かなく
ても見えるから、そこで退散されても衝撃が少ないでしょ?だから、直ぐ近くで喘いでいる私を
観れば、驚愕どころじゃないと思わない?」
「驚天動地かい?」
「うん・・・かな?」


下着姿になったいずみは、そっとベッドに潜り込みます。


[114] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2025/02/01 (土) 11:33 ID:Yqtib.4. No.198039



「あなた・・・」

いずみの隣に横になります。

「腕枕かい?」
「うん・・・安心だもの、あなたが傍に居ると思うと」
「目を瞑って・・・チュッ!・・・眠れますように」

額に唇をそっと押し当てます。

「おまじないなの?」
「いずみマジックほどじゃないけどね。さぁ、静かに・・・寝ようか?」
「うん・・・目を覚ました時もあなたはいるのね?」
「何処にも行かないよ。何も考えないで・・・いいね?」
「うん・・・おやすみなさい」

私に抱き付いたまま目を閉じます。

そう時も経ずに、小さく、少し大きく、スースーと寝息を立てます。
子供のようにすやすやと眠る様は、日常の喧騒から解放され、自由な時間を取り戻しているように
感じます。
交際を始めた頃、いずみのマンションに泊った時の雰囲気が、走馬灯のように蘇ってきます。
目に入れても痛くない程、可愛い寝顔のいずみは、その時と変わらず、今も脈々と息づいている
のですから、変わらない、変えられない、不思議な魅力を持っていると再認識させられます。


9時30分は、直ぐにやって来ます。
1時間がこれほどまでに短いとは、認識の甘さを露呈した思いです。
もっと、いずみの寝顔を見ていたかったのですから、時計に小さな怒りをぶつけたくなります。
そうは言っても、約束が待っているのですから、起こさない訳にはいきません。

「いずみ・・・」
「・・・うん?時間なの?」

浅い眠りだと思っていたのですが、曖昧な返答ではなく、しっかりした口調ですから、思いの他
眠れたようです。

「あぁ、残念だけどね、可愛い寝顔をもっと見ていたかったよ、はははっ」
「嬉しいかな?私って可愛い?うふっ」
「はははっ、オーナーが待ってるぞ」
「ほんとだ!・・・このままでもいい?」

下着姿を気にするのは、私の意向に沿ったものか確認するためです。
最近ではあまり見られない光景ですが、強気のいずみが少し影を潜めているように感じます。

「昔を思い出すね。何かにつけて確認してただろ?」
「だって、あなたに嫌われたくなかったんだもの。あなたの指針が私の行動だったでしょ?」
「まぁ、そういうこともあったが、今では僕を遥かに超える英知を見せているんだから、
自信を持って事に臨まないと、いいかい?」
「うん・・・いいのね?」
「はははっ、オーナーも喜ぶだろ?」
「うふふっ、見えないけど、見えるようにお話しすればいいかな?」
「オーナーの想像力次第だろ?」
「私の見せ方でもあるんでしょ?」
「見せ方と想像力のせめぎ合いかな?」
「難しいのね?うふっ」
「じゃ、起きるか?」
「うん・・・」

私に続いていずみもベッドから降り、先程のテーブルに向き合って座ります。


[115] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2025/02/01 (土) 15:38 ID:Yqtib.4. No.198042



『ごめんね?時間は大丈夫?』
『何とかだな・・・どうかしたのか?』
『忙しいんでしょ?』
『クリスマスだからな。あれだよ、カップルはホテルに行く時間帯だろ?』
『お店は落ち着いてきたのね?』
『寒いのにね、一組のカップルがテラス席で頑張ってるよ』
『お誘いが上手くいかないのかな?』
『いずみちゃんがお手本を見せてやれよ、はははっ』
『できるのなら・・・オーナーにはできるかな?』
『ん?・・・誘ってるのか?』
『クリスマスでしょ?誰かと約束とかあるんじゃない?』
『ある訳ないだろ?稼ぎ時なんだから遊んでる暇はないよ』
『ほんとに?そうなの?・・・残念かな?』
『本気か?こんな日にフラれたのか?誰か知らないが、いずみちゃんを一人にするなんて許せ
ないな、はははっ』
『本気よ・・・でも、お願いがあるの』
『ヒモ付き?それにもよるけど、いずみちゃんのお願いなら聞かない訳にはいかないだろ?』
『いいのね?』
『受けて立つか?はははっ』
『速いのね?まだ何も話していないのにタツの?』
『いずみちゃんの声を聞いただけで、はははっ。信じるか?』
『信じたいかな?』
『信じる者は何とかと言うだろ?』
『救われるでしょ?・・・あのね、私を救ってくれない?』
『ん?・・・何かあったんだな?』
『あったというか、困ってるの。それでね、オーナーに協力して欲しいかなって』
『放って置けないだろ?一肌脱ごうか?はははっ』
『そうなの、脱いで欲しいの、立派なモノを添えて。分かるでしょ?』
『我が息子に白旗かな?』
『うん・・・ただね、観客が居るんだけど、大丈夫?』
『してるところを見せるのか?』
『ダメ?』
『好きじゃないが、社長には見せてるからね。できないことはないが、状況を説明してくれ
ないか?』
『あのね、会って話したいの』
『来れないだろ?』
『行きたいんだけど、あの人は来てないでしょ?』
『来ないだろ?あれからは一度も顔を出していないからね。話さなかったかな?』
『ほんとに?』
『恍けてるんだろ?それはいいとして、時間は?』
『オーナーに合わせるけど、11時30分にはスタンバイ出来そう?』
『忙しいが・・・まぁ、頑張るかな?はははっ』
『10時頃に行ってもいい?お掃除とかお手伝いしたいから』
『バイト?』
『それを思い出して。でも、おトイレじゃなくてね、ベッドで。ホテルは目の前の、分かる
でしょ?』
『取りあえず来るか?』
『うん・・・ユカちゃんにもお願いしたいの。だから・・・』
『ユカも?FFMなのか?・・・さっきのカップルが帰りそうだから、開店休業だな?はははっ』
『オーナーと私、ユカちゃんは案内係かな?』
『見えないね。だから説明か?』
『そうよ。じゃ、いいのね?』
『分かった。ユカに話しておくよ』
『10時頃ね?』
『了解!待ってるよ、はははっ』


[116] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2025/02/01 (土) 18:14 ID:Yqtib.4. No.198045



ストーリーは出来上がっていると話していたいずみですから、オーナーとの会話で大筋を
私に説明したと言えそうです。

「長かった?」
「上手く繋げたね。感心するよ」
「とっかかりって難しいでしょ?でも、オーナーは誘導し易いかもしれないわ」
「目的が見えてるからだろ?」
「そう、見せ方って話したでしょ?言葉のその向こう側を見せるのって、彼にはそう難しい事
じゃないと思わない?」
「はははっ、簡単だったと聞こえるよ」
「そうかな?うふっ・・・それでね、オーナーに話した通りなんだけど、10時過ぎにお店に行って
経緯を説明するのね。断られるなんてあり得ないから、そこは問題ないと思うの。
でも、見せる間だけでは納得しないと思うから、その後も、彼が満足するまでお相手することは
避けられないと思うの」
「こちらから頼んだんだからね、ある程度の必要性は感じるが、必要以上は誤解を招く恐れも
あるから、そこのところの見極めは難しいかもしれないね」
「うん・・・私のテクニックかな?オーナーの急所は理解しているから、そう時間もかからずに
射精させられると思うの」
「はははっ、オーナーも台無しかい?・・・ん?僕も?」
「うふふっ、あなたは違うでしょ?私は俎板の鯉だもの、あなたの好きなように料理して欲しいし、
あなたが満足できるまで何度でも何時間でもお相手するもの」
「はははっ、体力勝負なら、結果は見えてるだろ?勝てない勝負はしない主義、知ってるだろ?」
「短くても濃密に愛し合えるのなら、それが一番だもの。あなたとはそういう行為が良いと思わ
ない?」
「任せるよ。僕が俎板の鯉かもしれないね、はははっ」
「うふふっ、お任せ下さい・・・ねぇ、そろそろ用意しないと・・・」
「そうだね・・・着替えながら話そうか?」


いずみも私もコートを持参しなかったことを、少々後悔させられる時間帯です。
窓の外のきらびやかな光彩が一段と輝き、恋人達がベッドインするこの時に、私達は部屋を出て
外気に触れないといけないのですから、厄介なお荷物を抱えてしまった事への後悔が、寒さと
相まって心に隙間風を吹かせている様に感じられます。

「外は寒そうね?」
「心もだろ?」
「うん、よりによってクリスマスの日なんて、忘れられない日になりそうだわ」
「まぁ、そう再々あるのものじゃないが、早く片付けたいね」
「楊さんも楊さんでしょ?この日に設定するなんて、常識を疑うわ。それにあの人まで現れるのよ、
お相手もしたのに、諦めさせるためにオーナーまでも駆り出さないといけないんだもの。
この代償って誰が払ってくれるの?」
「誰もいないだろ?ただね、これで前に進められるのなら、その代償は僕達が持つことになる、
それでいいじゃないか?」
「そうね・・・そう思わないと怒りしか残らないわ、うふっ」
「はははっ、ナニも残さない様に、遺恨を残さない様に、いいかい?」
「遺恨?私には何一つないのに、あの人のために舞台を用意しないといけないなんて、
なんて不条理だと思わない?」
「セックスプレイを見せるのは納得させるためだろ?彼が理解できれば遺恨は残らない、諦める
意思を明示させれば、そこで全てが終わる。不条理だとしても、これしか方法はないだろ?」
「うん・・・考えようでは、一方的な遺恨試合だと思わない?」
「セックスプレイを見せるいずみ、それを観る彼か・・・」
「あのね、セックスプレイって快楽を競う試合みたいなモノでしょ?それを観る側にわだかまりが
あれば、遺恨と言い換えても大きく逸れないでしょ?」
「無理過ぎだろ?それを合わせて遺恨試合?はははっ・・・思い付きも甚だしいね」
「うふふっ、ちょこっと勇み足でした・・・可笑しいわね?」
「冗談は心を穏やかにしてくれる妙薬かもしれないよ。いずみならその薬を上手く使い分けできる
から、頼もしいの一言だよ、はははっ」
「笑わないでね?オーナーにも打合せの時に少し飲ませてみるわね?上手く乗せられるといいけど」
「ジョーク混じりなら間違いなく乗せられるよ・・・ん?舞台では乗るか、乗られるか、それが
問題だ!かな?はははっ」
「舞台だから、シェークスピアなの?・・・”生きるべきか、死ぬべきか、それが問題だ”でしょ?
思い出したわ、”イク〜!”が”シヌ〜!”でしょ?オーナーとのセックスは演技だから、
”シヌ〜!”ね?本気なら”イク〜!”だもの」
「間違っても、”イク〜!”と口走らない様に。オーナーに勘違いされるかもね」
「うん、演技だって話すから、私も意識して・・・あれ?あの人が帰ったら、”イク〜!”に変節
するかも?うふっ」


[117] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2025/02/01 (土) 21:41 ID:Yqtib.4. No.198046



着替え終わって、部屋を後にします。

「じゃ、僕は待機だね?」
「うん・・・ユカちゃんのこと話してなかったけど・・・」
「案内人なんだろ?」
「うん、私が会いたいって、携帯で連絡してもらうのね、会うのはロビーで。カードキーが
ないと、お部屋には来れないでしょ?」
「それで案内人か・・・分かり易いね?」
「うん・・・寒いから気を付けて帰ってね?」
「駅前からタクシーに乗るよ。直ぐそこだから断られるかな?はははっ」

いずみはキャップもサングラスも着けていません。
女らしい装いではないとしても、スポーティーな服装を、少しでも緩和させたい思惑があるので
しょう。


いずみは正面玄関から出て、ドイツ製高級車の展示スペースの前を通って、オーナーのレストラン
に向かいます。
私は隣のホテルからコンビニの前を通過して、なだらかな坂道を下って駅前に出ます。
ところが、多くの人がタクシーを待って列を成しているのですから、甘かったと言わざる負えま
せん。
諦めかけて、歩き出し時に、

「小田さん?・・・」

振り返ると、柊さんの笑顔が飛び込んできます。

「・・・やっぱり!タクシーに乗ろうとしていなかったですか?」

咄嗟に思い付くのは、いずみの事です。

「驚きましたね・・・どちらに?」
「あそこですわ・・・ねぇ、あの車、見覚えがあるでしょ?」

名無しの権兵衛さんをホテルまで連れて来て、楊社長と柊さんが乗り込んで立ち去ったあの車です。
私が察知したことに気付いていた証拠です。

「えぇ・・・」
「どちらまで?」
「ホテルに帰ろうかと。コートを忘れたので、歩きはちと辛いかなと・・・」
「それなら、私も戻りますからご一緒して下さい。ところで・・・」
「いずみですか?」
「えぇ・・・寒いですから、車に。それからお聞きしますわ」

タクシー乗り場から少し離れたところに、その車は停車しています。
歩きながら、

「楊さんは?」
「ホテルに居ます。私がお客様をお送りして、車に戻ろうとし時に、小田さんの姿が見えたもの
ですから」
「有難いですね。こういうのが”神の助け”って言うんでしょうね」
「そう言って頂ければ嬉しいですね。でも、少し大袈裟じゃないですか?」
「はははっ、本音ですよ。柊さんにはいつも本音で話していますから」
「そうなら喜ばないといけないですね・・・待って下さい・・・」


[118] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2025/02/02 (日) 16:24 ID:KXGlItqg No.198070



後部ドアの傍で待っている運転手に、私の事を説明している様です。

笑顔の運転手が、ドアを開けてくれます。
私が先に、隣に柊さんが乗り込みます。

運転手は何も話さず、自動運転のように車をゆっくりと発進させていきます。

「いずみさんは、ご一緒じゃなかったのですか?」
「お名前が分からない男性と言えばいいですか?いずみからも聞いていないので、どう表現すれば
いいのか、戸惑いますが」
「そうですか?いずみさんは話さなかったのですね?」
「えぇ、今夜で終わりだとか、それで話す必要もないと、いずみ独自の判断ですが」
「そうですね、それじゃ、Aさんとしましょうか?」
「えぇ、Aさんとは5時頃別れて、私と食事に。先程まで一緒だったのですが、懇意にしている
レストランのクリスマスパーティに招待されていたようですが、楊さんとだったでしょ?
柊さんもそうですが、Aさんもですね。その事を食事の時に聞かされましてね、それなら少しでも
顔を出したらと、まぁ、そういうことで、先にホテルに帰ることになった次第ですね」
「小田さんはどうして?」
「知人でも何でもないですからね、場違いなところには出ないことに限りますよ」
「溶け込めないのですね?」
「まぁ、そういうことですね」
「私は溶け込めるのなら溶け込みたい、オンナってそうじゃないですか?」
「いずみも?」
「えぇ、もう溶け込んでトロトロになっているかもしれませんわね」
「はははっ、その時間はないでしょうね、11時までだと言っていましたからね。
そう時間もかからずに戻って来ると思いますよ」
「そうならいいですね?」
「ん?・・・違うと?」
「希望的観測かしら?」
「柊さんの、でしょ?」
「えぇ・・・そうなら、小田さんとゆっくりお話しもできるかと」
「誘ってますか?」
「どうかしら?うふふっ」
「楊さんに叱られますよ、はははっ」
「社長の命令だとしたら?」
「懐かしいですね。先程も話しましたが、一年前にもそのようなことがありましたね。
その時は楊さんといずみが・・・今夜は、シチュエーションが同じではないですから、4人が
揃った時に再度判断すると、そうお返事させて下さい」
「うふふっ、はい、分かりました。社長にはそう伝えておきます」
「ところで、Aさんはまだ楊さんと・・・」
「お話してもいいかと・・・6時から会食だったでしょ?Aさんが急遽来られたのは事実です。
それが分かって直ぐに、前々から引き合わせたい方がおられまして、その事をお伝えしたら
快諾して頂いて、これも急遽ですが、初顔合わせが実現したのです。その方をお送りした時に
小田さんをお見かけしたということです」
「駅までとは、その程度の人なのですか?」
「おかしな発想ですね?社長がお付き合いされる方達は、全て会社経営とは限りません。
現に小田さんも・・・お分かりになりませんか?」
「まぁ、そうですね・・・僕はいずみがいるからでしょ?その人も付随する何かをお持ちだとか
・・・まぁ、考えないことにします。何と言ってもクリスマスですからね、はははっ」
「おかしな人だわ、小田さんって」


[119] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2025/02/02 (日) 17:48 ID:KXGlItqg No.198080



柊さんとは、ロビー迄一緒に戻って来ます。

「Aさんの事が気になりますか?」
「まぁ、なんとなく・・・」
「ワインバーで社長と歓談されていますが・・・でも、お部屋に戻られたかもしれませんわ。
社長が承諾すれば、お会いになる事もできますが、どうされますか?」
「お会いするまでもないかと。既に部屋に戻られているとしたら、お呼び立てすることになる
でしょ?それは如何なモノかと」
「うふふっ、ワインバーに居られたらということですのよ。お部屋に戻られていたら、それは
あり得ない事ですから」
「そうですよね、はははっ」
「ほんとにおかしな人、小田さんっていずみさんとお似合いですわ」
「嫌味に聞こえますが、はははっ」
「似たもの夫婦って言うでしょ?」
「相思相愛ですかな?」
「呆れるってこういうことを言うんでしょうね」
「はははっ、じゃ、飽きられたところで、今夜はここまでにしましょうか?」
「小田さんってほんとにお話が楽しい人ですね。いつかまたお会いすることがあれば・・・
4人ですね、その時を楽しみにしていますわ」
「えぇ、あればですが・・・」
「うふふっ、では、来年も・・・鬼が笑うには短過ぎますね?」
「はははっ、僕が代りに笑っておきますから」
「うふふっ、はい、お願いします。ではこれで・・・」

柊さんとロビーで別れて、エレベーターホールに向かいます。
柊さんは楊社長が待つワインバーに行くようです。
Aさんがまだいるのか、部屋に戻っているかは、非常に気になります。

エレベーターホールまで来て、トイレに行きたくなります。
ホールを挟んでエレベーターの向い側がトイレです。

トイレに入ると、手を洗っているAさんと鉢合わせです。
彼と私だけですから、逸らすにも何ら材料もありません。
それどころか、彼の様子を知りたいのですから、話し掛けない訳にはいきません。

「奇遇ですね?」
「えっ?・・・あっ?!エレベーターで会った、そうですね?」
「どうでしたか?」
「えっ?・・・あの女性ですね?」
「えぇ、楽しまれたのかと」
「まぁ、そうですね・・・あなたは?」
「僕ですか?それなりにですか・・・クリスマスでしょ?お相手の女性も限られるようで、
お目当てはとっくに予約されているのですから、今も言ったようにそれなりですかね」
「満足とは程遠いですか?」
「だからそれなりですよ。あなたは、まだお聞きしていませんが」
「あなたよりも楽しめたとは思いますが、色々あって複雑な心境ですね」
「そうですか・・・あれですよ、何も考えずに没頭する、それが興奮への近道ですからね、
はははっ」
「しがらみがあってね。そういうこともあって興奮も半減でしたね」
「それは残念、美人で優しそうな女性に見えましたが」
「内面はかなりのモノがありましてね。まぁ、美人なのは有難いのですが」
「そうですか・・・」

その時、Aさんの携帯が鳴ります。


[120] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2025/02/02 (日) 20:48 ID:KXGlItqg No.198091



「じゃ、僕はここで・・・また機会があれば・・・」
「そうですね。ではまた」

私は用を足すために便器へ、Aさんは洗面所から少し入口に移動して携帯に出ます。
雑音は何もありませんから、耳を澄ませば会話は聞き取れます。


『もしもし・・・えっ?会いたいって?・・・それはそうだけど・・・1時間?・・・
連絡を待てばいいのか?・・・分かった、待ってるよ・・・じゃ、その時に』


Aさんは話し終わると、トイレを出て行きます。
Aさんと顔を合わせないために、洗面所で時間を潰してから、エレベーターホールに出ます。
充分に時間稼ぎしたのですから、当然Aさんの姿は、何処にも見付けられません。


部屋に戻ったのはいいのですが、いずみからの連絡があるまでは、空白の時間を過ごすことに
なりそうです。
空白にも色んな意味がありそうですが、この場合は手持無沙汰が当てはまりそうです。

オーナーのレストランに行ったいずみからの連絡が、イベントの前にあるかは、全く見当もつき
ません。
セックプレイに至るまでの過程は、ある程度まで推測は出来ます。
先程のAさんの携帯の相手は、いずみだと断的出来そうですが、私の予測とはかすりもしなかった
のですから、いずみの思惑には入り込めそうにありません。
私の予測では、11時を回った頃にいずみではなくユカさんが、Aさんの携帯に掛ける。
その後、ロビーで落ち合って部屋まで案内する。そして、驚愕のセックスプレイを見せる。
そういう流れだと理解していたのが嘘の様です。
考えれば、全く見ず知らずのユカさんが掛けるよりも、まず、いずみが会いたいと意思表示をして、
その後で、ユカさんが連絡する方が自然なように思われます。
私にはユカさんからAさん掛けてもらうと言っていたいずみですが、考え直したのは正解だと思い
ます。いい意味で、裏をかかれたと言えばいいかもしれません。

上着をベッドに投げ出し、テーブルに腕時計を置いて、その前に座ります。
いつもと変わらない所作ですが、今夜は一大イベントが、それもクリスマスの日に実行なのです
から、なんとも不思議な気持になります。

腕時計は11時前を指しています。
オーナーとどのような打ち合わせをしたかは分からないのですが、11時30分頃を目途に動いている
としたら、そろそろホテルに移動する時間だと思われます。
3人が一緒に行動を共にするでしょうから、その間は私への連絡はある筈もありません。
そうなると、連絡があるのは早くて日付が変わる頃になりそうです。

約1時間の空白を埋めるには、Aさんの情報だけでは足りそうもありません。
と言うか、彼の事など私には取るに足らない些細な事のように思われるからです。

ふと、明日香ちゃんの事が頭に浮かんできます。
いつもなら連絡を受けるのが普通なのですが、今夜の空白を埋める主役に選任したくなります。

携帯に掛けるのですが、何度かコールしても出ないのです。
出れない理由があるのかもしれませんから、暫くしてから掛け直すことにします。

窓の外を眺めても、空白の時間を埋めてくれるモノは何も見つかりません。
10分が経過した時に、明日香ちゃんから掛かってきます。


[121] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2025/02/08 (土) 15:10 ID:0zZJuRxw No.198282



『どうしたの?』
『済まないね。何か・・・忙しいのかい?』
『えっ?・・・直ぐに出れなかったから?』

全く何も聞こえない無音の世界に居るようです。
それに、声を抑えて話していることも、その違いを際立たせています。

『いつもと違うね。何処にいるの?』
『えっ?・・・今は話せないの。帰ったら・・・あれ?』
『出かけてるのか?なるほど、クリスマスだものね』
『うん、そういうことだから・・・あっ?!直ぐだから、ごめんね?』
『分かったよ。お楽しみの最中に悪かったね』

声のトーンを最小限に抑えて、

『聞こえた?』
『女性?』
『分かるでしょ?』
『まさか、柊さん?』
『変な噂は聞き流すから、大丈夫よ』
『なるほど。宜しくとも言えないが、中断したのなら謝るよ』
『うふふっ、じゃぁね、おやすみなさい』


明日香ちゃんも東京に来ているのです。
クリスマスがその理由なのか分かりませんが、綾見ちゃんにも会ったか、会う予定になっていると
思います。
それにしても、同じホテルだろうと推測できるのですが、柊さんと会ってから、1時間近くが経過
していますから、行為中に携帯に掛けたのは間違いないでしょう。

ピロートークで、昨夜から今日の夕方までのいずみの一連の流れを、柊さんが話すかもしれませ
んし、Aさんの実像とか、会食に招かれた人物にも言及するのであれば、いずみとの関連性を察知
した明日香ちゃんが、もっと詳細に話させるように仕向けることも考えられます。
また、私が東京に来ている理由を知っている明日香ちゃんですから、万が一顔を合わすことが
あっても、他人として接する事は疑う余地もありません。

明日香ちゃんの携帯に掛けた事が功を奏したのか、空白の時間を持て余すこともなく、また、
今後の展開を考える上での材料を与えてくれるだろうことも、期待できそうです。
少なくとも中身のない材料にはならない事を祈って、明日香ホームズの活躍と成果を待ちたいと
思います。

色々と思い巡らしていると、日付が変わる頃に差し掛かって来ます。
そろそろいずみから連絡が入る頃ですから、小さくない期待を込めて大きな果実が実ったとの
報告が、聞きたいものです。

午前0時を30分程過ぎた頃に、いずみから連絡が入ります。


[122] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2025/02/08 (土) 17:00 ID:0zZJuRxw No.198289



『ごめんね、遅くなって』
『状況が分らないが、まだ部屋に居るのか?』
『そうなの。終わったことを報告しようと思って』
『それは良かったが、居るんだろ?お二人さんは』
『ベッドに腰かけて・・・うふふっ、手を振ってるわよ』
『ん?・・・聞かれてるのか?』
『私は椅子に坐ってるんだけど、直ぐ近くなんだもの、聞こえるわね』
『ん?聞こえてる?内緒じゃないのなら、僕じゃないのか?』
『そうなの。協力してもらったから、お礼もね。それで遅くなったの』
『報告なら・・・なるほど、戸田さんかい?』
『うん・・・うふふっ、大丈夫よ。オーナーもユカちゃんにもほんとに助けてもらったって話す
から、心配しないでね?・・・聞こえたでしょ?とても頑張ってくれたから大成功なの』
『分かったが・・・』
『着替え終わってるから直ぐに帰れるの。遅くなったから、明日の報告にしてもいい?』
『タクシーは直ぐに乗れるか分からないよ。僕は・・・それは後で話すが、待つことは覚悟して
おかないと、いいね?』
『はい・・・じゃ、切るわね?』

この界隈のタクシー事情に詳しくないとしても、直ぐに乗れるとは思えません。
携帯を切って直ぐに、ホテルの玄関にはいつもタクシーが停まっていることに、はたと気付きます。

上着を着て、いずみのコートを抱えるように持ち、急いで部屋を出ます。
一階のロビーに着いて直ぐに、いずみに掛けます。

『どうしたの?』
『タクシーを待ってるのか?』
『二人と別れて・・・もう直ぐ駅かな?寒いわよ』
『駅前だね?迎えに行くから、いいね?』
『えっ?寒いからいいわよ。風邪を引くわよ、うふっ』
『いずみもだろ?分かったかい?』
『うん・・・でも、いいから・・・あれ?長蛇の列ね、困ったかな?』
『だから、分かったね?』
『うん・・・コートを持って来てね?』
『あいよ』


タクシーは5分もあれば駅前に着きます。
タクシー乗り場から少し離れたところで、いずみは寒そうな様子で、ぽつんと立っているのです。
タクシーが連なっている状態ですから、それを避けてロータリーに入ったところでタクシーを
降り、歩いていずみのところに行きます。

私が声を掛けようとした時、一台の車がいずみの前に停まります。
ドアを開けて乗るように促しているのですから、いずみの知り合いかもしれません。
困惑気味のいずみに近づいて、

「待たせたね」

「あっ?!・・・ごめんなさい、迎えが来たから」
「一人じゃなかったのか?寂しそうに立ってるから慰めてやろうとしたのに、残念だな」
「えっ?・・・寂しくもないし、慰めも要らないわ。ナンパなんてダサいわよ」
「美人かと思ったらおばさんじゃないか。俺も目が悪くなったものだな」
「眼鏡を買いなさいよ。ホントの美人だって納得できるわよ」
「口の減らないおばさんだな。あんたのパートナーも疲れるだろうな」
「私に関わってないで、行きなさいよ。お兄さんにも引っ掛かる子がいるかもしれないわよ」
「イヤなオンナだな。ブスに説教されたくないな、はははっ」
「ナンなの?・・・あれ?行っちゃったわ、うふっ」


[123] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2025/02/09 (日) 10:57 ID:lRxF4OqQ No.198306



「はははっ、一理あるかも?」
「もう!止めてくれないんだもの。行くところまで行ってしまうでしょ?」
「はははっ、昨夜から何度も逝ってるだろ?満腹じゃないか?」
「うふふっ・・・お迎えありがとうございます」
「着ろよ・・・」
「うん・・・嬉しいな・・・あれ?早くない?」
「見ろよ。コートを着てないだろ?」
「ほんとだ!・・・それって・・・」
「タクシーだよ。あそこに停まってるだろ?」
「ホテルの?」
「流石いずみだね。分かっていたのなら・・・言えないか」
「そうでしょ?でも、あの時は何も思い付かなかったわ」
「寒いから早く帰ろうか?」


部屋に入って、直ぐに抱き付いてきます。

「キスは後でね?」
「まぁ、そうだね」
「遅くなったから・・・シャワーはまだでしょ?」
「いずみは?」
「何度目かな?昨夜からなら・・・うふふっ、数えたくないかな?」
「嬉しそうだね?」
「あなたとなら・・・望まない行為って楽しくないもの」
「そうは言ってもだろ?」
「それはそうだけど・・・考えたくないかな?」
「兎に角、シャワーに行こうか?」


2人で入るのは、久し振りです。
いずみは、いつも以上に丁寧に洗ってくれます。
バスルームから出ても、離れようとしません。
何が何でも、私には何もさせないと決めている様です。
私の体を拭きながら、

「あなた・・・歯磨きだけは代われないでしょ?」
「はははっ、自分でするんだろ?」
「ごめんね、出来ることは全て私がしたいの。昔ね、付き合いだした頃ね、そうしてたでしょ?」
「そうだったかな?そう言えば・・・まぁ、いずみも忙しいんだから仕方ないよ」
「忙しいってだけでできないなんて、怠慢だと思うの。だからね、出来る時は全身全霊でお世話
したいの」
「どうしたんだ?宗旨替えかい?」
「昔を思い出したの。なんかね、一区切りついたでしょ?そしたら、急によ、あの頃が蘇ってきて、
駅に歩きながら涙が・・・ホントよ、ダメな私って」
「そうは見えなかったが・・・ホントか?」
「あなたが迎えに来るって連絡が来たでしょ?もう涙が止まらなくて、周りの人に変な目で見られ
たわ」

振り返れば、いつもとは何となく様子が違ったように思えます。


[124] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2025/02/09 (日) 12:27 ID:lRxF4OqQ No.198308



「ナンパの彼には力強く話していただろ?」
「だからでしょ?そう見えなかったと思うわ」
「切り替えが早いからね。ついて行くのに苦労させられるよ、はははっ」
「信じる?」
「信じたいね」
「あなたに信じてもらえないと・・・うううっ、ほんとに悲しくなるもの」
「ん?どうしたんだ?」
「だって・・・もう何もかもイヤになって、あなたと二人で何処かに・・・誰も知らない所で
暮らしたいの」
「ひろ子を忘れていないか?」
「うん・・・大事な宝物だもの、忘れるなんてあり得ないでしょ?」
「はははっ、そうは言っても戻れないだろ?僕は会社を辞めれば自由自在だが、いずみは引き返せ
ない立ち位置じゃないか、我儘を言える状況ではないのは分かってるだろ?」
「うん・・・怖いの、何だかすべてが怖くて。期待されればされる程、恐怖が”ワッ!”って押し
寄せて来るって感じなの」
「分かるよ。大なり小なり誰しも通る道じゃないか?それを克服して初めて、見えてくるものが
ある。それが未来の扉を開く礎になると思うよ」
「うん・・・越えられない壁はない、その気持ちなんでしょ?」
「いずみは分かっているんだよ。話すことで信じる気持を強くできると、そうだろ?」
「うん・・・あなたには弱い私を見て欲しいの。違うわ、見せたいの・・・あなただけには
嘘偽りのない私でいたいの」
「はははっ、僕以外には嘘をつくのかいい?」
「嘘っていうか、真実は見せないかな?それって嘘も方便?」
「”シヌ〜!”と”イク〜!”の違いじゃないか?」
「もう!そこに結び付けないでね?・・・うふふっ、今夜は結び付きたいかな?」
「オーナーには話したのか?」
「えっ?・・・あっ?!うふふっ、”今夜はダメ!”って、それだけ。彼って正統派だもの、
後ろには関心がないのね」
「寂しい?」
「あってもいいかなって・・・あれ?性の多様性は強制するモノじゃないでしょ?」
「望まれれば、かい?」
「うん・・・そういうスタンスかな?オーナーだけじゃなく、お相手する人には」
「どうだい?気持ちも落ち着いてきたかな?」
「うん、あなたに話せて・・・そうだったわ、今夜のことをお話ししないと」
「だね・・・じゃ、ベッドだね」


ナイトウエアを着て、ベッドに入ります。
いずみは、いつものように私の左二の腕に両手を巻き付け、隙間が空くのが耐えられないという
風に、いつも以上に体を密着させてきます。

「先に聞いても?」
「うん・・・変なことを言った?」
「はははっ、とってつけたようなセクシーサンタの出処は?」

”やっぱり”というような雰囲気が伝わってきます。
これでもかという程、強く抱き付いてきます。

「遅いんだもの。どうして、あの時に聞かなかったの?」

恥ずかしそうに甘えてきます。
以前のいずみならと思い起こすのですが、遠い昔のように感じられます。
強気も相まって、最近ではあまり見られない光景です。


[125] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2025/02/09 (日) 15:25 ID:lRxF4OqQ No.198312



「気が回らなくてね、はははっ」
「それどころじゃなかった?それかね、バカらしくて聞く気になれなかった?どちらかでしょ?」
「落ち着いたら急に思い出されてきてね、僕にとは到底思えないだろ?」
「楊さんじゃないって話したでしょ?」
「だからだよ。不思議なモノもあるものだなってね」
「不思議って?あなたには子供の心がないのね?うふっ」
「ん?・・・そうだとしても、セクシーはないだろ?」
「どのようなことでも手違いってあるでしょ?」
「いずみが?」
「私だったら?」
「はははっ、今のいずみには考えられないだろ?」
「考えられない?」
「間違っては・・・はは〜ん、分かったぞ、石黒さんだろ?」
「断片的でしょ?点と点を繋げて欲しいかな?」
「発端はいずみ、これは合ってるだろ?」
「うん・・・続けて欲しいな?」
「今夜は優しいじゃないかい?」
「だって、あなたと水いらずなんだもの。あっ?!水臭いって思ったでしょ?」
「お湯は使い過ぎたから水に振ったのかい?はははっ」
「ふやけそうかな?もう!あり得ない事ばかり。お湯入らずなんてあるの?」
「それはあり得ないね、少なくとも僕とのベッドインでは」
「匂いフェチなら・・・イヤよ、シャワーを省くなんて。それどころじゃない人っているわね。
早く早くって感じで。あれ?肯定したんじゃないからね、うふっ」
「はははっ、逸れずに返答だね・・・ひろ子のためだろ?サンタの衣装は石黒さんに頼んだ、
ところが届いたのはセクシー系。バツの悪いことに、予定していたクリスマスに楊さんとの
ベッドインが決まったんだろ?その日が最後だと告げられたから、変更は頼めなかった。
それで、使い道に困って僕に見せたというシナリオじゃないか?」
「分かる?」
「でたね、はははっ。修正は?」
「あるかな?」
「聞こうか?」
「ホントに酷いと思うでしょ?よりによってクリスマスの日・・・あれ?話したわ、うふっ」
「同じことを口にするのは、怒り心頭なんだろ?」
「うん、もう終ったことだから気にしても始まらないでしょ?でもね、楊さんとは24日から25日迄
だから、ひろ子ちゃんにはサンタの姿を見せられないでしょ?だからね、あなたに・・・
ひろ子ちゃんにサンタさんからの贈り物って思っていたのに、叶わないから、”私をあなたに送り
ます”ってメッセージだったの。分からなかった?」
「状況判断が間違ってるだろ?」
「今からなら・・・セクシーサンタのお相手をしてくれますか?」
「はははっ、まずは・・・」
「あのね、最初に考えたのとは少し違ったけど、私が先にあの人に掛けて、会いたいって意思表示
したの」

私が推測した理由と同じなら、意思疎通が出来ていることになります。
そのことは既知の事実ですが、ここは知らない振りを通します。

「そう言えば、ユカさんに掛けてもらう設定だったね。気持の変化があったのかい?」
「変化って言うか、誰か分からない人からなら敬遠すると思ったのね。ほんとかどうか分からない
って、切り捨てられるんじゃないかって。神経質なところも・・・いいように言えば、ピュアーな
ところかな?繊細って難しいでしょ?」
「僕は処し易い?」
「あれ?あなたも・・・ないかな?うふっ」
「はははっ、野暮な僕とは比較にもならないだろ?」
「そうよ、あなたとは・・・あれ?これって二番煎じじゃない?唯一無二って何度言ったか、
言わせたいんでしょ?」
「意図しないところで表明されると戸惑うしかないね」
「それなの、ちょこっと悩んだのよ。ユカちゃんとはそういう打合せをしたんだけど、やはり私が
って。最初に私が掛けたのは正解だったわ」

彼がトイレで受けたとは、夢にも思っていないでしょう。


[126] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2025/02/09 (日) 17:15 ID:lRxF4OqQ No.198315



「即答?」
「うん・・・オーナーのところに行って直ぐに打ち合わせね。驚いていたけど、あっても不思議
じゃないって、二人共口をそろえて言うのよ。”私ってそんなに魅力的なの?”ってお鼻が高く
なりそうだったわ」

ジョークをこうもすんなりと口にするいずみは、やはり稀有な感性の持ち主なのかもしれません。

「ジョークだろ?」
「お鼻って、高過ぎると何だか威圧感があるように思わない?」
「ん?・・・それで?」
「だからね、それって私じゃないでしょ?だからジョークって受け取ってもらえるの。
そう思わない?だって、あなたがそれを証明してくれたんだもの」
「はははっ、そこまで考える?」
「私らしいでしょ?」
「見えないものを見えるように具現化する、そういうことかい?」
「うん・・・アイデアってそういうところから顔を見せると思わない?」
「僕には到底できない業だね。いずみならではの発想かな?」
「うふふっ、今夜のお芝居もそうでしょ?見せないように見せる、これって思ったより難し
かったわ」

真実とは異なる事実を披露するのですから、それなりの葛藤はあったと推測できます。

「オーナーとの気持ちの持ち方に苦慮したんだろ?」
「お芝居って分っていても、オーナーの気持ちを受け止めないと、本気に見える本番は実現でき
ないでしょ?これって、尾を引かないかちょこっと心配かな?」
「嫌いじゃないだろ?」
「そうよ。でもね、それ以上の感情を持たれたら、後々面倒なことにならないか・・・あれね、
戸田さんがいるから歯止めにはなるかな?」
「来年も使えるとは限らないから、それなりの距離感は必要だね」
「”付かず離れず”でしょ?肝に銘じておきます、うふっ」
「さてと、事前に打ち合わせして実行だろ?計画通りなら特に聞くこともないが・・・」
「肝心なところは話しておきたいの。打ち合わせ通りなのはそうなのよ、行為中を見せるんだから、
私だと認識できないとダメでしょ?」
「体位?」
「うん、正常位なら直ぐに認識できないでしょ?時間って衝撃を和らげる作用があると思うのね。
一瞬で認識できる体位って考えたの。ベッドルームに入って壁側のベッドに近づいたら、
それまでに喘ぎ声は聞こえてるのね、”何処で?”と思ったら、”あっ?!”って驚愕の声を
発してたじろぐ。そう想定したのね」
「はははっ、たじろいだのか?」
「私には分からないでしょ?・・・あれ?体位を話さないと。あのね、騎乗位しかないと思ったの。
でも、体の向きで意見が分かれて、そうでしょ?一瞬で認識させるのなら、お顔が向き合わないと
ダメだもの。でも、それってAVでよくあるシチュエーションでしょ?性器結合をリアルに見せる
・・・AVの神髄だから不自然って切り捨てられないけど、この場合は不自然過ぎるって反対だっ
たの。でも、衝撃を与えるのはそれしかないって、一瞬だから、不自然も何も感じる間もなく、
驚愕の情景に固まるか、腰を抜かすか・・・それって、オーナーの意見ね・・・私は立ち止まって
直ぐに後ずさり、その後急いで部屋を出ると推理したの」
「で、体位は?不自然を選んだ?」
「うん・・・見せるんじゃなかったらあり得ないでしょ?でも、ここは心を鬼にして・・・
うふふっ、大袈裟かな?不自然で実行したの、うふっ」

ユカさんとの連携が難しかったかもしれません。


[127] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2025/02/11 (火) 12:35 ID:6hNJOGzk No.198379



「ユカさんの出番から第二幕がスタートだね」
「第一幕は・・・私があの人に電話した事ね?」
「喜んでいただろ?」
「というか、半信半疑って感じだったわ。あのね、何も聞こえないのよ、お部屋だったらTVの
音とか、お外なら騒音とかね。真空地帯に居るのって聞きたくなったくらいなの」
「寝てたとか?」
「ふてくされて?・・・それはないんじゃないかな?会食の後の行動は全く分らないけど、
10時30分頃よ、私が掛けたのは。何処にいたのかな?」
「彼の気持ちが現れていたんじゃないかな?何も考えられない無の境地、達観していたかもね?
はははっ」
「何も知らないでしょ?それなのにそこまで推測できるの?」
「真空地帯と言っただろ?何かに囲まれた空間に居たとしたら、僕の発想も満更間違っているとは
言えないだろ?」
「あっ?!そうか!おトイレ・・・それなら辻褄が合うかな?だって、おトイレって何も考えない
でしょ?無の境地、そうかもよ」
「はははっ、考えたくないね、オトコの排泄は」
「オンナなら?」
「少しはあるかな?はははっ」
「イヤらしいんだから。でも考えようかな?それが興奮に繋がるんだから、巡り巡って最高の
喜びが私に舞い降りて来るの。そうでしょ?」
「男と女は摩訶不思議な所作で繋がっている。そう思えば納得するだろ?」
「うふふっ、纏まりました・・・第二幕からお話しするわね?」
「このミッションで一番難しかったと思うね」
「そうかも・・・あのね、オーナーとユカちゃんには早く切り上げてもらって、お部屋に帰って
来たのが、11時30分頃だったの。打ち合わせは終わっていたから、直ぐにユカちゃんに掛けて
もらって、一階のエレベーターホールで会う約束をしたの。
ユカちゃんがお洋服とか容姿を・・・あのね、ユカちゃんって面白いのよ、”いずみさんと同じ
くらい美人だから直ぐに分かると思います”って、舌を出すんだもの、笑いそうになったのよ。
彼女って目鼻立ちがハッキリした顔立ちでしょ?」
「記憶が曖昧だね。あの時はいずみしか見ていなかったからね、はははっ」
「はい!はい!嬉しいわ・・・あのね、エレベーターホールで会ったらすぐに連絡、携帯に
着信音ね、それを聞いてスタンバイ。ユカちゃんがお部屋を出たのが40分頃、10分経過した頃に
携帯が鳴ったの。
その時は何も思わなかったのね、見せ方に注力していたからだけど。あなたと会ってタクシーって
聞いて、なるほどって納得したの」
「それなりの緊張感に満たされていたのなら、仕方ないだろ?」
「そうだったかな?うふっ・・・でね、スタンバイって言ったでしょ?ユカちゃんがお部屋を出て
直ぐに始めたの。正常位で慣らし運転って感じかな?軽く逝って少し休憩ね、オーナーは発射
しないの。分かるでしょ?」
「彼が帰ってからご褒美をもらうためだろ?」
「あれ?貰ったのは私かも?うふふっ」
「はははっ、オーナーのクライマックスは聞かなくていいから、その瞬間を話さないか?」
「話せないかな?ドアが開いてユカちゃんが”来られました!”って大きな声で知らせる段取り
だったの。それは分かったのよ、でも、エクスタシーに達する少し手前からスタートって感じ
だったから、快感に集中している時でしょ?何も見えない聞こえないその瞬間にあの人を迎える
のよ。オーナーは大変だったと思うわ、タイミングってホント難しいもの。
ユカちゃんと上手く連携出来たからやり遂げられたと思うの。木下さんの愛人であっても、
オーナーと一つ屋根の下に居るんだもの、以心伝心って心強いと思ったわ」
「ベストカップル?木下さんに聞かせられないミッションだったね」
「ホントそうかも?でもあれね、男女の綾は他人には分からないモノなんでしょ?」
「はははっ、難しいね。文学談義が顔を出したかな?」
「うふふっ・・・だからね、その瞬間は何も分らなかったの。後でユカちゃんから聞いたのね、
そしたら、私の推測とほぼ同じだったって。満更じゃないと思ったけど、あの人の性格とか分って
いたからでしょ?特にお鼻を高くするようなことじゃないって、自分を戒めました。お終い!」
「頑張ったね、ご苦労様でした」
「良かった!あなたの発想が実を結んだのね?うふっ」
「シナリオは僕、監督と主演はいずみ、二人三脚で完走だね」
「オーナーとユカちゃんには、共演賞を授与しました。分かるでしょ?」
「はははっ、ミイラ取りがミイラになった・・・ん?使い方にちと疑問符かな?」
「ホントは私が楽しんだってこと?・・・そうかな?そうかも!うふふっ」

その夜は、未使用箇所を示唆することもなく、私より先に眠ってしまいます。
最初からそのつもりもなかった私ですが、いずみもそれは理解していたと思います。


激動と言っても過言ではない一年を通じて、くる年を迎える準備が出来たと言えそうです。


[128] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2025/02/11 (火) 16:21 ID:6hNJOGzk No.198386


[後書き]



全てではありませんが、約1年余りを時系列に綴ってきました。
彼女を取り巻く環境も、年を追うごとに変わっていくのですが、それに伴ってと言えばいいかも
しれませんが、性事情も変化していきます。
往く年があって来る年があるように、何の変哲もない性の営みも、終焉を迎えると見せかけては、
より一層輝きを増すのですから、ある意味圧巻ではあります。
途切れることなく脈々と続くその様は、時には私を拒絶し、時には受け入れ、くるくる変わる
彼女の心情も、決して変わらない私への愛がその根底にあると思っています。

いつから投稿を始めたのかも記憶が薄れる程、遠い昔のように感じています。
投稿当初(本投稿以前)、備忘録として表記したことが思い出されます。
その当時の読者の方には、既に終わった出来事だろうと、推測されたと思います。
正直なところ、愛人の立ち位置からスタートした彼女と、結婚するとは夢にも思わなかったのです
から、人生とは不思議な縁を運んで来るものだと思っています。

彼女の性事情の端緒は私だったかもしれませんが、数年後には普通の人生を送っていれば、
決して経験できないと思える多種多様で、表現に窮するような淫靡な性行為をも嬉々として
受け入れ、自らも身を投じるのですから、淫乱と揶揄されるのも仕方ないことです。
その間、失踪も含め連絡の取れない時期もありましたが、付かず離れない関係性を保ちながら、
結局は私の元に戻っています。

今の彼女には、性事情以上に大きな目標があるのですが、ほんの些細な状況からでも、性事情に
比重が移る事があります。
事実と真実の狭間に立ち尽くす時、その様子から私に見抜かれ、また、第三者の関与を偶然にも
私が知り得ることで、引き戻すこともあります。
ただ、私が理解している以上に強い精神力の持ち主ですから、キッカケを掴めば全力で元の
立ち位置に戻って来ます。
以前よりも危うさは減少したとはいえ、まだまだ油断はできない状況は続いています。

長きに亘って応援して頂いた読者の皆様には、どのようにお礼を言っていいのか、言葉すら
見い出せない程、感謝の気持ちで一杯です。
頂いたコメントに適切にお返事できなかった、しなかったことも含めて、改めて謝罪致します。
何分、特定されない事が大前提ですから、的確な表現は避けなければならない事情も、ご理解
頂けると勝手な判断を下しています。

本文中に出てくるホテルは実在していますし、実際に投宿しています。
微妙に変えているところはありますが、もし、そのホテルを利用されることがあれば、納得頂ける
と思います。
以前、ハワイでの出来事を書き綴りましたが、ホテルも地名もありのまま表現しています。
遠く離れた外国という理由からですが、考えれば、アメリカ人に次いで日本人の観光客が多いと
聞きますから、勇み足だったと少々後悔しています。

私達の目指すモノがあるとしたら、真実の置き所だろうと思っています。
事実と真実の命題は、これからも二人の葛藤の中で息づいていくでしょうし、真実が私達の絆を
繋ぐ架け橋なのは間違いありません。
不信感に苛まれる時、私達を助けてくれるのは、真実以外に思い付く言葉はありません。

では、コメントを頂いた皆様、読んで頂いていると思われる読者の皆様、長い間お付き合い頂き、
ほんとにありがとうございました。
皆様のご健康とご多幸を祈って、ここで終わりたいと思います。

                                       小田


[129] Re: 絆のあとさき 5  :2025/02/13 (木) 17:00 ID:alPTCa9M No.198458
小田さん、お疲れ様でした。2016年から足かけ9年の長きにわたり本当にお疲れ様でした。
私が退職した2015年の次の年の5月に初めて読ませて頂きました。
戻れない季節が2016年の5月です。それから毎週土日が楽しみでした。
ある方がサスペンスと言われたように、時系列で書かれ会話文のため半年ぐらいは私の頭がついていかずに四苦八苦したことを思い出します。(笑)
その後感情移入して小田さんにたびたびコメントを書いてしまいました。
今思えば恥ずかしい限りです。
しかし、今も感情移入してしまっています。是非、次の年の「東京へ再び」をお願いします。
ますます仕事に忙しそうですが是非ご検討お願いします。
ゆっくりと休まれて、暇ができたら(なかなか難しいと思いますが)再会をお願いします。

事実が真実と考えられることが多いですから、事実と真実、難しいですね。
渡邊明九段の奥さんの伊奈さんが「誰も他人の家庭のことは理解できない」と
キャラクターを通じて言っていましたが、その通りだと思います。

ひとつ、楊からのプレゼントは今年で「お返しする」と言っていましたがブレスレットはどうなったのでしょうか。
それと楊の「どんな手を使ってもいいから、小田さんの承諾を貰ってくれよ、」と言ったのは、
来年東京へ行くこととは関係なく、社外取締役のことだけでしょうか?
来年の3月まで課長として実績を積んでほしいと言われて、その承諾のことも言っているのかな?
と思いました。
最後にこの日はひろこちゃんの所に夕食も添い寝もしなかったようですが、
こんな日も今までにもあったのでしょうかね。度々会食に参加させられているようにいずみさんが
言っていましたが、6時からの会食では夕食も添い寝の時間も違っていますよね。
まあ、細かいことを言って申し訳ありません。また。


[130] Re: 絆のあとさき 5  :2025/02/15 (土) 07:34 ID:IuyxU8SM No.198499
小田様

まずは脱稿おめでとうございます。
長期に渡る執筆お疲れ様でした。
8年以上毎週末楽しみに拝読させて頂きました。
途中、心が苦しくなったり、安堵したりの繰り返しで、
小田様に自分を重ねて読ませて頂く事も多くありました。

ハッピーエンドは当初予想できていませんでしたが、
リアルに現在の生活がある事、嬉しく思います。

また、読み物として、小田様の描写力そして、解説力は、
言外の心理的なやりとまで手に取るようで素晴らしいと思いました。
言葉一つ一つの選択など、繊細で、小説を本業とされているかの様です。
一方で、理路整然としていて、技術者だなと思うところも多く、
楽しく読ませて頂けたところだと思います。

流れとしては、読者としては、突然の終りの思いが強いです。
どこかで区切らないときりがないと言う事もあると思いますが、
まだまだ書かれていない物語もあるのではないかと思います。

また落ち着いて、執筆意欲が戻られる事を期待しています。

ありがとうございました。

今週末から、ひとつ楽しみが減った事が残念です・・・


[131] Re: 絆のあとさき 5  修司 :2025/02/17 (月) 21:09 ID:5CwJGm5Q No.198574
小田様

終わってしまったのですね

長編 投稿当初より 拝読しておりました。

すごく 惹かれる 投稿で 更新されたときはすごくうれしくしておりました。

わがままですが・・・

次のステージも拝読したいと想います。

今回、休養されたら またご一緒に物語に同感させていただきたいです。

復活の・・・小田さん お待ちしております。


[132] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2025/03/08 (土) 17:20 ID:0zZJuRxw No.199031


シンさん、後書きにもコメントを頂き、ありがとうございます。

投稿して直ぐに、書かなければ良かったと後悔することも多々ありました。
長丁場ですから、この件は後で纏めようとその時はほんとにそう思って
いるのですが、他の出来事に注力している間に忘れてしまい、後で思い出す
のですが、そこまで戻ることもできず、時すでに遅しの状態で、うやむやに
なってしまったこともあります。

ブレスレットの事を覚えておられたとは、頭が下がります。
彼女の弁では、時計など貴金属は返したと言っていますが、ブレスレットは
紛失したと思っていますし、他の物も返却したとは到底思えません。
彼に許可を得て、誰かに譲渡したと考えるのが、自然だと思います。
私がプレゼントした機械式時計は、正確に時を刻まないと言いながらも、
今も着けていますから、あながち嫌っていないのかもしれません。

翌年からは事情が大きく変わっていきます。
その事を投稿するにしても、時系列で投稿する事は止めようと思っています。
一つの出来事についてのみならば、投稿できない事はないと思います。


[133] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2025/03/08 (土) 17:47 ID:0zZJuRxw No.199033


てっちゃんさん、最後までお付き合い頂き、感謝の言葉もありません。

紆余曲折しながら、何度も折れそうになったことも、忘却の彼方のように
感じています。
過ちとか間違いなど長い付き合いの中では、相当数あるのが自然だと思って
いますが、私達には自然とは言えない過酷で淫靡な時間を、何年もかけて
潜り抜けてきました。
年を追うごとに形は変わっていきますが、その本質は何ら変わるところは
ありません。

筆力という言葉があります。
文章を表現する力ですが、これについては何度も悩まされました。
当初は余り気にしていなかったのですが、会話文を多用するのは、話の流れを
より鮮明に伝えられると思っての事なのですが、ともすると、背景が分らないまま
流されて、次へ移って行くことも多くありました。
分らないところも多々あったと、今思えば、筆力の無さを思い知らされた思いです。

本稿の翌年もあわただしい年になります。
性事情と仕事の掛け持ち?で、奔走する彼女が、微笑ましくもあります。
”自由ほど不自由なモノはない”と、実感するような出来事です。


[134] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2025/03/08 (土) 18:04 ID:0zZJuRxw No.199034


修司さん、最初から読んで頂いていたのですね。
ほんとにありがとうございます。

表現方法とか形式と言えばいいかもしれませんが、徐々に変化してきたと
思っています。
投稿当初は全くコメントを頂けなくて、関心の範疇には置かれていないと
落ち込んだことが思い出されます。

ここ数年は、継続的にコメントを頂けるようになり、仕事との兼ね合いには
なるのですが、気持ちを強く持って書き続けることが出来ました。
その気持ちを継続させるには、一呼吸を置くのも一考かと思っています。
充電とも言いますが、その期間は必要でしょうが、それが長くなればなる程、
気持が萎えてくるとも思っています。

次のステージは翌年の事になりますが、単一の物語ならと考えない訳では
ありません。


[135] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2025/03/08 (土) 18:15 ID:0zZJuRxw No.199035


継続、再開のご要望を頂き、感謝の念に堪えません。
ただ、暫くはここを離れたいと思っています。

シンさん、てっちゃんさん、修司さんへのお返事の最後に、少しずつ書きましたが、
そういった内容の出来事を投稿出来ればと思っていますが、一つの出来事ですから、
今までのような長丁場にはならないと思います。
それでも、ご要望頂けるのなら、また戻って来ることも、やぶさかではありません。


[136] Re: 絆のあとさき 5  修司 :2025/03/08 (土) 20:03 ID:DH6eNXlI No.199037
嬉しいです。

小田さん 板にコメントいただけるなんて!

感謝です。

勿論です。

小田さん やぶさかでなく!

小田さん、再開を・・・心より、お待ちしています。

もう。春の芽吹きも感じられる季節になりましたね 

お体にお気をつけて、復活までのひと時をお過ごしください。


[137] Re: 絆のあとさき 5  :2025/03/09 (日) 08:09 ID:fhChrFi. No.199045
小田さん、おはようございます。
年末までの「絆のあとさき」が終わって、
小田さんの投稿がなくなって、小田さんロスになっていました。

小田さんの投稿に一喜一憂していたことが懐かしく思いだします。
真実と事実の狭間を小田さんといずみさんがお互いを愛し、信頼しているから
こそ今に至っていることは「絆を求めて」で理解したつもりですが、
そこからの展開に心ここにあらずの、ハラハラどきどきの展開でした。
永遠に続く事ではないことは頭では分かっているのですが寂しさに包まれていました。

投稿再開の報を頂き心より感謝しています。
3月、4月仕事の事が大変でしょうが、
しばらく英気を養ってください。
ありがとうございます。


[138] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2025/03/16 (日) 21:27 ID:vMmUPaEE No.199189

修司さん、シンさん、お返事が遅くなりました。

投稿開始時期を検討していますから、今しばらくお待ち下さい。


[139] Re: 絆のあとさき 5  修司 :2025/03/17 (月) 22:21 ID:5CwJGm5Q No.199216
小田さん

嬉しい告知ありがとうございます。

願望になりますが・・・・

その際は bP27話(絆のあとさき)続きも重ね重ねよろしくお願いします。

投稿される時を心より、お待ちしております。


[140] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2025/03/20 (木) 11:01 ID:FRqlMzaw No.199255


修司さん、127の記事の後は、翌年になります。

些細な出来事なら数多もありますが、それを文章に起こすには、余りにも時間が
少な過ぎます。
例えば、彼女が駅のタクシー乗り場の傍で私を待っている時に、声を掛けてきた
男性との後日談もあります。
彼女以外の綾見ちゃん、明日香ちゃんなども然りですし、中途半端に終わっている
ことは百も承知していますが、そこまで手が回らないのも事実です。
彼女達の事は、別枠で投稿したいとは思っているのですが、希望的観測になりそうです。

今回投稿する予定の出来事は、翌年の一つの出来事と理解して下さい。


[141] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2025/03/20 (木) 11:32 ID:FRqlMzaw No.199256


再開時期ですが、5月頃を予定しています。
投稿開始日につきましては、一週間前にお知らせするつもりです。

相変わらず週末の投稿になると思いますし、連続の投稿も難しいかと思います。
また、以前のような”驚愕”と言える内容ではありませんから、ご期待に添え
ないかもしれません。
彼女の”欲”にかられた心理面を描けたらと思いますが、どこ迄掘り下げられるかは、
全く未知数です。

会話文主体の投稿スタイルも今まで通りですが、彼女の名前の表記は、会話文の中だけ
になるかもしれません。
説明文では、”彼女”と表現することになろうかと思います。
その理由は、投稿の中で説明するつもりです。

先に書きましたが、一つの出来事に的を絞っていますから、その周辺での出来事は
極力省略するつもりです。
ですから、投稿期間も今までよりはかなり短くなると思います。

この出来事に関する登場人物以外にも、以前の人物も出てきますが、私達との関係性を
説明するには時間がかかりそうですから、その事につきましては、申し訳ないのですが、
過去の投稿を思い起こして頂けたらと思います。

では、投稿開始まで期待半分?で待って頂けたらと思います。
乞うご期待と言えればいいのですが・・・
じゃ、その時にお会いしますね。


[142] Re: 絆のあとさき 5  :2025/03/20 (木) 14:17 ID:YiQJrqv. No.199258
小田さん、こんにちは。
再開の時期のお知らせありがとうございます。
些細なことは本当に多岐にわたりすぎるのでしょうね。
その中で、「時には私を拒絶し、時には受け入れ、くるくる変わる彼女の心情も、」
とありますが、やはり性欲に溺れているときには小田さんから離れようと、
意識する意識ではなくてもあるのだと思います。
読みながら感情移入しすぎることも分かるのですが小田さんの文章力に引き込まれます。
なにはともあれ、続きが楽しみです。よろしくお願いします。



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