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色は思案の外

[1] スレッドオーナー: 最後のティッシュ :2017/08/20 (日) 00:29 ID:ZVkL5PqE No.24890

入籍して一年と二ヶ月、もう少しで一緒に暮らし始めて一年が経とうとしているが未だに「凛子さん」と「さん」付けで呼んでいる
これは仕方がない、元々は上司と部下の関係だったのだから
付き合い始めの頃は「凛子」と心の中で何度もシミュレーションしたものの
切っ掛けを逃し続けて今に至る
何事も最初が肝心とはよく言ったもので、もう切っ掛けが無い

僕は野上 宗太(のがみ そうた)30歳
嫁さんは凛子(りんこ)さん33歳、三つ年上で元上司だ


出会いは新人研修が終わり比較的ブラックな部署に配属された時だった
嫌でも目につく長身の女性は身長が僕と同じで175cmだけど、姿勢の良い彼女は僕よりも背が高いように感じる事もある
整った顔立ちだが笑顔は無く、黙々と仕事に打ち込む姿からは親しみやすさというのは感じなかった
彼女の名前は 吉田 凛子
この時はまだ頼りになる先輩といった感じだったかな
入社してから三年経ち出会った頃の凛子さんと同じ歳になったが、僕は未だに一癖二癖ある顧客に振り回される毎日
一方、凛子さんはというと、この三年の間に頭角を現して「吉田隊長」と陰口をたたかれる程になり
出会った頃の感情が乏しいという印象から、声を荒げているという印象に変わっていた
机に向かい口を噤んでいる時でも、時折眉間にしわを寄せ何所か近寄り難い雰囲気をかもし出している
凛子さんの目が届かないところでは「立てば仁王、座れば閻魔」などと揶揄される事もあるほどだ
自分に厳しく仕事では妥協しない、その仕事に対する厳格な姿勢を他の人にも求める事もあり同じ部署の中には凛子さんを疎む人が多くいた
僕もその中の一人だったわけだが・・・

若手の成長を促すために僕を含めた四人でチームが組まれると、当然の如く隊長は吉田先輩となる
吉田先輩改め吉田リーダーとなった凛子さんに叱られる日々の始まりだ
175cmという女性にしては長身の体格に鼓膜を直撃する勇ましい声 威圧感がハンパない
比較的大きなプロジェクトの指揮を執るという事で吉田隊長は四六時中ピリピリしている

 このチーム、僕には向いてないよ 性格が大雑把だからね
 何で選ばれたんだろう? たぶん人選ミスだな・・・

まぁ、結局は先輩方に手助けされながら及第点を得た訳だが、パーフェクトを求めていた吉田リーダーは納得していなかったようだ
凛子さんらしいと言えば、らしい
これで吉田隊は解散、僕は先輩から譲り受けた我が儘な顧客の元へ戻り忙しくも平穏な日々を送ることになったが
このプロジェクトを切っ掛けに吉田先輩は更に飛躍していく


「野上くん」
吉田主任の声が一瞬僕の心臓を止めた
 (何だ・・・ 何か失敗したか?怒られるのか?)
「はい、なんでしょう・・・」
「来月からよろしく頼むわね」
「はい?」
もう二度と召集される事はないと思っていた吉田隊からの召集令状

 なんで僕なんだ・・・

この時、吉田主任は31歳 僕はあの時の「吉田リーダー」と同じ28歳
あの時の彼女はプロジェクトリーダーで、今の僕は小さな店舗なら任される事はあるが主な仕事は顧客のアフターケア
同じ歳になってみると差が見えてしまうんだよね
まぁ、吉田主任には主任の業務もあり今回は大きな物件ではないようだ 僕の立ち位置は吉田主任のお手伝いってところかな
あれから三年経ち主任の怒号にも慣れたし、あれ以上の地獄を見る事はないだろう

 気楽にいけばいいさ

自分なりに鼓舞してみた

「野上くん」
「はい」
「今夜空いてる?」
「今のところ特に予定は」
 (今夜?何だ?)
「御飯ご馳走するわ、予定入れないでね」
「・・・はい、ありがとうございます」
 (はぁ!?何があるんだ?説教されるのか!?勘弁してくれよ、ここ三日ほどは何もやらかしてないだろ・・・)
「今日は何時の予定なの?」
「残業は二時間ぐらいですかね・・・」
「そう、ちょうどいい時間になるわね」
「そうですね」
 (いやいや、今夜は競馬の予習が・・・)

 明日は秋の天皇賞だというのに、何故こんな事態になった・・・

主任に連れられてきた店は中華料理店だ
といっても高級じゃない方でラーメンやチャーハンといった大衆的な方の中華料理店で
テーブルには唐揚げと餃子、それにビールの瓶と二つのコップが置いてある 長くなりそうだ
 (あれ?主任ってお酒は飲めなかったんじゃ?)
忘年会などお酒が出る席での主任は烏龍茶を飲んでいるイメージしかなく
酒は飲めないと自らも公言している、違和感はあったがそんな事気にしている場合じゃない
とりあえず、この場を乗り切らなければならない
先ずは「お疲れ様」の乾杯から、次は何が来るんだ?
しかし、僕の心配を余所に仕事の話を肴にしてビールの瓶が空いていく
 (主任って結構いける口なんだ 酔う気配が全くない 僕も酔えてないけど・・・)
「三年前だったかしら あの時の野上くんは頼りなかったわね」
「はは・・・」
 (とうとう来た、僕もあれから成長してるんだ 軽い説教なら受け流せる)
「最近は楽しそうに仕事してるわね」
「そうですか?」
 (ん?何か違うぞ)
「よく笑ってるじゃない」
「まぁ、笑うしかないって事もありますし」
「ふふっ、そうね」
 (おっ、笑った?)
「主任はどうです?仕事楽しいですか?」
「う〜ん・・・」
 (あれ?楽しくはないのか・・・)
「ああ、そういえば最近噂になってますよ」
「私の事?」
「はい、背の高いイケメンと並んで歩いてたって 彼氏ですか?」
「ええっ?人違いじゃないの?」
「でも、主任と見間違える女性はそうそういないと思いますけど」
「大女で悪かったわね、こう見えても気にしてるのよ」
「あ、いえ そういう意味じゃなくて・・・」
 (別に気にするほどの事じゃないと思うんだけど・・・)
「ふふっ、たぶん弟よ イケメンかどうかは判らないけど」
 (あ、また笑った)
「弟さんいるんですか?」
「ええ」
「じゃぁ、彼氏は?」
「いないわよ、野上くん彼女は?」
「いえ、いないです」
「本当に?」
「はい」
「ふ〜ん」
 (あ・・・ やっぱり何かいつもと雰囲気が違う・・・)
「主任ってモテたんじゃないですか?」
「何で過去形なのよ」
「あ、すいません」
「でも、どうしてそう思ったの?」
「いや・・・ なんとなくですけど・・・」
「野上くんは?モテるんじゃないの?」
「僕ですか? いやぁ・・・」
 (僕の何所を見てモテると思ったんだ・・・)
「じゃぁ、初めて彼女ができたのは?」
「大学に入ってからですけど・・・」
「本当に?」
「はい、嘘言っても何にもなりませんから」
「そうね」
「主任はどうなんです?」
「私?」
「僕の話しの次は主任の番ですよ」
「そうね、私は中学の三年 別々の学校に進学して直ぐに別れちゃったけど」
「へー、その次は?」
「その次は大学に入ってからよ、一つ年上の人と半年ほどだったかな、それで私の恋愛遍歴は終わり」
「え?マジっすか!?」
 (あ、素が出てしまった・・・)
「私、何か変なこと言った?」
「あ、いえ」
「野上くんは?全部話しなさい、私は話したわよ」
「まぁ・・・さっき言った大学の時の一人と働き始めてから・・・二人です」
「そういえば何か噂になった事あったわね」
 (う・・・ あの女と付き合った事はカウントしたくなかった 僕の黒歴史だ・・・)
「ああ・・・、四股の四番目になってたヤツですね、村上とかが面白がって話すから・・・」
「あっはっは、酷い話ね 四番目って表彰台にも上がれないじゃない」
 (そんなに笑わなくても・・・ けっこうトラウマになってるんですけど・・・)

なんかヤバイ
主任が豪快に笑ってる、初めて見た
向い合って顔を見れば主任は整った顔立ちで、絶世の美女ってわけでもないが中々の綺麗系だ
勿体ない事に男の気を惹ける表情は同僚さえ遠ざける程の険しい表情で隠し、会社ではその魅力を表に出していない
初めて見た
目の前の主任の表情は柔らかい、男の気を惹く魅力が目の前で溢れ出し始めている

「あの・・・」
「なあに?」
やっぱり今夜の主任は今までとは違う
仕事中なら「なに?」と短く鋭く返してくるのに「なあに?」と少し伸ばした言葉が丸く優しく感じる
「本当なんですか?働き始めてから彼氏いた事ないって」
「ええ、嘘言って何になるの?」
「口説かれた事も無いんですか?」
「あったかもしれないけど忘れたわ」
「え、忘れたって・・・」
「仕事の事しか頭になかったから 仕事と恋愛を両立する自信が無かったのよ」
「主任なら何でもできそうですけど」
「そうでもないわよ 先ずは仕事ができるようになる、それから恋愛しようって思ってたけど この歳になっちゃった・・・」
「じゃぁ、今から彼氏探しですか?」
「んー・・・ どう思う?」
「どおって?」
「まだ間に合うと思う?」
「はい、ぜんぜん」
「本当に?」
「はい、主任が彼氏募集するなら僕もエントリーしますよ」
「そう・・・ 冗談でも嬉しいわ」
 (ん?)
「もし、僕がエントリーしたらどこまで残れますか?ベスト8ぐらいまで行けますかね?」
「優勝よ」
「ははっ、僕は主任の彼氏になれるってことですか」
「うん」
 (んん!?今「うん」って言った?)

主任と並んで歩くと自然と背筋が伸びる
緊張している訳ではない、姿勢が悪いと隣を歩く長身の女性より頭が低くなってしまうからだ
今までは恐怖のオーラを肌に感じないところまで離れるという自分ルールを貫いてきたが
今は時々お互いの手の甲が触れるほどに接近して歩いている
目から鱗が落ちるとはこの事か
職場の男どもは目を合わせないように努めるが、仕事から離れると容姿端麗ですれ違う男どもの視線を集める
嗚呼、駅に着いてしまった・・・
「今日は付き合ってくれてありがとう」
「あ、いえ」
 (このまま別れたくない、何か言わないと)
「主任は競馬とか興味ありますか?」
「ないけど、それがどうかしたの?」
「はは・・・ いえ、別に・・・」
 (う〜ん、いつもの主任だ 興味無くてもフリぐらいしてくださいよ、それが女の愛嬌ってもんでしょ・・・)
「もしかして誘ってくれたの?」
「まぁ、そんなところですけど・・・」
「そういう事ならハッキリ言いなさい いいわ、付き合ってあげる」
「ありがとうございます」
 (これでいいのか?本当にいいのか?)


[2] 色は思案の外  最後のティッシュ :2017/08/20 (日) 00:31 ID:ZVkL5PqE No.24891
待ちに待った月曜の朝が来た、いつもの通勤路も違って見える
昨日の競馬は散々だったが気落ちはしていない、隣には普段着の主任がいたからだ
ジーンズにスニーカー、肩より下まで伸びた黒髪は後ろで束ね・・・

 ちょっとぐらいオシャレしてくださいよ、デートなんですから・・・

まぁ、あれはあれで新鮮で良かった

当然の事だが主任と同じ職場で仕事もデート気分だ、愛しい主任の声が聞こえる
「野上くん、田川さんと打ち合わせじゃないの?」
「はい、10時半からです」
「貰った資料に目は通したの?」
「いえ、まだ・・・」
 (あ、ヤバイ・・・)
「何してるの!今直ぐ資料に目を通して頭に入れなさい!」
 (うわぁ・・・ いつもの主任だ・・・)

 僕は雰囲気と勢いで打ち合わせをする天才肌だ、何とかなる ・・・ハズだが

とりあえず言われた通り資料を開く
時間は10時前、30分前に会社を出れば間に合うので急ぐ必要はないが
「野上くん!」
 (またきた、次は「早く用意しろ」かな?)
「何のんびりしてるの!そろそろ時間でしょ」
「あ、はい」
 (当たり、あと10分ぐらいは余裕あるんだけどな・・・)
同僚からの御愁傷様という視線を背に受けながら出先と帰社の予定時刻をパソコンに打ち込んだ

 愚民共め おまえ等は主任の本当の姿を知らない
 僕と主任は昨日から付き合ってる、今は部下と上司だが仕事が終われば彼氏と彼女だ
 なんだろう、この優越感は・・・
 (でも、呼び方が「主任」って変だよな 思い切って「凛子さん」と名前で うん、これでいいだろう 後々は「凛子」だな )

仕事中の凛子さんは姿勢正しく締まった顔、こうして見るといい女だ
別の顔を知ってるから特別に良く見えるのかな?
二日の間に僕の頭の中は凛子さんでイッパイにされてしまった

 でも、馬の出走表を見る時の真剣な表情は流石に怖かった
 凛子さんに叱られている時の事を思い出してしまいましたよ

名は体を表すという諺そのままに、凛子さんはデート中でも美しい姿勢を保ったままだ
仕事中と違う所と言えば表情と声は気持ち柔らかく時々笑ってくれるという事
ちょっとした違いだけど堪らなく良いんだよね
まぁ、上からの言葉使いは仕事中と変わらないんだけどね・・・

そして三回目のデート、いよいよ果てしなく高いハードルを越える時がきたようだ
僕は競馬より凛子さんに夢中になっている
待ち合わせはお昼時、競馬場では4レースと5レースの間の一息つく時間ってところかな
ノープランのデートは先ず昼食からだが僕の心臓は今までにないほど強く打ち、冬と言われる季節なのに握った手には汗が滲む感覚がある
「凛子さん、何食べたい?」
「何でもいいわ、野上くんが決めて」
「ラーメンでいいかな?」
「ええ、いいわよ」
 (よしっ!言えた!凛子さんとタメ口で話せた!)
二週間もの間、何度も頭の中でシミュレーションしたタメ口の会話だ
叱られるんじゃないかという危惧はあったが杞憂におわった
まぁ、ラーメンという選択の適否は別として上手くいった
後付けだけど僕らの始まりは安い中華料理店で初デートは競馬場、記念のランチはラーメンぐらいが丁度いい

次のハードル、こいつも格段に高い キスだ
会社では鬼の形相で僕を叱るあの顔に最接近しなければならない、ハードなミッションになる事は火を見るよりも明らかだ
次のデートで、次こそは、次は・・・ 何度も先延ばしにしてタメ口記念日から早や五ヶ月ちょい
思いもよらない形でチャンスが巡ってくる
お偉いさんからは過度な残業はするなと御達しがあったが、残業しないと終わらない量の仕事を抱えていた土曜日だった
夜の8時を越えていたけど僕の精神には疲弊している暇はない、何故なら手伝ってくれている凛子さんの檄が飛んでくるからだ
「一つ聞いていい?」
「はい」
「この見積もり甘いんじゃない?競合相手でもいるの?」
 (何故それが凛子さんの手元にあるんだ!?)
「いえ、藤岡さんの物件で意図しないぼったくりが二件続けて発生しまして・・・」
「それで?」
「今回はサービスするという事で頂いた物件で・・・」
「そう」
「はい・・・」
 (まだ怒ってないようだな・・・)
「これは何? カウンター、照明「いい感じ」って何?「壁、いい感じ」「全体の雰囲気、いい感じ」これって何なの?」
 (二つ目きた 一つって言いましたよね・・・)
「まぁ、「いい感じ」という事で・・・」
 (それは見られたくなかった・・・)
「この議事録で何ができるのよ!ちゃんと打ち合わせしてきたの!?」
 (ここできたか・・・)
「田川さんの方は急がないので今日のところは・・・」
「大丈夫なの?」
「はい、二店舗目なので」
 (凛子さん、余計な物は見ずにお願いした事だけに集中してくれ)
9時には上がるつもりでいたが凛子さんの熱血指導により二人で会社を出たのは11時前
遅くなったけど明日の休みは何とか確保できた
「遅くなったわね」
「何か食べてから帰る?」
 (仕事は終わったからタメ口でいいよね)
「そうね、終電に間に合うかしら?」
「間に合わなかったらウチに泊まればいいよ、遠くないから」
「そうね」
 (ええっ!今なんと仰りました!?)
「ウチ・・・来る?」
「ええ、興味あるわ 泊る気はないけど」
 (ああ、好奇心ですね・・・)

電車に乗って二駅目で降り、駅を出るとコンビニに寄って晩御飯の代わりになりそうな物を買った
いつもの帰宅路だが今夜は凛子さんと一緒だ、遅くなったけど仕事の疲れなんて微塵も感じない
 (それより見られて困る物は出しっぱなしになってないか? 大丈夫、そんな物は無い)
家賃6万円の僕の居城が近付いてくるにつれ鼓動が速まってくる
 (大丈夫、できる キスできる)

 そういえば、今まで付き合った女とはこんなに緊張した事はなかったな
 まぁ、上から目線の女性と付き合ったのは凛子さんが初めてだけど

ワンルームマンションの少々散らかった城に凛子さんを招き入れると部屋が狭く感じる
それもそのはず、一人暮らし用の部屋に僕と同じ身長の凛子さんが立っているのだから
「この狭い部屋に泊まれって本気で言ったの?」
「あれは半分冗談で・・・」
「半分は本気だったって事なのね」
「まぁ・・・ あわよくば・・・と」
「ふふっ 正直ね」
「もう付き合って半年ぐらいだから、そろそろって思うだろ?」
「時間じゃないわ、お互いの気持ちよ 食べましょ」
「うん・・・」
凛子さんと小さなテーブルを挟んで惣菜パンを拡げたが
彼女はこんな小汚い部屋でも、脚は崩しても背筋を伸ばした姿勢は崩さない
パンを食べる仕草も様になってる
何か場違いなところに招いた感が大きくて、この距離が一生変わらないのではないかと思えてしまう
「凛子さん」
「改まってどうしたの?」
「こっち、背もたれあるよ」
「それはベッドよ」
「背もたれ兼ベッドだから」
「そうね そっち行っていい?」
「いいよ」
立ち上がった凛子さんが僕の隣に腰を下ろした
「もう少し上手に誘えないの?」
「ごめん キスしていいかな?」
「ええ、いいわよ」
思い切って誘ってみると、僕と凛子さんの言葉は思いの外噛み合ってスムーズにキスへと到達した
目を閉じた凛子さんは会社で僕を叱っていた女性とは別人のように見える
柔らかい唇に少し触れただけだったけど、僕はそれで満足するはずだった
気のせいか凛子さんの体が硬かった気がした
唇が離れた時、ゆっくり吐いた彼女の息が震えていた

 もしかして緊張してたのかな・・・

凛子さんが小さく見える、肩を抱きもう一度キスをした
強く抱き締め柔らかい唇の間に舌を入れていくが、凛子さんは人形のように僕のキスを受けるだけだ
そこに「吉田主任」の気配はない、僕の腕の中にいるのは「凛子さん」だけだった
もう我慢できない
腕の中の凛子さんと床に倒れ込んだ時、そこで強く抵抗される力を感じ慌てて腕を解いた
 (うわぁ・・・ やりすぎた 我慢できなかった、ヤバイ・・・)
「お風呂借りていい?」
「あ、はい どおぞ・・・」
 (あれ・・・)
僕の体の下から抜け出た凛子さんが立ち上がる
「バスタオル貸して」
「はい・・・」
顔を見れない、怖い でも、この展開は・・・
洗ってあるバスタオルを出し手渡す時に凛子さんの顔を覗いてみる
 (無表情!?それ、一番怖いです 気を悪くしたのなら怒ってください・・・)

一人取り残された僕は正座をして凛子さんの帰りを待っていた
風呂場からシャワーの音が聞こえる、ユニットバスだけど脱いだ服は何所に置いてるのかな?
いや、そんなこと気にしてる場合じゃない
理想はムーディーな空気に包まれて抱き合いながらベッドに倒れていくという・・・
いやいや、そんなこと考えている場合でもない
問題は凛子さんが怒っているのかどうかだ、ヤケになって風呂場に入ったのなら最悪だ
考えすぎか 凛子さんが怒ったら僕を一喝して部屋から出て行くはずだ
どうなんだ?


[3] 色は思案の外  最後のティッシュ :2017/08/20 (日) 00:32 ID:ZVkL5PqE No.24892
風呂場の扉が開いた
「野上くんも体洗うでしょ?」
「はい」
顔を向けると、そこにはバスタオルと脱いだ衣服を胸に抱えた凛子さんが立っていて
その顔は気持ち和らいでいる
「あの・・・ ごめん」
「何故謝るの?早く入りなさい」
「はい・・・」
狭い部屋で凛子さんとすれ違った、振り向けば裸のお尻と背中は見る事ができたかもしれない
そんな余裕は無かったね、僕がこんなに小心者だったとは思わなかったよ
湯船が濡れている、凛子さんのシャワーの跡だ
なるほど、脱いだ服は便器のフタの上に置いたのか、そうに違いない
いつもは裸になってから入るところでの脱衣は何か違和感がある
でも仕方がない、あの状況では凛子さんの前で服を脱ぐのは抵抗があった
凛子さんの後のシャワーは、本当ならドキドキ ワクワクのはずだった
今は違う意味でドキドキしている
 (あぁ!しまった!バスタオル忘れた・・・)
「あのー すいません」
「どうしたの?」
遠くに聞こえる凛子さんの声
「バスタオル忘れちゃって」
「まって」
「はい」
「いいわよ、そのまま出てきなさい」
「はい」
何か他所の家の風呂を借りてる気分だ
扉を開けると足元にバスタオルが置いてあった、僕が凛子さんに渡したバスタオルで少し湿っている
 (あれ・・・ 凛子さんは何所だ?)
慌てて体を拭いている時には床に置いてある凛子さんの服が目に入っていたが姿が見えない
 (凛子さんは何所にいったんだ? もしかして、かくれんぼ? いやいや、僕はバカか・・・)
「明かり消して」
思わずビクッとなってしまったが
振り返り僕のベッドに潜り込んで顔だけ出している凛子さんを見つけることができた
「あの・・・ 電気点けたままじゃダメかな?」
 (僕は何を言ってるんだ・・・)
「恥ずかしいから・・・」
 (ええっ!その辺の女より女っぽい反応じゃないか!さっきまでの心配は何だったんだ・・・)
「今日だけなんで電気点けたままで・・・」
「今日だけ?」
「はい」
「本当に?」
「はい」
 (ウソです)
凛子さんからの言葉は無い、自分は真っ裸で愚息を晒している事も忘れて布団に手を掛けた
ついさっき見た風呂上がりの凛子さんの姿
脱いだ衣服を抱えた手から肩まで、脚はバスタオルで隠せていなかった膝の上あたりから足の先まで
これが今まで見てきた彼女の最大素肌だ
会社ではフォーマルなパンツスタイル、デートでも「ちょっとコンビニ行ってくる」的なカジュアルなパンツスタイルで
凛子さんは基本的に露出が少ない この先は未知の世界だ
もうドキドキが止まらない、僕は今から最後のハードルを飛び越える!
凛子さんの気が変わらない内にと一気に布団を捲って後悔した

 ゆっくり捲ってドキドキ感を楽しめばよかった・・・

僕はどれぐらいの間その美しい裸体を凝視していたのだろうか
「恥ずかしいから早く来て」
そんな事を凛子さんに言わせてしまった
「暗くした方がいい?」
「うん・・・」
自分で自分が何を口走っているのか分からない、変に紳士になっている
部屋の明かりは消したけど、点けっぱなしの風呂場の明かりが間接照明になって程良くエロい
ベッドに上がれば凛子さんの表情が分かるぐらいだ
肌に凛子さんの温もりを感じながら柔らかい唇にキスをした

ベッドの上は薄暗いが、頭の中には輝く裸体が鮮明に浮かび上がっている
お椀型の乳房の上についた乳首が僕に向いていた
長身だから目立たなかったのかもしれないが触れてみると結構大きい
シェイプアップされたお腹から腰は美しいくびれの曲線を描いていた
可愛いおへその辺りまで縦に筋が入っていたけど、そういえば時間がある時はスポーツジムに行っているって言ってたっけ
フィットネスクラブじゃなくスポーツジムという所に凛子さんらしさを感じたね
程良い肉付きの腿とふくらはぎの間には膝のくびれがある健康的な美脚
恥毛を手で隠そうとしてたみたいだけど、少しはみ出していた そこの手入れはしてないみたいだ
お尻は見れなかったけど焦る事はないさ

僕の舌が凛子さんの舌に触れている、気持ちが少し落ち着いたのか惣菜パンの味を感じた

 マヨネーズ?これが凛子さんのキスの味なんだね、美味しいよ

この時は比較的冷静だったが、唇から離れ首筋にキスをした時だ
「んっ・・・」
耳元で響いた今まで聞いた事のない凛子さんの声が僕の心を刺激する
もう格好つけてる余裕なんて無い
柔らかい乳房とツンと上を向く乳首を夢中で貪った
「あっ んっ・・・」
時折聞こえる控え目な可愛い声
心の赴くまま僕は愛撫を下へ向かわせる
なんて事だ、僕の足がベッドから出てしまった
その問題はこちらで対処するとして、今は凛子さんに気持ち良くなって貰う事が優先される
ベッドの上で真っ直ぐに伸びた凛子さんの長い脚、それを左右に開いて丸めた僕の体を間に入れる
これでヨシ!
恥毛にキス、内腿にもキス もっと焦らしてあげたかったけど鼻に入ってくる湿った暖かい空気が愛撫を秘部へと誘う

 堪らん・・・

鼻を恥毛に押し付け、舌で柔らかい花弁を捏ね回した
「んぅ・・・」

 感じてるんですか?僕も、もう我慢の限界です!

僕を挟むように伸びていた長い脚を抱え、張り裂けんばかりに勃起したチンポの先を柔らかい花弁に押し付けた

 いいんですよね、入れますよ

僕は酷く興奮しているが、抱えた長い脚が緊張しているのを感じ取る余裕はあった
亀頭が押し広げようとしている膣口は想像していたよりも締りが良く、僕のチンポを拒んでいるかのようにも感じ取れる
それでも、ゆっくりと腰を突き出していくと愚息が凛子さんの温もりに包まれていく
 (うわぁ・・・ 凄く締りが良いんですけど・・・)
「うっ うぅ・・・」
感じているのか苦しいのか判断が難しい凛子さんの声が聞こえる
 (あぁ クリトリスを愛撫するの忘れてた・・・ ごめんなさい・・・)

凛子さんの喘ぎか呻きかの声を聞きながら、焦って雑になってしまった愛撫の事を深く反省した
前に倒れ込み凛子さんの体を抱き締めたけど、彼女にも協力してもらわないと上手くキスができないようだ
同じ背丈の女性とのセックスは初めてで、今までの女とは勝手が違う
まぁ、部下と上司という関係で元々から勝手は違っていたんだけどね・・・

「んっ ん・・・」
控え目な声だけど喘ぎ声が聞こえる、これがあの 吉田 凛子 の声だとは繋がっている今でも信じられない
恋人という関係になってから半年も経っているのに腕の中の女性が 吉田 凛子 だという事が嘘のように思える
上司と部下という関係の距離感が、知らず知らずの内に僕の中で凛子さんを「憧れの女性」にしてしまっていたようだ
只好きな女性ならともかく、そんな憧れの女性にキスなんて迫れるはずがなかった
付き合う切っ掛けになった夜も今日の事も僕にとっては不測で突発的なものなんだ
僕は随分焦っていたようだ キスから今まで僕の理想とは掛け離れた不細工な事になってしまっている

 でも、もう離したくない・・・

チンポを包む膣の壁が濡れてきている気がする、意識しなくても自然と腰の動きが早くなってしまう
凛子さんを抱く腕にも力が入り、唇が届く所には所構わずにキスをして舌を這わせた
「うっ あっ・・・」
凛子さんの声が変わり、膣の中が濡れてきているのがハッキリと分かる でも僕も限界だ腰の動きを加減できない
「あんっ うぅん」

 (凛子さん!可愛い声出さないで!我慢できなく・・・ あ・・・)

僕は凛子さんに抱き付いたまま怒張したチンポを脈打たせて快感を解放した
彼女に抱き付いた腕から力を抜く事ができない、凛子さんの股間に押し付けた下腹部を離したくない
 (ああ、中に出してしまった・・・ まぁ、いいか・・・)

 (いや! よくないだろ! やってしまった・・・ 怒られるかな・・・ でも、まだ凛子さんの身体を抱いていたい)
今まで経験した事がない程の興奮を感じていた僕とは逆に、凛子さんは仰向けのまま始終僕のセックスを受けてくれるだけだった
快感を与える為に一心に腰を動かしても、僕が一方的に彼女の体を抱いていただけで彼女の腕はシーツの上から動く事はなかった
初めて凛子さんの方から僕に向けてくれたのは、抱き付いたままだった僕をなだめる様に背を撫でてくれた手だ
惜しみながらも凛子さんの身体を放して添い寝した
「ねぇ・・・ どうだった?」
「良かった」
「本当に?」
「うん、凄くよかったよ」
「本当?」
 (ん?なんか様子が変だな、凛子さんってセックスの後はこうなるのかな?)
手を置いている凛子さんの身体が少し固くなった気がした
「私ね・・・」
「ん?」
「前に言わなかった?大学の時に付き合ってた男がいたって」
「うん・・・聞いた事ある・・・」
 (まてまて、今ここで昔の男の話しかよ やめてくれ)
「その人と別れる時にね「面白くない女だった」って言われて・・・」
「うん?」
 (なんだと!)
「野上くんは私と付き合っていて楽しい?退屈じゃない?」
「愚問だね、僕は凛子さんに会う為だけに会社に行ってるんだ、毎日がデート気分だよ」
「ふふっ ちゃんと仕事しなさい」
「うん」
優しく叱られた、会社でもこんな凛子さんだったらいいと思うけど
それはそれで困るか、目に入る男全てがライバルになる
しかし腹が立つ、こんなに素敵な女性に「面白くない女」って言ったバカな男が許せない
嫉妬じゃない、凛子さんを侮辱した事に対する純粋な怒りだ
「ねぇ」
「ん?」
「野上くんってフェラチオ好き?」
 (なんという女だ 沸点に達しかけていた僕の怒りを一瞬で吹っ飛ばすなんて・・・)
「まぁ 好きだけど」
 (でも、その質問はとらえ方によっては僕がフェラチオする立場にも聞こえますよ)
「そうなんだ・・・」
「もしかして凛子さんはフェラチオが得意とか?」
彼女は顔を小さく横に振った
「したことないの・・・」
 (なんだと!)
「本当に?一度も?」
「うん、断ってた」
 (あぁ、バカ男の話しか もう、そいつの話はやめてくれ・・・)
「もう、この話は止めよう」
「うん・・・ 野上くんはどうなの?して欲しいの?」
「うん」
 (続いてるし・・・)
「しないとセックスは面白くない?」
「いや、そんな事ないよ」
「本当に?」
 (この話はいつまで続くんだ・・・)
「本当はフェラして欲しいけど凛子さんの気分に任せるよ、嫌々することじゃないから」
「それでいいの?」
「うん、いいよ」
「ふ〜ん、そうなんだ でも野上くんの大きいから大変そう 入ってきた時ビックリしちゃった」
 (お、褒められた)
「舌の先でペロっと舐めてくれるだけでもいいんだけど・・・ 気が向いたらね」
「うん キスして」
 (うわぁ「キスして」って言われちゃったよ、可愛いな)
ここにきてようやく気付いた初めて見る凛子さんだ、中華料理店で初めて可愛いと感じたときとは違う可愛らしさ
いつの間にか僕のベッドの上で可愛い女の子になっていた

凛子さんと付き合って半年、僕は彼女と只並んで歩いていた訳じゃない
今まで付き合った誰よりも彼女の事を知ろうと努めていた
ちょっとした表情の違いや会社の中だけの関係じゃ分からない性格
会社の中だけの付き合いでも理解できたはずの事も
凛子さんは真面目な性格だ、分かっていたけど思っていた以上だった
初めてのデートでは興味が無いと言いながらも、競馬新聞に載っている数字の事を理解しようとしていた
おかげで質問責めにあったわけだが、僕なんて初競馬はオッズと馬の名前しか見てませんでしたよ
何事にも一生懸命で、その姿勢が仕事では厳しい態度となって出てくる
セックスの後の質問責めも僕の事を懸命に知ろうとしていたに違いない
そして、豪傑に見えるけど繊細なところもある
受けた仕事は完璧にこなし、上司や客先からの信頼は厚いけど
もっと彼女の事を知りたいと思うようになった僕から見れば、凛子さんは失敗を恐れているだけのようにも見える
周りの人をよく見て気を使っているし そして、思慮深さからなのか時々ネガティブになる事もある
その繊細な部分が何年もの間、男を避けさせていたのだと何となく分かってしまった
「面白くない女」と言われたらしいけど、しつこくフェラチオについて聞かれた事からもっと酷い事を言われたのかもしれない
「しないとセックスは面白くない?」と聞かれたときの彼女の不安そうな表情が頭の中に焼き付いている
陳腐な感情のまま吐いたバカ男の言葉が凛子さんの繊細な部分を酷く傷つけたのだろう
仕事と恋愛を両立する自信が無かったと話していたけど、たぶんウソだ
同じ職場の上司と部下の関係でも見事に両立している

 見事過ぎるけどね・・・

まぁ、その事を問い詰めて確認する気はない
目を閉じて僕のキスを待っている目の前の凛子さんが僕の凛子さんだ
その僕の凛子さんを優しく抱き包んでキスをした
唇を重ねながら抱いている彼女の身体は柔らかく抱き心地が良い
長い腕が僕の首に優しく抱き付いてきている
ようやく緊張が解けてリラックスしてるといった感じかな
言いたい事、聞きたい事、全部言って安堵しているのかも
それなら僕からも言いたい事がある

 「凛子」と呼び捨てにするタイミングは今しかない

唇が離れ凛子さんの目が開いた
「結婚しよう」
「うん」
 (あ・・・)

 まぁ、あれだ 夫婦になれば「凛子」と呼び捨てにできる 結果オーライだな

あと気になる事といえば、僕の何所を好きになってくれたのかという事だけだ
自分で言うのも何だけど、彼女の気を惹けるほどの良い所があるようには思えない・・・


[4] 色は思案の外  最後のティッシュ :2017/08/20 (日) 00:33 ID:ZVkL5PqE No.24893
日曜の朝、目が覚めると隣で凛子さんも目を覚ましていた
僕を越えてベッドの外に出た彼女が背筋を伸ばし真っ直ぐに立つ
カーテン越しの朝日に照らされているのは美しい裸体だ
昨晩このベッドの上で僕の婚約者になったなんて信じられない
今まで生きてきて一番幸せな朝の目覚めになった
「おはよう、私の歯ブラシ買ってきて」
「はい」
 (凛子さんって、そういう所あるよね・・・)
凛子さんの様子が変わらなさすぎて、昨晩の事が夢じゃなかったのかと疑ってしまうほどだったが
変わった事が一つある、僕が「野上くん」から「宗太くん」に昇格した事だ
凛子さん曰く「苗字が同じになるのに野上くんじゃ変でしょ」だって
さっそく結婚生活を見据えている、流石です
清々しいコンビニへの道中は、気分が昨日までとは全然違う
凛子さんの歯ブラシ、朝食のパン、そして競馬新聞
競馬は凛子さんから言い出したことだ
全く頭になかった事で驚いたけど、もしかすると凛子さんは初デートの事を思い出したのかな?

 メインレースは春の天皇賞か、あれから半年経ったんだな

軽くキスをして凛子さんとは一旦お別れだ
フォーマルなスーツを着て僕の部屋から出て行く姿は、凛子さんが僕の部屋から出勤するみたいで感慨深い
お昼前の待ち合わせに現れたのは、相変わらず「ちょっとコンビニ行ってくる」スタイルの凛子さんだったけど
この凛子さんと並んで歩く事ができるのは会社の中では僕だけなんだよね

月曜の朝一、僕と凛子さんは部長の元へ向かった
部長と言っても大会社ほどの威厳はない、何を隠そう、まだ部長に昇進してなかった時に新人の僕に仕事を教えてくれた師匠だ
そう、この人の背を見て仕事を覚えた事で凛子さんに叱られまくる事になった罪深い御方である
「如月部長、お話が」
「昨日の天皇賞取ったのか?」
「ははっ、その話は後で」
「で、何やらかしたんだ?」
「何でそうなるんですか・・・」
「吉田君と一緒に俺のところに来る用ってそれぐらいだろ」
「今日は違いますよ、結婚するんです」
「おお、おまえも一人前になるんだな」
「ええ、まぁ それで、相手がこちらの吉田主任なんですけど」
「ん?う〜ん・・・ 吉田君がお前の冗談に付き合うとも思えんしな・・・」
 (まぁ、先ずはこんな感じになるよな)
ここまでは予想通りだったが予想外の事が起こったのは直後だった
凛子さんが部長に辞職の意を伝えたのだ
僕は驚いていただけ、部長は引き止めようとしたが凛子さんは頑として譲らず
とりあえず人事に相談する事になり、この事は内密にということで落ち着いた
本当に訳が分からない、僕は会社への報告は御両親への挨拶を済ませてからと思っていたのだが
凛子さんに強制連行される形で部長に挨拶に行っただけだった
もちろん、凛子さんの決意を知らないまま、部長の驚く顔を楽しみにして軽い気持ちで・・・

会社の中で凛子さんに理由を聞くのはアウェイでこっちが不利
凛子さんに合わせて会社を出ると僕の部屋に誘った
部屋に誘った理由はホーム戦なら互角に話し合えるかな・・・と

「何を聞きたいかは大体わかってるわ」
「うん、それ」
「今の仕事を続けながら宗太くんを支える自信がないの 家事に慣れたら何か仕事を探すから、それでいいでしょ」
「でも・・・ 今までのキャリアは・・・」
「それより宗太くんの御両親に挨拶させて、新居も探さないといけないわね」
 (凛子さんの御両親にも・・・ というより、仕事の話は終わったのか!?)
なんて事だ ホーム戦でも惨敗だ
まぁ、いいか 今日の凛子さんは何所となく嬉しそうだ
会社では相変わらず頼りない後輩を叱っていたけど、あれも安定感のある風景だった
「凛子さん、こっちきて」
「コンドームは用意してあるの?」
「あ、いや・・・」
「今日はもう帰るわ」
「ええ!?なんで」
「当然でしょ」
「でも土曜の夜は・・・」
「もう二度とあんな身勝手な事はしないで」
 (うわぁ 怒ってる・・・ 二日前の事なのに・・・)
「外に出すから・・・」
「それは確実な方法じゃないわ」
「でも、やっぱり生でしたいし・・・」
「それは結婚するまで我慢しなさい」
「はい・・・」

この後は凛子さん主導で事が進む、御両親への挨拶ついでに噂のイケメン弟君と彼の奥さんにも会った
凛子さんの実家は会社から遠くないが、この弟君が結婚したことを切っ掛けに凛子さんは独り暮らしを始めたらしい
そういえば未だ凛子さんの部屋を見た事ないな まぁ、僕の部屋に凛子さんを招いたのも最近の事だけどね
僕の実家は遠方だが日帰りの強行軍、新居の方も目処がついたし凛子さんの退職は半年後という事も決まった

 僕の嫁さんになるんだけど「吉田主任」と仕事ができなくなるのは寂しくなるかな

僕の部署に若手が二人転属されてくると、吉田主任筆頭の課が起ち上げられるのではないかと噂される
凛子さんの仕事振りを見ればそうなるよね
もしかして僕は会社に多大な損害を与えてしまったのではないだろうか・・・
凛子さんは吉田主任のまま仕事量が減ってゆき、時期も丁度いい事から二年振りに配属されてきた新人の教育に力を入れ始める
僕も通った道、怒号の嵐に心が痛む、ガンバレ新人
僕の場合は今の部長に仕事を教わってからだったけどイキナリ「吉田主任」はキツイ
この頃になると凛子さんの退職の話は周知の事となり、次はヘッドハンティングが会社を去る理由だと噂されるようになっていた
実際に二年ほど前にヘッドハンターと呼ばれる人に声を掛けられた事があるらしい
世の中には色んな職業があるんだな 僕には縁がなさそうだけどね
そんなこんなで、いよいよ凛子さん退社の日
僕と凛子さんの結婚発表の日でもある
僕の師匠でもある如月部長の事だ、何か気の利いた言葉を用意してるに違いない
今日まで隠し通せと言ったのは師匠だからね

昨日まで凛子さんが仕切っていた朝礼で部長が前に出た
「吉田君、前へ」
凛子さんが前に出るが僕は呼ばれない
「知っての通り吉田君は本日を以て退社となるわけだが、これでは一言足りない 「めでたく退社」となるわけだ」
場が変な空気になってきた
 (師匠、先ずヘッドハンティングという誤解を解かないと)
「伊藤君、どういう事か分かるな?」
「ええ・・・ まぁ・・・」
 (そうだよな、そういう反応になるよな・・・)
「野上、吉田君の相手が誰なのか皆に教えてやれ」
部署の中で僕だけが部長に呼び捨てにされている、師弟の関係だからね
 (まだ前振りが足りない気がするんだけど・・・)
「僕です」
「そういうことだ、吉田君は今は野上君だ」
 (誰にも伝わってねぇし・・・ 結局、僕らに黙ってろって言ったのは自分で発表したかっただけなのかよ・・・)
「おい、どういう事だよ?」
 (村上か、聞いて驚け)
「結婚したんだ」
「はぁ?ウソだろ!吉田主任とか!?」
「おいおい 部長が今言っただろ、野上主任だ」
「ウソだろ、マジかよ・・・」
 (二回目の「ウソだろ」だぞ、落ち着け)
場がザワつき始める、なんて気分が良いんだろう
 (次は凛子さんの口から皆に伝える番ですよ)

「無駄話はそこまで! 朝礼を始めるわよ」
 (ええーッ!凛子さんから何かコメントはないんですか!?横を見てください、師匠がちょっと寂しそうな顔してますよ)
「野上くん、藤岡さんとの打ち合わせは9時からでしょ、朝礼はいいから、早く用意しなさい」
「あ、はい・・・」
 (それって、いつもの凛子さんじゃないですか 最後の日ぐらい凛子スマイルで男衆を悩殺してくださいよ・・・)

 なんで最後の日まで主任のままなんだよ

と、次期主任を決めかねている人材不足の会社に対しての恨み節を心の中で唱えながら打ち合わせに向かう事になった

打ち合わせから戻ると凛子さんの目の届かないところで同僚からの質問責めにあう
「いつ籍入れたんだ?」
「三ヶ月前だよ」
「ウソだろ、何で言ってくれなかったんだよ もう一緒に住んでるのか?」
「おう、二週間前からな」
「ウソだろ、あの吉田主任とだよな?」
 (他に誰がいるんだよ)
「だから吉田主任じゃなくて今は野上主任だよ 三ヶ月前からだけどな」
「マジかよ・・・ 結婚は人生の墓場だっていうけど、お前は地獄に落ちたんだな」
「おいおい、なんてこと言うんだよ」
 (この野郎 失礼な事言いやがって 家に帰ったら、そこは愛の巣なんだよ)
「確かお前だよな 最初に吉田主任の事を「立てば仁王、座れば閻魔」って言ったのは」
 (あれはウケた そして、おまえの記憶は正しいが)
「その事は忘れてくれ それに早く仕事に戻らないと主任に怒られるぞ 「野上主任」にな」
「ああ お前と主任が結婚か・・・ 今世紀最大の驚きだな」
 (まだ今世紀は前半もいいところだろ・・・)

籍を入れる前に気になっていた二つの事を凛子さんに聞いていた
先ずは酒は飲めないと公言しているのに、僕の目の前では中々の飲みっぷりを見せてくれる事
その答えはあっさり返ってきた
「酒の席の接待や付き合いが面倒だから飲めない事にしてるの、宗太くんと飲むお酒は別よ」だって
僕は唖然として何も聞き返せなかったよ
次に本当に聞きたかったこと、何で僕なんだろう
最初の答えは 「分からない」 それでは納得しようがない
何となく僕と付き合って、何となく結婚を決めたのか?
少し間があって凛子さんの口から出た言葉は
「初めて会った時から何となく気になっていたわ
 でも、好きだって気付いたのは二年経ってからなのよ、宗太くんの何所を好きになったかなんて分からないわ」だった
僕が入社して二年経った頃といえば凛子さんに叱られるようになった時期だ
もしかして、あの頃から凛子さんは僕を後輩じゃなく男として見てくれていたのだろうか
この事を聞いた時、嬉しさはあったが、それよりも自分の事が情けない男に思えた
先輩として毎日のように僕を叱っていた時も、凛子さんの胸の内では僕の事を・・・
僕が凛子さんの目の届かないところで「ライガー吉田」と名付けて後輩の心を鷲掴みにしていた時も凛子さんは僕の事を・・・
凛子さんへの愛の大きさが、そのままの強さで僕の心を殴ってきて
いたたまれない気持ちになり嫌われる覚悟をもって己の所業を告白したが
「知っていたわ」
の一言で済まされてしまった
キスをするしセックスもしてる、今は籍を入れて同じ屋根の下で暮らしているけど
この女性が僕の嫁さんだなんて今でも夢ではないかと疑ってしまう事がある
僕には不釣り合いな素晴らしい女性だ、僕を選んでくれた彼女の選択を誤ったものにしたくは無いが
同僚の村上が言った「結婚は人生の墓場」という言葉が僕の胸を締め付ける
僕との結婚が10年に渡って積み上げてきたキャリアを凛子さんから奪ってしまったんだ
村上の言葉は僕じゃなく凛子さんに当てはまるんじゃないのか?

一緒に暮らし始める前に身内だけで挙げた結婚式は質素な式だったけど
ウェディングドレスを纏った凛子さんが絢爛な式に変えてくれた
今までの僕ならドレス姿の凛子さんに見惚れるだけだったかもしれないけど
この日はずっとウェディングドレスより凛子さんの顔ばかり見ていた気がする
僕が歩む道は「彼女にとって幸せな結婚生活」という一本道しかない

 先ずは性生活の充実だな うん、これは大事な事だ
 その為には、僕の性癖を告白しなくては・・・


[5] 色は思案の外  最後のティッシュ :2017/08/20 (日) 15:06 ID:ZVkL5PqE No.24894
ザワついた結婚発表の翌日の朝、僕は体を揺すられ起こされた
そこに甘い言葉は無い
「起きなさい、時間よ」
「うぅ・・・ん」
時計の針は6時を指している、とりあえず起き上がりベッドの上で胡坐をかいた
この時間の起床は凛子さんと暮らし始めた二週間前から続いているから慣れてきたけどね
凛子さん曰く、脳は遅れて目覚めるから早めに起きて仕事に備えるという事らしい
朝食の声がかかるまで時間がある、ベッドの上でコンドームの呪縛を解かれた昨晩の事を振り返った
凛子さんの中には出していない、もう少し二人の新婚生活を楽しみたいからね
もう朝起ちなのか性的な勃起なのか判断できないよ 元気な愚息だ

思い返せば凛子さんが初めて僕のチンポで絶頂を迎えてくれたのは、籍を入れる前の凛子さんの部屋でのセックスだった
初めて招かれた彼女の部屋は質素で、女物の衣服や化粧品が置いてなければ男の部屋とも見れる凛子さんらしい部屋だ
慣れた自分の部屋という事でリラックスしていたのか、いつもより表情が柔らかい
オフの凛子さんに寛ぎレベルがある事を初めて知った日のセックスは、始まりのキスから少し違っていた気がした
ほんの僅かな違いだけどね
部屋は薄暗くシーツから凛子さんの香りが漂ってくる
凛子さんのベッドに裸で横たわっていると思うだけで、僕は何とも言えない達成感を感じていたけど
僕の舌の先が触れている彼女の舌が申し訳なさげに動いている
今までの完全に受け身の彼女からすれば、これは感動的な進展だ
思い切ってフェラチオをお願いすると、二呼吸ほどの間は躊躇していたけど凛子さんは僕のお願いに応えてくれた
お世辞にも上手とは言えないフェラチオだったけど
本当に経験が無かったんだなと感じたフェラチオは初々しく、僕は凛子さんの心意気に応える為に気持ちで勃起を維持した事は言うまでもない
大仕事をやってのけたというような凛子さんの安堵の表情は可愛く、直ぐにでも繋がりたい気持ちはあったけど
僕はその昂る気持ちを愛撫に向けた
いよいよ凛子さんと繋がる時がきて、コンドームを被せ終えた時に目に入った凛子さんの表情は今でも忘れられない
繋がる前にキスをしようと顔を近付けた時だった
ベッドの上は薄暗いと言ってもコンドームの装着に支障がないほどの明かりはある
ほの暗いベッドの上に浮かび上がった彼女の表情は
唇を少し開いて僕のキスを待っている、薄く開いた瞼の奥には濡れた瞳が妖しく輝いている
数秒の間だったかもしれない、僕はキスもせずに凛子さんの表情に見惚れていると
彼女は目と口を閉じて横を向いてしまった
またやってしまった、これでは初めて凛子さんの裸体に見惚れてしまった時と同じじゃないか

 でも僕は悪くない、妖艶な表情を見せた凛子さんが悪いんだよ

横を向いてしまった彼女の頬に手を当て、僕の方に顔を向かせて軽くキスをした
開いた凛子さんの脚の間に僕の腰を沈めていくと、勃起したチンポが膣の温もりに包まれていく
でも、温もりに包まれたのはチンポだけじゃない
体を前に倒すと凛子さんの腕が僕の背中に回ってきて長い腕に抱き包まれ
正上位で抱き合ったセックスには、それまでの一方的なセックスとは比べる事ができない程の感激を与えられた
凛子さんの長い腕が僕を強く抱いてきている、今夜こそ彼女にセックスで絶頂を迎えてもらう事ができるかもしれない
そうなると僕と凛子さんの間にあるゴムの薄皮が憎い

 こんなに良いセックスなのに、なんでお前がいるんだ 被せたのは僕自身の手だけど・・・

回想の途中だけど凛子さんから朝食の声が掛った
今日が主婦一日目となる凛子さんがテーブルに朝食を並べている
朝食を食べ終えて僕は仕事に出る準備をするけど、凛子さんはテーブルの上を片付けている
昨日までは一緒に家を出ていたのに今日からは僕一人なんだよね
凛子さんがいない会社に向かうのは、なんだか不思議な感じがしたが
それより、いってらっしゃいのキスが無かったのは予想外だったよ

 新婚さんというのは甘い生活の中に存在するものじゃないのか
 もしかして、昨日まで上司と部下の関係だったのが仇となっているのか?
 いや、そうじゃない 凛子さんは甘え下手だ、そのうち新婚らしくなるさ

不安を振り払い、とりあえず自分を納得させた

新居に引っ越してから朝は15分早く家を出なければなくなった
電車を降りて駅を出ると「おはようございます」と後輩の伊藤が声を掛けてきた
通勤の電車が変わると朝に合わせることになる顔も変わるわけだが・・・
「なぁ、僕と凛子さんが一緒に降りてくること知ってただろ」
「はい、見かけてましたけど主任が一緒だったから怖くて見なかった事にしてました」
 (正直なヤツだ・・・)
「毎朝一緒だぞ、変だと思わなかったのか?」
「たまたまかな、と」
「そうか」
 (いや、二週間毎朝だぞ、もっと深く考えろよ・・・)
「野上さんって主任の事を「凛子さん」って呼んでるんですね」
「うん、まぁ・・・ あ、凛子さんはもう主任じゃないから」
「そうですよね、あの「吉田主任」が居ないと思うと会社に向かう足が軽くなりますよ」
「はは・・・」
 (気持ちは分からんでもないが、正直すぎるのもいい加減にしろよ 僕はその「吉田主任」の夫だぞ・・・)

 まぁいい 今日は仕事中に色んな邪魔が入りそうだが構っている暇は無い
 今日は打ち合わせの予定は入ってない、思い通りに仕事が進むはずだ
 今日の出来次第で明日の土曜は休める
 明日は一日中家に居なければならない理由が僕にはある

冷やかしの声を払いのけ今までにないほどの仕事量をこなし、2時間ほど残業したが土曜の休みは確保できた
何とも言えない達成感を感じながら凛子さんが待つ家に向かう
そういえば、凛子さんは今日一日何をしていたんだろう 帰ったら聞いてみよう
「おかえり、早かったわね」
「うん」
仕事の事を理解してもらえてるとはいえ、8時前の帰宅に「早かったわね」とは・・・
「明日も仕事?」
「明日は休める」
「そう」
 (今日は頑張ったんだ 上司の立場から僕の雄姿を見てもらいたかった)
テーブルに並んだのはレンジで温め直された僕一人分だけの晩御飯だ
「早く食べてお風呂に入って」
「うん」
「食べ終わったら、お皿はお弁当箱と一緒に流しに持って行ってね」
「うん」
 (今日は愛妻弁当デビューだったのに感想は聞いてくれないのか・・・)

結婚を決めてから半年の間は色々と試食させられ、事細やかな感想を求められていたので聞く必要がなかったのだろうか
それにしても、僕が思い描いていた新婚の甘い生活とは何か違う気が・・・
僕に食事を与えた凛子さんはリビングにヨガマットを敷きヨガのポーズをとりはじめた
自律神経を整えたり疲れやストレスを解消する効果があるらしいけど、遠目に見ている僕にとっても目の保養になる
175cmの長身で高レベルのプロポーションが織り成すちょっとエロいポーズは
初めて見た時、僕の理性を破壊し愚息に活力を与えるほどの威力だった
「ふざけないで!」と一喝されてしまった二週間前の出来事が遠い昔の事のように思えるよ
今夜の僕には温め直された手料理を堪能しながら、ネットで注文したブツを受け取るイメージを膨らませる余裕がある

 その四つん這いになってお尻を上げるポーズ、お尻を撫でたら怒ったよね
 ベッドの上ではどうかな?明日の夜が楽しみだよ、凛子さん

空になった食器と弁当箱をキッチンの流しに置き、まだヨガ中の凛子さんをお風呂に誘ってみる
「お風呂一緒に入ろうか」
「片付けがあるから先に入って」
「うん・・・」
脱衣所で服を脱ぎながら「ヨガと食器を洗い終えるのを待てばよかった」と後悔の独り言を呟いた
一緒に生活し始めて二週間経つが、「いちゃいちゃ」や「甘い」といった言葉が家の中に見当たらない

 まぁ、明日ぐらいから本格的な新婚生活になるんだろうな・・・

少々の不安を抱え、現状を変えようと湯船に浸かりながら思考を巡らせる
主婦初日の凛子さんは少し時間ができたのでスポーツジムに行ってきたと言っていた
他に趣味と言えるものが無い事は知っている、仕事人間だったからね
凛子さんはどんな気分だったんだろう、リフレッシュできたのか忙しくしている方が性に合っているのか
お風呂から上がると凛子さんはキッチンに立ち洗った弁当箱を拭いている
「お先」
「何か飲む?」
「うん、お茶」
後は歯を磨いて寝るだけだが、リビングでお茶を飲みながら凛子さんがお風呂から上がってくるのを待つ
「まだ寝てなかったの?」
「あ、うん」
お風呂上がりの凛子さんが湯飲みを持ってきてテーブルの向こうに腰を下ろした
寝る前のひと時に二人向い合ってお茶を飲む

 いちゃいちゃが無くても、これはこれで良いかもしれないな

「今日はジムに行っただけ?」
「ええ、どこまでお掃除すればいいのか分からなくて思うように時間が作れなくて」
「そうなんだ、時間に余裕ができたら料理教室に通ってみれば?」
「それって、どういう意味?」
 (マズイ・・・ 機嫌が悪くなった時の口調だ そうじゃないんだ・・・)
「料理してるとき楽しそうにしてるから、好きなんじゃないかなと思って・・・」
「そうね でも、パートにも出たいわ」
 (やっぱり仕事が好きなのかな?)
「両方やれば?」
「そんな時間ないわよ」
「じゃぁ、優先順位を決めるとして 何から?」
「う〜ん、パートかな・・・」
 (お、珍しく答えに迷った)
「パートの合間に料理教室だね、ジムの会費も勿体ないから時間見て通えばいいよ」
「そんなに何でもできないわよ、家の事にも慣れてないのに」
 (そんな事言いながら少し嬉しそうな顔をしてるよ、やっぱり忙しくしている方が性に合ってるのかな)
「家の事に慣れてからでいいよ、ご近所さんとの付き合いもあるから大変なんじゃない?」
「そうね、考えとくわ」
 (凛子さんがパートって勿体ない気がするな、まだフルタイムで働く主任のイメージがあるからかな)
「そろそろ寝る?」
「・・・そうね」
 (なんだ!?機嫌直ったんじゃないのか?今の感じは・・・)
「どうかした?」
「どうもしないわ、湯飲みを片付けたら直ぐに寝室に来て」
「はい・・・」
 (何なんだ・・・)
凛子さんがリビングから出て行くと、僕は二つの湯飲みを洗ってから寝室に向かった
扉を開けると凛子さんはベッドの上で背筋を伸ばして正座している
目に映っているのは気を張っている凛子さんの姿だ 僕も鈍感じゃない、これは叱られる前兆と思われる

 僕は何をやらかしたんだ・・・
 凛子さんの前に置かれている箱は まさか・・・

「何してるの 早くこっちに来なさい」
「はい・・・」
「今夜は仕事で疲れていると思ったから明日にしようと思ってたけど」
「なら明日にしよう」
「いえ、今説明して」
 (注文から四日ほどかかるって書いてあっただろ!今日はまだ三日目だぞ!)
「それは、夜の生活に刺激を与えるアイテムでして・・・」
「これは何?」
「アイマスクです・・・」
「これは?」
「ディルドです・・・」
「次は、これ」
「それはローションです」
「これ何なの?」
「それは手や足を拘束する枷ですね 何でその荷物開けたんだよ・・・」
「見られて困る物でも買ったの?」
「僕は見られて困ってるじゃないか 順番があるだろ、それとなく話題を振って一緒に箱を開けて驚いてもらうという」
「ええ、開けてみて驚いたわ」
「そこは一緒に開けて「今日はこれ使ってみる?」みたいな会話をしながら」
「座って」
「はい・・・」
開封された箱を挟んで凛子さんの正面で胡坐をかくと、背筋を伸ばし正座している彼女に見下ろされる形になる
「これで誰と楽しもうとしてたの?」
「誰って、さっき話した通り凛子さんと・・・」
「こんなもの私が受け入れると思ってるの?」
「買ってしまえば何とかなるかな・・・と」
「何ともならないわ」
「でも、お試しという事で・・・」
 (うわぁ・・・ 眉間に力が入ってきている・・・ 激怒のカウントダウンが始まったか)
「つまらない?」
「え?」
「刺激が何とかって言ったでしょ・・・」
「それは・・・」
 (あれ・・・怒ってないのか?)
「私に飽きてきたからこんな物買ったんじゃないの?」
「いやいや、違うよ 飽きてなんかないよ、そうじゃなくて」
「でも・・・ それならこんな物買う必要ないでしょ・・・」
 (そっちにいったのか!? 考えすぎだよ、こういう事にはネガティブになる所があるんだよな・・・)

眉をひそめた表情が怒りの感情ではなく別の感情を押さえているものだと感じた時
もっと上手に説明すれば良かったと深く反省した
そして、いま僕が座っているベッドは凛子さんのベッドだが
ここも僕のホームグラウンドである事を確信した
順番が変わってしまったが問題は無い
開封されてしまった箱はベッドの隅に除けた
「とりあえず横になろうか」
「そんな気分じゃないから・・・」
「いいから」
凛子さんの肩を掴んでゆっくりと後ろに倒していく
普段の僕は凛子さんに引っ張られている感が強いが、この時だけは僕が主導して進める事ができる
最初の頃は不思議な感じがした、普段の印象から僕の方が押し倒されて襲われるんじゃないのかと思っていたけど
ふたを開けてみれば凛子さんは全くの受け身で、彼女の方から誘ってきたのは一回だけ
初めて凛子さんと繋がったあの夜だけだ、あれは凛子さんが先にお風呂に入って僕を誘ったと考えてもいいよね
その後は僕から誘ってばかりで、フェラも僕からお願いした時だけしてくれる
でもセックスが嫌いってわけじゃないと思うんだ

凛子さんを腕枕に誘うと僕の肩の辺りに彼女の顔が来る
身長は僕と同じで並んで歩けば姿勢の良い彼女の頭が僕より高くなるけど
でも、この時だけは僕の背が凛子さんより高くなった気分になれるお気に入りのポジションだ
柔らかいパジャマの生地に、その下から伝わってくる凛子さんの肌の温もり
このままキスをしたいけど、我慢して話し合わなければならない事がある
凛子さんの方も、僕の腕に頭を預けてくれたところを見ると僕の話を聞きたいんだと思う
何事も最初が肝心だ
僕の正直な気持ちを彼女に聞いてもらうのなら、新しい生活が始まったばかりの今しかない

「凛子さんを拘束してみたかったんだ」
 (いや、違う! それは次の段階の話しだ・・・)
「うん・・・」
 (え?「うん」って答えたよね?いいのか!?)
「これから先の事を考えると、そういう遊びも必要かなって思ったんだけど・・・」
「うん」
「別に変わった事をしなくても満足してるんだよ、昨日は二回もイッてくれたよね?」
「うん」
「自分で言うのも何だけど、僕と凛子さんのセックスの相性は良いと思うんだ」
「うん」
「でも、マンネリ化とかセックスレスとかよく聞くし 何となく心配になって・・・」
「うん・・・」
 (「うん」しか言ってくれない・・・ さっきの「うん」も只の相槌だったのか・・・)
「箱の中身で何か気になる物あった?」
「アイマスク・・・」
 (比較的ソフトなものを選びましたね・・・)
「アイマスク使ってみる?」
凛子さんは僕の腕の上で顔を小さく振った
「今夜は・・・」
「うん、そうだね 今夜はいつも通りでいいか」
「いいの?」
「うん」
「本当に?」
「いいよ 嫌々することじゃないから」
「ふふっ 前にもそんな事言ってくれた」
「ん?いつ?」
「初めて宗太くんの部屋に泊まった時、言ってくれたでしょ」
「そうだったかな?」
「うん、キスして」
凛子さんからのキスのおねだり、相変わらず可愛いね


[6] 色は思案の外  最後のティッシュ :2017/08/20 (日) 15:07 ID:ZVkL5PqE No.24895
僕らは長い長いキスをした
抱き合い舌を絡め合い、二人の体温が合わさりパジャマの下には汗が滲むほどの熱を持った空気に包まれる
「暗くして・・・」
「うん」
凛子さんの身体から一旦離れると二つ並んだベッドの間にあるスタンドライトの明かりを残して照明を落とした
ベッドの上で隅に置いた箱を気にしながらパジャマを脱ぎ始めた凛子さんに、時折視線を送りながら僕もパジャマを脱ぎ始める

 これだな、この光の加減が良い具合にエロい 凛子さんは気づいているのかな?
 秘密にしようとしてた事がバレてしまった、今夜の僕に怖い物は無い 一歩前に進むよ、凛子さん

ベッドに横たわる裸体に覆い被さると、パジャマを着ていた時とは一味違ったキスが待っていた
舌を絡ませ合いながら僕の手は凛子さんの臀部を撫でる
凛子さんは「大きいお尻」と言って気にしているみたいだけど、全体のバランスは凄くいいんだよね
なんで女の人って男の理想以上に痩せたがるのだろう
僕から見れば凛子さんのお尻から足の先までの健康的なラインは下半身の黄金比だよ

彼女の首筋に唇を押し付けて舌を這わせた、いつもより丁寧に舌の腹で凛子さんの肌を撫でると
僕の体に絡みつく長い腕から彼女の気持ちが昂ってきている事が伝わってくる
セックスの中で身体を絡め合うなんて普通の事だけど、僕と凛子さんの間では大事な事なんだ
変なところで正直になる凛子さんは、気が乗っていない時は手の平を僕の体のどこかに当ててくれるだけ
もっと気が乗っていない時は手を当ててくれる事さえしてくれない
この分かりやすい彼女のサインを知ってから、セックスの後に落ち込んでしまった事は今までに3回ある

 そういう時は嘘でもいいから、気が乗ってるフリぐらいしてくださいよ・・・

しかし今夜の凛子さんの気乗りは好調のようだ、僕もいつもより愛撫に気持ちが入る
気持ちが入ると凛子さんの全てを欲しくなる
今まで僕はここで我慢していたけど、もう我慢する気は無い
凛子さんに僕の本当の愛撫を知ってもらいたい

僕の体に絡む彼女の腕を掴んで解くと、掴んだ腕をベッドに押し付けて彼女の脇の下に顔を潜りこませた
「えっ・・・ 宗太くん・・・」
僕が唇を押し付けているのは凛子さんの脇の下だ、汗が滲んでいるのか彼女の肌が湿っている気がする
ここまできて脇の下にキスするだけで終わらせる気は無い、僕は舌を出して舐め回した
「んふぅ・・・ん うっ・・・ん・・・」
この凛子さんの声をどう判断したらいいのだろう
もしかすると、彼女はくすぐったいという感覚しか感じていないのかもしれない
それでも彼女は僕の愛撫を受けてくれる
気が乗らない時でも僕を拒まない彼女の気持ちを利用してしまい、申し訳ないという気持ちは少しあった
でも、これが今まで我慢していた僕の性癖だ
脇の下だけで終わらせるつもりは無い、足の先まで全部欲しい
僕は愛撫を下の方へ向かわせた 舌触りのいいお腹の肌、その美しいお腹に存在する小さな窪みは可愛いおへそだ
おへそには軽くキスをするだけ、唇に恥毛の感覚を感じたとき次の行先に迷った

 いつも通りに内腿の愛撫で焦らすか、それとも背中を愛撫するか
 (しまった・・・ オッパイ舐めるの忘れてた・・・)

この失態を挽回すべく僕は脚への愛撫に全霊を注ぐ事にした
長い脚に抱き付き太腿に舌を這わせたが、凛子さんは沈黙したままで身体の方にも反応は無い
いつもと違う愛撫に驚いているのだろうか
しかし、ここでやめる訳にはいかない
これから先の事を考えると凛子さんに知ってもらわなければならない僕の愛撫だ
ふくらはぎ、足首、そして足の裏へと舌を這わせていったけど凛子さんの反応は薄い
足の先を咥え指を舌で転がしても特に目立った反応は無い
「四つん這いになって」
「うん・・・」
どこか不安そうな表情だったけど、凛子さんはうつ伏せになりお尻を上げてきてくれた
臀部から腿に繋がる美しい曲線の間で肉の花弁が濡れて妖しく光を反射している
悦びの声は聞こえなかったけど気持ち良く感じてくれていたのかな?
確認したいところだけど、そんな無粋な事は聞かない
突き上げられた臀部を撫でながら、僕は視線を濡れた花弁ではなくその上にある菊門に向けていた
指先で菊門を撫でてみたけど、少し窄んだだけで凛子さんからの声は聞こえない
「舐めるよ」
「え・・・」
両手を臀部に添えて顔を近付ける
「まって・・・」
弱々しい凛子さんの声が耳に入ったけど聞こえない振りをして臀部の間に唇を押し付けた
舌を出して放射線状に拡がるシワをなぞると菊門が素直に反応して収縮する
「いや・・・ だめ・・・」
興奮し過ぎて独りよがりな愛撫になってしまうんじゃないのかと危惧していたが
か細い凛子さんの声をはっきりと聞き取れているし、舌の先は菊門のシワ一本一本を感じ取れている
僕の頭の中は冷静だ
舌の先に感じる菊門の収縮と緩和の様子から凛子さんの緊張が伝わってくる
「だめ 宗太くん・・・ お願い・・・」
 (そんなに緊張しないで リラックスだよ、凛子さん)
舌の先を尖らせてシワの中心に押し当てると菊門は強く窄んでしまった
 (だめか・・・ ここまでかな)
僕は愛撫していたお尻を解放する事に決めた

仰向けに戻った凛子さんが僕を見上げてきている
ここからが勝負だ、今後の二人の営みを左右する事になる話し合いをしなければならない
体の一部しか目に入ってなかった愛撫とは違い、凛子さんの表情がハッキリと見えて緊張が奔る
恐る恐る僕も横になり凛子さんを腕枕に誘ってみると、彼女は僕の腕に頭を預けてくれた
最初の言葉が思い浮かばず、とりあえずキスをしてみる
凛子さんは何の抵抗もなくキスを受け入れてくれて
舌を凛子さんの口の方へ伸ばしてみても、迎えてくれた彼女の舌の動きから機嫌は悪くないように思える

 さっきまで凛子さんの肛門を舐め回していた舌に絡んできてくれている
 僕の愛撫は受け入れられたのかな?

唇が離れた 最初の一言が肝心だ
「凛子さんのアナル、美味しかったよ」
 (よし、これは絶賛に等しい褒め言葉だ)
「・・・怒ってるの?」
「ん?なんで?」
 (あれ・・・)
「いつもと何か違う気がしたから・・・」
「別に怒ってないけど・・・」
「アイマスクつけた方がよかったの?」
 (ええっ!?その話は始まる前に終わってるし)
「それは付けても付けなくても・・・」
「そう・・・」
 (何で会話が沈んでいくんだ・・・ 弾ませようよ・・・)
「さっきの愛撫だけど 駄目だったかな?気持ち良くなかった?」
「変な感じだった・・・」
「そうか、変な感じか・・・ でも、これが僕の愛撫だから・・・」
「宗太くんの?」
「うん・・・ 色んなところを舐めるのが好きなんだけど・・・」
「汚いところも?」
「凛子さんの身体に汚い所なんてないよ」
「そんなこと・・・」
「アナルも綺麗だったよ」
「もぉ・・・ 変なこと言わないでよ 恥ずかしい・・・」
 (そんなこと言ってるけど、オマンコは濡れていたよ)
「驚いた?」
「うん、いつもと雰囲気が違ってたから」
「嫌じゃなかった?」
「うん・・・ちょっと驚いただけ」
「ごめん、最初に言えばよかったね」
「ううん、もう大丈夫」
「そうか、よかった スッキリしたよ、今までずっと我慢してたんだ」
「我慢してたの?それなら初めから言ってくれればよかったのに」
「初めって、初めて凛子さんを抱いた時の事?」
「うん、そうよ」
「う〜ん、それは難しいよ 初めてで脇舐めたりアナル舐めたりしたら変な目で見られそうで何か怖いし」
「うん、あんな事されたら変な目で見てたと思う」
「はは・・・ ハッキリ言うね・・・」
「ふふっ」
 (あ、笑った)
「それで、お願いがあるんだ 時々でいいから今みたいな愛撫に付き合って欲しいんだけど・・・」
「ええ、いいわよ」
「嫌じゃない?」
「うん、大丈夫」
「じゃぁ、さっそく付き合ってもらおうかな」
「うん」
凛子さんからは「うん」という相槌が多くなっている
今までにもあったかもしれないけど今日初めて気付いた
この凛子さんからのサインにはどういう意味があるのだろう

やり直しの愛撫は、先ずは凛子さんの手を取り指先にキスをした
二度目だからオッパイの愛撫は忘れない、脚への愛撫は一度目よりも丁寧に舌を這わせた
うつ伏せになってもらい背中にキスをすると凛子さんの身体が微かに反応する
もう、四つん這いになってお尻を広げてもらう必要は無い
うつ伏せの姿勢のままの臀部を両手で鷲掴みにして広げると、現れた菊門に唇を押し付けて舌で舐めまわした
凛子さんのお尻はリラックスしていて僕の愛撫を拒む力は入っていない
「んふ・・・ ふぅ〜ん・・・」
耳に入ってくる悩ましい声が菊門への愛撫に一層の気持ちを込めさせるがお尻ばかりに執着してはいけない
仰向けに戻ってもらいキスをしながら一時の休息を取った後、僕は凛子さんの秘部へ向かった

お尻を舐めた舌でディープキスをするという行為に興奮を覚えてしまう性癖だけは言えない
これは流石に変態扱いされそうだ

恥毛に顔を近付けると湿り気のある温かい空気が上がってくる
愛撫を急きそうになる気持ちを抑え、クリトリスを唇で包み舌で優しく撫でてみると
僕の顔を挟む太腿が震えだし、一旦クリトリスから唇を離した
クリトリスに触れないように気を付けながら濡れた花弁に舌を這わせ
奥から溢れてくる愛液を掬い取ると、控え目だが艶っぽい悦びの声が耳に入ってくる
「あぁ・・・ う〜ん・・・」
小さな喘ぎ声だけど身体は腰を捩らせて悶えている
凛子さんは感じているはずだけど、僕が期待している「入れて」とか「欲しい」という言葉は聞こえてこない
少し積極的になるだけでセックスは大きく変わると思うんだけど、一筋縄ではいかないみたいだね
「凛子さん」
「ん・・・」
「フェラして」
「うん・・・」
既に僕のチンポは凛子さんの悶える身体と艶っぽい声に反応して固く勃起していて
直ぐにでも膣の温もりに包まれたいけど、ここは我慢
凛子さんの手が勃起したチンポを掴んでくれた
彼女の手は女性にしては大きくて、これが思いの外気持ちいいんだ これは才能だね
そして亀頭を這う舌、こっちはあまり上達していない・・・ これは僕の指導力不足が原因か
フェラチオしてくれている凛子さんの肩に手を当てた
「もう我慢できないよ、入れたい」
「うん」
チンポから離れて顔を上げた時に見せてくれる、ちょっと得意気な表情が愛おしくて
僕はフェラチオにあれこれと注文を付ける事ができないままでいる
下手すれば凛子さんの気持ちをネガティブな方向に向けてしまうかもしれないからね

それで買ったのが拘束具なんだ
遊びでイラマチオっぽい事をしながら深みのあるフェラチオを覚えて貰おうかな・・・と

仰向けに寝転がった凛子さんの脚を掴んで広げ、柔らかい花弁に亀頭を押し当てた
「お願い ゆっくり・・・」
 (ん?ゆっくり?)
とりあえず言われた通り、ゆっくり腰を前に出していくと亀頭が締りの良い膣の温もりに包まれた
「あぁうぅ・・・」
 (ん?)
いつもの挿入時とは少し違った声が聞こえてきたけど、とりあえず奥まで押し込んでみる
「んぁぁ・・・ くうぅ・・・」
 (んん?中はよく濡れてるし痛いわけじゃないよね?)
「動かすよ」
「まって・・・」
待てと言われると動かしてみたくなる
「んふっ んあッ ぐうぅ・・・」
ゆっくり三突きしただけで、凛子さんはシーツを掴み体を反らせた
 (あ、イキそうなのかな?)
抱えていた脚を離し、悶える彼女に覆い被さるとシーツを掴んでいた手が僕に抱き付いてきた
温かい膣の中は愛液で濡れていて、その濡れ具合から僕のチンポを歓迎してくれている事は判る
悶えて捩る凛子さんの身体を抱いて押さえ、ゆっくり深く腰を動かすと
背中に回ってきた手が僕の背中の肉を掴んできた
「うぐッ んんッ んんーッ!」
一際大きく唸った後に反り返っていた凛子さんの身体がベッドに落ちる
僕を喜ばせる為の演技ではないようだ、そんな演技してくれたことがないし
彼女の膣が僕のチンポから精液を絞り出そうとしているかのように痙攣しながら締め付けてきている
僕と凛子さんが繋がってから2分も経っていない、こんなこと初めてだ
絶頂を迎えた凛子さんの身体を優しく抱いていたのは少しの間だけだった
いつもと様子が違う凛子さんに興奮させられ、僕の腰がチンポの快感を求めて動き出す
「宗太くん・・・ まだ・・・」
さっきまで僕の背中の肉を掴んでいた手が、今度は優しく摩ってきて僕をなだめようとしてきている
 (ごめん 止められないよ・・・)
「宗太くん だめ・・・ 宗太くん・・・ 宗太くんっ!」
僕の腕の中で身悶えながら、なにか訴えかけてきている
「あぁっ だめっ あんっ だめっ」
凛子さんの声が変わった、相変わらず控え目な喘ぎ声だけど
いつもと比べると少しだけ大きかった気がする
「うぅ・・・ ぐぅ・・・」
また凛子さんの声が変わった
そして僕の腕の中の身体はというと暴れるように悶え、力強い彼女の身体に抱き付き押さえる事で精いっぱいだ
正上位の後は四つん這いになってもらい後ろから・・・という最近のお気に入りのプランは頭から消えてしまい
結局僕は最初から最後まで凛子さんに抱き付いたまま腰を動かし続けた

朝目覚めると隣で凛子さんが眠っている
僕の方が先に目覚めるなんて珍しい事だ

昨夜はセックスが終わった後も僕らは随分長い間抱き合っていた
抱き合っている中で「怖かった」と満足気な声で囁いてきた凛子さんの表情が忘れられない
一緒にシャワーを浴びて寝室に戻ると、凛子さんのベッドには愛液と膣から漏れ出た精液がセックスの跡をかたどっている
それを眺めていた彼女を僕のベッドに誘い肩を寄せ合いながら眠りに入った

昨夜の事を思い出しながら可愛い寝顔を眺めていると凛子さんの目が薄く開いた
「おはよう」
「ん・・・おはよう・・・」
気怠そうな返事が返ってくる
凛子さんは上体を起こして胡坐をかき、面倒そうに乱れた髪をかきあげた後
手を胡坐の上に乗せると背中を丸め、うつむき加減で胡坐をかいた自分の脚か捲られた掛布団か何かを眺めている
その表情は可愛い寝顔とは別人の様な仏頂面だ
この凛子さんの目覚めを初めて見た時は、目を閉じて二度寝のフリをしたが
今はもう大丈夫

凛子さんと婚約した後に大丈夫になった事が目覚め以外にも幾つかある
一緒にお風呂に入った時、といっても一人暮らししていた時はお互い広くない部屋に住んでいて
お風呂と言っても湯船に浸かるのではなくシャワーを浴びていた時に見せられた事だ
凛子さんは僕の目の前で綿棒を使い鼻の孔を掃除し始めた
これを初めて見た時は衝撃映像だったね
他にも色々あるけど今になって思えば、僕と一緒に暮らし始める前に普段の凛子さんを見せてくれたのだと思う
この前一緒にお風呂に入った時「鼻の掃除は?」って聞いたら「後で」と言って見せてくれなかった
僕は結婚する前に色々試されていたのかな?

はっきりと目が覚めたのか、凛子さんは一度伸びをした後にベッドから出て背筋を伸ばして立った
彼女はセックスの跡が残る自分のベッドを眺めている
僕と同じく昨夜のセックスを思い出しているのだろうか
「中に出された後は直ぐに拭いた方が良いみたいね 宗太くんも覚えておいて」
「はい・・・」
僕はセックスの事を思い出していたのに、凛子さんはセックス後の処置を考えていた

 流石です・・・


[7] 色は思案の外  最後のティッシュ :2017/08/20 (日) 15:08 ID:ZVkL5PqE No.24896
僕らは程近い御近所さんには挨拶を済ませていたけど、遂にこの日が来た
引っ越してきて四週間経った日曜日、僕らの町内会デビューの日だ
活動内容は町内にある公園とその周辺の清掃だけど、新参者の僕らにとっては顔見せの場って感じかな
僕の家の周りは新しい家が多いからなのか比較的若い方の参加が多いけど
昔からこの地域に家を構えている方は年配者の参加が目立っている
お隣さんの田端さんを介して初対面の方と顔合わせをした後は公園の掃除だけど
これも交流の一環だ、集まった方々は気の良い人ばかりで自己紹介がてらの会話についつい熱が入ってしまう
「野上さんはどのような仕事を?」
「建築関係です お店の内装とかそんな感じの」
「大工職人ですか?」
「いえ、営業です。名刺には「企画営業」なんて書かれてますけど」
「ほう、何かクリエイティブな感じがして格好いいですね」
「いえいえ、名刺に箔をつける為の部署名ですよ 設計なんか「デザイナー」って横文字にされちゃって」
「ははは、聞こえは良いですね」
「はい、聞こえだけはね」
「お二人は社内恋愛で結ばれたと聞きましたが」
「ええ、上司と部下ってやつです」
「なるほど、野上さんは部下に手を出したわけですか」
「あ、いえいえ 嫁の方が上司でして」
 (「嫁」か、良い響きだ)
「ああ、やはりそうでしたか」
「え、「やはり」って・・・」
「ははは それにしても綺麗な奥さんですね 野上さんもこう見えて中々のやり手なんですね」
 (「こう見えて」って・・・)
「吉崎さんは運が良いですよ、主任と呼ばれていた頃の嫁は客先でも噂される程の鬼上司でしたから」
「鬼上司?」
「はい、仕事中にこんな感じで長々と無駄話してると何言われたか」
その時、公園に凛子さんの声が響き渡った
「宗太くん!口ばかり動かしてないで手も動かしなさい!」
「あ、はい!」
二週間振りに鼓膜を震わせた「吉田主任」の声に反応して思わず背筋を伸ばしてしまった
なんて事だ、僕が叱られたという事は話し相手の吉崎さんも一緒に叱られたという事になる
「まぁ、今のは優し目ですがこんな感じで・・・」
「なるほど・・・ あれで優し目ですか・・・」
「吉崎さんの奥さんはウチとは逆ですね、可愛らしい感じで 優しいでしょ?」
「いやぁ、今日は新顔の野上さんがいるから猫被ってるんですよ」
「そうなんですか?」
「ええ、野上さんの奥さん程じゃないですがウチも中々の鬼嫁ですよ」
「ええ?見えないなぁ いつもニコニコしてそうな感じに見えるけど」
 (吉崎さんの中では凛子さんは鬼嫁ってことになったのか・・・)
「ははは、どこも似たり寄ったりだと思いますよ」
「吉崎さんは結婚されて何年ですか?」
「三年目です」
「因みに、吉崎さん夫婦に新婚の甘い生活ってありました?」
「甘い生活か・・・ う〜ん・・・」
「あ、ウチと一緒ですね」
「結婚した途端に嫁が現実的になりまして、今では家の中は嫁ルール満載ですよ 野上さんの方は?」
「ウチは小遣い制の導入ぐらいですね、後は結婚前と変わらないというか・・・」
話が盛り上がりそうになってきた時、再び凛子さんの声が響く
「宗太くん!吉崎さん!」
「あ、はい!」
なんて事だ、今度は吉崎さんの名前まで出して・・・
「なかなか勇ましい奥さんですね・・・」
「ええ、部下も仕事を頼む施工業者も男ばかりでしたから あれぐらいじゃないと・・・」
「なるほど、結婚前と変わらないというのはこの事ですか お察しします」
 (ありがとうございます)

僕の叱られっぷりが良かったのか、ゴミを拾う暇がないほどに旦那衆から声を掛けられ
これから長い付き合いになる町内の方という事と、僕の仕事柄もあいまってついつい熱が入り話が長くなってしまう事もあった

 僕の方は良い感じで初顔合わせができた。でも、心配なのは凛子さんの方だ
 初めて顔を合わせた人の前で、あんなに大きな声を出して・・・

と思ったけど奥様方からは意外とモテているようだ
清掃活動が終わると、奥様方に囲まれた凛子さんは頭一つ抜け出ていて見上げられながら何か話している
話題の中心になっていると思われる凛子さんは時々笑顔を見せているが、何を話しているんだ?
「女同士の会話は男は耳に入れない方が吉」これは師匠である部長から結婚前に送られた有難い言葉だ
気にしてはいけない
お昼は久しぶりに二人で外食しようと思っていたけど
凛子さんは何人かの若い奥様達に連れられて近所の喫茶店に行ってしまった

 今日は一日一緒に過ごしたかったんだけどな・・・

早目の時間のランチデートの後は凛子さんを昼間の明るいベッドに誘い・・・というプランが崩れてしまったが
まぁ、いいか 今朝の凛子さんは何所となく楽しそうだった
時間はまだ午前の10時を少し回ったぐらいだ、頭の中で発走を告げるファンファーレが鳴り響く
 (よし、久しぶりに行くか)
凛子さんに連絡を入れて僕が目指したのはウインズ、場外馬券売り場だ
今日は独り競馬、そこにデート気分は無い
そしてここは場外、純粋にギャンブルと向き合う猛者が集う戦いの場である
朝の清掃活動で徳が積まれていたのか僕の予想は絶好調だった

 馬の声が聞こえる 勝つ馬が見える!

調子が良い時はこんな感じで競馬が簡単に思えてしまう
結局、最終の12レースまで勝負をして猛者たちの解散に合わせて僕もウインズを出た
耳にはまだ自動払戻機が札を吐き出す音が残っている
今日は年に一回あるかないかの日になった

 もう負ける気がしない、このまま有馬記念まで突っ走る!

こんな勘違いをして勝った金は直ぐに無くなっちゃうんだよね
とりあえず銀行に寄って勝った分のお金を預けてから家に向かった
最近は何かと調子が良い、競馬だけじゃなくて仕事も家の中も全て上手く回っている
家に歩を向けると昨夜の事が頭の中に蘇ってくる

昨夜は凛子さんが目隠しプレイを受け入れてくれたのだ

凛子さんがアイマスクを着けてくれた時、正直なところ僕は少し気持ちが冷めてしまった
僕から見れば裸の凛子さんがアイマスクを着けて顔を半分ほど隠しているだけで、想像していた程のエロさは感じない
大きめのアイマスクはキスの邪魔にもなりそうだ、これならアイマスクは着けずに素顔を見ている方がいい
どうしたものかと考えながら、凛子さんの手を握り横たわる裸体を眺めていたが
これは僕がお願いした事で、このまま何もせずに終わる訳にはいかない

 とりあえずオッパイを揉んでみるか、アイマスクは適当なタイミングで外してもらおう・・・

「ねぇ・・・ 何もしてくれないの?」
 (それは今から・・・ん?何か珍しい事を言われた気がするな・・・)
とりあえず目の前にある乳房を掴んでみる
「んっ・・・」
 (ん?) 
柔らかい乳房は揉み心地が良いが、それよりも凛子さんの様子がいつもと違う事に気が付いた
彼女の胸が深い呼吸で上下している
 (もしかして興奮してるのかな?)
乳首を指先で撫でてみると彼女の身体は敏感に反応して、あっという間に乳首は固く勃起した
どう表現すればいいのだろうか、まるで倍速で愛撫を進めている感じだ

 この状態でオマンコを触ったらどうなるんだ?

そんな逸る気持ちを抑えて胸の愛撫に集中する
「あっ ああっ」
いつもと同じ愛撫なのに凛子さんの喘ぎ声がいつもと違う気がした
そして身体の反応は明らかに違う、手はシーツを掴み腰を捩って悶えている
 (もしかして凛子さんってM気質?いや・・・、どちらかというと普段はSっぽいし・・・)
判断を急いてはいけない、やりすぎて後で叱られる事になったら元も子もないからね
とりあえず胸の愛撫を一旦止め内腿に手を這わせてみた
喘ぎ声は聞こえないが凛子さんの腰が僅かに動いている
指先でそっと秘部を撫でてみると、そこは熱く湿っていた
「うっ・・・ あぁ・・・ だめ・・・」
そんなこと言われると指を入れたくなるのが男の性
「あっ だめっ ほんとうに・・・だめ・・・」
熱く濡れた膣の壁が僕の指を包んだ
 (うわぁ・・・ 凄く濡れてる・・・)
膣の壁を撫でる僕の指は愛液で滑り、粘液の音が聞こえてきそうな程に溢れ出てきている
「ああぁ あぁ・・・ あうぅ・・・」
僕がその気になれば直ぐにでも凛子さんを絶頂に導けそうな喘ぎ声が耳に入ってくる
このプレイと凛子さんの性の気質が合っているのかもしれないけど
それにしても初めての目隠しプレイでここまで快感を得られるものだろうか

膣の壁を指で擦りながらアイマスクに覆われた凛子さんの顔に僕の顔を近付けた
「目隠しプレイは初めて?」
凛子さんの可愛い喘ぎ声が止んだ
「もしかして経験ある?」
自分でも無粋な事を聞いていると思ったが、気になってしまって聞かずにはいられない
「ごめんなさい・・・」
「ん?」
 (ごめんなさい?)
「気になって・・・」
「うん」
 (気になって?)
「着けてみたの・・・」
「うん、それで?」
 (着けてみた?アイマスクを?いつ?)
「それで・・・ 試しに色々してみたら・・・」
 (色々・・・ 色々・・・ 色々ってオナニー!?)
「良かった?」
「うん・・・ 思ってたより・・・」
「それって一回だけ?」
「んー・・・」
 (なるほど、これ以上は聞かないであげよう)
「よかった、目隠しは嫌いじゃないんだね」
「うん」
 (僕が仕事してる時にそんな事してたのか・・・)
「このまま続けるよ」
「うん」
アイマスクを着けた凛子さんはいつもより素直になっている、僕の顔が見えないからだろうか
そんな素直になった凛子さんの予想外の告白に驚かされた僕は平静を装う事で精いっぱいで
気づけば膣に入れた指は動きを止めていた
僕は前の男とプレイしてたんじゃないかと勘繰ってしまったけど
よくよく考えればフェラチオを断っていたぐらいだから、こんな事はさせないだろう

 それにしても、目隠しプレイの稽古までするとは・・・
 仕事以外の事にも手を抜かないんですね、流石です

思わぬ目隠し効果で愛撫にも力が入り、彼女の快感を指だけで絶頂に導いてしまったけど
これはアイマスクを外す良いタイミングで、外したアイマスクを枕元に置くと
暫く抱き合いながら休憩した後はいつものセックスに移った
あのまま目隠しプレイを続けた方が良かったのか、僕の判断が正しかったのかは判らないけど
その答えは、これから凛子さんと一緒に色々試しながら探せばいいさ

スケベな事を考えていると家までの道のりが短くなる
何か大事な事を忘れている気がしたけど、忘れる程度の些細な事は気にしない
何もかもが上手くいっている、僕は意気揚々と玄関のドアを開けた


[8] 色は思案の外  最後のティッシュ :2017/08/20 (日) 15:09 ID:ZVkL5PqE No.24897
玄関のドアを開け、先ず目に入ってきたのは見慣れない二足の靴だった
低目だけど、ちゃんとヒールがついている女物の靴で小さくて可愛く感じる
まぁ、凛子さんの足のサイズは身長に合わせて女性にしては大きめだし
普段はヒールが付いた靴なんか履かない、仕事を辞めてからは皆無だ
何所となく新鮮に感じた玄関の風景を背にしてリビングに向かった
「ただいま」
「おかえりなさい」
 (なぜだ・・・ なぜ機嫌が悪い時の声なんだ・・・)
「お邪魔してます」
と言った声の主は僕も見覚えのある顔だ
家が程近い御近所の安達さんの奥さんと
隣で笑顔を見せているのは、今朝の清掃で初めて顔を合わせた吉崎さんの奥さんだ
二人の歳は分からないが僕らと近い歳だと思う
そして何故か二人の笑顔が止まらない、というより僕が笑われている様な・・・
理由が分からずに笑われるのは何となく不快に感じるものだ
「あの・・・ 僕が何か?」
「うふふっ いえ 別に」
 (何なんだ?絶対に何かあるだろ!?)
「あの・・・ 吉崎さん」
「大丈夫ですよ、大丈夫ですから」
 (いやいや、大丈夫って意味がわからん・・・)
「凛子さん、何かあった?」
「分からない?」
「うん・・・ 分からないから聞いてるんだけど・・・」
「思い出しなさい、公園の掃除が終わってから一度帰ってきたの?」
「いや、そのまま競馬に・・・」
 (何だ?思い出す?僕は何をやらかしたんだ?)
「それなら、家を出る前の事を思い出して」
「う〜ん・・・ん! あ・・・」
「思い出した?」
「うん・・・ たぶん、このテーブルに箱が置いてあったと思うんだけど・・・」
「たぶんじゃないでしょ、宗太くんが置いたんでしょ?」
「はい・・・」
 (という事は・・・ まさか・・・)
僕の頭の中に浮かんでいるのは夜の玩具が入った箱だ
昨夜のセックスが良過ぎて、凛子さんをもう一押しするために出掛ける前に仕掛けたトラップだが
それは凛子さんと二人で帰宅して・・・という前提があったわけで

 開封したディルドとローションを並べて置く程の徹底したレイアウトのビックリ箱だったのに
 枷も拘束をイメージしてもらうために枷同士を繋いだ芸術的な作品だったのに
 なんで部外者が二人もいるんだよ・・・

「もお!何考えてるのよ!」
「ごめん、ちょっと驚かせようと思って・・・」
「ええ、驚いたわ」
「はは・・・ じゃぁ、サプライズは大成功だね」
「怒られてる自覚ある?」
「あります・・・ お客さんが来るとは思わなくて」
「思いなさい!」
「はい」
なんて事だ、凛子さんは随分怒っている
お客さんの前で僕を叱ることに躊躇する様子がない
しかし、安達さんと吉崎さんには大ウケのようだ
肩を震わせながら笑いを堪えている
「まぁまぁ、いいじゃない ふふっ 面白い旦那さんね」
 (安達さん! もっと強めの擁護をお願いします)
「凛ちゃんも大変ね」
 (吉崎さん・・・ って、凛ちゃん!?)
「まぁ・・・ 僕は反省してるから、この件はこの辺で・・・」
「そうね、夕飯の支度もあるから、続きは後にしましょ」
「はい・・・」
安達さんと吉崎さんが立ち上がり帰り支度を始めるが
この状態で凛子さんと二人きりにされる事に対しては危機感しか感じない
「あの・・・ 安達さん吉崎さん、よければウチで夕食を・・・」
「何言ってるの!恵美さんも加奈さんも家の事があるのよ!」
「ですよね・・・」
 (エミさん?カナさん?どっちがどっちだ・・・)
安達さんは帰り際に「色々考えてくれる良い旦那さんね」と最後の援護射撃をしてくれた
吉崎さんは「宗太さんガンバってね、凛ちゃんまたね」と馴れ馴れしくもアッサリ帰って行った
そしてこの日、凛子さんと僕の立ち位置は上司と部下だった頃と変わっていないという事を改めて確認できた
それにしても、エロい玩具を見ただけであれ程笑えるものだろうか

 僕がいない時に三人で何の話をしてたのだろう・・・ 気になる・・・

でも良かった、凛子さんに友達ができたみたいだ
出会ってから最近まで、会社での凛子さんと周りの関係を考えるとそれだけが心配だったけど
どうやら僕の取り越し苦労だったようだ
後は僕が凛子さんの怒りの嵐をやり過ごせば万事解決ってところかな
何の問題もない、今の僕は絶好調・・・のハズだ


[9] Re: 色は思案の外  :2017/08/21 (月) 08:41 ID:mncjMxNc No.24898
凄い分かり易いそれでテンポもいいですね〜
奥様最高です!昼と夜のギャップが  ドエムですね|


[10] Re: 色は思案の外  Kei :2017/08/22 (火) 12:21 ID:W336khpc No.24903
楽しい続きを待ってますね〜。

[11] Re: 色は思案の外  最後のティッシュ :2017/08/22 (火) 21:56 ID:oCyWLPL2 No.24906
レスありがとうございます
ハードな展開を期待するより仲のいい夫婦の話として読んでいただけると幸いです

登場人物の個性を引き立たせるって難しいですよね
一週間後の投稿を目指して四苦八苦していますので
よければまた感想をお聞かせください


[12] Re: 色は思案の外  ふぐり太 :2017/08/24 (木) 20:48 ID:s7sPrDQo No.24909
楽しく読ませて頂きました
魅力的な奥さんとの明るいエロですね
続き待ってます

[13] 色は思案の外  最後のティッシュ :2017/08/29 (火) 07:40 ID:hxs3Jkz2 No.24923
入籍して一年と二ヶ月、もう少しで一緒に暮らし始めて一年が経とうとしているが未だに「凛子さん」と「さん」付けで呼んでいる
これは仕方がない、元々は上司と部下の関係だったのだから
付き合い始めの頃は「凛子」と心の中で何度もシミュレーションしたものの
切っ掛けを逃し続けて今に至る
何事も最初が肝心とはよく言ったもので、もう切っ掛けが無い


こういった事情もあり、凛子さんは周りから見れば絵に書いたような姉さん女房に映るらしい
僕たち夫婦は御近所さんから「しっかり者の奥さんと競馬好きの旦那さん」という評判を頂いている
競馬の話は好きだけど小遣い制度というお財布事情もあり、それほど入れ込んではないんだけど・・・

一緒に暮らし始めて二ヶ月も経たない内に凛子さんはパートに出始めた
僕は可愛いユニフォームを着る接客業を期待していたのだが
予想通り僕の期待を裏切ってくれた凛子さんはホームセンターにパートに出る事になった
ホームセンターのスタッフジャンパーもユニフォームではあるが

 なぜファミレスやカフェ的な可愛いユニフォームじゃないんだ・・・

御近所さんからの夫婦としての評判は「しっかり者の奥さん」だけど
凛子さん個人では「色気がない」という辛辣な評判を時々耳にする
色気が有る無しで評価するのは奥様方じゃなく旦那衆なんだけどね
初見では長身の美しい立ち姿と整った顔立ちから「綺麗な奥さんですね」と評され僕を気分良くしてくれるは鉄板ネタなんだけど
見慣れてくると色気の無い服装や僕への上からの言葉使いが評価を下げていくようだ
結局は「野上さんも大変ですね」で締められるのがオチになっている
凛子さんの魅力を知る僕からすれば心外な結果だ
奥様方、特に同年代や年下の奥さんからは何故かモテているようだが、そんなこと僕には関係ない
欲しいのは旦那衆からの好評価なんだ 自慢の嫁さんだからね
僕らの関係を変える事はできないけど、服装を変える事は直ぐにでもできる
何所かにその切っ掛けがあればと思っていたんだけど・・・

そんな僕の気持ちを知ってか知らずか
身長が175cmある凛子さんは両手を上げて「品出しは私の天職だわ 見て、ここの棚まで手が届くのよ」なんて言いながら笑ってた
職場で身体的な個性を褒められたのだろうか、やけに嬉しそうだった
凛子さんが楽しんでいるのなら、まぁいいかな
そしてなにより、僕の小遣いを少々増やしてくれたので文句なんて言えるはずがない
そう、文句は言えないのだ
家を購入する時に頭金を出してくれたのは思った以上に貯えを持っていた凛子さんで
月々の支払いが随分楽になった
その楽になった分が僕の小遣いになっていると言っても過言では無い
そして期待に胸を膨らませた、荒れた夏競馬が過ぎ去り秘密の競馬貯金が寂しくなってきた最近
僕は小遣い制の恐ろしさを実感し始めている
目の前に迫ったGTの季節、僕の競馬貯金は有馬記念まで持つのか?


月曜の朝、僕は朝礼前に部長のもとに向かった
「おはようございます」
「おう、スプリンターどうだった?」
「ああ まぁ、それより阪神の3レース取りましたよ」
「阪神の3レース?未勝利なんかやってるのか?」
「ええ、昨日はたまたま」
部長が携帯を取出し何かを調べだした、何を調べているのかは大体の予想はできるが
「おお!結構荒れたな 何買ったんだ?」
「3連単です」
「おいおい、これ取ったのか?」
「調子が良かったんで買ってみたんですよ そこに競馬の神様が降りてきました」

本当にたまたまだった
以前、僕は凛子さんの事を仕事人間で無趣味だと思った事があったけど
僕も結局は競馬以外に趣味と言えるものが無く
調子の悪い最近は休日でも家でゴロゴロしている事が多くなっていた

「初めてのデートって競馬場だったわね 明日はGTの日でしょ?」

土曜の夜、寝る前のひと時に不意に凛子さんから掛けられた言葉に
「明日一緒に行く?」
と何となく答えたのが絶好調の始まりだった
思えば凛子さんと久しぶりのデート
僕のお財布事情を考えれば競馬はついでの遊びで、ランチの後は映画でも観ようと思い
パソコンで検索したのは出走馬より上映している映画の情報だった
日曜の朝、僕らはコンビニに寄って二部の競馬新聞を買ってから向かったのは場外馬券売り場のウインズ
久し振りに見た競馬新聞を睨み付ける凛子さんの真剣な表情は新鮮だった
相変わらずデートには見えないラフな服装だけど、それが周りの猛者達に馴染んでいる
そういう所が僕に合っているというか、凛子さんの良い所なんだよね
彼女なりに競馬の事を勉強してくれているのか
大きなレースがある時は彼女の方から誘ってくれる事があり
そして競走馬に変な思い入れが無いからなのか、凛子さんは結構勝っている
もしかして、こっちの才能があるんじゃないのか?
しかし、この日だけは僕の方にビッグウェーブがきていた
部長には「競馬の神様」なんて言ったけど、凛子さんが競馬の女神様だ

午前の4レースが終わりフロアには少し落ち着きが出る
「お昼行こうか」
「ええ 今日は宗太くんの方が調子良いみたいね」
「このまま一生負ける気がしないよ」
僕の調子に乗った言葉にも凛子さんは微笑んでくれる
「お昼食べたら買い物にでも行く?好きな物買っていいよ」
「もう競馬はいいの?」
「うん」
「それなら映画にしましょ 予定通りね」
「でも、今日は大勝ちしたし・・・」
「今は欲しいものが無いから映画の方が良いわ、今日の勝ちは財布に仕舞っておきなさい」
「うん」
結局、僕の財布から出したのはお昼と映画の分だけだったけど
凛子さんはいつも通り、競馬よりもその後の食事や映画を楽しんでいる様子だった
やっぱり競馬の方は僕に付き合ってくれているだけなのかな

そしてウインズを出る前に買ったスプリンターズSの馬券だが
今、僕の財布の中には的中馬券が入っている 絶好調だ


[14] 色は思案の外  最後のティッシュ :2017/08/29 (火) 07:41 ID:hxs3Jkz2 No.24924
秋晴れの心が洗われるような気持ちのいい土曜日
明日の日曜日は財布の中にある的中馬券を換金できそうだ

 気分が良過ぎる

会社のカレンダーでは休日になっているけど、僕の部署では何人か出社して机に向かっている
その中に伊藤と西岡がいるのだが、この二人と営業事務の女の子を含めた三人が貴重な後輩だ
僕が入社してから7年と半年ほどの間、何人か新人が入ってきたり転属されてきたけど結局残ったのは三人で
一番若い西岡が三年堪えてきているから、これ以上減る事はないだろう
「腹減ったなぁ・・・」
と大きな独り言を吐いたのは同期の村上で
「減りましたね」
と同調したのは伊藤だ
となると、ここは僕の出番か
「まぁ、だいたい12時だから飯にするか」
「まだ15分前ですよ」
 (西岡・・・ 空気読めよ・・・)
「四捨五入すると12時だろ」
 (村上、時間は二捨三入しろ)
ちょっと早目だけど机に弁当を出した

普段は休憩室を兼ねた食堂的な所で昼食を摂るけど、土曜の会社には自由がいっぱい詰まっている
伊藤と西岡は会社の前にある弁当屋の弁当だが
村上が出してきたのは愛妻弁当、先月結婚したばかりだ
要領よく休みを取って新婚旅行にも行きやがった
聞かされた惚気話から察するに、村上の新婚生活は僕が想い描き憧れていた新婚生活のようだ

「土曜だからゆっくり寝てろって言ったんだけどな」
 (それがどうした、凛子さんは日曜が出勤になっても弁当を持たせてくれるぞ)
「休日出勤でも愛妻弁当持ちですか、いいっすね」
 (おい!伊藤! おまえ僕にはそんなこと言ってくれた事ないよな!)
「俺らは共働きだから今まで通り弁当じゃなくてもいいんだけどな」
 (自慢気に出しといて何言ってるんだ・・・)
「もしかして家出る前にキスとかしてるんですか?」
 (それだ、いい質問だ)
「まだ新婚だからな」
 (このやろう・・・ スカした答え方しやがって)
「結婚ってどんな感じですか?やっぱり同棲とは違いますか?」
「どうかな、責任感ってやつは感じてるけどな」
 (なに格好つけてるんだよ)
「やっぱりそうなんですか」
「恋人から夫婦になったからな、恋人気分のままじゃマズイだろ」
 (僕の時はそこまで聞いてくれなかったよな・・・ 村上みたいなセリフ言わせてくれよ)
「野上さんはどうでした?」
 (おい・・・僕は話に参加してなかっただろ 察しろ)
「ウチは主任から嫁になったけど変わってないよ」
「わっはっは マジかよ、ウソだろ」
「さすが野上さん 期待を裏切りませんね」
 (よし、ウケた)

 (そういえば結婚生活の事あまり聞かれた事なかったな)

「しかし、おまえも今までよく生き延びてこれたな」
「ん?なにが?」
「あの伝説の主任と一緒に暮らしてるんだろ」
 (こらこら、勝手に伝説にするな 一年も経ってないだろ)
「他に誰と暮らすんだよ」
「息が詰まって窒息とかしないのか?」
 (なんてこと言いやがるんだ・・・)
「よし、おまえら今夜はウチで飯食え 嫁になった凛子さんを見せてやる」
「はぁ?冗談言うなよ、咲ちゃんが俺の帰りを待ってくれてるんだよ」
 (知るか)
「パワハラっすよ」
 (嫌がらせの要素は何所にも無いだろ・・・)
「さっき変わってないって言いましたよね、御勘弁を」
 (おい 変な断り方するな)

凛子さんは今日は料理教室の日だと言っていた
という事は、今頃はお昼ご飯かジムに向かっている所といった感じかな
「もしもし、どうしたの?」
久しぶりに会社で聞く凛子さんの声は何だか懐かしい感じがする
コミュニケーションアプリやメールじゃない、会社の携帯じゃなく僕の携帯を持ち三人の様子を窺いながら目の前で凛子さんに電話してやった
 (新婚病に侵されている村上は勘弁してやろう 僕に感謝しながら養生しろよ)
「二人連れて帰るけどいいかな?」
「今から?」
「仕事が終わってからだから7時前になるかな」
「私が知ってる人?」
僕が「二人」と言ったからだろう、目の前に並んだ三人の顔が緊張している
「うん、伊藤と西岡」
「あら、久しぶりね いいわよ ご飯用意した方がいい?」
「うん、お願い」
「分かった、楽しみにしといてね」
 (ん?楽しみに?)

通話を切り携帯を机に置くと満面の笑みを浮かべた村上が接近してくる
「前から思ってたけど、おまえ良い奴だな 食後のコーヒーおごるよ」
 (失礼な奴だな・・・ 前から思ってたけど)
生気を失った伊藤と西岡を置いて村上と自販機に向かったが
置いてきた二人の様子が気になっていた

 僕程じゃないけど二人も凛子さんに随分叱られてたからな
 そうだとしても、そんなに嫌がらなくてもいいじゃないか・・・
 携帯から聞こえてきた凛子さんの声はちょっと嬉しそうな声してたぞ

予定通り残業は一時間ほどで済ませ二人を連れて家に向かうが
僕の後ろに付いてくる靴の音は重い
後ろの二人の気持ちは分かる
凛子さんと付き合う前の僕なら二人と同じ気分だっただろう 今はそれでいいさ
「ただいま」
「おかえりなさい」
キッチンの方から声がする
そして、後ろに付いてきていた二人はまだ玄関の外だ
「いや・・・ そんなに怖がらなくても・・・」
思わず心の声を口から出してしまった
ゆっくり靴を脱ぐ二人を見届けた後、ダイニングを覗くと凛子さんはキッチンに立っている
「伊藤くんと西岡くんは?」
「あ、後ろに」
「お邪魔します」
「お久しぶりです」
「本当に久しぶりね 座って、直ぐ用意するから」
「はい、失礼します」
「宗太くん、手伝って」
「うん」
 (おまえら、なぜ凛子さんの顔を見ない・・・)
何所に座ればいいのか迷っていた二人を座らせた後、凛子さんが立つキッチンに視線を向けたのだが

 何だ、この料理は・・・

魚料理って事は見てわかるけど、焼いたような感じの上から何かのソースが掛っていて
色とりどりの野菜っぽい物が盛りつけられている
「これ何て料理?」
「ポワレよ」
 (ポワレ?餡かけとかじゃなくて横文字の料理か・・・)
テーブルにポワレとかいう魚料理の皿が三つ並んだ
 (あれ?凛子さんの分は?)
「さぁ、食べて感想を聞かせて」
「えっ!これって試食会!?」
「そうよ 最近、宗太くんは「美味しい」しか言ってくれなくなったでしょ」
「それは美味しいから・・・」
「伊藤くんと西岡くんが来てくれたのなら丁度いいわ」
凛子さんは立ったまま腰に手を当てている
「もしかして、自信あり?」
「さぁどうかしら 食べてみて」
「うん おまえらも食べたら正直に感想言えよ」
「はい・・・」
どうやら伊藤と西岡は記憶にある「吉田主任」とは違う事に気付いているようだが
記憶にある「吉田主任」が邪魔しているようにも見える

「あ、美味しいよ」
「もお、他に何かないの?」
「美味いです」
僕の次に伊藤が来たが
「それじゃ宗太くんと一緒でしょ もっと違う感想を聞かせてよ」
「本当に美味しいですよ」
そして西岡も・・・
 (何てことだ・・・ 三人とも同じ感想で全滅じゃないか、使えない奴等だ・・・)
「もぉ・・・ まぁいいわ ご飯がいい?ビールがいい?」
前に座っている二人の視線が僕に答えを求めている
「僕はご飯で」
この僕の一言で決まり二人も追従してくる
「お酒でもいいのよ」
「いえ、腹減ってるのでご飯お願いします」
 (そんなに、かしこまらなくても・・・)
後ろのキッチンから何かを焼く音が聞こえてくる
伊藤の視線は目の前の僕をスルーしてキッチンの凛子さんに向かっているし
西岡もチラチラと凛子さんを見ているようだ

 ふっ、これが嫁になった凛子さんだ
 一緒に仕事していた時とは違うだろ?
 髪も短くなってチョット肩にかかるぐらいになってるんだぞ、気づいているか?

四人での食事は前の二人はいつもより口数が少ないままで
僕も凛子さんの隣に座るという、いつもと違ったポジションで中々調子が出ない
そんな中でも気を使っているのか凛子さんは二人に話しかけ
僕らの調子が出てきたのはテーブルの上を片付け始めた時だった
「なんて呼べばいいんですか?」
「普通に「奥さん」でも何でもいいよ」
「奥さんの料理美味しかったです、ごちそうさまでした」
「ふふっ お粗末さまでした」
「先輩、見ました!? 奥さん笑いましたよ!」
「そりゃ笑う事もあるだろ・・・」
「二人はどうやって付き合い始めたんですか?」
 (やれやれ、今頃そういう質問かよ)
「私が宗太くんをご飯に誘ったのよ」
「そういう事だ」
「二人が付き合ってるなんて全然わかりませんでしたよ」
「もしかして会社の中でキスとかしてたんですか?」
 (そんな事できる雰囲気に見えたか?)
「会社には仕事に行ってたのよ、そんなことしないわ」
「そういう事だ・・・」
 (そういう事にも憧れてたよ・・・)
「ええー 勿体ないですよ」
「そうそう、折角の社内恋愛なんですよ」
 (そうだよな、そう思うよな)
「なに言ってるの お給料を貰ってるんでしょ、出社したら会社を出るまでは仕事の時間よ」
 (そんな身も蓋もない事言わなくても・・・)
「そこが良いんですよ」
「そうそう、周りが仕事してる中で物陰に隠れてっていう所が」
 (そうだよな、それなんだよ)
「君達ちゃんと仕事してるの?心配になるわ」
「してます してます」
「営業以外の事までやらされて万年人手不足なんですよ、会社に戻ってきてください」
 (おまえ・・・ 前に凛子さんが居なくなって会社に行き易くなったみたいな事言ってなかったか?)
「忙しい時でも先輩は部長と競馬の話しばかりしてますけどね」
 (西岡!余計な事言うな!)
「宗太くん」
「はい」
「何しに会社に行ってるの?仕事でしょ」
「はい、仰る通りです でも、まぁ・・・ あれは上司とのコミュニケーションの一環で・・・」
「度が過ぎてるのよ」
「はい・・・」
「何度も叱った覚えがあるけど、相変わらずなの? そういう所は直しなさい」
「はい・・・」
 (ほら こういう事には厳しいんだよ・・・)
「うわぁ、何か懐かしいもの見た気がします」
 (なに呑気なこと言ってるんだよ・・・)
「綺麗な奥さんに叱ってもらえる先輩が羨ましいっす」
 (おまえも一年前までは「吉田主任」に叱られてただろ)
「もう余計な事は言うなよ」
「一万円札をラミネートして遊んでた事もダメですか?」
「おい・・・」
「宗太くん!」
「はい!」
伊藤と西岡は爆笑しているが僕は面白くない
裏切り者達の申告により、何度か凛子さんに叱られた後は二人にはお帰り頂いた


僕はリビングで凛子さんを待っている
そして、一緒にお風呂に入った凛子さんは今髪を乾かしている
今日の凛子さんは僕を叱っている時以外は機嫌が良かった
なんとなく分かる
今夜は凛子さんの方からお誘いがありそうだ

 なくても僕の方から誘うつもりだけどね

髪を乾かし終えた凛子さんが一度リビングを覗いてキッチンの方に向かい
湯飲みを二つ持って戻ってくると僕の隣に腰を下ろした
誘いの言葉は無く控え目だけど、これが凛子さんからのお誘いなんだ
「今日はジムにも?」
「うん」
返事の声が少し鼻にかかった甘え声になっている
「あ、そうだ」
「どうしたの?」
「新婚旅行の代わりってわけじゃないけど、月末ぐらいに温泉にでも行く?」
「旅行?」
「そうだよ」
「仕事の方は大丈夫なの?」
「月末辺りなら大丈夫だと思う」
「それなら、その旅行が新婚旅行ね」
「あ、いや 新婚旅行は新婚旅行で海外とか」
「海外に拘らなくてもいいのよ それに、そんなにお休み取れないでしょ」
「そうだけど・・・」
「それでいいの、初めての旅行なんだから」
「うん・・・ でも、温泉は凛子さんにゆっくりしてもらおうと思っただけなんだけどな・・・」
「私に?」
「うん、朝起きてから寝るまで家事とかパートで毎日忙しそうだし」
「うん」
「それに、仕事がある日は日曜でも祝日でも弁当持たせてくれるし」
「うん」
「毎日ご飯の献立考えるのも大変なんじゃない?」
「うん」
「だから、たまには家事とか忘れて骨休めもいいんじゃないかなと思って」
「うん」
「ゆっくり二泊ぐらいできればいいんだけど」
「うん、そうね」
凛子さんからの返事が相槌ばかりになった
僕の期待を込めた推測だけど、この時の凛子さんは「甘えている」といった感じだと思われる
昼は淑女、夜は娼婦 という言葉があるけど凛子さんの場合は 昼は虎、夜は仔猫 といった感じかな
これが僕ら夫婦の形だ、付き合い始めた頃の凛子さんの容姿にばかり目を向けていた自分が恥ずかしい
今は何事にも一生懸命になる昼間の虎の姿に心底惚れている その前置きがあっての仔猫の凛子さんは魅力的だ
「今日はアイマスク使うよ」
「うん」
僕らの玩具はアイマスクの一択しかない 以前、凛子さんを怒らせてしまった時に他の玩具は捨てられてしまったからだ
しかし、この凛子さんの様子なら今夜買い直しの交渉をすれば良い返事をもらえそうな気がする
最近の僕は絶好調だ しかし、競馬が好調な時ほど凛子さんに叱られる事が多くなるのは何故なんだ・・・


[15] Re: 色は思案の外  最後のティッシュ :2017/08/29 (火) 07:43 ID:hxs3Jkz2 No.24925
少々肌寒さを感じるけど空は晴れ渡っている気持ちのいい午後
「日曜は秋の天皇賞ね」
凛子さんが僕に何かを思い出させようとしているかのように語りかけてきた
「そうだね、初めてのデートは天皇賞の日だったよね」
「普通のデートプランは考えてなかったの?」
「別れ際だったから焦って思い付かなかったんだよ それに競馬場に着くまでは付き合ってなかったからね、当たり障りのない所だろ?」
「ふふっ そうね」
普段はしないような会話が、普段の生活から離れた気分を高めてくれる
今日はまだ金曜日 しかし、ここは会社でも客先でもなく
僕らは温泉地に程近い駅で旅館の送迎バスを待っている
恋人だった時を含めても凛子さんとは初めての旅行だ
僕が楽しみにしているのは温泉もだけど、やっぱり凛子さんの浴衣姿が一番の楽しみだね
もう既に僕の心は凛子さんのことを惚れ直す準備はできている

 そんな気分が上がりっぱなしの旅行だというのに
 何故この二人が・・・

一応は僕らに気を使っているのか、少し離れた所で恵美さんと加奈さんも送迎のバスを待っている
恵美さんは安達さんの奥さんで、加奈さんは吉崎さんの奥さんだが
どうやら僕らの温泉旅行が、彼女達の骨休めのダシに使われてしまったようだ
当然、現地では彼女達とは別行動なんだけど

 僕らにとっては新婚旅行なのに・・・
 家を出てから帰るまでが旅行だろ、なんで家を出た瞬間から四人旅になるんだよ
 仲が良いのは結構だけど、程々にしてほしいよ

それでも送迎バスに揺られながら僕の気分は高まり、心なしか隣の凛子さんの声も弾んでいる
しかし、一番気分を高めているのは加奈さんのようだ
「凛ちゃん」「恵美ちゃん」と何かと同調を求めながら、年甲斐もなく子供の様にはしゃいでいる

 吉崎さんは鬼嫁だなんて言ってるけど、なかなか可愛い奥さんじゃないか

そんな加奈さんの隣で微笑んでいる恵美さんは、目尻が垂れ気味の顔立ちも手伝っておっとりした印象を受ける
これは初めて会った時から今まで変わっていない

 凛子さんと加奈さんの二人と一緒にいる時の恵美さんは、まるで肉食獣に囲まれた草食動物みたいだね
 こんなこと口が裂けても言えないけど・・・

バスが旅館に到着すると僕ら四人のテンションは更に上がった
重厚で如何にも温泉旅館だという佇まいの玄関
もう、僕の頭の中にはこの玄関の奥にある温泉と浴衣姿の凛子さんしか映っていない
「もう温泉に入れるんだって 凛ちゃんも一緒に入る?」
 (おいおい・・・)
「宗太さんに悪いわよ、夫婦の旅行なんだから」
 (恵美さん、いつもありがとうございます)
「そんなに気を使わなくてもいいわよ 私も入りたいわ、一緒に入りましょ」
 (凛子さん・・・ 気を使ってもらいましょうよ・・・)
この温泉が看板にしている美肌という効能が彼女達をそうさせるのか
部屋に案内される前に僕は添乗員的な立場にされてしまった
まぁ、それは仕方がない
凛子さんと加奈さんが同い年で、その一つ下が恵美さん
僕が一番年下なんだけど、この歳の二歳や三歳差なんて在って無いに等しいはずだが
どうも僕の事は軽く見られているようだ
これが、この一年で出来てしまった僕らの関係だ
「ごめんなさいね、折角の夫婦の旅行なのに」
僕に気を使ってくれる恵美さんの言葉が心に染みる
「いえ、いいですよ 三人で美肌に磨きをかけちゃってください」
「うふふっ じゃぁ、お言葉に甘えて」
恵美さんは近所でも評判の癒しの笑顔を向けてくれた
これでいい 元々は凛子さんに家事の休日を作ってもらおうと思って計画した旅行だからね

前を歩く三人の後姿は凛子さんが頭一つ分ぐらい背が高く、見様によっては良い歳の娘と並んで歩いているようにも見える
凛子さんは33歳になった この旅行の間に凛子さんとこれからの事について話し合おうと考えているけど
僕の気持ちとしては、妊活とかじゃなくて普段の夫婦の営みの中で子を授かる事ができればと思っている
凛子さんはどう考えているんだろう

仲居さんが部屋から出て行くと、ようやく二人の時間ができた
「広いお部屋ね」
「そうだね」
「あまり散らかさないでよ 仲居さんが食事の用意やお布団を敷きにくるんだから」
「うん・・・」
僕の気分が浮かれてきた時に気を引き締めてくれる凛子さんの言葉はいつものことで
ご近所さんから「一年目でも十年目の貫録」と言われる所以だ
僕が会社に入った時からの関係だから当たらずとも遠からずなんだけどね
「宗太くんはどうするの?」
「僕も温泉に浸かってこようかな」
「メイク落としてくるから待ってて」
「うん」
いよいよだ 僕の理想は浴衣の下はノーブラだが予想はスポーツブラ的な物だ、これは間違いないだろう
ノーブラ浴衣は夕食の後でいい、凛子さんはナイトブラを用意していると思われるが
僕は強い意志をもってブラ着用を拒否する構えだ

すっぴんになった凛子さんが戻ってきた、普段から薄化粧なので大変わりしないけど
そんな見慣れた凛子さんのすっぴんも、この時だけは密かに僕のテンションを上げた
「おまたせ、行きましょ」
「行くって何所に?」
「何言ってるの、浴場に決まってるじゃない」
「え?浴衣は?」
「夕食まで時間があるから出かけるでしょ?」
「うん・・・ そうだけど・・・」
 (確かに外は肌寒いけど旅館の中ぐらいは・・・)
「そんなに私が浴衣を着たところを見たいの?」
「うん 三日前から言ってただろ」
「先週から言われてたわよ」
「まぁ、それぐらい見たいということで・・・」
「夜になれば嫌でも見れるわよ」
微笑みながらそう言われると夜まで我慢するのも一つの楽しみだと思える
 (まったく・・・ 僕を焦らすのが上手過ぎますよ)

大浴場に向かう前に恵美さんと加奈さんに声を掛けると二人は浴衣に着替えていた
今日はもう出かけるつもりは無いということで、二人は観光というよりも完全に休養目的の旅行のようだが
普段とは違う二人の浴衣姿は新鮮で、手に待ったタオルにこの後の入浴を連想させられると
すっぴんになった顔が中々にエロい

 凛子さん 二人を見てください、これが温泉宿の醍醐味ですよ

「凛ちゃんの浴衣姿楽しみにしてたのに残念」
 (そうですよね、僕も楽しみにしてましたよ やっぱり女性の加奈さんから見てもそう思いますか)
「楽しみにするほどの物じゃないわよ 大体の想像はできるでしょ?」
「そうね、凛子さんなら浴衣の柄も引き立ちそう」
 (おお、さすが恵美さん 攻め方が加奈さんとは一味違う)
「浴衣の柄?」
「背の高い人が着ると大きな柄のデザインでも映えるのよ」
「そうなの?」
「ええ、私が着ても只の模様になっちゃうけど、凛子さんなら大きな柄でも着こなせそうね 羨ましいわ」
「決まりね、来年の夏は凛ちゃんも浴衣買って一緒に花火観に行こうね」
「大丈夫かしら 浴衣で花火を観るなんて中学以来よ」
 (何で来年の夏の話になってるんだ・・・ するなら今の話しだろ・・・)

次の旅行は温泉が無い観光地にしよう。と反省しながら男湯の暖簾をくぐったけど
三人は話に夢中になっているのか僕の事を気に掛ける様子は無かった

 これでいい、今回の事は良い勉強になった・・・

浴場に足を踏み入れると二人の年配の方が目に入った
とりあえず体を洗って温泉の湯に浸かると思いの外気持ちがいい
効能の美肌になんて興味はないけど、いつ振りかの大きな風呂に思いっきり脚を伸ばして浸かる解放感
今日のところは奥様方の旅行に付き添ってきたと考えれば、付いてきた二人の事は気にする程の事じゃない
それに、明日は家族風呂を予約してあるからね 今日はこれでいい

 う〜ん、気持ちがいいいね 実は温泉って初めてなんだよね
 そうだ、ビジネスホテルの大浴場に入った時がこんな感じだったな

体に溜まっていた疲れがお湯に染み出していくような感覚は、気を抜けば長湯になってしまいそうなほど気持ちがいい
この後は湯上りの火照った身体を冷ましてから、温泉街を凛子さんと散策するといった感じになるのかな

 そうだ! タイミングが合えば湯上り姿の加奈さんと恵美さんを見る事ができる
 これは浮気心じゃない 純粋な男心だ

先ずは普段の凛子さんの入浴時間を思い出す
 (そこに女三人の長話をプラスすれば・・・ まだ少し早いか・・・)
しかし直ぐに気付いた、どうやら僕は無駄な計算をしていたようだ
答えは簡単、先に上がって待てばいい
新たな目的ができれば温泉に未練はない
さっそく脱衣所に向かったが、けっこうな時間温泉に浸かっていた気がする 
何かの間違いで彼女達が先に上がって部屋に戻ってなければいいのだが

暖簾を潜り廊下に出たけど誰もいない、少し先には女湯の暖簾が見える
 (まさか、もう先に上がっていて部屋に戻ってるって事はないだろうな・・・)
期待が大きいほど不安も膨らんでくる
喉の渇きを覚えた僕は、とりあえず「自販機コーナー」と案内の札が出ている方に向かった
大浴場に接した廊下のちょっと入り組んだところに向かうが
これだけの事でも、僕が飲み物を買っている間に三人とすれ違いになってしまうんじゃないかと心配になる
手には小銭入れを握っている 買う飲み物はお茶と決めている
さっさとお茶を買って早く男湯の前に戻りたい
しかし、早足になっていた僕は角を曲がって足を止めた
目に映った光景は自販機の前で抱き合っている浴衣を着たカップルだ
 (おいおい・・・ 公共の場でキスなんかしちゃって羨ましいな、部屋に戻ってからやれよ・・・)

羨ましいが迷惑だと感じたのは僅かな間だった
僕の先入観から抱き合ってキスをしているは男女だと思っていたが、抱き合う二人の姿には何か違和感がある
そして、違和感の次にきたのが何とも言えない迷走する思考だ
 (もしかして・・・ 恵美さんと加奈さん? いや・・・ そんな事はないだろ・・・)
ゆっくり後退りして男湯の前に戻った時には、喉の渇きなんて小さな事は忘れていた

「待っててくれたの?」
「うん」
目の前には、いかにも湯上りといった感じの凛子さんの姿があるが他の二人はいない
「あの・・・ 恵美さんと加奈さんは?」
「先に上がったけど会わなかったの?」
「うん・・・」
 (もしかすると見てしまったかもしれないんです・・・)
そのとき加奈さんの声が耳に入ってきた
「凛ちゃん、あっちに冷たい飲み物売ってるよ」
例の方向に目を向けると加奈さんと並んで恵美さんも歩いてくる
「そうね、冷たいもの欲しいわね 宗太くんお財布持ってる?」
「うん、何か買ってから部屋に戻ろうか」
 (僕はずっと前から冷たいお茶を飲みたいと思ってたんですよ・・・)
湯上り姿を見ようと思ってたけど、抱き合ってキスしてる姿を見てしまった

 仲が良いとは思っていたけど、好い仲だったなんて・・・

混乱しかけていた頭が落ち着くと、妙な興奮を覚えてしまった
レズなんて僕にとっては動画の世界の話しだったし、それが顔見知りのご近所さん同士だなんて
「どうしたの?」
「え?」
部屋に戻っても見てしまった二人の事でイッパイになっていた頭の中に凛子さんの声が入ってきた
「ずっとボーっとしてるわね のぼせたの?」
「あ、いや 別に」
 (あんなもの見てしまったら、今頃二人は何してるのか気になって・・・)
「そう・・・ やっぱり浴衣に着替えた方が良かったの?」
「ん? それは後でも」
「でも・・・」
「ん?」
 (あ、この感じ もしかしてネガティブな方にいっちゃってる?)
「恵美さんと加奈さん、浴衣似合ってたわね」
「うん」
「ずっと二人の事気にしてたでしょ・・・」
「あ・・・ いや」
 (たぶん誤解です たぶん凛子さんが思っているような事じゃないんです)

次に来ると思われる凛子さんの言葉が怖い
でも、僕を悩ませている原因を話してしまっていいのか分からない
たぶん話さない方がいいと思う
凛子さんとは仲の良いご近所さんで、彼女達のおかげで他の方との付き合いも広がり二人には感謝している
そんな彼女達の秘密を話すという事は気が咎めるが
しかし、僕らは夫婦だ 凛子さんは、これからも同じ方向を向いて一緒に歩いていく伴侶だ

「その二人の事なんだけど、落ち着いて聞いてほしい」
「ええ・・・」
「見たんだ」
「見た?何を?」
「うん・・・ なんか抱き合ってキスしてた・・・」
少し間があった 凛子さんは僕の事を口の軽い男だと思ったんじゃないのかと変な心配をしたが
「ふふっ」
 (え?笑った?)
「あの・・・」
「もしかして、ずっとその事を考えてたの?」
「うん、そうだけど・・・」
「ふふっ」
「いや、笑うような事じゃ・・・」
「知ってたわよ、あの二人の事は」
「ええっ!」
「何となくね 宗太くんみたいに見たわけじゃないけど」
「いつから?」
「いつからというのは無いけど、なんとなくよ」
「そうだったんだ・・・」
「ふ〜ん、宗太くんは見ちゃったんだ」
「うん・・・」
「誰にも言っちゃダメよ」
「うん、こんなこと誰にも話せないよ」

夕食まで時間があり僕らは温泉街の散策に出たけど、旅館から出かける様子が無かった二人は何をしていたのだろう
僕が見た濃厚なキスの様子から、二人は百合と呼ばれるソフトな関係ではなさそうだ
レズビアンと呼ばれる肉体の関係を持っていると思われる
一度想像してしまったご近所の奥さん同士が裸で抱き合う姿が邪魔をして、目に映っているはずの街並みが頭に入ってこなかったけど
それは旅館に戻り、凛子さんの浴衣姿を目に入れるまでの間だけだった


[16] 色は思案の外  最後のティッシュ :2017/08/31 (木) 23:31 ID:NJug8KXc No.24930
結婚前の交際期間も含めると二年経ったけど、いまだに凛子さんを好きになり続けている
付き合い始めた頃の熱病のような気持じゃないけど、ほんのり温かい熱は冷めないままでいる
しかし、この時ばかりは少し違っていた

部屋に用意してもらった料理がテーブルの上を飾っているが
僕はその向こうの浴衣姿の凛子さんに目を奪われている
「もぉ、そんなにジロジロ見ないでよ」
「あ、ごめん」
「ふふっ 別に謝らなくてもいいのに」
「ははっ そうだね でもウェディングドレス以来の衝撃だよ」
「浴衣に着替えただけよ」
「うん、別人みたい」
「いつもの私はそんなに酷いの?」
「ラフな服装も凛子さんらしくて好きだよ」
普段は口にしないような言葉が何の抵抗もなく出てきたけど
凛子さんは照れてしまったのか「食べましょ」と言って料理の方に目を向けてしまった
豪勢に見える料理は見た目通りに美味しいのかもしれないけど
僕はその料理の味を半分ほどしか堪能できていないのかもしれない
普段から姿勢が美しい凛子さんなら、洋服より和装の方が似合いそうだと思っていたけど予想以上だった
しかし、浴衣姿の凛子さんに見惚れてばかりいるわけにわいけない
僕の予想通りに浴衣の下にはスポーツブラを着用しているようだ
それを外してノーブラ浴衣になってもらう交渉をしなければならないし
バッグに忍ばせたアイマスクを取り出すタイミングを計らなければならない

このアイマスクには感謝している
目隠しをするだけで凛子さんの感度が変わるという事もあるけど、それ以外に変わった事がある
それは凛子さんのフェラチオだ
アイマスクを装着したままの手淫やフェラチオは、僕が誘導する形で色々と注文を付け易くなり
それに応えてくれた凛子さんのフェラチオは随分と上達し深みを増した
堪らず無断で口の中に出してしまった時は流石に叱られたけど
その時の彼女は怒っているというより驚いているといった感じだったし、どことなく満足気な顔をしていた
そんな功労者もそろそろ買い替え時で、多分この旅行が最後の活躍の場になるだろう

 今までありがとう、アイマスク 君は僕ら夫婦の恩人だ

テーブルの上は片付けられてビールの瓶とコップだけが残っている
無駄に広いと感じた部屋の奥には並んで敷かれた布団があり
そろそろノーブラの交渉を始めたいところだけど、凛子さんは何故か携帯を弄っている
「温泉に浸かってくるけど宗太くんも行く?」
「恵美さんか加奈さんから?」
「ええ」
「じゃぁ、僕も温泉に浸かってこようかな」
 (う〜ん・・・ あの二人どういうつもりなんだ・・・)
付いてきた二人に邪魔されて調子が出ないまま
仕方なくといった感じで凛子さんと部屋を出て大浴場に向かった

「わぁ、思った通り 凛ちゃん浴衣似合ってるわよ」
「そお?」
「うん、雑誌のモデルみたい」
「ふふっ それは言い過ぎよ」
凛子さんが褒められると僕は気分が良いし、凛子さん自身も嬉しそうだ
僕らの時間を邪魔した無粋な誘いは許そう

凛子さんと加奈さんが女湯の暖簾を潜り、姿が見えなくなると恵美さんが僕に近付いてきた
「ごめんなさいね、二人の時間を邪魔してばかりで」
「いえ、いいですよ 気にしないでください」
「優しい旦那さんで凛子さんが羨ましいわ」
「いやぁ そうでも・・・」
恵美さんが合った視線を外してくれなくて、つい照れてしまい僕の方が視線を外してしまった
「もう少しだけ宗太さんの優しさに甘えさせてくださいね」
「あ、はい」
 (もしかして僕に気がある? いや、僕は何を考えてるんだ・・・)
目尻が下がり気味の恵美さんの表情は妙に艶っぽく見えてしまい
僕は彼女が暖簾を潜り姿が見えなくなるまで後姿に視線を送ってしまっていた

 落ち着け、よくある勘違いだ
 それに恵美さんには加奈さんという恋人が・・・

温泉に入る前だというのに、エロい妄想をしてしまった事を後悔しながら鏡の前に立ち
鏡に映ったバカ面を眺めながら、元気になってしまった愚息が静まるのを待ってから浴衣を脱ぎ浴場に向かった

大浴場は僕らが旅館に到着した時よりも賑わいを見せている
そして、僕は浸かったお湯から出る事ができずにいる
一度想像してしまった御近所の奥さん同士が愛し合う姿は、一度は頭から追い出したが直ぐに戻ってきてしまい
愚息が公衆の面前に晒せない状態になってしまっているからだ
不本意ながら僕は周りの男の裸体に目を向けて愚息を沈める事に努めた

思わぬ形で長湯になってしまったけど、浴衣を纏ってしまえばエロい妄想し放題だ
そして、この熱を持ってしまった性的な欲望は全て凛子さんに受けてもらう事になるだろう

 (凛子さん、今夜はノーブラだけじゃ済ませないよ 浴衣の下は何も着けさせないからね)

実際そこまでの交渉ができるかどうかは別として、暴走気味の妄想を膨らませながら廊下に出たが
他のお客さんの姿はあるけど凛子さんの姿は見えない
ちょっとした期待感を持って自販機コーナーを覗いてみたけど
恵美さんと加奈さんが抱擁する姿はなかった
冷静になって考えてみれば当然の事だ、人気の少なかった昼間だからできた事だからね
とりあえず男湯の前に戻って凛子さんを待ったけど中々出てこない
 (もしかして部屋に戻ってるのかな?)
女湯という異次元の空間を覗くわけにはいかず、仕方なく部屋に戻ってみる事にした

部屋の引き戸を開けると、先ず確認したのはスリッパだけど
僕は部屋を間違えたんじゃないかという錯覚に陥った

 数が合わないのは何故?
 一つは凛子さんの分、残りの二つは?

 まさか・・・ いや、そんなはずはない 彼女達は立派な大人だ、節操のない子供じゃないんだ
 そうか、凛子さんが落ちてたスリッパを拾ってきたんだな・・・

僕が三足のスリッパを見下ろしていたのは数秒の間だったかもしれないが
頭の中では現実逃避ともいえる都合の良い状況把握が何通りも展開されていた

耳に入ってきた聞き覚えのある声に現実に戻され
内側の引き戸を引いて部屋に入ると、凛子さんと共に座卓を囲む恵美さんと加奈さんの姿が目に入ってくる
「随分ゆっくり入ってたのね」
「うん・・・」
 (色々と事情があって・・・)
座卓の上には新しいビールの瓶とコップが並んでいる
 (たぶん、そのビール代は僕らの部屋に付けられるんだろうな・・・)
「いただいてます」
「あ、はい」
恵美さんが少々申し訳なさそうに声を掛けてきた
恵美さんも加奈さんも脚を崩して座った浴衣の裾は少々はだけ、おみ足が座布団の上に投げ出されている
暑い季節には露出の多い姿を見た事もあるけど、浴衣から覗かせる素足となると一味も二味も違うんだよね

 よし、ビール代は頂いた 今夜の事は全て許そう

とりあえず凛子さんの隣に腰を下ろしたが、僕の前に置かれたのは夕食の時に使っていたコップだ
 (僕の分のコップは頼んでなかったのか なんて粗雑な扱いなんだ・・・)

相手が女三人となると、当然の如く僕が主導権を握れる時間は皆無で
僕は早々に敷かれた布団に横になり彼女達に背を向けた
これには「早く自分たちの部屋に帰ってくれ」という強烈なメッセージが込められていたんだけど
「宗太さん寝ちゃったわね」
「きっと慣れない長風呂で疲れたのね いつもはカラスの行水なのよ」
この凛子さんと加奈さんの一言ずつで僕の話題は終わり、男の僕にとっては少々耳の痛い会話が続く

寝たフリのつもりが本当に眠気に襲われてきた時だった
「凛ちゃんと宗太さんって仲良いわね」
加奈さんの口から出た僕の名前が眠気を覚ます
「そお?」
 (そこは「そうでしょ」って答えてくださいよ・・・)
「いつでも宗太さんは凛ちゃんに気持ちを向けてるわよ 分かってるでしょ?」
「さぁ、どうかしら」
 (そんなイジワルなこと言わないでくださいよ・・・)
起き上がって話に飛び入り参加してやろうかと思ったとき、恵美さんの声が耳に入ってきた
「うふふっ こういう事は照れて本音で話してくれないのね」
「そんな事ないわよ・・・」
「夫婦仲が良いのは悪い事じゃないわ」
「ええ、そうだけど・・・」
「バカップル夫婦に見られたくないだけなんでしょ?」
「そうね 前にも話したけど、この歳で恥ずかしいわ」
 (え?恥かしい?もしかして凛子さんにもそういう願望があるんですか!?)
「恥かしい事なんてないわよ 誰かに見せる訳じゃないんだから朝のキスぐらいしてあげれば?」
 (もしかして、いってらっしゃいのキスの事?三人の時はそういう事も話してるのか?)
「でも、宗太くんが皆に言いふらしそうで心配なのよ」
 (いいじゃないですか・・・)
「やっぱり会社に勤めていた時の知り合いの事が気になるの?」
「ええ、そうね・・・」
「会社に勤めてた時の凛子さんの事は知らないけど、宗太さんと二人でいる時の凛子さんが本当の凛子さんだと思うの」
「ええ・・・」
「それに会社は辞めたんでしょ、どう思われてもいいと思うわ」
「ええ、そうね」
「それに宗太さんも喜んでくれると思うの 分かってるんでしょ?」
「ふふっ 急に私が変わったら変に思われそうね」
「大丈夫よ」
 (そうですよ、大丈夫ですよ)
「でも・・・ 一緒に暮らし始めて一年経ってるのよ やっぱり恥ずかしいわ」
 (恵美さん、もう一押しです ガンバってください!)
「凛ちゃん、大丈夫よ 見る人が見れば二人は充分バカップル夫婦なんだから」
 (加奈さん・・・ また余計な事を・・・)
「え?私達ってそんな風に見られてるの?」
少しの間の後に恵美さんの声が聞こえた
「ええ」
気のせいか、その短い返事は今まで聞こえていた声と少し違っていた気がする
「凛子さんが宗太さんを怒鳴りつける姿もお互い甘え合っているように見えるわ」
「そんな事ないわよ、本気で怒ってるのよ」
 (そうですよね・・・)
「それは何があっても宗太さんの気持ちが離れない事を分かってるから、だから素直に感情を出せるんでしょ?」
「んー・・・ そうね」
 (そうだったんですか?)
「それが本音ね、凛子さんは宗太さんの気持ちに甘えてるのよ」
「ええ、恵美さんの言う通りかもしれないわね」
初めて知った凛子さんの僕に対する気持ち
僕は背中越しに聞こえてくる会話に聞き入っている
「まだ夜の方はお盛んなんでしょ?」
「ええ」
 (え?そんな事まで話してるんですか?)
「良い仲は続くかもしれないけど、そっちの方はいつまで続くのかしら?」
 (え?)
突然変わった恵美さんの言葉に部屋は静まり返った


[17] 色は思案の外  最後のティッシュ :2017/08/31 (木) 23:32 ID:NJug8KXc No.24931
背後では何か動きがあったようだけど話し声は聞こえない
耳に神経を集中しても聞こえてくるのは僅かな衣擦れのような音だけになっていたが・・・
「あん・・・」
 (ん?今のは加奈さんの声?)
「凛子さん、顔を上げて加奈のオッパイ見てあげて」
 (え?オッパイ?呼び捨て!?)
「どうしたの? 加奈の裸はお風呂で見てるでしょ?」
 (凛子さん、何か言ってください お願いです、実況してください!)
「どういうつもりなの?」
 (いや、そういう質問じゃなくて状況の報告を・・・)
「私達の仲は知ってた?」
「ええ、何となく」
「私達の関係を変だと思う?」
「いえ、そんな事ないわよ」
 (そうなんですか!?)
「そう、私達みたいな関係に興味は?」
「無いわ 何を言いたいの?」
「男はね、同じ女ばかり抱いていると身体に飽きてしまうのよ 分かる?」
「ええ・・・」
「宗太さんとのセックスはどお? 手を抜かれてるって感じる事はないの?」
「そんな事・・・」
 (なんで自信なさげなんですか・・・)
「先の事を考えた時そういう不安は無いの?」
「ええ・・・」
 (もっと強く否定してくださいよ・・・)
「本当に?そう言い切れる? 宗太さんがそうなったら凛子さんはどうするつもり?」
「それは・・・」
 (ダメだ・・・ ネガティブ思考の凛子さんが出てきそうな雰囲気だ・・・)
「もしかして、宗太さん以外の男を求めるの?」
「宗太くん以外の男なんて考えた事も無いわ」
 (おお!強気の凛子さんの声だ)
「うふふっ 妬けちゃうわね じゃぁ、溜まった性欲は自分で処理するつもりなの?」
「ええ、オナニーで解消するわ」
 (そこまでハッキリ言わなくても・・・)
「それで満足できるかしら?」
「できるわ 回りくどいわね、何が言いたいの?」
凛子さんの言葉が喧嘩腰になってきた
 (嬉しいこと言われた気がするけど ここで喧嘩なんて勘弁してくれよ・・・)

「セックスで初めてイッたのは宗太さんとのセックスって言ってたわよね」
「ええ」
 (え・・・ そんな事まで話して・・・)
「今はイケない事の方が少ないって話してたわよね」
「ええ それで、何を聞きたいの?」
「宗太さんって上手なのね」
「ええ・・・」
 (なんで弱気な返事なんですか・・・)
「そのセックスが無くなっても我慢できるの?」
「ええ、できるわ」
少し弱気になったと感じた凛子さんの返事が力を取り戻した
どうやら凛子さんは僕の事を言われると弱気になるみたいだけど
自分の事になると強気で返しているように思える

「うっ あっ・・・」
 (加奈さん・・・ どういう状況なのか分からないけど喘いでないで場を収めてくれ・・・)
「お昼に三人で温泉に入った後にね、加奈は凛子さんに抱かれてみたいって言ったの」
「そんなこと言われても・・・」
「凛子さんの身体、予想以上だったわ 私も加奈も部屋まで我慢できなかったのよ」
「そんな・・・」
「私の気持ちも加奈と同じよ 凛子さんに抱かれたいわ」
「でも・・・」
「セックスレスになってオナニーで解消しきれなくなった時はどうするつもり?」
「それは・・・」
 (さっきはオナニーで解消できるって言い切ったのに何で弱気なんですか・・・)
「宗太さんを裏切りたくないんでしょ?」
「ええ、勿論よ」
「女同士なら浮気じゃないのよ、凛子さんも宗太さんを裏切らなくて済むわ」
 (いや・・・ それより前提が間違ってるよ、まだセックスレスになるって決まったわけじゃ・・・)
凛子さんからの返事は無かった
「こういう事を覚えるのは後々の為よ 加奈の顔を見て、幸せそうな顔してるでしょ?」
「ええ・・・」
 (そうなのか!?加奈さんはどんな顔をしてるんだ!?)
「こっちに来て加奈のオッパイを揉んであげて お願い」
「でも・・・」
「加奈が望んでいる事なのよ それに、このまま何も無かったら加奈が恥ずかしい思いをしただけになっちゃうわ」
「でも・・・」
「加奈の為よ お願い」
 (まさか恵美さんがこんな悪魔のような女だったとは・・・)
凛子さんの反応を見て攻める角度を変えてくる恵美さんを恐ろしい女だと感じた

僕の背後で何か動きがあるが、何がどうなっているのか分からない
「ここに座って」
 (ん!凛子さんが二人に近付いていったのか!?)
「加奈の背中を支えてあげて そう、そうやって後ろから両手で揉んであげて」
おそらく背後では僕の頭の中に思い浮かべた画とほぼ一致している状態だと思われるが
凛子さんは黙ったままで声が聞こえてこない
代わりに聞こえてきたのは加奈さんの喘ぎ声だ
「あんっ・・・」
「加奈、どお?」
「凛ちゃんの手 んっ おっきくて気持ちいい」
 (揉んでるんですね・・・)
「凛子さんも加奈に何か言ってあげて」
「何かって・・・」
「何でもいいのよ」
「加奈さん・・・ 柔らかいわ」
「うんっ 凛ちゃんの手 気持ちいい」
「そう・・・」
「ねぇ 乳首も お願い」
「うん・・・」
「あっ ん んッ」
「分かる? 加奈の乳首が起ってきたわよ」
「ええ・・・」
「んっ あぁっ 凛ちゃんっ 舐めてっ」
「えっ?」
「凛子さん、舐めてあげて」
「でも・・・」
頭が上手く回らなくなってきている、しかし、そんな僕を置いて背後で動きがあった
さっきまでは加奈さんの背後から凛子さんがオッパイを揉んでいたと思われるが次はどんな体勢なのだろうか

「凛ちゃん、来て」
「ええ・・・」
背後が静かになった
耳に神経を集中すれば、微かな物音が聞こえているように思えるが気のせいとも思える
「あっ・・・」
 (ん!?)
「んっ・・・」
 (これは・・・)
「んっ はぁっ あぁ んっ」
 (舐めてるんですか!?加奈さんのオッパイを舐めてるんですか!?)
僕は寝たフリをしながら気が遠くなるような感覚に襲われている
「加奈ばかりズルイわ 私も 凛子さん、お願い」
 (どうなってるんだ?恵美さんもオッパイを出しているのか?)
「凛子さんの手で浴衣を脱がせて」
「ええ・・・」
 (オッパイはまだ出してなかったのか・・・)

「あっ ちょっと・・・ 加奈さんっ」
 (凛子さん!?どうした?何があった!?)
「もぉ、邪魔しないでよ・・・」
 (ですから何があったんですか・・・)
「凛ちゃんのオッパイ大きいわね」
「ちょっと・・・ 加奈さん・・・」
「気にしないで、恵美ちゃんの浴衣脱がせてあげて」
「もぉ・・・ んっ」
 (え・・・ どういう状況になってるんだ?感じてるんですか?)
背後には倒錯する程のピンク色の世界が繰り広げられていると思われるのに、僕の頭の中は真っ白になりそうだ

 これは浮気じゃない 女同士のお遊びだから浮気じゃない
 ちょっとしたスキンシップなんだ・・・

心の中で何度も繰り返し唱え、自分を納得させようとしている
僕にできる事はそれしかなかった、既に起き上がるタイミングを逸していたのだから

「凛子さん キスして」
 (キス?オッパイを揉んだり舐めたりするだけじゃないのか!?)
その恵美さんの言葉の後は部屋から大きな音は消え
微かに聞こえる衣擦れのような音と時折耳に入ってくる
「んふっ」というような鼻息か呻きか分からない声のようなものが耳に入ってくるだけになった
凛子さんと恵美さんはキスをしていると思われるが、それにしても随分長いキスだ
二人は本当にキスをしているのか?と疑い始めた時だった
「んはぁ・・・」
快感混じりの息を吐く凛子さんの声が耳に入ってきた
「恵美ちゃんの舌使い凄いでしょ」
「うん・・・」
「オッパイを舐めてあげて」
「うん」
恵美さんに代わり加奈さんが愛撫をエスコートし始めた
「うぅん・・・」
 (これは恵美さんの声?オッパイを舐めてるんですね・・・)
「うっ くうぅん うぅん」
「うふっ 恵美ちゃんが仔犬みたいな声出してるわよ 可愛いよね」
 (うん 確かに可愛い声だ・・・)
「凛ちゃん上手でしょ」
「うぅん 丁寧で あぁ・・・上手・・・ くぅんっ」
「きっと宗太さんが上手なのね」
 (いえいえ、それほどでも ・・・って謙遜してる場合か?)
「そうね 上手だけど、やっぱり物足らなく感じる事はあるわ」
 (え・・・ そうだったんですか・・・ 謙遜してる場合じゃなかった・・・)
「凛子さん 続けて・・・」
「うん」
 (恵美さんへの愛撫より、僕の愛撫へのダメだしの方が大事だったんですね・・・)

恵美さんの可愛い喘ぎ声は止まず、僕は変に興奮していたが
僕の興奮を冷ましたのは凛子さんの小さな悲鳴だった
最初は背後で何が起こっているのか分からなかったが、少しずつ状況を把握できてきた
「ちょと・・・ 加奈さんっ」
「いいから、次は凛ちゃんが気持ち良くなる番よ」
「でもっ そこはっ」
 (そこ?どこだ!?)
「凛子さん、大丈夫よ 私達に任せて」
「でもっ これ以上は・・・」
「大きな声出さないで 宗太さんが起きちゃうわよ、今の姿を宗太さんに見られたいの?」
恵美さんが悪魔的な顔を覗かせると凛子さんの声が小さくなる
「加奈さん・・・ そこはダメ・・・」
「あら 良い所は加奈に取られちゃったわね、私はオッパイをいただくわ」
 (良い所? いや・・・ なんとなく分かってるけど・・・)
「恵美さん・・・ んっ・・・」
「邪魔なブラジャーは取るわよ」
 (おい・・・)
「恵美さん だめ・・・」
「パンティーも邪魔ね 取っちゃうよ」
 (おいおい・・・)
「お願い 加奈さんっ やめてっ」
背後が騒々しくなった、手なのか足なのか体の一部が畳を叩くような音も聞こえた
「静かにして 宗太さんが起きちゃうわ、見られたいの?」
「でも・・・」
「うふふっ こんな姿見られたら愛想尽かされるかもしれないわよ」
「恵美さん、お願い・・・」
「怖がらなくていいのよ 女同士なんだから酷い事はしないわ」
「でも・・・」
「少しの間だけ我慢して」
「でも・・・」
さっきまでの興奮は、背後の騒ぎで心配に変わっている
凛子さんは乱暴な事をされていると思われるが、僕が起き上がり助けに入ったとしても
そんな姿を僕に見られた凛子さんの心は傷付いてしまうかもしれない
このまま寝たフリを続けた方がいいのか、取り返しがつかないところまで行く前に止めた方がいいのか
僕の中にある二つの選択肢はどちらも正解じゃないような気がして動けない

 凛子さんは嫌がってるじゃないか もう諦めて帰ってくれ・・・

僕は強く願う事しかできずにいる
ジムに通っているからなのか、凛子さんは175pという長身だが更に見た目以上に力がある
その気になれば女二人を跳ね除ける力ぐらいある事は僕がよく知っている
しかし、寝たフリをしている僕が枷になって抵抗できないでいる様子だ
僕は、寝たフリなんかしなければよかった と後悔していた

 何故こんな事になってしまったんだ・・・


[18] 色は思案の外  最後のティッシュ :2017/08/31 (木) 23:34 ID:NJug8KXc No.24932
先程までの騒音が止み部屋には小さな音だけが残っている
畳に何かが擦れるような音、小さな吐息と思われる音
そして小さく控え目な凛子さんの声・・・
「んっ・・・」
 (この声は・・・)
「んっ・・・ んっ・・・ あっ・・・」
 (凛子さん・・・)
「はぁっ んっ」
 (ええ・・・ さっきまで何か乱暴な事されてたんじゃないんですか?それでも感じているんですか!?)
「気持ちいい?まだ軽く撫でてるだけよ」
 (これは加奈さんの声、という事は撫でているのは恵美さんが言う「良い所」・・・)
「はぁ はぁ あぁ・・・」
 (いや・・・違う 凛子さんは感じてなんかいない、苦しんでいるだけだ、きっとそうだ そうであってほしい・・・)
「入れて欲しくなったら言ってね」
 (何言ってるんだよ、そこは僕だけの・・・)
加奈さんが口を閉じると部屋には凛子さんの吐息と小さな喘ぎの声だけになる
時折、凛子さんの小さな声が止み
その時は恵美さんにキスをされていると思われるような気配を背中に感じていた

この状態が朝まで続くのではないかと思える程の長い愛撫に変化があったのは
凛子さんの喘ぎ声が変わった時だった
「あぁ ああっ」
 (凛子さん・・・)
「うっ だめっ はぁ・・・ あっ」
 (お願いだ 僕以外の人の前でそんな声出さないでくれ・・・)
「はあっ あんっ あぁっ」
 (声が大きくなってきている・・・)
「あぁ だめっ 入れないで・・・ あッ だめッ」
 (凛子さん!?)
「だめッ 加奈さんっ んッ」
 (どうしたんですか!? いや、何となく何されてるか分かるけど・・・)
「大丈夫よ、まだ動かさないから」
 (入れられちゃったんですね・・・)
また凛子さんの喘ぎ声だけになった
どれぐらいの時間、凛子さんは二人に弄ばれているのだろうか
思っていた以上に長くなった愛撫は終わる気配を見せない

「ううっ ううあぁ・・・」
時折、凛子さんが深く喘ぐようになってきた
「動かすわよ」
「だめ・・・」
「どお?」
「うぐぅっ・・・ だめっ」
 (ああ・・・ この声の感じは・・・)
「いやっ 止めてっ」
 (ガンバって我慢してください!)
「ここが気持ちいいんでしょ?」
「うんっ」
 (あっ!「うん」って答えちゃいましたね!)
凛子さんが加奈さんの愛撫を受け入れるのを待っていたかのように恵美さんの声が聞こえてきた
「うふふ 良くなってきたでしょ」
「あぁ・・・ こんなの初めて・・・」
「羨ましいわ、私も加奈も二人に責められるなんて経験ないのよ どんな感じなの?」
「凄いわっ あぁ」
 (凛子さん・・・)
「そんなに良いの? 私も欲しいわ、後で加奈と二人で抱いてね」
「うんっ」
「二人で加奈も抱いてあげましょうね」
「あんっ うんっ」
「うふふっ 良い感じになってきたわね お布団に行きましょ」
「えっ? でも・・・ 宗太くんが・・・」
「寝てるいから大丈夫よ 行きましょ」
「うん・・・」
 (なんだと! こっちに来るのか!?)
本当に僕が寝ていたとしても、隣で「あんあん」騒がれれば流石に目が覚めると思うのだが
どうやら凛子さんの思考は快感で少々鈍っているようだ
同性からの愛撫は異性とは似て非なるものだと言われるが、そこまで違いがあるのか?

三人が立ち上がる気配を背に受け、二人が凛子さんから離れた事を感じ取ると少しの安堵を覚えたが・・・
「ねぇねぇ 恵美ちゃんのパンティー脱がせてあげて」
「私が?」
「うん 気持ち良くしてもらったんでしょ お礼よ」
「ふふっ そうね 恵美さん、パンティー下げるわよ」
「うん お願い」
 (そんな事聞き入れなくても・・・)
「凛子さん お願い、そのまま舐めて・・・」
 (え?)
「舐めるの?」
「お願い・・・」
「凛ちゃん、舐めてあげて」
部屋が少しの間だけ静寂に包まれた
「はぁ・・・ 上手ね 良かったわ・・・」
 (舐めたんですか!?)
「恵美ちゃんエッチな顔してたよ 戸惑ったのは最初だけだったでしょ?」
「ええ、そうね 一度舌を着けてしまえば後は大した抵抗は無いわね、臭いも気にならないわ」
「次は私 はい、来て」
「はいはい、舐めるわよ」
「うん あ・・・ あッ 凛ちゃんッ」
 (舐めてるんですね もぉ・・・何やってるんですか・・・)
「あッ だめッ それッ だめッ」
 (え?なにしてるんですか?)
「どお?良かった?」
「もぉ、イジワル・・・ 指入れるなら先に言ってよ・・・」
 (ええぇ・・・ 指を!?)
「あら、加奈さんも私の中に入れたでしょ、お返しよ 濡れてたから簡単に入ったわ」
「うふふっ 油断した加奈がいけないのよ 次は私の番、凛子さんのオマンコの味見させて」
「ええ、いいわよ」
「長くて綺麗な脚ね、羨ましいわ」
「もぉ、早く来てよ この格好恥ずかしいのよ」
 (どんな格好してるんですか・・・ 僕は気が遠くなりそうになってるんですよ)
「うふふっ じゃぁ、失礼します」
 (妙にエロい台詞ですね)
「恵美ちゃんエロい」
 (あ、加奈さんとシンクロした)
汗が滲む身体に鞭打って寝たフリを続ける僕を余所に
背後の三人はキャッキャ言いながらエロい戯れで盛り上がっているようだ
 (あぁ・・・なんか疲た 凛子さんまで楽しんじゃってるみたいだし・・・)


そんな僕の緩んだ気を引き締め直すかのように三人の気配が近付いてきた
並んで敷かれている布団は、横を向いて寝転がっている僕の真ん前にあり
その布団を離す様子もなく掛布団を除ける気配だけが伝わってくる
 (そこで!? 本気なのか・・・ 僕の真ん前だぞ・・・)
前方には三人の気配、瞑った瞼に力が入る
 (寝ていない事がバレたら終わりだ・・・)
凛子さんは相手方に付いた
僕は今、敵陣の真ん中に取り残された気分だ

三人の息遣いが分かる程の距離で肌の擦れ合う音まで聞こえる事もあるが
先程までの陽気な雰囲気は伝わってこない
「んふっ・・・」
 (これは恵美さんの声・・・)
三人が布団に移ってきてから会話らしい会話は聞こえなかった
しかし、もう始まっていたようだ
「くっ うぅん」
 (何てことだ・・・ 近くで聞くと臨場感がハンパない・・・)
誰かの手と思われる物が僕の顔の前に投げ出された気配を感じ取った
「くぅっ ああぁッ」
恵美さんの喘ぎに合わせるように顔の前に投げ出された手と思われるものがシーツを掻いている
 (顔の前にあるのは恵美さんの手?誰か気付いてくれ、そのうち僕の顔に当たってしまうぞ・・・)
そんな僕の心配を三人は知る様子もなく行為は続く
息が乱れているのは恵美さんだけじゃない
他の二人も興奮しているのか、少々荒くなった吐息が時折耳に入ってきている
肌と肌が擦れ合うような音も聞こえてくる
僕の布団のシーツが引っ張られるような感覚があった、恵美さんが布団を掴んでいるのだろうか
 (あっ!恵美さん!?手が僕の鼻に当たってますよ!)
「ううぅん くうぅん」
 (恵美さん 恵美さんっ 手がっ 鼻を擦らないでください!)
「ふはぁぁ うああぁ 凄いっ ああッ ダメッ ダメぇーッ!」
 (ああっ!今、僕の足に何か当たりましたよ! 恵美さんっ 僕を蹴りましたね!)
恵美さんが一際大きな声を上げた後に騒々しさが消えた
「もうイッたの? 今日は早いわね」
「んはぁ・・・ はぁ 次は加奈の番よ・・・」
 (えぇ・・・ 何事も無かったかのように言われたら僕は・・・)
「そんなに良いの?」
「ふふっ 加奈さんも直ぐに分かるわ」
「はぁ・・・ 凛子さん ふぅ・・・ 上手ね・・・」
「男の身体より分かりやすいわよ」
「凛ちゃん、恵美ちゃん 早く」
「少し待って 恵美さんとキスさせて」
「凛子さん・・・ 好きって言って」
「好きよ」
「名前も・・・」
「ふふっ 恵美さん、好きよ」
「嬉しい  んっ・・・」
 (凛子さん・・・)
目を瞑っていても分かる、凛子さんと恵美さんは抱き合い濃厚なキスを交わしていて
荒くなった籠り気味の息の音は聞こえるし、絡み合う舌の音まで聞こえてきそうな気配を感じる


「あんッ あっ あっ あんッ!」
加奈さんの喘ぎ声が耳に入ってきている
耳に絡みつくような恵美さんの喘ぎ声とは違い、可愛く歯切れのいい喘ぎ声だ
僕が寝たフリを始めてからどれぐらいの時間が経ったのだろうか
布団に入ってからの殆どの時間は三者三様の喘ぎ声を聞いている様な気がする
「あっ ああッ それっ それッ ああんッ」
 (凛子さん、ガンバって)
そして、僕の思考は少々麻痺してきている
 (恵美さん、たぶん足だと思うんですけど僕のお腹に当たってますよ)
加奈さんのオッパイを愛撫しているのは恵美さんだと思われ
位置的に僕の体に当たっているのは恵美さんの足の先と思われる
加奈さんが大きな呻き声を上げた
「ぐうッ ううッ んんーッ!」
「あら、またイッたの? 加奈の身体はスケベね」
「はあぁ・・・ はあぁぁ・・・」
絶頂の余韻なのか、強い吐息の中に喘ぎのような声が混じっている
「うふふ これで二回目ね」
 (それはいいんですけど、貴女の足が僕の腰の上に・・・)
「加奈さんの身体って敏感で面白いわね」
「そうでしょ ついついエンドレスになっちゃうのよ」
「ふはぁぁ・・・ もう・・・ だめ・・・ 変になっちゃう・・・」
 (僕の頭も変になっちゃいそうです・・・)

僕が寝ている布団の上、僕の真ん前に誰かが座り込んだ
僕が良く知るその気配から凛子さんだと思われるが・・・
「次は私が抱かれる番ね」
 (当たりだ、凛子さんだ 大胆な事してる自覚あります?僕が寝ている布団の上ですよ・・・)
「でも、宗太さんは大丈夫?」
 (ん?僕がどうしたんだ?)
「そうね そろそろ寝たフリが辛くなってるかもしれないわね」
 (ん?)
「宗太さん、大丈夫ですか?」
 (え?なんで?何で恵美さんに話しかけられてるんだ・・・)
頬を撫でられた 僕を優しく撫でてくれたのは良く知る凛子さんの指先の感覚だ
「宗太くん、もういいのよ」
「はい・・・」
いつになく優しい凛子さんの声に思わず答えてしまった
しかし、この状況では目を開ける勇気が出ない せめて凛子さんと二人きりにしてもらわないと・・・
「宗太さんって可愛いわね あんなに鼻息荒くしてバレてないと思ってたのかしら」
 (ああ・・・ なるほど・・・)
「どうなの?私達が気付いてないと思ってたの?」
「うん・・・」
「あれじゃ気付かない方がおかしいわよ、寝たフリするなら寝息の演技もしなさい」
「はい・・・」
 (無理ですよ・・・)
「いいじゃない、宗太さんが寝ていない事に気付いて私は凄く興奮したわ」
 (そうなのか!? 恵美さんにそんな嗜好があったなんて・・・)
「恵美ちゃんって宗太さんの事好きだからね」
 (えっ?加奈さん、今なんて言いました?)
「でも、全然気付いてくれないし・・・」
「ふふっ 相手が悪かったわね、私なんて何年も気付いてもらえなかったのよ」
 (ごめんなさい・・・)
「それで凛ちゃんから宗太さんをご飯に誘ったんでしょ」
「ええ」
「凛子さんは凄いわね 私はそこまで積極的になれないわ」
「何言ってるの、ずっと宗太くんを触ってたでしょ 私の目の前で大胆すぎるわ」
 (凛子さんの目の前でというより・・・)
「あら、気付いてたの?」
「嫌でも気付くわよ」
「そう、少し大胆に触りすぎたようね」
 (大胆を越えた加減でしたよ・・・ いや、もういいか 何か疲れた このまま眠りたい・・・)
「もう凛ちゃんにガードされて宗太さんを触れなくなっちゃたわね」
 (僕の前に座ったのは、そういう事だったんですか!?)
「そうね、もっと触りたかったのに・・・ 宗太さんの鼻息を手に感じた時は愛撫されてるみたいで凄く興奮したわ 宗太さんは私の裸を見たくないんですか?」
 (なんという嬉しいお誘い、しかし)
「お二人の分まで後で凛子さんの裸を見せてもらいますので」
「あら、フラれちゃったみたいね」
 (あ、いや・・・ そういうつもりで言ったんじゃなくて、ここまできて目を開けるのが怖いだけなんです)
「そうじゃないわ、目を開けるのが怖いだけよ」
 (はい、そうです さすが凛子さん、僕の事をよく分かってますね)
「ありがとう、そう言ってもらえると救われるわ」
「宗太くんは勿体ない事したわね、恵美さんの色白で綺麗な裸を見ないなんて」
 (え・・・)
「凛ちゃん、私は?」
「ふふっ 加奈さんは胸の形が綺麗ね、それに乳首も」
 (なに!?「乳首も」って中途半端な説明ですよ 色とか大きさとか詳細を!)
「凛ちゃんから見てもそう思う?」
「ええ 目を瞑ったままなんて宗太くんは勿体ない事してるわ」
 (ですから詳細を・・・)
凛子さんは僕に詳細を伝える気は無いようだ
我慢も限界にきて目を開けてやろうかと思ったときだった
「もぉ、何してるのよ」
 (ん?なんだ?)
凛子さんの声が僕の集中力を耳へ戻した
「オナニーよ」
 (え!?)
恵美さんの声が僕の想像力を掻き立てる
「宗太さん、私オナニーしてるんですよ 見たいでしょ?」
 (え?えっ?してるんですか!?)
「もぉ、宗太くんをからかわないで」
「うふふっ 身体が冷えてきたわね」
「そうね もういいの?」
「ええ、満足したわ ありがとう」
 (そんな・・・ 恵美さん・・・)
三人が立ち上がる気配、そして僕の後方へと移動していく
 (待ってくれ・・・ 少しだけ待ってくれ・・・)
今更寝返りうって目を開ける訳にはいかない

 誰でもいい、僕に「目を開けて」と一言だけでいいから声を掛けてくれ

そんな都合の良い願いは叶うはずがなく、どうやら三人とも浴衣を纏ってしまったようだ
最後の最後に僕の気を強く惹いた恵美さんが凛子さんに言葉を掛けた
「私達がこの部屋から出たら宗太さんに抱いてもらってね」
「どうして?」
「今は気分が昂ってるから大丈夫かもしれないけど、冷静になったら気まずくなると思うの」
「ええ・・・ そうかもしれないわね」
「今日の事は二人の良い思い出にした方がいいわ」
「そうね でもセックスは宗太くんの気分に任せてるから・・・」
「宗太さんも聞いてるから大丈夫 凛子さんが断らなければいいだけよ」
「ええ・・・」
 (なんか凛子さんの返事が不安そうな声だな 冷静になっちゃったのかな?)
引戸が開けられ閉まる音が聞こえ部屋は静かになった
恵美さんと加奈さんは部屋から出て行ったようだ


[19] 色は思案の外  最後のティッシュ :2017/08/31 (木) 23:36 ID:NJug8KXc No.24933
閉じていた目をゆっくり開けると部屋の明かりが眩しく感じた
体を起こし振り向くと、座卓の前で正座している凛子さんが目に映ったけど
最初の言葉がなかなか思い浮かばないし、凛子さんもうつむき加減で僕から目を逸らして黙っている
「セックスしようか」
「うん・・・ 体流してくるわね」
「うん、僕も」
あれこれ考えても仕方がない
真っ直ぐに凛子さんを誘うと、凛子さんは浴衣を脱ぎ始め僕も布団の上で裸になった
部屋に添え付けられたお風呂場は狭く、二人で入ると何とかシャワーで体を流せる程度の広さしかない
「これって、どう考えても一人用だよね」
「そうね」
「何か懐かしいな、結婚する前に住んでた部屋を思い出すよ」
「ええ」
「狭い風呂で二人で入ると思うように動けなくてさ」
「今みたいに宗太くんが無理やり入ってきてたんでしょ」
「ははっ まぁね 背中流すから向こう向いて」
「うん」
凛子さんは僕に背を向けた
シャワーのヘッドから出たお湯は凛子さんの背を流れ落ち
僕は薄い明かりの中で濡れて輝く背中を撫でた
「女同士って良かった?」
「ええ・・・」
「へー 寝たフリがバレてたんだから見ればよかったかな 損した気分だよ」
「もぉ・・・」
「ははっ 声聞いてるだけでも興奮しっぱなしだったからね」
「ふふっ」
「ん?」
「宗太くんの鼻息凄かったわよ」
「はは・・・ まぁ、あれは仕方ないよ」
「うん」
「やっぱり最後は二人に抱いて貰いたかった?」
「ん・・・」
「そうか」
「まだ何も・・・」
「いいよ、恵美さんが言ってただろ「女同士なら浮気じゃない」って」
「ええ・・・」
「ギリギリだけど、僕もそう思ってるから」
「うん・・・」
「また二人から誘われる事があったら凛子さんは思うようにすればいいよ」
「でも・・・」
「いいんだ、結婚した時に決めた事だから」
「え?なにを?」
「凛子さんに幸せになってもらうって 僕が勝手に思ってた事なんだけどね」
「宗太くん・・・」
「だから我慢しなくていいよ 僕の事は気にせずに、凛子さんは自分の気持ちに正直になればいいから」
「でも・・・」
「いいんだ、僕と結婚して仕事辞めちゃった事がずっと心に引っかかってたんだ」
「それは私が勝手に・・・」
「うん、僕も勝手に気にしてただけだから だから凛子さんが僕より自分の気持ちを優先できる事を見つけてくれると嬉しいんだけど」
「うん」
「それに、あれもご近所付き合いの一つと思えば・・・」
「うん、ありがとう 本当のこと言うと、あんな事経験してしまったら・・・」
「そうか・・・ そんなに良かったんだ・・・」
「ええ 私の愛撫が恵美さんと加奈さんを気持ち良くさせてると思うと凄く気分が良くて」
 (え?)
「それは・・・」
「男の人の気持ちいいって言う感覚は分からないけど でも、相手が女性なら」
「それは、抱かれるより抱く方が・・・」
「そうじゃないわ でも、されたい事をしてあげれるのは相手が女だからよ」
凛子さんが体をこっちに向けた
「思うように反応してくれて、まるで自分の身体を愛撫している様な不思議な感覚だったわ」
「そうか・・・」
「でも 自分でも分からないわ・・・ あの時が一番・・・」
 (ん?分からない?)
「二人に身体を押さえられながら下着を脱がされている時なの・・・」
「うん?」
彼女の腕が首に絡んできて唇が迫ってくる

「何故か分からないけど・・・凄く興奮していたの・・・」
「そうか・・・」

唇が触れ合う瞬間、僅かに香ってきた女のスケベな匂いが鼻に入ってきた
恵美さんと加奈さんを愛撫した残り香だろうか
いつになく積極的な凛子さんからのキスも手伝って僕は勃起させられ
お互いの下腹部を押し付け合いながら濃厚なキスを交わした

凛子さんの気持ちを考えて女同士の関係に理解ある態度を見せたけど、僕の本当の気持ちは違う
今まで築き上げてきた二人の関係に割って入ってきた二人の女を易々と容認できるはずがない

風呂場を出て布団が目の前に迫った時には、僕の気持ちは抑えが効かなくなっていて
凛子さんを押し倒すようにして二人で布団に倒れ込むと
少々雑になってしまった愛撫の後に僕らは繋がった
僕の怒張したチンポを易々と受け入れる程に凛子さんの膣は熱く濡れている
そして、彼女の身体に火を灯したのは僕の愛撫じゃない事も感じ取れている
今まで僕らの営みは、お互いの気持ちがセックスに向いた時から僕が前に立って進めてきたけど
腕の中にある凛子さんの身体をセックスができる状態まで導いたのは
僕の愛撫じゃなく彼女の中にある恵美さんと加奈さんへの気持ちだ
無力感から来る悔しいという気持ちなのか只の嫉妬からなのか
今までにない程に彼女の身体を強く抱きしめ、彼女の膣を犯すかのように乱暴に腰を打ち付けた
今まで一緒に積み上げてきた二人のセックスを壊してしまうような罪悪感の中
彼女を抱きしめる僕の腕には強く悶え身を捩る力があり、耳には初めて聞く大きな悦びの声が入ってきた

凛子さんの腕が僕の身体に強く抱き付いてくる
「あぁッ!宗太くんッ!」
「凛子さん・・・」
二人の女に奪われてしまった彼女の心と身体を取り戻そうと僕は必死だ
「凛子・・・」
凛子さんの喘ぎが止み、僕も腰の動きを止めた
「凛子」
もう一度彼女の名を呼ぶと、息苦しくなるほどの力で彼女の腕が僕を抱きしめてきて
腰の動きを止めた僕に懇願するかのように凛子さんは自ら腰を動かし始める
「あぁ 宗太さん・・・」
凛子さんの言葉で僕の心の隅に引っかかっていた何かが抜けた気がしたし
彼女も何か吹っ切れたようだ

凛子さんから求めてきた後背位でも、おねだりするように僕に向けたお尻を振り
騎上位で身体が自由になると、僕の上で快感を求めて一層激しく腰を振る
お互い本能を剥き出しにしたようなセックスは今までにないほどの興奮を覚え
僕は欲望のままに凛子さんの身体を貪り、何度も彼女の中に精液を注ぎ込んだ


目覚めると障子越しの朝日が部屋を照らしている
隣には昨夜の事が嘘だったかのように穏やかな寝顔の凛子さんが居て
体を起こし彼女の寝姿を見下ろすと愛撫の跡が残る胸が目に入り、はだけていた浴衣をそっと直した
凛子さんの顔に視線を戻すと彼女の目は薄く開いている
「あ、おはよう」
「うん・・・ おはよう・・・」
僕の目はハッキリと覚めているけど、凛子さんはまだ半分寝ているといった感じだ
「ごめん、起こした?」
「うん・・・」
彼女も体を起こしたけど、まだ生気のない仏頂面でボーっとしている
いつもと変わらない凛子さんの寝起き姿を見て僕は何となく安心した
凛子さんが伸びをして「う〜ん・・・」と唸った
どうやらハッキリと目が覚めたようだ
立ち上がり布団から出ると背筋を伸ばして真っ直ぐに立つ

「夢の様な一夜だったわ」

一言だけ言い残すと部屋に添え付けられている風呂場に向かい
いつもと違う雰囲気の凛子さんに引かれるように僕も立ち上がって彼女の後を追った

狭い脱衣所で裸になり歯ブラシを持って浴室に入ると
「もっと丁寧に磨きなさい」と叱られながらシャワーついでの歯磨きを済ませた
いつもと違う雰囲気を感じたかと思えば、いつもと変わりのない凛子さんだったり
僕の気持ちも凛子さんの様子に合わせて落ち着かない
彼女の身体にシャワーを当てながら乱暴な愛撫で付けてしまった跡を撫でた
「あ、こんな所にもキスマーク付いてるよ」
「宗太くんが付けたんでしょ」
「うん・・・ ごめん」
「ふふっ 別に謝らなくてもいいわよ」
 (そうなのか!?)
「でも、これじゃ大浴場には行けないし」
「そうね 今日は家族風呂を予約してあるんでしょ?」
「うん」
「後ろ向いて」
「うん」
凛子さんにシャワーのヘッドを渡して背を向けると背中を撫でられた
「これ痛くないの?」
「ん?どうかなってる?」
 (そういえば昨日は結構な力で背中を掴まれてたような・・・)
「痛くないのなら気にしなくていいわ」
「えっ 気になるよ」
「少し赤くなってるだけよ 気にしないで」
「ああ、それならいいけど」
 (本当の事言ってください 心配になるぐらいの跡が付いてるんじゃないんですか?)
「どうしてこんな所にキスマークが付いてるの?」
「え?どこ?」
「ここよ」
指先で首の裏辺りを撫でられた
「たぶん僕が休んでいる時に凛子さんに付けられた・・・」
「そう言われると何となく覚えがあるわね」
 (そうですよ 二回目が終わった後、寝転がって一息入れているところを僕は背後から襲われたんですよ)
「目立つ?」
「襟のある服を着れば大丈夫よ 気にしなくてもいいわ」
 (そうじゃなくて、キスマークの大きさとか・・・)

ひと眠りしたら僕らの関係は元に戻っていた
大広間での朝食では恵美さんと加奈さんの二人と顔を合わせたけど
凛子さんと二人は今までと変わらない様子で、昨夜は何も無かったかのように食事が進んでいく
僕はといえば、二人の顔を見れずに手に持った箸に神経を集中することしかできずにいる
料理の味なんて分からない、この三人が特別なのか女という生き物が男とは別種なのか
僕は変なプレッシャーの中で三人の様子に只々感心していた

 なんで平然としていられるんだ・・・ 昨日の夜は凄い事やっちゃってるんだぞ・・・


[20] 色は思案の外  最後のティッシュ :2017/08/31 (木) 23:38 ID:NJug8KXc No.24934
二日目の観光は予定通り、ネットで調べた食事処に入ったのも予定通り
昨夜の事がなかったら、僕はどんな気分で一日を過ごせていたのだろう

 嗚呼、昨日の夕食からやり直したい・・・

昨夜の事は無かったかのような、いつもと変わらない凛子さんの様子だけが救いだ

競馬で得た資金にものをいわせ、夕食後から最終まで借り切った家族風呂は檜風呂で浴室は思っていたよりも広く感じた
家の風呂では一緒に入っても身体を洗うのは各々になっていたけど、僕らはお互いの身体を洗い合い
身体を洗い合った後に入った湯船は、僕ら二人だけで入るには広すぎるような感じがする

 あの事を話しあうなら今しかない

「思ってたより広いね」
「そうね」
「子供ならあと二人ぐらい入っても大丈夫かな」
「ええ、そうね」
「まぁ・・・ そういう事も考えてたりするんだけど・・・」
「うん」
「あ、もしかすると昨日のセックスで出来たんじゃない?」
「どうかしら、今は妊娠し難い時期だから」
「そうか・・・」
この旅行で凛子さんと話し合いたかった事は短い会話で終わってしまったが
でも、凛子さんは僕から話を切り出す前から子作りの事は意識していた様子だった
そして、凛子さんの口から思ってもいなかった言葉が出てきた
「最近はお仕事頑張ってるみたいね」
「ん?そうかな?」
「ええ、前と比べると帰ってくる時間が早くなってるじゃない」
「それは「出来立ての料理を食べたかったら早く帰ってきなさい」って言われてるから・・・」
「ふふっ 当然よ、宗太くんに合わせて私の夕食の時間を変える気は無いわ」
「厳しいなぁ・・・」
そう答えたけど、凛子さんは僕と結婚して生活の全てを変えてくれたんだ
僕も少しぐらい変わらないと立つ瀬がない
「もっと頑張って、もっと早く帰れるようにするよ」
「頑張るのは良いけど無理しちゃダメよ」
「うん、テキトーに頑張る」
「ええ、力を抜いてる方が宗太くんらしいわ それでも仕事は出来ちゃうんだから」
 (お!もしかして褒められた?)
どうやら僕は褒められたようだ、嬉しいけど凛子さんが主任だった時に頼れる部下だと思われたかった事が心残りでもある

部屋に戻ると凛子さんが隣に腰を下ろした
風呂ではお互い裸同士でも性的な興奮はなかったけど
こうして浴衣越しに肩を着け合うと変に気分が昂ってくる なんだか不思議な感覚だね
「お願いがあるんだけど・・・」
「なあに?」
 (ああ・・・ 乗り気の時の凛子さんの返事だ ここでお願いしてもいいのか?機嫌を損ねないか?)
「ノーブラになって欲しいんだ・・・」
「急にどうしたの?」
「そういうシチュエーションが欲しいんだ」
「朝はパンティーも着けてなかったのよ 見てたでしょ」
「そうだったけど・・・」
「仕方ないわね いいわよ」
凛子さんが浴衣の襟に手を掛けた
どうやら僕の隣でブラジャーを外そうとしているようだが、それは僕の理想とは掛け離れた行為だ
「まって 僕から見えないところでノーブラになってきて」
「どこで脱いでも同じでしょ」
「ごめん でも、そこが大事なところなんだ」
「何が違うのよ」
「何って言われても・・・」
「もぉ・・・ 面倒ね」
凛子さんが立ち上がった 僕の要求を聞き入れてくれるようだ
 (お手数おかけしますが 宜しくお願いします・・・)

凛子さんは布団が敷いてある方へ向かい襖の陰に隠れた
ほんの数秒だったと思う、僕は葛藤した

 ノーブラだけでいいのか?
 今の凛子さんなら何を頼んでも聞き入れてくれるかもしれない
 でも、ここで機嫌を損ねたら・・・

「あの・・・ もう一つお願いしてもいいですか?」
「だめよ、どうせロクな事じゃないんでしょ」
「はい・・・」
「もぉ 言ってみて」
「だけど・・・」
「聞こえなかった?言いなさい」
「はい・・・ ノーパンなんですけど・・・」
「改まって何かと思ったら お願いって、そんな事?」
「はい・・・」
「それを言うのに、何をためらってたのよ」
「はい・・・ すいません・・・」
「いいわよ」
「えっ!」
「ブラジャーを外すより簡単だわ」
 (あ、そういう事か・・・)
襖の陰から凛子さんが姿を現した
相変わらず綺麗な立ち姿だけど、浴衣の下には何も身に着けていないと思うと一味違って見える
「これでいいの?」
「うん、どんな感じ?」
「んー・・・ 変な感じ・・・」
下着を脱ぎたてで意識しているのか所作も声も艶っぽく感じる
再び僕の隣に腰を下ろした凛子さんが少し長めの息を静かに吐いた
「女同士ってどうだった?」
「え?」
「昨日の事」
「話したでしょ・・・」
「良かったとかそういう事じゃなくて、僕とどう違ったのかなと思って」
「うん・・・ それは・・・」
「僕のどこが物足らないのか教えて欲しいんだけど」
「ごめんなさい、あれは・・・」
「あ、いや いいんだ、凛子さんからこういう事話してくれないから良い機会だと思って」
「うん・・・」
「僕は凛子さんとのセックスに満足してるけど、凛子さんがどう感じているのかを知りたいんだ」
「うん」
「凛子さんに満足してもらうセックスが僕にとって良いセックスだからね」
「うん」
「この先、僕ができる事で凛子さんの為になる事なら遠慮しなくていいよ」
「うん 言っていい?」
「あ、柔らかいオッパイとか無理だから僕ができる範囲で」
「ふふっ オッパイが欲しくなったら恵美さんか加奈さんにお願いするわ」
「はは・・・ それで?」
「先ず一つ目は愛撫よ」
「うん」
 (先ず?一つ目?)
「一つ一つにもう少し時間をかけて欲しいの 良くなってきたと思ったら別のところに行っちゃうから気持ちが追い付かないのよ」
「うん・・・」
 (ハッキリ言うね・・・ そういえば最近はチョット雑になってたかな したい事が多いから・・・)
「それに、変わった事をする時は先に言って いきなり綿棒をお尻に入れられてもビックリしただけだったわ」
「はい・・・」
「アイマスクを着けてたから何されてるのか分からなくて怖いだけだったのよ」
「ごめん・・・」
 (その事に関しては既に小一時間説教されてますけど・・・ しかも、旅行の話をした日だから何週間か前の事ですよね・・・)
「それと、気が乗らない日もあるの、分かってくれてるの?」
「うん・・・」
「そういう時は少し考えて 我慢するか上手に誘って私をその気にさせて」
「はい・・・」
 (難しいな・・・)
「それと」
「うん・・・」
 (まだ何かあるのか・・・)
「昨日のセックスは良かったわ」
「え?」
「初めて宗太くんに抱かれた時の事を思いだしちゃった」
「ああ・・・ あの時は夢中で・・・」
「そうね、宗太くんの気持ちが凄く伝わってきたわ」
「ふ〜ん、あんな感じがいいのか」
「ええ、愛撫が良ければ満点だったわよ」
 (凛子さんの好みは愛撫に時間をかけて・・・ 昨日のセックスか・・・難しいな・・・)
「よし、今日は満点目指してみるか」
「ふふっ 私の採点は厳しいわよ」
「はは・・・」
 (本当に厳しそうだ・・・)

せっかく凛子さんに下着を脱いでもらったというのにエロい雰囲気は吹っ飛んだ 
でも、こういう雰囲気で始めるのもいいかもしれない
ちょっとエロい話をしながら触り合ったり軽くキスをしたり、僕らは座布団の上でイチャついた
これは僕が恋焦がれていた二人の関係で、彼女もこの状況を楽しんでいるみたいだけど
毎回この状態になるとは限らない事はわかっているんだ
今までも凛子さんが僕に甘えてきているような雰囲気になった事は何度もあったけど
それは偶然の産物で、僕が意識して凛子さんをその気にさせたわけじゃない
彼女の怒りのツボは大体わかってるけど、甘えのツボはサッパリわからないんだよね
今日なんて叱られてたかと思えばイチャイチャできちゃったし 難しいよ

僕らは部屋の明かりを落とし、枕元の行燈の明かりだけになった布団の上に横になった
薄暗い布団の上で凛子さんの表情はよく見えているけど
それよりも僕の股間の上に置かれた、初めてとも言える積極的な凛子さんの手に気が行ってしまっている
「宗太さん・・・」
耳に入ってきた声は幻聴じゃない、目の前の少し開いた唇から出てきた言葉だ
昨夜にタイムスリップしたような感覚に襲われたが、満点を取る為には焦ってはいけない
彼女の胸元に手を置き、浴衣の襟の下へ手を入れると直ぐに指先が乳房に触れた
乳首を探そうと更に奥へ手を入れようとすると、凛子さんの手が僕の手を押さえてくる
彼女の顔に目を移すと物欲しそうな視線を向けてきていて
いつもとは違う雰囲気で興奮気味になっている僕の気持ちに油を注いでくる
しかし独り善がりになってはいけない、冷静になって凛子さんが求めている物を突き止めなければ・・・
「宗太さん」
また名前を呼ばれた
「凛子」
僕の手を押さえていた彼女の手が緩み、はだけた浴衣の下で僕の指先は乳首に辿り着いた
どうやら布団に横になる時、僕が愛撫しやすくなるように着崩してくれていたようだ
いつでも僕より一つ先を見据えている
そんな彼女には敵わないと思ったけど、その彼女の気持ちが凄く心地良く変に興奮してきた
「ごめん・・・」
「どうしたの?」
「満点は家に帰ってから目指す事にした・・・」
「え?今日は?」
「凛子・・・」
「あっ ちょっと 宗太さんっ」
「凛子!」
彼女の名を強く口にした後、少々乱暴になってしまったが彼女の浴衣を脱がせ思いのままに体を貪った
唇から足の先まで僕の愛撫を刻み込むかのように舌を這わせ
繋がった後は欲するままに快感を求めて腰を動かした
一度目の射精で冷静になった僕の耳に届いたのは「75点」という意外にも高い点数だったけど

 (まさか、本当に点を付けられるとは・・・)

この時、改めて凛子さんは何事にも本気で取り組む真面目な女性だという事を確認できた
そして、採点を変に意識してしまい二度目のセックスでは55点と点数を落とし
深く反省しながら二人でシャワーを浴びる事になったが

 しまった、「アイマスク」というワードが出てたのに
 叱られてる途中だったから思い出す余裕がなかった・・・
 アレを使っていれば高得点も・・・

カバンに忍ばせたアイマスクの事を思いだしたが、時すでに遅しで55点という点を付けられた僕には3戦目に挑む気力は無かった

色々あった新婚旅行も最終日の予定は家に帰るだけ
恵美さんと加奈さんの二人と一緒に帰宅の路についたが、相変わらず凛子さんを含めた三人は仲が良い
あんな事があった後なのに今までと変わらない様子が妙な妄想を掻き立てる
電車を待つ駅のホームで、そんな状態の僕に恵美さんが接近してきた
彼女が僕に気があると耳にしてから変に意識してしまい顔を合わせられないままでいたが
「75点と55点は厳しいですよね」
「えっ!」
思わず彼女の方に顔を向けてしまった
 (凛子さん・・・ なんで話しちゃったんですか・・・)
「私なら抱いてもらえるだけで100点つけてしまいそう」
「はは・・・」
「どうです?100点欲しくありませんか?」
「あ、いや・・・」
 (「どうです?」ってどういう意味なんだ・・・凛子さんの目の前でそんな事・・・ 本気か?冗談か?)
「恵美さん駄目よ 宗太くんをからかわないで、困ってるじゃない」
「うふふっ」
 (そうだよね、僕はからかわれてたんだよね・・・ 早く家に帰って凛子さんと二人きりになりたい・・・)
近所では評判の恵美さんの癒しの笑顔も僕からすれば悪魔の微笑みに見え
僕を守ってくれる凛子さんの存在が守護神のようで頼もしく思える

そういえば凛子さんが上司だった頃、僕は彼女の事を仁王と揶揄したことがあったけど
あながち間違いじゃなかったようだね、凛子さんは口を開けている阿形像といったところかな
それなら仁王像にあやかって僕ら夫婦も阿吽の仲になりたいものだ


[21] Re: 色は思案の外  abu :2017/09/01 (金) 17:19 ID:b4Zqa20o No.24939
投稿された当初から嵌ってしまってます。
女性3人に翻弄される宗太くんの心中にワクワク。
最後のティッシュ様、宗太くんのキャラ、まだまだ拡がりそうですね。
次回の投稿を楽しみにお待ちしております。


[22] Re: 色は思案の外  最後のティッシュ :2017/09/01 (金) 20:56 ID:0QHao0Cw No.24940
レスありがとうございます

書き溜めていたものは今回で全て投稿しましたので
次の投稿は少し先になりますが気長に待っていただければ幸いです


[23] Re: 色は思案の外  ふぐり太 :2017/09/04 (月) 21:11 ID:.sxJyrH. No.24953
レズ3Pの隣で寝たふりは生殺しですねw
宗太くんと凛子さんに二人の奥様の関係はどうなっていくのか楽しみです
続きを気長に待ってます

[24] 色は思案の外  最後のティッシュ :2017/09/15 (金) 06:28 ID:5quT9j0o No.24989
今の僕は仕事の鬼だ
恐らくは「伝説の吉田主任」を彷彿とさせる仕事っぷりのはずだ
あの悪夢のような新婚旅行から三日経ったが、凛子さんに変わった様子は無い
いってらっしゃいのキスぐらいあるかと期待したけど、その気配も全くない・・・
でも、その今まで通りの凛子さんが僕を安心させてくれている
だからこそ週末は確実に休みを確保しなければならない
凛子さんは平日はパートに出て家を空けるので心配する事は無いけど、問題は土曜と日曜なんだよね
料理教室の予定が入ることもあるけど丸一日じゃないし
時間を見てジムに通ってるみたいだけど
そんなフレックスな時間の使い方をしていれば、あの二人に付け入るスキを与えてしまう
あの二人と言うのは恵美さんと加奈さんの事だ
新婚旅行の初夜、凛子さんは僕らの部屋で二人に襲われ身体を弄ばれた
しかも、凛子さんも満更じゃない様子だったし・・・
その事を思い出すと、もう心配で心配で堪らない

 僕は可能な限りの時間を凛子さんと一緒に過ごして彼女を守らなければならない

「おう、何か悪いものでも食ったか」
仕事と競馬の師匠である如月部長が邪魔しにやってきた
「何ですかそれ、返事に困るじゃないですか」
「旅行から帰ってきて様子が変わったから何かあったのかと思ってな」
「まぁ、ちょっとした心境の変化ですね」
「お、何かあったんだな 何があった?もしかして父親になるのか?」
「いやぁ 子供はまだですけど、そういう話も」
「おお、そうか あの「吉田主任」の血統なら良く走りそうだな はっはっは」
 (また競馬の話しか、乗りたいけど・・・ 我慢・・・)
「気性が荒くて去勢されて、クラシックにも天皇賞にも出られなくなりそうですけどね」
「はっはっは ヨシダ産駒の宿命だな」
 (乗ってしまった・・・)
「仕事があるので、もう邪魔しないでくださいよ」
「おっ、真面目だな 三日坊主で終わるなよ」
 (真面目って・・・ 何てこと言うんだよ、あんた部長だろ)

いまのところ仕事の邪魔をしてくるのは師匠ぐらいだ
僕は今まで通りの業務をこなしているけど、他の多くの人は忙しそうに動き回っている
ウチの会社は大手商業施設の内装を受注したのだ
前から進められてきた事だけど、僕が旅行に行く前辺りから本格的に動き始めていた
同期の村上は勿論、後輩の二人まで駆り出されている事もあり
その他の色々の仕事はほとんどと言っていいほど僕に回ってくる
メンバーに選ばれた人達は、自分の顧客の仕事もこなしながらということでプロジェクト一本という事はないんだけど
やっぱり大きな仕事の方が優先になって、溢れた仕事が僕に回ってきちゃうんだよね

 (はぁ・・・ なんで、このタイミングなんだよ やってもやっても仕事が増える一方じゃないか・・・)

プロジェクトを仕切るリーダーは、後輩だった凛子さんに出世街道から弾き飛ばされたという過去を持つ高岡さんだ
「おい、西岡 今直ぐ森田さんのところに行って来い」
「はい」
 (おお、高岡さん張り切ってるな それより西岡、森田さんに何の用があるのかぐらい聞けよ・・・)
森田さんはウチの会社の設計(正式名称はデザイナー)の主任で行けば何の用なのか分かるんだろうけど
用事を頼む方も頼まれる方も、声の威勢以外は何所となく頼りないし
高岡さんの補佐的な役割で選ばれたはずの佐々木さんも、どことなく自分が持つ顧客を優先しているように見える

 あんた等は凛子さんの何を見ていたんだ そのうち事故るぞ・・・

凛子さんが会社を辞め「吉田主任」という大きな柱を失ってから一年経ち、ウチの部署の新体制がスタートしてからも一年経ったが
やはり凛子さんの存在は大きかったようだ
新体制になってから初めてとなる大きなプロジェクトと頼りないメンバーに僕は少々の不安を募らせていた
だが、そっちを気にしている暇は僕には無さそうだ

「野上、これも頼みたいんだがイケるか?」
「はい、いいですよ」
僕に追加の仕事を持ってきたのは主任の上島さんだ
凛子さんの後任は高岡さんだという噂があっただけに意外な人事だった
上島さんは高岡さんより二つ先輩だけど、年功序列みたいな安直な考えで上島さんが主任に選ばれたとは思いたくない
「結構抱えてるようだけど、無理なら伊藤に回してもいいんだぞ」
「いえ、何とかなります 伊藤も忙しそうだし」
「そうか、それなら頼む」
「はい」
「野上も来年は地獄の一年になりそうだな だが、無理はするなよ」
「はい」
 (それはお互い様ですよ 一緒に頑張りましょう)
「どうにもならなくなる前に部長に相談するから、気負わなくていいからな」
「はい こういうのは初めてじゃないんで、死なない程度に頑張ります」
上島さんも主任の業務をこなしながら、僕と同様にプロジェクトに参加した人達を下から支えている
似たような境遇だからなのか、何となく強い仲間意識ってのを感じちゃうんだよね
そして何より、真面目で仕事熱心なところは凛子さんと同じだけど一言の優しさが別格なんだ
上島さんに頼まれると、ついつい快く引き受けてしまう

 凛子さんは「やっときなさい」の一言でしたよ

「上島くん、ちょっと」
主任が部長に呼ばれた
たぶん僕が邪険にしたからだろう、寂しくなった師匠は優しい主任に構ってほしくなったに違いない
凛子さんが主任だった頃と比べると師匠の無駄口が3倍ぐらいに増えている、現金な人だ
 (上島さんも忙しいのに迷惑な人だよ・・・)
「如月」なんてカッコいい名前なのに勿体ない、完全に名前負けしてるよね

 さて、さっき上島さんから頼まれた照明器具の件は事務に回せばOK 半分終わったようなものだ
 こっちの仕様変更の件は暇そうな師匠に出陣してもらおう 元々は村上の物件だから誰が行っても同じだ
 この二件の改装は面倒だからハナから設計を巻き込んで丸投げだな 後はザックリ見積りでOK
 おっと、改装はもう一件あったか 工期の日程はズレてるから三件ぐらい丸投げしても大丈夫だろう
 よし、田川さんの打ち合わせに行く前に設計の誰かに唾付けとくか 後は工事部の方にもそれとなく

 (主任、山盛りの仕事でも何でもお任せあれ これが人任せが本領の如月イズムの真骨頂ですよ)

その前に・・・
「主任、次の田川さんの店なんですけど社外のデザイナーに頼んでもいいですか?」
「ああ、いいぞ」
「じゃぁ、それで進めますね」
 (よし!これで社内の設計一人ぐらいは確保できるはず しかし、田川さんは三店舗目か、なかなかのやり手だね)
上島さんとの会話を僕に断たれた師匠は恨めしそうにこっちを見ているが、無視だ
僕はこれから設計の主任に文句や愚痴を言われながらも一人は確実に確保しに行かねばならない



いつになく気疲れした一日
設計主任の森田さんには渋い顔されるし
 (まぁ、あの人が文句から入るのはいつもの事だけど・・・)
営業事務の竹田さんにはムスっとした顔されるし
 (僕は君の先輩だぞ、嘘でもいいから笑顔で引き受けてくれよ・・・)
同期の村上や後輩の伊藤と西岡からは色々と愚痴を聞かされた
 (大丈夫なのか?あのプロジェクトチームは・・・ 上島さんも色々と気苦労してるんだろうな・・・)

しかし、今日も何とか乗り切った
設計一人を確保できたし、仕事を振った師匠も案外乗り気だった
「ぼったくりゴールデンコンビの復活だな」なんて笑いながら人聞きの悪い事言ってたけど
そのコンビの片割れを育てたのは貴方ですよ・・・
でも、師匠の笑顔は愛嬌があって忙しい時には気持ちが救われる事もあるんだよね


今日も一日頑張った
凛子さんの笑顔で疲れをリセットしたくて家路についた足が自然と速くなる
「ただいま」
「おかえりなさい」
 (声が少し弾んでいる、今日も機嫌が良いみたいだな)
「荷物届いた?」
「まだよ、注文から四日ほどって書いてあったから明日じゃないの?」
「そうか・・・」
 (なんだよ・・・ 前は三日で送ってきただろ、それで凛子さんとちょっと揉めたんだぞ・・・)
「そんなに待ち遠しいの?」
「うん、凛子さんも楽しみにしてるだろ?」
「さぁ、どうかしら 早く着替えてきて」
「うん」
荷物と言うのはネットで買った大人のオモチャの事だ
前回は凛子さんに内緒で買ったけど、今回は旅行から帰ってきた日に二人で選んで注文した
アイマスクにディルドと枷は買えて、ベビードールとバイブは却下されたけど強く説得すれば押し切れたかもしれない

 まぁ、今は少しずつでいいか
 後々は寝室がアダルトな夢の国になる程・・・
 (ああ!ローション買い忘れてる・・・ あれは凛子さんのアナルを弄る為に・・・)

「どうしたの?早く着替えてきなさい」
「うん・・・」
 (まぁいいか、笑顔じゃないけど機嫌のいい凛子さんに癒してもらったし それに、この後は・・・)
服を着替えてレンジで温め直された料理が並ぶテーブルに着くと
リビングでは凛子さんがヨガを始める準備をしている
残業で夫婦揃っての夕食は逃してしまったけど、こっちには間に合った
「早く食べてお風呂に入って」
「うん」
 (わかってる、「早く食べて」と言うのは早食いじゃなく他に気を向けずにって事だよね でも無理だよ)
「食べ終わったら、お皿はお弁当箱と一緒に流しに持って行ってね」
「うん」
 (わかってる、いつも言われてるからね それより早くヨガを)
凛子さんがヨガマットの上に腰を下ろした、ディナーショーの始まりだ
長身で高いレベルのプロポーションは立ち姿だけでも見応えがあるが
身体を反らした時に浮かび上がる胸の膨らみ 美しい
四つん這いになってお尻を上げるポーズ エロい
それに、温め直された料理も美味しい 幸せだ

 何なんだろう、「美人は三日で飽きる」という言葉があるけど全然飽きない
 それどころか、凛子さんと一緒に過ごした時間は愛となってそのまま上積みされていく
 やはり、容姿よりも 野上凛子 という性格も全て含めた一人の女性を愛しているからだろうか
 このままいくと、後三年ほどで僕の頭は変になるんじゃないのかと心配になる程なんだよね
 僕はどこまで彼女に惚れ込んでいるんだ、自分で自分の事が怖くなるよ

今日も凛子さんに元気を貰った、明日もがんばれそうだ

風呂から上がるとリビングには凛子さんの姿は無かった、ヨガマットも片付けられている
そして、遠くから愛する妻の声が聞こえてきた
「宗太くん、お風呂から上がったんでしょ!こっちに来なさい!」
「はい!」
 (しまった・・・ ローションの買い忘れに気付いて肝心な事忘れてた・・・)
僕は呼びつけられ凛子さんの声がする方へ向かった
「いつも言ってるわよね、服を脱ぐ前にポケットの中の物は出しなさいって」
「はい・・・」
「それに脱ぎ散らかさないで」
「はい・・・」
貰った元気は半分失ったが、これは僕が悪い・・・
上着のポケットに入っている物を出しながら風呂に向かう凛子さんを見送った

リビングに戻るとテーブルの上に僕の湯飲みが置いてあるのが目に入る
どうやら凛子さんはお風呂に入る前にお茶を用意してくれていたようだ

 よし!今夜も凛子さんを抱いてやる!

ちょっとした心遣いを感じただけで元気が出てしまうんだ
自分がこんなにも単純な男だとは思ってなかったよ
いや、凛子さんと付き合い始めた頃から少しずつ変わってきてたのかな
今では自分でも驚くほどに簡単に元気を貰える体質になっている

 明日も頑張ろう、週末も仕事になりそうだけど・・・


[25] 色は思案の外  最後のティッシュ :2017/09/15 (金) 06:29 ID:5quT9j0o No.24990
日曜の朝、僕は凛子さんに見送られて家を出た 今日も仕事だ
一緒に暮らし始めた頃と変わりの無い「いつもの凛子さん」が余計に僕の後ろ髪を引く
いや、凛子さんは出会った頃から何も変わっていないんだ
大人のオモチャが入っている箱は未だ開封しないまま置いてあるが、それは気にするほどの事ではない
昨日の凛子さんはホームセンターのパートは無く料理教室の予定も無かった
家事を済ませた後はジムに行ったと言っていたが、その言葉が嘘でも真でも僕は信じると決めている
仕事から帰った時に見た凛子さんは少々お疲れ気味のようだったけど
それはジムで汗を流したからなのか、もしかして僕が留守している間に恵美さんと加奈さんに・・・

 でも、それでもいいんだ
 あの出来事から一週間経ち、僕は決めた
 毎日のように凛子さんを抱きながら心に決めた事
 それは、凛子さんが幸せな時間を過ごせるなら「それでもいい」って決めたんだ

だから僕の心の中に鉛の塊のように存在する重い気持ちは、その事じゃないんだ・・・

去年まで凛子さんは会社が指定した健康診断を受診していたけど
今年は夏の終わり頃に個人で受診しに行っていた
一緒に仕事をしていた時は気にする事は無かったし、見せびらかすような物でもないので
今までそれを目にする事は無かった
しかし、昨夜の事だ
僕は凛子さんを驚かせようと、アダルトショップで購入したアナルプラグの隠し場所を探していた時だった
ある程度見つかり易い場所をと思いながら何気なく開けた引き出し、その中に病院の名前が入った封筒が置いてあった
宛名は「野上 凛子様」気が咎めたが好奇心が勝り封筒の中身を引き出すと、思った通り健康診断の検査結果らしい書類が出てきたが
僕はその検査結果に一通り目を通すとそっと元に戻し、手に握っていたアナルプラグは自分の部屋に持って上がった
二階に与えられた僕の部屋は質素で、机と椅子、そこにパソコンとオグリキャップのぬいぐるみが置いてあるだけだ
オグリキャップの隣にアナルプラグを置いて椅子に座り、出会ってから今までの凛子さんの姿を出来る限り思い出すと
そのときの言葉では言い表せない気持ちを質素な空間が余計に締め付けてきて
僕は凛子さんとの思い出の中で時間を忘れた

家を出てから駅まではいつもの通勤路だが今朝は違って見える 日曜日だからではない
吐く息は白く、冬と言われる季節なのに空気の冷たさを感じない
不用意に見てしまった無情な現実が書かれていたあの紙切れがそうさせるんだ

 多少の高目低目はあっても検査値を正常内の数値に収めている辺りは流石です 見事な検査結果でした
 しかし!
 身長が177cm!? 凛子さん!175cmじゃなかったんですか!?
 ずっと身長は僕と同じだと思ってたんですよ! 凛子さんも、そう言ってましたよね!
 なんで嘘ついてたんですか! その2cmは大きな2cmですよ!!

家を出るまで顔を合わせていたけど真相を聞き出す勇気は出なかった
でも、不思議と凛子さんから離れると早く家に帰って話を聞きたいという気持ちになるだよね
日曜出勤でも僕は仕事の鬼になっている
プロジェクトチームの方はトラブルがあったらしくバタバタしているけど
そっちを気にしている暇は無い、早く仕事を終わらせて家に帰りたいからね

「おう、張り切ってるな」
僕に声を掛けてきたのは普段着の師匠だ、片手には競馬新聞を握っている
どうやら競馬に行く前に会社を覗きに来たらしい
「外に出てばっかりだったんで色々と溜まってるんですよ」
「はっはっは 大変だな」
 (他人事みたいに・・・)
「ところで、お願いした追加の見積りは?」
「あれは来週末まででいいだろ」
「はい お願いしますよ、後がつかえてきてるんですから」
「わかってるわかってる、俺の差し脚をナメるなよ」
 (また競馬の話しか・・・ 我慢・・・)
「最後の直線、期待してますよ」
 (ちょっとだけ乗ってしまった・・・)
「おう、まかせとけ」
普段は「暇そうなオッサン」だけど、師匠の「まかせとけ」は頼りになるんだよね

 普段から頼れる部長になってくださいよ・・・

「今日はあっちの方を見に来たんじゃないんですか?」
「そうだそうだ お祭り騒ぎを見に来たんだったな」
 (あんた部長失格だよ・・・)
「早くあっちに行ってあげてくださいよ」
「いいんだよ、建屋の吹き抜けの部分が違うとかなんかだろ」
「そうらしいですね」
「違うっていうより間違ったんじゃねぇのか?検討段階の資料でデザイナーに依頼してたとかよ」
「ははっ そんな間違い聞いた事ありませんよ」
「そうだな、建屋の方が勝手に図面変えたりとかはあったけどな 一服するか?」
「部長のおごりなら付き合いますよ、独りで一服は寂しいでしょ?」
「まったく・・・ よくできた弟子だよ、おまえは」
「ありがとうございます」

本当に師匠はコーヒーをおごってくれた
しかも、自販機のコーヒーじゃなく会社の近くにある喫茶店のコーヒーだ
そして、師匠はちょっとご機嫌斜めのようだ
「しかし、情け無ぇな あの程度の事で慌てやがって」
「中々の大事ですよ・・・」
「お前も覚悟しといた方がいいぞ」
「何がです?」
「あの調子じゃ、どんどん仕事が回ってくるぞ」
「ん〜・・・ それは勘弁ですね、もう一人ずつ僕と上島さんが要りますよ」
「だよな、あと二・三ヶ月もすれば落ち着くと思うんだけどな・・・」
 (お、一応は気にしてるんだな)
「まぁ、今日のところは競馬で気分転換してきてくださいよ」
「おう・・・ お前は悩みが無さそうでいいな」
「そんな事ないですよ・・・」
「ん?何かあるのか?」
「ええ、まぁ・・・」
「どうした?」
「師匠は奥さんに嘘つかれたり隠し事されたりした事ありますか?」
「ああ、俺に内緒でエステに通ってる・・・ 割と高いやつだ」
「え?あの奥さんが?」
「ああ、ずっと息子の学費だと思わされてたよ 俺はそういう事に疎いからな」
「そんな事が・・・」
「だけどな、俺はその事を知ってからも知らない振りをしている 怒る程の事じゃないからな」
「そんな・・・ 男前過ぎますよ」
「はっはっは、愛しのノリちゃんがついているカワイイ嘘だ 俺は嘘ごとノリちゃんを愛しいてる」
「師匠・・・」
この人が僕に教えてくれた事は仕事と競馬だけじゃない、愛妻家の生き様を教えてくれた
 (師匠!どこまでも付いていきます!)
「お前の方は?今の話しからすると・・・」
「ええ、凛子さんの事で悩んでて」
「おいおい、そんな話は聞きたくないぞ お前は我が社のヒーローなんだ、あの猛獣のような女を娶った英雄だろ」
 (おい!こら!自分の嫁の事は「愛しのノリちゃん」とか言いながら僕の嫁を猛獣って何だよ!)
「話しを聞いてくださいよ!」
「おっ、おぉ・・・」
「師匠は凛子さんの身長を知ってますか?」
「身長?いや、背は高いなとは思っていたが・・・」
「僕は175pって聞いていたんです」
「おお、それで?」
「実は177pだったんですよ・・・」
「それがどうかしたのか?」
「僕よりも背が高かったんです ずっと身長は僕と同じだと思ってたのにですよ」
「それで?」
「いや、それでって言われても・・・」
「その事を知ってお前の嫁は何か変わったのか?」
「いえ・・・」
「変わったのはお前の気持ちだけだ」
「師匠・・・」
師匠は僕を諭してくれた、凛子さんは何も変わっていない
出会った時から彼女は177pだったはずだ

 僕はバカだ、凛子さんは何も変わってないじゃないか
 僕は177pの凛子さんを好きになって、177pの凛子さんと結婚したんだ
 そして、177pの凛子さんを愛している

「おっ、良い顔つきになってきたな 今日のメインレース、お使い頼まれてやろうか?」
「はい!お願いします!」
会社のトラブルはそっちのけで師匠と競馬の話しで盛り上がった

 順当なら本命のAからCHKの流しってところか
 いや、AHを軸にフォーメーションを・・・ しかし

「決めました、馬単でFHを折り返しで」
「おっ!一番人気を外して、その二頭だけで勝負する気か?」
「はい」
「のってるやつは強気だな で、いくらいく?」
「5千円で」
「折り返して1万か 勝負に出たな」
「はい」
「当たったら馬券はどうする?」
「明日の朝まで預かっといてください」
「わかった」
師匠に一万円を渡したけど、実はレースの予想なんてほとんどしてなかったんだよね
話が出た時から買ってきてもらう馬券は決めていたんだ
7月9日は凛子さんの誕生日で9月7日は僕の誕生日
凛子さんに対する謝罪ってわけじゃないけど、そんな買い方もしてみたくなった

 早く帰って凛子さんの顔を見たい、声を聞きたい

結局、師匠に仕事を邪魔されてしまった事に気付いたのは、席を離れる前と変わらない机の上を見た時だった
だが、今日は昼まで仕事をして弁当を食べてから帰るつもりだったので、2時ぐらいには会社を出る事ができるはずだ
2時半ぐらいには家に着き、凛子さんがジムに行っていなければ一緒に例の荷物を開封して・・・



 (そろそろメインレースの出走か、師匠は勝ってるのかな?)
そんな事を考えながら玄関のドアを開けたのは予定より少し遅れた3時半頃だった
ふと見下ろしたときに目に入ったのは一足の女物の靴だ
 (これは見覚えがある・・・ 確か恵美さんの・・・)
僕はそっと玄関のドアを閉め、息を殺しながら靴を脱いだ
静まりかえった家の中、リビングの方からはお喋りの声は聞こえてこない
靴を脱いだ僕の足は廊下の上にあるが迷っている

 このまま奥に入って行っていいのか
 一旦外に出て公園にでも行って時間を潰した方がいいのか

頭は迷っているのに足が勝手に短い廊下を進んでいく
リビングの前に着いたけどドアの向こうからは何の気配も感じられないし
その前に僕はリビングから人の気配を感じ取ろうとはしていなかった
そこに辿り着く前に目に入った寝室のドア、それが少し開いている事に気付いたからだ
生活動線を重視した間取りで寝室は目の前にある

 凛子さんがドアを締め切らないまま放っておくはずがない
 あのドアを閉めようとしたのは凛子さん以外の誰か 恵美さんしかいない
 そして凛子さんの身には半開きのドアに気付かないほどの事態が・・・

僕は耳に神経を集中させた

「うぅ・・・」
ドアの向こうから微かに声が聞こえてくる
しかし、その声は僕が予想していた喘ぎのような声ではなく苦しんでいる声に聞こえる
 (なんだ・・・ 何が起こってるんだ・・・)
「う・・・ ぐ・・・」
 (どっちの声だ?凛子さんじゃないような気がするけど、恵美さんのこんな声は聞いたことが無いし・・・)
「落ち着いて・・・ はぁ・・・ お願い・・・」
 (あ、やっぱり恵美さんだ)
「苦しい・・・」
 (え!?なんだ!? まさか・・・サスペンスドラマのような展開になってるんじゃないだろうな・・・)
ドアの向こうから声が聞こえなくなった

新婚旅行の時に恵美さんは僕に色目を使ってきていた しかも凛子さんの目の前で・・・
僕の頭に過ぎったまんまの状況なら、体格と力の差からワンサイドゲームで凛子さんの圧勝となっているはず

 先ずは確認だ、最悪の事態になっていなければいいが
 でも凛子さん、長い間離ればなれになる事になっても僕の愛は変わらないからね!


[26] 色は思案の外  最後のティッシュ :2017/09/15 (金) 06:31 ID:5quT9j0o No.24991
僕は駅に向かって歩いている
一度は帰宅したが、そっと家を出て30分前に歩いた道を逆方向に向かって歩いている
冬と言われる季節だが空気の冷たさを感じない
不用意に見てしまった衝撃的な光景がそうさせるんだ

駅前の喫茶店に入り窓際の席に腰を下ろすと、とりあえず温かいミルクティーを注文した
そんなお洒落な物を喫茶店で注文するなんて初めての事だったけど、ほんのり甘味のあるものを口にしたい気分だったんだ

 師匠、僕の心を救ってください・・・


寝室から聞こえてきた恵美さんの苦しそうな声
それが止んだ時、僕は心配になって思わず少し開いたドアから寝室を覗いてしまった

先ず僕が認識できたのはベッドの上の裸体、それはよく見知った凛子さんの裸体だった
凛子さんは何かに覆い被さり抱き付いている
彼女の長い脚が絡んでいるのは色白の脚で、絡みついている凛子さんの脚が長いからだろうか
その色白で綺麗な脚は子供の足の様にも見え可愛く見える
白い足の先は僅かな自由の中で悶え、絡みつく凛子さんの脚から逃れようとしているかのようにも見えたが
しかし、その抵抗は無駄な抵抗だ 見て分かる
拘束を逃れた一本の手が凛子さんの身体を下から押し戻そうとしているようだが、それも無駄な抵抗だ 見て分かる
凛子さんの手に頭を押さえられキスされているのは、顔を確認することはできないが恵美さんだろう
なんとか凛子さんから逃れようとしている雰囲気は伝わってくるが、それは無駄な抵抗だという事は僕がよく知っている

恵美さんに抱き付く凛子さんの身体には、美しく鍛えられた筋肉が隆起していて力の入り具合が見て取れる
特別に身体を鍛えている女性でない限り、その力から逃れる事は出来ないだろう

 その美しい身体に秘められた、女性とは思えない怪力とも言える力を僕は身をもって知ったことがあるんだ

二人の顔が離れた
確認できた恵美さんの顔は目を潤ませ半泣きになっているかのようにも見えたが、少し遠目だったので見間違いだったのかもしれない
抵抗する恵美さんの手をものともせずに再び身体を密着させた凛子さんは、恵美さんの首筋に顔を埋めた
僕の位置からは凛子さんの表情を確認する事は出来ないけど 僕は知っている
「うっ・・・ もぅ・・・ いいでしょ・・・ 離して・・・」
 (あのときの凛子さんだ・・・ 恵美さん、何を言っても無駄ですよ 凛子さんは欲しがっているんです)

僕の目に映っている凛子さん それは、新婚旅行のあの夜
セックスを終え一息入れている僕に上気した表情で襲いかかってきたエロマックスの凛子さんだ
その時僕は背後から抱き付いてきた長い腕に力いっぱい抱き締められ
蛇に捕まった小動物はあんな気分なんだろうか、と人生を諦めそうになるほどの恐怖体験を経験する事になったが
首の裏にキスマークを付けられはしたけど、人生最大ともいえる力を絞り出して凛子さんの腕を解き難を逃れた

 あの時は流石に身を守る為に体を鍛えようと思ったね

だが、恵美さんの力ではそうもいかないみたいだ
まるで、ぬいぐるみの様に凛子さんにいいようにされている
 (恵美さん、その腕を解いて逆に強く抱きしめてやってください、そうすれば凛子さんは落ち着きますから 健闘を祈ります・・・)
僕は恵美さんの苦悶の声を聞きながらゆっくりドアから離れた



温かいミルクティーと店内に流れる穏やかなBGMが冷えた身体と心に染みる
あの夜から毎日のように凛子さんを抱き、あの凛子さんを引き出そうと試行錯誤した
アイマスクを使ってみたり、タオルで手を縛り拘束プレイの真似事をした事もあった
しかし、良い所までいっていると思われるのに、あの凛子さんを引き出す事は出来ないままでいたんだ
僕が見たベッドの上には絡み合う二人以外には何もなかった
恵美さんは僕みたいに道具には頼らず、身体一つで凛子さんをマックスの状態にもっていった事は容易く想像できる

 なんだ・・・この敗北感は・・・
 そんなに違いがあるのか・・・

自分では意識していなかったけど、男にはチンポというアドバンテージがあると甘く考えていた部分があったんだと思う
その考えが覆された時の気分と言ったら・・・
僕は敗北感に包まれながら喫茶店で時間を潰した



「ただいま」
「おかえりなさい、早かったわね」
「うん」
服を着替えてリビングに腰を下ろすと、ダイニングの向こうでキッチンに立つ凛子さんが見える
 (出来立ての夕食は三日振りか・・・)
「忙しそうね」
「うん」
「疲れてるの?」
「ん?」
「そんな気がしただけよ 大丈夫?」
「うん・・・」
僕は心身ともに疲労しているが凛子さんは「いつもの凛子さん」だ
あんな事してた後なのに僕がいつも見ている凛子さんがキッチンに立っている

 あ、そういえば身長は175pじゃなく177pだったか
 そんな些細な事はどうでもよくなってるけどね
 凛子さんにとっては大事な事かもしれないけど・・・ 思い出しちゃったんだよね・・・

「そういえば、昨日は料理教室がない日だったよね」
「ええ」
「一日中ジムに?」
「ふふっ そんな体力ないわよ、午後だけよ」
「そうか 今日は?」
凛子さんからの返事が止まり、キッチンに立つ後姿が明らかに動揺しているのが遠目でも見て取れた
 (嘘をついてもいいんだよ 僕は信じてあげるから)
「ごめんなさい 後で話したい事があるの・・・」
「うん・・・」
 (ごめんなさいって・・・ ウソ言ってもいいんですよ!僕は何も見てませんから!)
旅行での凛子さんと恵美さんや加奈さんの様子から、アレを見ていなければ僕はその嘘を見抜けないだろう
凛子さんは今日の昼間にあったことを僕に告白するつもりだ
ほとんど会話が無かった夕食は、折角の出来立ての料理の味を堪能する事はできなかった
僕の目の前に、うつむき加減で箸を料理につける凛子さんの姿があったからだけど・・・

 何か可哀そうになってきた・・・
 僕の方から「見ちゃったんだけど」って明るく言ってあげた方がいいのかな・・・

まるで僕の方が責められているような気分の中で夕食を終え、弁当箱と一緒に食器を流しに持って行った
「そうだ、あの荷物 一緒に開けようか」
「ええ・・・ でも、その前に話したい事が・・・」
「うん・・・」
 (早く話してください 僕は知っているので大丈夫ですから)
長く長く感じる時間の中で、僕はキッチンで洗い物をする凛子さんの後姿を見守った

洗い物を終えた凛子さんがリビングの僕に向かって歩いてくる
そしてテーブルを挟んで向かいに正座した
「大事なお話があります」
「はい・・・」
 (なんだ!?こんな凛子さんは初めてだぞ・・・)
「昼間の事ですけど・・・」
「はい」
 (敬語!? ガンバって、何を言われても僕は大丈夫だから)
「恵美さんが訪ねてきて・・・」
「うん」
「抱かれました・・・ 私も恵美さんを抱きました・・・」
 (よくできました)
「そうか まぁ、それは僕が公認してる事だからね」
「え・・・ 怒らないの?」
「うん、僕が「いいよ」って言った事だから」
 (ウソつかれて平気な顔されてる方が良かったよ 目の前であんな顔されたら・・・)
「本当に怒ってないの?」
「うん、怒ってないよ」
「本当に?」
「本当は、怒ってるっていうより、ちょっと嫉妬してるかな」
 (本当は嫉妬と言うより敗北感でイッパイです・・・)
「そう・・・」
「当たり前だろ 僕は凛子さんの事が好きなんだから」
「うん」
 (しまった、そこは「愛してるから」って言った方が良かったか)
凛子さんの安堵した表情が僕に溜まっていた色々な疲れを癒してくれる

 それにしても真面目だな、正直に告白してくれるなんて
 ここまで真面目だとは思ってなかったよ

「凛子さんの話はそれで終わり?」
「ええ」
「じゃぁ、荷物開けようか」
「そうね、持ってきて」
「うん・・・」
一瞬で立場は逆転、というより元に戻ってしまった
寝室の隅に開封されないまま置かれていた荷物をリビングに持ち帰ると
凛子さんはキッチンの方から二つの湯飲みを持ってやってくる
僕は凛子さんの動向を注視した
先ずはテーブルに湯飲みを並べて置いたが、それは向い合って座る時の並べ方だ
 (違う!違う!そうじゃない!)
僕は慌てて荷物をテーブルに置くと、湯飲みを二人並んで腰を下ろす時のポジションに置き換えた
「やっぱりこうじゃないと」
「ふふっ うん」
凛子さんも乗り気の様子だ
昼間に恵美さんと愉しんでいたハズなのに・・・

 まだ満足してないのか・・・
 もしかして恵美さんは凛子さんを満足させる事ができなかったとか?
 まぁ、それは無いだろ・・・

二人並んで腰を下ろし荷物を開封した
一緒に選んだ玩具だから驚きという面ではお互い反応は薄かったが
実際に手に取ってみると何とも言えない興奮を覚えてきた
「アイマスク着けてみて」
「うん」
凛子さんにアイマスクを手渡すと、彼女は受け取ったアイマスクで顔を半分隠した
「着け心地はどお?」
「いいわね、柔らかくて長時間着けていても痛くならなさそうだわ」
「へー」
 (そこそこの値段はしたけど買ったのは正解だったか さらば初代アイマスク、そしてアリガトウございました)
「ねぇ・・・ 次の・・・」
アイマスクを着けたままの凛子さんが何かを求めてきている
「ああ・・・そうだね」

 凛子さんはどうしてしまったんだ・・・
 こんなに早くスイッチが入るなんて・・・

次と言うと・・・ディルドはまだ早い、枷だ
手足用の枷に腿枷も箱に入っている 先ずは手足用の枷を手に取った
「枷を掛けるよ」
「うん」
凛子さんは僕に背を向けて両手を背に回した
 (ええッ!イキナリ後ろ手に!?いいんですか!?)
戸惑ったが凛子さんからの要求を飲まないわけにはいかず
とりあえず背中に回っている腕を掴み、服の袖の上から枷を掛けた

 本当にいいのか・・・ お試しと言う雰囲気じゃなくなるような・・・
 ハードな事になっちゃいますけど、いいんですか!?


[27] 色は思案の外  最後のティッシュ :2017/09/15 (金) 06:32 ID:5quT9j0o No.24992
「どお?」
「うん・・・」
僕の目の前には凛子さんの背中があり、その背中の前では両手首に枷が掛っている
「痛くない?」
「うん・・・」
「触るよ」
「うん」
凛子さんの肩に手を置き引き寄せると、彼女は僕に背を預けてきたので
僕は両手を凛子さんの前に回して、先ずはお腹の辺りを摩ってみた
勿論、それだけで終わらせるつもりは無いが・・・

 一応は動画を観て勉強したけど・・・ やっちゃっていいのかな・・・

お腹を摩っていた手を上げていくと胸の膨らみに到着したけど
乳房の柔らかさより衣服とブラジャーの感触の方が強く主張してくる
「ちょっと待ってて」
「うん・・・」
凛子さんの背中を支える役目は肘掛け替わりにしていたソファーに一旦譲り、僕は足早に風呂場へ向かった
リビングに戻ると、凛子さんは僕がリビングを離れる前と変わらないままの姿勢でお行儀よくしている
そして戻ってきた僕の気配に気付いたはずだけど、僕が洗い立ての男性器を露わにしている事までは気付いていないだろう

邪魔になるテーブルを引いてずらすと、カーペットに投げ出された長い脚を跨いで凛子さんの顔の前に下腹部を近付けた
「ちょっと乱暴な事するよ」
「うん・・・」
視界と両手の自由を奪われた凛子さんは俎板の上の鯉状態だ
見下ろしている彼女の頭に片手を置いて僕の股間に引き寄せた
ここまでくれば目隠しをしていても僕が下半身だけ裸の変態的な格好になっている事は気付いている様子で
半起ち状態のチンポの先が難無くフェラチオの温もりに包まれる
頭を押さえているのに凛子さんから抵抗の力は感じない
もう片方の手も頭に添えて、緊張と興奮で血流が集中し始め固くなってきたチンポを根元まで押し込むと
さすがに苦しいのか「うぐっ」というような唸り声が聞こえてきた
それでも僕の手には抵抗の力は感じない
それどころか、勃起したチンポを咥えようと懸命になっている様子が頭を押さえる手とチンポに伝わってくる

あっという間にフル勃起したチンポは自慢の愚息で
初めて凛子さんと繋がった時には「入ってきた時ビックリしちゃった」と褒められた孝行息子だが
その孝行息子が今は愛する凛子さんを苦しめている
下から聞こえてくる呻き声は苦しそうだけど抵抗してくる力は感じない
その献身的なフェラチオが僕の心を強く刺激してくる
両手を離して凛子さんの頭に自由を与えたが僕のチンポを咥え込んだままでいる
肩を掴んで軽く押し、そこでようやく彼女の口から僕のチンポが抜け出てくると
彼女の口の周りを濡らす唾液は僕の上着の裾で拭ってあげた
「寝室に行こうか」
「うん・・・」
一言ずつ言葉を交わし、アイマスクも枷もそのままにして彼女を立たせると
僕は片手には玩具が入った箱を、もう片方の手は凛子さんの腕を掴んで寝室までエスコートした

ここまではスムーズに事が進んでいる
酷く興奮しているけど、僕の頭はまだ冷静な部分が残っている
玩具が入った箱を置き、凛子さんをベッドに上げると仰向けに寝かせ彼女のお尻の下に枕を差し込んだ

 後ろ手に拘束したままリビングの床に押し倒したら痛い思いをさせちゃいそうだからね

ここまでくると本当に俎板の上の鯉と言う感じで、凛子さんは次の行為を待っているだけの状態だ
しかし、リードする方の僕は少々焦っている
いくつもの動画を観てきたけど実践は初めてで、何から始めていいのか見当がつかない

 落ち着け、そして思い出せ
 凛子さんは「一つ一つの愛撫をもっと丁寧に」と僕に言った
 とりあえずは、このまま・・・

先ずは横たわる脚の上に手を置いた
伝わってくるのはジーンズのデニム生地の感触でそれほどエロさは感じないが
凛子さんの鼻息は荒くなり見て分かる程に胸を上下させて呼吸している
それは緊張なのか興奮なのか
だが、ここで焦ってはいけない 僕は手を腿の内側に移し衣服の上からの愛撫を続けた
だが、しかし、そんな僕をあざ笑うかのように箱に入っている「腿枷」という目新しいアイテムが僕の好奇心を刺激してくる

 僕は我慢できる子だ 我慢・・・

「ううっ・・・」
 (あ・・・)
腿枷に気を取られてしまい、おろそかになっていた手がジーンズの股を押してしまった
 (ごめんなさい・・・ やっぱり我慢できないよ)
僕はジーンズのボタンを外しファスナーを下ろした

 枷自体が初めてなのに腿枷なんて・・・
 でも、好奇心と期待が僕を突き動かすんだ
 サイトの画像では女の子が凄くエロい具合に装着していた
 あれを凛子さんで再現できれば・・・

焦る気持ちと好奇心を抑えられなくなった僕はジーンズとパンティーをまとめて引き下ろした
ジーンズの下から現れた太腿は美しく、輝きを放っているかのようにも見える
 (この腿に枷を・・・ 僕はあれを再現できるのか・・・)
箱から腿枷を取り出すと静かに息を吐いた

 落ち着いて思い出せ
 確か割と上の方に枷を掛けてたよな・・・
 後で手に掛けた枷と繋ぐことを考えれば・・・
 この辺りか・・・

「ねぇ・・・ 宗太さん・・・」
「ちょっと黙ってて」
「はい・・・」
腿枷はスムーズに装着できた、手の枷と繋ぐ金具は外向きに出ているので間違いは無いはず

 これで準備は出来た
 後は手の枷を腿枷に繋ぎなおせば・・・

仰向けだった凛子さんを一旦うつ伏せにしたけど、思いの外スムーズに転がせた
凛子さんもされるがままじゃなく、プレイに協力的になってくれているのが伝わってくる

 そうだ、これは僕だけのプレイじゃないんだ
 これは夫婦の共同作業なんだ

枷同士を繋ぐ金具を外し、手首に枷を着けたままだけど腕の自由は返して上げた
「仰向けに戻って」
「うん」
凛子さんが仰向けに戻ると、再びアイマスクで半分隠した顔が視界に戻ってきた
 (そういえばキスをしてなかった・・・ キスしたい・・・)
「どうしたの・・・」
「ん?」
凛子さんは枷が着いた手を腿に近付けて 繋いで と、おねだりしてくる
「早く・・・」
「うん・・・」
 (キスさせてくれないのか・・・)
とりあえず手の枷と腿枷を繋いでみたけど割と自由に動くようで
見た感じでは後ろ手の枷ほどの拘束感は無いように見える
そして・・・

 (何で僕はいつもこうなんだ・・・ お互い上着を着っぱなしじゃないか・・・)

僕は上着を脱ぐ事ができるけど、両手を繋いだ凛子さんの上着は捲る事ぐらいしかできない
 (とりあえず、足に残っている靴下を脱がせてあげよう)
片足ずつ持ち上げ靴下を脱がせてあげながら次の事を考えた
一旦拘束を解き凛子さんの上着を脱がすという手順は、その間に気持ちが冷めてしまうという可能性がある
僕としては肌同士を密着させる全裸がいいけど、こうなってしまっては仕方がないのか・・・

それでも僕は全裸でのセックスを諦めきれなかった
そして靴下を脱がせたばかりの足の先を撫でながら、良案が思い浮かぶまでの時間を稼ごうとしていた時だ
腿と手を繋いでいる枷の金具が小さく鳴った
 (ん?)
音がした方に目を向けると、腿枷に繋いだ手が自らの腿を摩っている
いや、違う 枷に繋がれた手の先が恥毛に向かって伸びている
もしかすると快感を求め自ら股間を刺激しようと・・・
 (ごめん、枷を繋ぐ金具がもう少し上に向くように腿枷を掛けていれば指の先ぐらいは・・・)

 (違う!そうじゃないだろ!今、大事な事は凛子さんが快感を求めてるって事だろ!)
僕は手の上にある足首を握った
「あっ・・・」
何てことだ、足首を握るだけで凛子さんは強い何かを感じている
僕が彼女の両足首を掴み脚を開いていくと、腿に繋いだ手も一緒に開いていく
そして、露わになった凛子さんの秘部は愛液で濡れ輝いていた

 (ごめん、こんなになるまで・・・)

枷に夢中になり全裸に拘っていた自分を恥いた
目に映っているのは濡れて輝く美しい肉の花弁
股間に感じているのは激流とも言える血流

 (ごめんね 直ぐに挿れてあげるからね というより僕が我慢できなく・・・)

彼女の脚を更に大きく開くと、この先何が起こるのか感じ取ってくれたようだ
まだ脚を開いただけなのに
「はぁ・・・」
と、喘ぎの声のような息を吐いた
怒張した亀頭を濡れた股間に押し当てると
「ううっぐぅ・・・」
と、挿入した時のような声を出す
チンポの先に感じているのは膣の温もりと愛液の滑り
耳に聞こえてくるのは枷同士を繋ぐ金具が鳴る音
「いぃあぁーッ!」
そしてチンポ全てが膣の温もりに包まれた時、悲鳴にも似た凛子さんの喘ぎ声が耳に入ってきた

 あの時の凛子さんだ
 あの新婚旅行の初夜の凛子さんだ

僕は夢中になった
彼女の腿に繋いだ手が僕に抱き付こうとしている気配は感じていたけど
枷の金具の音が聞こえてくるだけで抱き付かれる事はなかった
僕の下にある衣服に包まれた身体は悶え喘ぐだけで、代わりに長い脚が僕の腰に絡んで締め付けてきた
「うぁあぁッ! いやあぁッ!」
威勢がいいのは喘ぎ声と比較的自由な脚だけで、悶える身体は簡単に抑え込める

 腕の中の身体の自由は僕の思い通りに・・・
 何だ・・・ この気持ちは・・・

抵抗できない凛子さんが僕の中の何者かを刺激してくる

「凛子」
「ああッ! 宗太さんっ!」
「僕に隠してる事があるだろ?」
「え・・・」
僕が腰の動きを止めるとベッドの上は静まり返った
「身長はいくつ?」
「え?」
「凛子の身長はいくつって聞いてるんだけど」
「175cm・・・」
「違うだろ」
「それは・・・」
「どうなんだ?」
「はい・・・177cmです・・・」
「何で嘘ついてたんだ?」
「ごめんなさい・・・」
「何で?」
「宗太さんが・・・ 175cmだったから・・・」

今にも泣き出してしまいそうな声だ でも

 うん、わかってたよ
 実は、喫茶店でミルクティーを飲みながら途方に暮れていた時に気付いちゃったんだ
 前の夜に健康診断の検査結果を見てしまった時、出会ってからの凛子さんを思い出してたからなのかな
 僕らが付き合う切っ掛けになった中華料理店で、背が高い事を気にしてるって話してくれたよね
 僕は気にするほどの事じゃないと思ってた
 籍を入れる前に、ずっと僕の事が好きだったって告白してくれたよね
 もしかして、ずっと自分の方が僕より背が高い事を気にしていたのかな
 確か、僕が企画営業部に配属されて一年ぐらい経った時だったかな
 お互いの身長を言い合った事があったと思うんだけど
 その時からなんだね
 まだ、頼れる先輩というだけの印象だった凛子さん
 まだ、僕を叱った事が無い凛子さん
 その時からなんだね
 でも、もう気にしなくてもいいんだよ
 僕は僕より背が高い君を愛しているんだから

「ずっと僕を騙してたなんて酷いな」
「ごめんなさい・・・」
「謝っても許さないよ」
「ごめんなさい・・・」
「だめだ、お仕置きだよ」
「そんな・・・」
「今夜はイッパイ凛子の中に出すから」
「え・・・ 宗太さん・・・」
ゆっくりと腰を動かし始めると、不自由な彼女の身体も再び悶えだした
「はあぁ〜ん」
聞こえてきたのは安堵したような喘ぎ声、僕の気持ちが伝わったのかな
「凛子、お仕置きなのに感じちゃダメだろ」
「ごめんなさいっ」
「凛子っ」
「宗太さんっ ごめんなさいっ」
悦び交じりの謝罪の声を聞きながら僕は徐々に腰の動きを速めてゆき
いつしかまるで凛子さんを痛めつけるかのような乱暴なセックスになってしまっていたが
「ああッ あぁあーッ!」
 (ごめん、凛子さん ごめん、痛くない?)
「ぐうッ うあッ ううぅあーッ!」
 (でも、心が気持ちいいんだ 止められないんだ!)
「凛子ッ!」


ふと時計に目をやると時間は11時を回っていた
夕食後直ぐからだから、どれぐらいの時間が経っていたのだろうか
もう、自分の事を絶倫だとしか思えなかったね
今の凛子さんは全裸になっていて、手首と足首を繋いだM字開脚状態でアイマスクは外してある
開いた股間に咲いた肉の花弁、その奥の充血した果肉は愛液と精液を蓄えている

 さて、問題はここからだ・・・

手足は繋いであるが、上気した表情の中の瞳は僕を追ってきている
魂を抜かれそうなほどに妖艶な視線だが気を抜いてはいけない
最後の仕上げが待っているからだ
大きく息を吐いた後、先ずは片方の手首と足首を繋ぐ枷に手を伸ばした
繋がっている金具を外すと、自由になるのを待っていたかのように枷を付けたままの手が僕に伸びてくる
 (待ってください!もう片方も外しますから!)
「宗太さん・・・」
「凛子、落ち着いて もう片方も外して上げるからね」
「うんっ」
 (お願いですから、本当に落ち着いてくださいね・・・)
平静を装ったが僕の身体は既に戦闘態勢に入っている

緊張の中でもう片方の手足を自由にしてあげると、凛子さんは予想通り僕に襲いかかってきた
そして僕が危惧した通りに体勢が悪く、即座に背後を取られ僕も必至に成らざるを得なかったが
しかし!気構えが有る無しでは雲泥の差で、あの夜の僕とは明らかに違っていた
完全にロックされる前に絡んできた腕を解き
逆に凛子さんをベッドに押し付けると、そのまま抱き付き力強く抱きしめてあげた
「あぁ 宗太さんっ!」
「凛子っ 愛してるよ!」
 (よし、完璧!)

今日の凛子さんは随分お疲れのようだ
少し落ち着いたかと思えばスヤスヤと眠りに入ってしまった
僕は可愛い寝顔を眺めながら失敗した事や上手くいった事を思いだしていた

 次はもっと上手くやれそうな気がするけど
 それにしても最後のアレは何なんだ・・・

まぁ、それで凛子さんが満足してくれるなら何でもいい
師匠の言葉を借りれば

 「僕は変な癖ごと凛子さんを愛している」



「起きなさい 時間よ」
「う〜・・・ん」
 (あ・・・ いつもの朝だ・・・)
昨夜の事を思い出せば夢だったのではないかと思ってしまうけど
これがいつもの凛子さんなんだよね
シーツに残る昨夜の跡と部屋の隅に片付けられた玩具が入った箱を見て現実だったことを確認し
朝食の声が掛る前に寝室を出てシャワーを浴びた

 あの玩具は凛子さんが片付けてくれたんだな・・・
 いや、玩具だけじゃないな
 確か昨夜は脱いだ服も散らかしっぱなしで寝たから・・・
 ごめんなさい・・・次からは僕も一緒に片付けします

いつもの凛子さんといつもの朝、「もしかすると」と、いってらっしゃいのキスを期待しても・・・
結局はいつもの朝で、いつもの通勤路を駅に向かって歩いた
電車を降りると伊藤と合流し、会社に着くと主任の上島さんが机に向かって何かの確認か準備をしている、これもいつもの光景
だが、いつもと少し違ったのは高岡さんが部長に捕まっていた事だ
例のプロジェクトのトラブルの事でリーダーである高岡さんを・・・と思ったが
「それでよ、勝ってた分を全部つっこんでやったんだよ」
 (なんだ・・・ 競馬の話しか・・・)
「それでどうなったんですか?」
 (高岡さんも災難だな、トラブルの真っ只中で朝礼前にやっておきたい事があったと思うけど)
「はっはっは 俺の顔を見て察しろ」
 (顔見る前に声聞いただけで分かりましたよ おめでとうございます)

「おっ、きたきた こっちこい」
「あ、おはようございます」
 (僕も自慢話聞かされるのかな・・・)
「やりやがったな」
「え?」
「とぼけるな、結果知ってるんだろ」
「んー 何の事です?」
「は?これだよ、これ!」
師匠が出してきたのは馬券だ
馬単でFHのボックス買い、二通りを5千円ずつ買ってもらっていたんだ
僕と凛子さんの誕生日買いで期待していなかったこともあり、すっかり忘れていた
まぁ、買ってもらった馬券の事を忘れてたのは他の事情もあるんだけどね・・・
「本当に結果は知らないんですよ、当たったんですか?」
「おう、大事に財布にしまっとけよ」
「はい」
 (当たってるのか!? って事は二番人気のHからF、一番人気が飛んで結構付いたんじゃないのか?)

 9月7日は僕の誕生日 頑固なクソ親父には感謝しないが 母さん、この日に僕を産んでくれてありがとう!

そんな感動も束の間で、朝礼前に配当を調べて驚愕した
当たっていたのは凛子さんの誕生日のF−H、配当は13800円の万馬券
という事は・・・ 5000円の138倍・・・
僕は嬉しさよりも恐怖を覚えた

 こんな勝ち方していいのか・・・
 今まで競馬の調子が良い時ほど何故か凛子さんの怒りに火を点ける事が多くなっていた
 今の僕は絶好調ってレベルの話しじゃない、神の域に達している
 この先、どんな不幸が僕を待っているんだ・・・
 僕は凛子さんの怒りの業火に焼かれてしまうのか!?


[28] Re: 色は思案の外  ふぐり太 :2017/09/18 (月) 10:54 ID:3xCbH2f2 No.25005
大量の投稿ありがとうございます!
凛子さんはドMに目覚めて良い感じですが宗太くんにはどんな不幸が待ってるのでしょうか
続きをお願いします

[29] Re: 色は思案の外  abu :2017/09/19 (火) 11:25 ID:WwzMPB2Q No.25008
更新頂きありがとうございます。
ほんとに各キャラクターがいきいきしていて、文章に引き込まれっぱなしですよ。
凛子さんのM性もしかり。
特に師匠がかわいいし。
宗太くんは文句の付けようがないキャラだし。
続きを楽しみに待ってます。
(次はどんな色なのか期待してます。)

呉々も無理しないで下さいね。


[30] Re: 色は思案の外  最後のティッシュ :2017/09/19 (火) 19:26 ID:HrHyIMDg No.25010
ふぐり太様、abu様 レスありがとうございます

週末を狙い金曜の早朝に投稿という腹黒い計算にもかかわらず、中々レスが付かず
月曜日まで三日間開催していた競馬でも惨敗し、消衰した気持ちの休み明けでしたが
頂いた感想で元気が出てきました ありがとうございます

作品に合わせて「凜子さん」と書かせていただきますが
凜子さんのM性については、書き始めた当初は女王様とどちらにするか迷っていました
Mで正解だったようで一安心しています
今回の投稿はMからドMへ昇格しちゃったので特に心配していました

これ以上の書き込みは調子に乗って予告編になりかねないので、この辺りで失礼します


[31] Re: 色は思案の外  abu :2017/09/21 (木) 12:50 ID:Yu4eTTBI No.25014
最後のティッシュ様、私事ですが土日にレスをいれられない諸事情がありまして・・・。
なので週明けにとなってしまいました。
ほんとに大好物な内容なので大事に詠んでますよ。

本音は毎日読みたい(少量でもよいので)んで、実際毎日更新をチェックしてますから。

無理のない範囲での更新をお待ちしております。


[32] 色は思案の外  最後のティッシュ :2017/09/24 (日) 22:05 ID:vbeYdUh2 No.25032
年が明けて1月4日、まばらだけど出社する人を見かける
会社としての仕事始めは5日からだけど、他の部署の方も色々と忙しそうだ
そして僕らの部署はこの日から全員出社で正月の余韻は無い
僕は昨日の内にほとんどの人と会社で新年の挨拶を交わしている
「はぁ・・・ 今日は1月4日だよな・・・」
同期の村上が溜息交じりの大きな独り言を吐いた
 (朝礼前からそれじゃ一日持たないぞ・・・)
明日は年明け一発目の競馬、金杯の日だというのに部長は部屋の隅で静かに佇んでいる
 (師匠、元気を出してください 明日は金杯ですよ)
そして村上が僕に救いを求めるかのように話しかけてきた
「なぁ、何とかならなかったのかよ・・・」
「ならないよ、三代目から出た話しらしいから」
 (元々はお前らプロジェクトチームが蒔いた種だろ・・・)
「そうらしいな」
と横から入ってきたのはプロジェクトリーダーの高岡さんだ
そして三代目とは社長の息子の専務の事で、聞いた話によると師匠と三代目は同じ大学の同期生らしい
「まぁ、殺されるって訳じゃないんで頑張りましょう」
「お前のその能天気な思考が羨ましいよ」
 (何てこというんですか・・・ 僕は高岡さんを元気づけようとしたんですよ)

「もう手続きは済んだかな 行ってくる」
部長がオフィスから出て行くと緊張からなのか扉が閉まる音を最後に静まり返る

再び扉が開いた時、僕は条件反射のように背筋を伸ばしてしまった

 流石です ここに立つのは一年と二ヶ月振りなのに変わらない美しさ
 いや、変わりましたね 洗練されて美しさに磨きが掛ってますよ

部長の声が心なし緊張している
「もう、みんな知ってるな 三月いっぱいまで仕事を手伝ってくれる・・・ んー、野上さんだ」
「よろしくお願いします」
会釈をして顔を上げた時の表情が目に入ってくると、それまで浮かれ気分だった僕の背筋を冷たいものが伝った

 何てことだ・・・ 凛子さんは怒っている・・・
 会社に着くまでは普通だったのに・・・

頭の中に蘇ってきた記憶は「辞めた私に頼るなんて情けないわね」という怒りを抑えた凛子さんの声と顔だ

 別に僕が悪いわけでもないし 僕が頼んだわけでもないのに・・・ 怖かった

その凛子さんの怒りを感じ取れているのは僕だけだろう
いつもの凛子さんから「吉田主任」の顔に戻った彼女の顔は凛々しく
それは、みんなの記憶にある凛子さんだと思われ
怒りを抑えた微かな違いを見抜いているのは、たぶん僕だけだ
「如月さん、朝礼は?」
「あ、いや 特に重要な伝達事項は無いし・・・」
 (師匠!何言ってるんですか、年明け一発目の朝礼ですよ 新年の挨拶的なものがあるじゃないですか!)
「私は誰に付けば?」
「じゃぁ、野上に」
 (ややこしいな・・・ 野上と野上さんって 伊藤や西岡は僕の事を何て呼ぶんだろう・・・)
部長の言葉を聞いてプロジェクトチームの連中はホッとしている様子だ
凛子さんが期間限定でプロジェクトチームに加わるって噂もあったからね

凛子さんが僕に近付いてくる
新調したフォーマルなパンツスーツにローヒールのパンプスは一緒に家を出た時の凛子さんと変わらない
久しぶりに見たその姿は会社に着くまで僕の目を釘付けにしていた
しかし、目の前に迫ってきたその御方が纏うオーラは出勤時とは全くの別物だ
「野上くん、指示を」
 (だよね 僕は「野上くん」だよね・・・)
「はい ちょっと待ってください・・・」
 (それにイキナリそんな事言われても・・・ 師匠 いや、部長!こういう場合って僕より上島主任でしょ!)
「野上さん、復帰早々で悪いんだけどお願いしてもいいかな」
 (おお!主任!助かります)
「はい、遠慮なくどおぞ」
「フレンチのレストランだけど、デザインの面でウチからプラスαの提案を出して先のある仕事にしたいんだ」
 (復帰してイキナリそういう事はキツイでしょ・・・)
「競合相手がいたんですか?」
「ああ コンセプトが違う店をもう一店出したいという話しを耳にしたから、有利な内に他と差をつけておきたい」
「そうですね」
「野上さんはこういう事が得意だったと思うけど」
「はい、考えてみます」
 (ええ!?迷わず即答!?)
「これがオーナーからの要望とウチから出したスケッチこっちが予算だけど、デザインコンペは終わってるから気楽に」
「はい」
「デザイナーには俺から連絡しておくから」
「はい わかりました」
 (流石です、さすが凛子さんの元教育係 そういえば、凛子さんに叱られなかったのは上島さんだけでしたよね)

 何か懐かしいな
 主任になる前の凛子さんを見ているようだ

それにしても凛子さんや上島さんみたいな事できる人って凄いと思うよ
僕や師匠とはちょっと毛色が違うんだよね 僕にはそういうセンス無いし・・・師匠は「別に課を起ち上げろ」ってよく愚痴ってるし・・・

さて、今日は外回りは無い、僕は椅子に腰を下ろしたが背筋は伸びたままでいる
何故なら、隣が凛子さんの席だからだ
凛子さんが主任だった頃は席が離れていたので隠れて好き放題していたのだが

 師匠の仕業だ、余計な気を使いやがって・・・

「野上くん」
「はい」
「先ず机の上を整理しなさい」
「はい」
 (凛子さん! 僕は正社員で凛子さんはパート扱いなんですよ)
「どうしたの?早く」
「はい・・・」
師匠は早々に姿を消している オフィス内で救いを求める事ができるのは上島主任だけだ
 (主任、助けて 何とかしてください)

 でも、まだ良い方かな
 主任が凛子さんに頼んだ事は、たぶんだけど凛子さんが好きな事だ
 何となく分かっちゃうんだ
 主任から渡された資料を見ている顔は凛々しい顔しているけど
 伝わってくる雰囲気はキッチンに立っている時と似てるんだよね
 一年とちょっとだけど嫁の凛子さんを見てきたから分かっちゃったのかな

朝礼と言えるのか分からないけど、あの朝礼の時の凛子さんは言葉が短く明らかに機嫌が悪かった
でも、今は隣から伝わってくる気配は和らいでいる
しかし、そんな安堵の気持ちを吹っ飛ばしたのは緩んだ顔で近付いてきた伊藤だ

 (こいつ・・・ 気付いてないな・・・)

伊藤と西岡を一度ウチに招待した事がある、そして今朝も電車を降りてから顔を合わせている
たぶん、その凛子さんが伊藤の中にある凛子さんなんだろう
「奥さん、次の試食会はいつですか?」
 (やっぱりだ・・・ 気付け!)
「伊藤くん」
「はい」
「今は仕事の時間よ」
「はい・・・」
 (気付いたか 声の雰囲気で気付いたんだな、えらいぞ)
「仕事に戻りなさい」
「はい」
伊藤が僕らに背を向け、ホッとしたのも束の間 いや、刹那だった
「んー、何から手をつけようかな」
 (おい!なんてこと言うんだ!思い出せ!凛子さんが主任だった時を思い出すんだ!)
「伊藤くん」
伊藤は振り向いたが、まだ思い出してないようだ
「なんでしょうか・・・」
「そういう事は朝礼が始まるまでに決めておきなさい、時間が勿体ないでしょ」
「はい」
 (思い出したか?僕らは何度同じ事で叱られた?)
手短に叱られた伊藤が肩を落として席に戻っていく
 (良かったな 「綺麗な奥さんに叱られて羨ましい」みたいなことを僕に言ったよな 嬉しいだろ?)
僕の事も含めた一連の様子を近くの席で見ていた西岡は命拾いしたようだ

「おう、野上 打ち合わせだ」
「はい」
姿を消していた師匠が戻ってきて僕を呼んだ
 (分かってますよ、とりあえず凛子さんから僕を離したいんですね)
「ちょっと打ち合わせに行ってきます」
「他に私がやる事は?」
「じゃぁ、見積もりのチェックを・・・」
 (正社員じゃないけど見積もりを見せちゃっていいのかな・・・ まぁ、いいだろう)

 (あれ 肝心の資料はどこいった・・・)
「どうしたの?」
「あ、ちょっと待ってください・・・」
 (おい!資料!どこにいるんだ、出てこい!凛子さんを待たせるんじゃない!)
「みなさい、何も考えずに上から置いていくから欲しいものが直ぐに出てこないのよ」
「はい・・・」
 (まだセーフ、激怒じゃない・・・)


食堂を兼ねた休憩室で師匠は腕を組んでいる
「夫婦仲睦まじくやってるようだな」
「何を見て仲睦まじくなんて言葉が出てきたんですか・・・」
「お前の嫁の声が外まで聞こえてこないから怒られてないんだろうな・・・と」
「何ですか、その判断基準は・・・」
「それでどうなんだ?やり易いか?やり難いか?」
「んー・・・ やり易いかも・・・」
「おっ、そうか」
「ずっとあれでやってましたからね」
 (家でもあんな感じだし・・・)
「それなら問題ないな 問題は明日だな・・・」
「金杯ですね」
「おう」

説明しよう 金杯とは年明け早々に行われる競馬で通常の週末開催とは違い1月5日が平日であっても開催しちゃうのだ

「馬券は携帯で買って後で結果だけ確認しましょう」
「中継を観れねぇんじゃスマホ持ってる意味ねぇな」
 (色々と役立ってるでしょ・・・ 画面が大きいって理由だけで持ってるんですか?)
「仕方ないですよ、今年は」
「そうだな・・・」
 (師匠が悪いんですよ、凛子さんに頼る以外の方法を考えればよかったんですよ)

 しかし・・・ 僕の身体はどうなってしまったんだ・・・

オフィスに戻ると所狭しと闊歩する凛子さんの姿が目に入る
いや、僕の目は他には目もくれずに凛子さんを追っている
177pの身長はヒールの分を足して180pにはなっているだろいう 中々の迫力だ
僕が席に着いた時、凛子さんも隣の席に戻ってきた
「あの見積りは上島さんに渡したわよ」
「はい、ありがとうございます」
 (早い、流石です)
「次は?」
「じゃぁ・・・ これを」
「他には?」
「あ、これも」
「他にもあるなら、まとめて渡しなさい」
「はい」
 (欲張りですね・・・)
「それと 机の上!」
「はい! 直ぐに整理します」

 ふぅ・・・ 僕はどうなってしまったんだ・・・
 凛子さんを見ていると 凛子さんと話していると
 勃起してしまいそうになる・・・

理由は何となく分かっている
久しぶりのフォーマルなパンツスーツスタイル、久しぶりの仕事人の顔
これは昼間の顔で主任だった頃と変わってないけど、僕は夜の顔を知っている
僕らが恋人同士だった時以上の昼と夜のギャップを知っているからだ
ここ一ヶ月以上は普通のセックスはしていない、週に二回ほどだけど僕らは拘束プレイに夢中になっている
衣服で隠してはいるけど、あのスーツの下には昨夜の拘束の跡が残っているはずだ・・・

それに、ヒールが付いた靴を履いた凛子さんを見るのは結婚式以来かも
やっぱり、僕より背が高い事をずっと気にしてたんだね
折角の長くて綺麗な脚なのに、僕の事を気にして勿体ない事をしていたんだね

 可愛いよ 凄く可愛い性格だよ、凛子さん
 しかし
 今は全て忘れるんだ、何も考えるな 鬼になれ
 内なる仕事の鬼を目覚めさせるんだ
 僕らは夫婦並んで仕事をしている
 勃起してるところを誰かに見られたりなんかしたら
 どんな冷やかしの言葉を受ける事になるか・・・

そして僕は競馬の予想と同等の集中力を発揮し仕事の鬼になった


[33] 色は思案の外  最後のティッシュ :2017/09/24 (日) 22:06 ID:vbeYdUh2 No.25033
1月も中頃を過ぎた土曜の朝、僕は凛子さんと一緒に家を出た 今日も出勤だ
凛子さんは平日の5時までということで会社と契約しているが
そこは真摯に仕事と向き合う凛子さんらしく、主任に5時以降の勤務も土曜の出勤も申し出ている
上島主任も快く凛子さんの申し出を受け、僕らの仕事は随分楽になっているはずなのだが・・・

そんな僕らの様子を見て、プロジェクトチームのメンバーは遠慮なしに仕事を回してくるので
明日の日曜日は休めるかどうかは今日の頑張り次第という状況だ
そんな中、あの声を聞いたのは師匠と競馬談義に花を咲かせた休憩の直後だった
オフィスに戻ろうとした時、ドアの前で立ち尽くす西岡が目に入る
「どうした?入らないのか?」
「野上さん、ヤバイです」
 (「野上先輩」だろ 凛子さんを呼ぶ時と一緒になるから、そう決めただろ)
「何かあったのか?」
「奥さん怒ってます・・・」
 (珍しい事じゃないだろ、それに会社の中では凛子さんの事は「野上さん」って呼べよ)
「まったく・・・ 中に入らないと仕事ができないだろ」
「そうですけど・・・」
僕がドアを開けようと手を伸ばした時だった

 「何度同じ事言わせるの!」

ドアの向こうから聞こえてきた凛子さんの声に僕の身体は固まった
 (これは怒ってるってレベルじゃない 激昂だ・・・)
「西岡・・・ 何があった・・・」
「一言でいうと連絡の不備です・・・」
「村上辺りか?」
「高岡さんと村上さんです」
「そうか・・・」
 (先輩の高岡さんまで叱られてるのか・・・ 随分怒ってるな・・・)
「どうします?」
「声が聞こえなくなったら入ろう」
「そうですね」
凛子さんが主任だった時は高岡さんも村上も今日と同じような事で叱られていた
 (成長してない君達が悪い ほんと、僕の身にもなってくれよ・・・)

凛子さんのお叱りタイムは其れほど長くはない、簡潔に叱った後は相手を仕事に戻らせる
僕が西岡と合流した時には終盤に入っていたようで
ドアの向こうから「はい!」という叱られている二人の返事が聞こえてきた時、お叱りタイムの終わりを感じ取った

一応、耳を澄ませて向こうが静かになった事を確認してからドアを開けると
凛子さんは机に向かっている、高岡さんと村上も机に向かっている
そして部屋の中はお通夜のように静まり返っている
西岡と僕の机は近い、という事で僕ら二人は凛子さんに向かって歩いていくわけだが
西岡は僕を盾にするかのように三歩後ろを歩いている
 (怖がるなよ、お前は怒られてないんだろ)
「随分ゆっくり休憩してたのね」
「部長に捕まっちゃって・・・」
「そう」
凛子さんは幾つかの書類を仕分けしている
そして
「これは野上くんがやりなさい」
「はい」
その内の幾つかは僕に回ってきた
 (改装、改装・・・ 改装ばっかり・・・ 思い切って新装しようよ・・・)
「これ設計に回してきます」
「目は通したの?」
「後で」
 (あ・・・)
「一通り目を通してからにしなさい」
「はい」
 (ふぅ・・・ 今のは叱られると思ったけどセーフか)
「これは何?」
「はい? あ・・・」
 (それは・・・)
「この落書きは何なの?」
「それは田川さんとの打ち合わせの・・・」
「見れば分かるわ 「凄く良い感じ」「ウエスタン風」この二行だけの議事録は何なのか聞いてるの」
「ザックリしたイメージですけど、それは一番最初の打ち合わせの・・・」
「まだこんな事してるの!?何しに打ち合わせに行ってるのよ!」
「それは最初だけで、もう何度かデザイナーと一緒に行って話しは纏まっているので・・・」
「最初の打ち合わせをしっかりすればデザイナーも取り掛かりが早いでしょ!」
「はい 仰る通りですが、それは僕の仕事ですので僕のやりかたで・・・」
「最初の打ち合わせからしっかりしなさい、そこだけ直せばいいわ」
「はい・・・ 努力します・・・」
「努力じゃなくて直しなさい!」
「はい!」
 (何でその紙切れが凛子さんの手元にあるんだよ・・・ 机の上を整理した時、どこに置いたんだっけ・・・)

仕事の追加と前に頼んだ事のフォローの為に各部署を一回りして
一回りしている間に色々と考えた
会社の中でも凛子さんと一緒にいるから叱られる事は多くなったけど
慣れてしまったのか大した事はない

 これが恐れていた万馬券の呪いなら厄神もヤワになったものだ
 それとも僕の方が成長したのか?

食堂の前で高岡さんと顔を合わせた
「おまえ凄ぇな」
「何がです?」
「あの女に言い返してただろ」
 (あの女って・・・ 僕の嫁なんですけど・・・)
「んー、まぁ家でも年中叱られてるような感じですからね 慣れちゃったのかな」
「ははっ よし、コーヒーおごるよ」
「いいんですか?」
「いいよいいよ お前は勇者だ、遠慮するな」
高岡さんに言われて気付いた
凛子さんのお叱りタイムは正論の詰将棋だが、僕は玉砕覚悟で抵抗することもある

 やっぱり僕は成長したんだ

そして、おごってもらった缶コーヒーを片手に寛いでいた時、隣の席で主任の上島さんが溜息をつきながら呟いた
「はぁ・・・ やっぱり野上さんは怖いな・・・」
 (ええっ!?叱られてない記録更新中の貴方が!?しっかりしてください!貴方は僕らの希望なんですよ!)


今日はサボり気味だったけど仕事は思いの外順調だった
やはり凛子さんが上に立ち僕と上島主任が下で動き回る方がシックリくるようだ
そうなのだ、復帰して二週間も経っていないが凛子さんは僕ら「その他組」を指揮する立ち場に返り咲いているのだ
しかし、僕ら夫婦の営みでは僕に指揮権がある
そして、昼間に会社で焦らされているからなのか、ベッドの上では僕の辞書に手加減という文字は無い

ベッドの上には全裸の凛子さんが横たわっている
大人の玩具を収納するために買ったケースをベッドの上に置くと、僕は枷を一つずつ取り出した
枷同士は繋がっていない、単体のベルトを凛子さんの手首と足首に巻き
腿にも腿枷を巻くと収納ケースはベッドの隅に除けた
「今夜は何所と何所を繋いでほしい?」
「宗太さんのお好みで・・・」
「じゃぁ、手と腿を繋ぐよ」
「うん」
最初に手枷と腿枷を繋ぐのは、プレイの導入のお決りとなりつつある
手の自由を奪っても凛子さんの身体への負担は少ないし、時間をかけてゆっくり愛撫できるんだよね
アイマスクは着けていない、彼女の潤んだ瞳が僕を追ってきている
その妖艶な視線に引き寄せられるかのように僕は顔を近付けた
「凛子」
僕の手が彼女の乳房を掴むと、乳房が歪んで乳首が向きを変える
「宗太さん・・・」
「今日の晩御飯 あれは何だ」
「え?」
「あんな物を僕に食べさせて、どういうつもりだ」
「そんな・・・ 一生懸命作ったのに、何が・・・」
ついさっきまで乳房を揉んでいた僕の手は今は彼女の恥毛を撫でている
「美味し過ぎて御飯を三杯も食べちゃったじゃないか」
「うん・・・」
「僕は最近お腹が出てきた事を気にしてるんだぞ」
「ごめんなさい・・・」
恥毛を撫でていた手をゆっくりと湿り気と熱を帯びた股の間に滑り込ませていくと
僕の指先は花弁が蓄える蜜で潤った
「許さないよ、今日はアナルプラグでお仕置きだ」
「酷い・・・ あんっ」

 僕は天才だな、凛子さんを叱るネタが次から次へと浮んでくるよ
 それに、凛子さんも乗り気で僕に付き合ってくれるから楽しい
 そして、凛子さんのアナル処女を奪える日が間近に迫っている事を感じている

この日以来、僕の摂取カロリーが凛子さんによって厳しく管理される事になってしまい
会社の机の中に隠し持っていたチョコやアメ玉を没収されてしまったが、大した問題ではない
色々な付き合いなどで外食する時は、食する物の写真を送ったり報告しなければならなくなったが、全く問題はない
仕事の方も覚悟していた程の地獄は見ていない 凛子さんのおかげだね

 仕事は順調そのもの
 夜の夫婦仲は良好、全て上手くいっている



忙しい毎日には変わりないが、何もかも上手くいっている
この事が僕から大事な事を忘れさせていたんだ
凛子さんが会社と契約した三ヶ月も折り返しを過ぎた2月の中頃
事件というものは突然やってくる

この日は土曜日で仕事も一旦の落ち着きを見せた事から、凛子さんは休みを取り僕だけ出勤した
少し残業したけど出来立ての夕食には間に合いそうだ

「ただいま」
 (あれ?)
凛子さんは居るはずなのに返事が返ってこない
ダイニングを覗くとテーブルの上には夕食が用意されていて凛子さんは席に着いていた
「ただいま」
「おかえりなさい・・・」
 (ん?何かあったのか?)
「元気ないみたいだけど 大丈夫?」
「大事なお話があります」
「はい・・・」
 (え・・・ この凛子さんは・・・)
僕は凛子さんの向かいの席に着いた
「先ず一つ目ですけど・・・」
「はい・・・」
 (大事な話しって一つじゃないんですね・・・)
「赤ちゃん・・・ できました」
「えっ 本当に!?」
「はい」
「赤ちゃんできたって事は妊娠してるってことだよね!?」
「はい」
 (僕は何当たり前の事を言ってるんだ・・・ 落ち着け)
「なんだ、深刻な顔してるから・・・ 今日、病院に?」
「はい、朝の内に」
「えー、それなら連絡くれても良かったのに」
「色々忙しくて・・・」
 (深刻な顔して脅かさないでくれよ、良い報告じゃないか)
「そうか んー、僕も父親になるのか まだ実感湧かないけど、これからなのかな」
「それと、もう一つ」
「うん、何?」
「お昼に恵美さんと加奈さんが訪ねてきました」
「うん・・・」
 (こんなに良い日なのに・・・)
「それで・・・ その・・・」
「うん」
 (その先の話は大体予想できるから大丈夫だよ、告白して楽になって)
「結奈さんをウチに呼んで・・・ それで・・・」
「うん?」
 (ユイナ?んー、聞いた事あるような無いような・・・)
「三人で抱きました・・・」
「ん?」
 (なんだって!?)
「それで・・・ 結奈さんは泣いていました・・・」
「そうか・・・」
 (分からない、凛子さんの話しが頭に入ってこない・・・  無理やりやっちゃったのか!?)
「ごめんなさい、宗太くんに迷惑をかける事になるかも・・・」
「僕の事はいいよ それより、凛子さんの方が心配だよ ユイナさんとはちゃんと話した?」
「いえ、服を着て直ぐに出て行ってしまったので・・・」

よくよく話を聞いてみると主犯は恵美さんらしい
それに加奈さんも随分はしゃいで煽っていたようだ
 (凛子さんを巻き込むなんて何を考えてるんだ 大事な身体なんだぞ)

恵美さんと加奈さん、そして凛子さんの三人は基本は受け身でレズ用語で言う所のネコの立ち位置らしく

 僕の知らないところで三人が関係を深めている様な口振りだった事はおいといて・・・

恵美さんが「タチになってくれる女性を探しましょ」と言い出したのが始まりだったらしい
そして「結奈さん」というのは少し前に近所に越してきた若宮さんの奥さんで
たぶん歳は二十代前半から半ばぐらい、色々忙しくてまだ挨拶程度の顔合わせしかできてないけど
小柄で大人しそうな雰囲気とメガネが印象に残っている奥さんだ
恐らくだけど、恵美さんは「最近越してきた」という弱みにつけ込んで結奈さんを呼び出したに違いない
おっとりした印象を受ける見た目とは違い、本性は悪魔のような女だ

 分かっているけど、目の前にすると弄ばれちゃうんだよな・・・
 もしかして、恵美さんの本性はタチなんじゃ・・・ というよりSっ気があるのか?

「話は大体わかった 先ず結奈さんと話ししよう」
「明日、結奈さんと話してみます」
「じゃぁ、僕も」
「いえ、私一人で」
「でも、心配だよ」
「結奈さんの気持ちを考えると宗太くんは知らない事にした方が・・・」
「そうかもしれないけど・・・」
「それに、これは私がやった事ですから」
「凛子さんは悪くないよ、悪いのは恵美さんと加奈さんだろ 凛子さんが責任感じる事なんてないよ」
「ありがとう」

最後の「ありがとう」という言葉と
彼女の思いつめた顔がいつまでも頭の中に残っていた


[34] 色は思案の外  最後のティッシュ :2017/09/24 (日) 22:06 ID:vbeYdUh2 No.25034
日曜の朝、僕は凛子さんを残して家を出た
コンビニに寄って競馬新聞を買うと向かう先は一つ
場外馬券売り場のウインズに向かったけど、こんなにも楽しくない競馬に向かうのは初めてだ
ウインズに着くと見覚えのある常連も何人かいて、朝一番の出走を今か今かと待ち構えている
そんな猛者たちの様子、勝った負けたの楽しそうな会話
目や耳に入ってくる物は、まるで僕が立っている世界とは別世界の出来事の様に感じる
凛子さんから連絡があるまでの時間、何時になるのか分からないけど
僕は時間を潰す為だけに、ここに立っている
今週は、東京・京都・小倉の3場で開催されていて
買った新聞には乗っていない小倉にも単勝に100円ずつ賭けて時間を潰していた

 何故だ・・・ 何故こんなに当たるんだ・・・

妙な不安に駆られ、午後一の5レースの出走前に凛子さんと連絡を取ろうとしたけど返信も何もない
そんな僕の心配を余所に時は進み、遂にはメインの重賞レース、フェブラリーS(GT)のファンファーレがフロアに鳴り響いた

 なんで凛子さんから返事が何もないんだよ・・・
 何かあったのか?

その後も凛子さんからの返事がないまま最後の12レースが終わってしまい
フロアに集っていた猛者達は解散していく、そして僕の財布は無残にも膨れ上がっている

 嫌な予感しかしない
 まさか、万馬券の呪が本気出したって事はないよな・・・
 それなら僕の方に来いよ・・・

まだ日の入りが早い二月の5時頃、僕は玄関のドアを開けた
凛子さんからの連絡は無いままだ
薄暗い玄関には見慣れない一足の靴が置いてあり、大きさから持ち主は女性だと思われる
家の中は暗く静まり返っていて人の気配を感じない
僕は恐る恐る暗い廊下をリビングに向かって足を進めた
リビングに明かりは無く覗く必要はない
寝室の前に立ち耳を澄ませたけど、ドアの向こうからは何も聞こえてこなかったので少しホッとした

 どこにいるんだ・・・

確認だけでもと思い、何気なく寝室のドアを開けた時
開いたドアから優しい光が漏れ出てきた
二つのベッドの間にあるスタンドライトが点いている
その光が暗闇の中に浮かび上がらせているのは横になった凛子さんの素肌だった
正確には脇の辺りまで掛布団を掛け、明かりに背を向けて何かを抱きかかえている様な姿勢で横になっている
凛子さんが肩をこちらに向け、静かに振り向いて顔が明かりに照らされると
伸ばした人差し指を唇に当て、僕に大きな音を立てないように促してくる

恐る恐る寝室に足を踏み入れてドアを静かに閉めた
目に入ったのは凛子さんの向こう側にある長い黒髪の頭、スタンドライトの隣に置いてあるネガメと水のペットボトル
凛子さんの胸の中で寝入っている女性が誰なのかは考えるまでも無かった
明かりを背にした影の中、結奈さんの寝顔を眺める凛子さんは限りなく優しい顔になっている 母性が溢れていた
僕はその様子に妙な安心感を覚え、そっと寝室を出た

リビングの明かりを点け、テーブルの上に残された二つのティーカップを目の前にしながら腰を下ろし
頭に思い浮かべたのは僕のベッドだった
二人分と思われる衣服が置いてあり、当然の如く下着も・・・

 僕が帰ってきた時は、家の中に明かりは点いてなかった
 という事は暗くなる前からなのか・・・

リビングの扉が開く音に振り向かされると、そこには衣服を纏った凛子さんの姿があった
手には靴下を持っていて、その靴下を履くと僕の向かいに腰を下ろした
「結奈さんは?」
「まだ寝てるわ」
「例の話は?」
「見ての通りよ」
「そうか・・・」
 (一言で終わり!? 見ての通りって言われても・・・)
「競馬の方はどうだったの?」
「うん・・・ツキまくりの絶好調・・・」
「ふふっ 良かったわね」
 (もう、良いのか悪いのか・・・)
「そろそろ結奈さんを起こした方が・・・ 家の事もあるだろうし・・・」
「ご主人は出張に出ているらしいから大丈夫よ」
「そうか・・・」
 (だからと言ってずっと寝かせとく訳には・・・)

僕は凛子さんに淹れて貰ったお茶をすすり、凛子さんがキッチンに立ち夕食の準備を始めた時だった
僕の耳に寝室のドアが開け閉めされる音が入ってきた
その事を凛子さんに伝えようとしたけど、それより先にリビングのドアが開いてしまい
目を丸くした結奈さんと目を合わせたまま、二人で金縛りに遭った

 流石だ、生活動線を重視した間取りに無駄は無い
 そして、そんな事に感心している場合ではない

 (どうすればいい? 笑顔だ、笑顔しかない)
とりあえず僕は満面の笑みを浮かべた
「やあ、こんばんは」
 (まさか、この場面で「やあ」なんて言葉が出てくるとは・・・)
「こんばんは・・・」
 (よかった、返事してくれた)
「あら、もう起きちゃったの?」
「はい・・・」
キッチンから凛子さんが助け舟を出してくれて一度はホッとしたのだが
「今、夕食の準備をしているの 結奈さんも一緒に食べない?」
 (え・・・ 何言ってるんですか・・・)
「でも・・・」
「遠慮しなくていいのよ、帰っても何も用意してないでしょ?」
 (社交辞令じゃなくて本気で誘ってるんですか!?)
「はい、でも・・・」
「今日はお買い物に行ってないから大した物は出せないけど、食べていって」
「はい・・・」

目の前に凛子さんの心と身体を独占していた女性が佇んでいる、恵美さんと加奈さんに続き新手の競合相手が現れた訳だが

 (何だ・・・この何とも言えない気持ちは・・・ そうか、新婚旅行の朝食の時か 恵美さんと加奈さんと顔を合わせた時の・・・)

あの時は三人の様子に圧倒されたが、今の僕は違う
あの悪魔と小悪魔コンビの二人とは違い、結奈さんの大人しそうな雰囲気が僕を冷静にさせているのだろうか
それとも、メガネの奥で弱々しく潤んでいる瞳が、僕の方が立場が上である事を伝えてきているからだろうか
「どおぞ、座ってください」
「はい・・・」
 (おっと、先ずは結奈さんを安心させなければ)

 今にも泣きだしそうな顔されると、優しくしたくなっちゃうんだよね

「僕は凛子さんのレズ交友を認めているので、僕の事は気にしないでください」
結奈さんからの返事は無いが、僕の言葉に耳を傾けている事は見て分かる
「レズはハマりやすい性行為だと聞きますから仕方ありませんよ 結奈さんを変な目で見るような事はしません、大丈夫ですよ」
 (よし、うまく言えた 今日は競馬だけじゃなくて口先も絶好調だよ)
レズの世界に引き込まれてしまった若い奥さんを紳士的に擁護し
更に僕ら夫婦の事情も無駄なく上手に説明できた
うつむいたままの結奈さんからは返事は返ってこなかったけど、僕がこの場に平然と座っていられる理由を分かってくれたハズだ

 本当は、もう心配が止まらないんだけどね
 これから仲良くなっていこうという御近所さんだったけど
 先に嫁さん同士が好い仲になっちゃうなんて・・・

「結奈さんに何言ったの!」と強めに聞かれた後はチョットしたお叱りを受けたけど
今回も何らかの危機を乗り越える事ができた
あらゆる不幸、あらゆる不運、今なら何でも乗り越える事ができそうだ

 僕ら夫婦って無敵じゃないのか?
 そうじゃなかった 夫婦というより家族だよね

少し早目の夕食後に二人は 二人と言うのは僕以外の二人の事なんだけど
一緒にお風呂に入って、その後は寝室に籠って二時間ほど何かをしていた
凛子さん曰く、僕の言葉で落ち込んだ結奈さんを励ましていたらしい
それを心穏やかにしてリビングで待つ事ができた
それどころか
 (女って底無しなんだな)
と、呆れる余裕さえあった
まぁ、色々あって気持ちが疲弊していたり麻痺していたりって事もあったと思うんだけど
僕の心は一つ成長したんだ
そして初めて心から凛子さんのレズ行為を容認できたのがこの時で
恵美さんと加奈さんに対する気持ちも少し和らいだ

 本当に少しだけだよ あの二人は悪魔的すぎて、全て容認する事は出来ないよ
 できることなら、結奈さんとだけ付き合ってほしいんだよね



週が明け会社の中はいつもの風景だけど、僕の気持ちは別人になったかのように違っている
つわりの症状なのか、凛子さんは胃の不快感を感じていると言っていたけど
そんな様子は微塵も見せずに仕事に打ち込んでいる
妊娠の事は契約が終了する三月末まで身内以外は誰にも言わない、と凛子さんに約束させられたので
その事を知っているのは、会社の中では僕だけだ
だから僕が頑張って凛子さんに楽させてあげなければならない
凛子さんは真面目だから、何か頼まれると頑張っちゃうんだよね

 仕事の鬼ぐらいじゃ足らないかな
 それなら鬼神ぐらいになってみるか


[35] Re: 色は思案の外  abu :2017/09/26 (火) 10:11 ID:r9tONIVE No.25042
更新有り難うございます。
毎週末の大量更新、マジ美味しすぎますよ。
また、[32]の『凛子さん会社に現る!』は予想外の展開で
笑っちゃいました。
社内でのやりとりも健在で最高!!
宗太くんの『心の声』がだめ押ししてて、またいいです。
次回更新を心待ちにしたいと思います。


[36] Re: 色は思案の外  ふぐり太 :2017/09/26 (火) 22:49 ID:01xpl3KE No.25045
更新ありがとうございます!
まさかの復職に妊娠と新しいレズ友
大量の投稿も飽きない展開でした
続きを楽しみしてます

[37] Re: 色は思案の外  最後のティッシュ :2017/09/27 (水) 20:24 ID:5nuvBrSQ No.25051
abu様、ふぐり太様 レスありがとうございます

いつも励みになる感想を頂き嬉しく思っている反面
たいへん心苦しい限りではありますが、次の投稿で一旦終了とさせていただきます

確約はできませんが短編を挟みもう一度本編って感じの予定なんですが
宗太編の後はどこまで書けるか自分との戦いというか、
ずっと書きたかったオナニー的な作品になることをお伝えしときます


[38] Re: 色は思案の外  abu :2017/09/29 (金) 17:08 ID:1eauhuAU No.25060
最後のティッシュ様レスありがとうございます。
投稿を楽しみにしているのは事実ですが、無理なお願いをしてストレスになるようですと
本末転倒ですので最後のティッシュ様のタイミングで投稿をしていただければ幸いです。
一旦終了につきましても充電期間と受け留め、気長にお待ちしております。
私、とりあえず毎日レス番の確認だけはいたします。
ほんと楽しみな作品ですので、完走をお願いしたいただそれだけが望みです。


[39] Re: 色は思案の外  最後のティッシュ :2017/09/30 (土) 09:02 ID:8k5TZFtA No.25063
abu様、ストレスは感じていませんので御安心を
どっちかというと理想の女性を想い描く感じでストレスの発散になっている感じですかね
では、締めの投稿をします


[40] 色は思案の外  最後のティッシュ :2017/09/30 (土) 09:03 ID:8k5TZFtA No.25064
娘の凛華(りんか)は5歳になり、息子の宗佑(そうすけ)は3歳になった

「凛」は僕が無条件に好きな字だから、生まれてくる子が女の子って分かった時から「凛」の字は決めていたんだ
「華」の字は凛子さんが付けたんだけど
「私には似ずに華やかな娘に育って欲しいの」
なんて言ってた
勿体ない、華やかどころか絢爛豪華になれる素質はあるのに「いつもの凛子さん」は、いつまで経っても「いつもの凛子さん」なんだよね
それは夫である僕が悪いんだ

 僕に凛子さんの魅力を引き出す器量が有れば・・・

息子の「宗」の字は子供達から「田舎のじいじ」と呼ばれている頑固なクソ親父のゴリ押しだ
それを受けるなんて凛子さんも人が良過ぎるよ
名前を届け出るまでは、生まれてくる子が男である事を隠しておけばよかったと思った事もあるけど
今となっては宗佑は生まれる前から宗佑に決まっていたわけで、「宗佑」意外の名前なんて考えられない

 うん、良い名前だ

僕は野上 宗太(のがみ そうた)36歳
愛する妻は凛子(りんこ)さん39歳、奥様方からは憧れの眼差しを向けられ旦那衆からは畏怖される、町内ではちょっとした有名人だ


 はぁ・・・ 今日も仕事か・・・

最近の僕は疲れている
「おはようございます」
駅を出た所で伊藤が元気に声を掛けてきた
「おはよ」
「今日からですね」
「ん?」
「四代目ですよ」
「ああ、そうだな お前に任せる」
「何言ってるんですか それは主任の役目でしょ」
「そうだよな・・・」
 (最近はこんなのばっかりだな・・・ 面倒な事押し付けやがって、どうせ師匠の仕業だろ・・・)
この不幸は前社長が第一線から退いて、会社を三代目が引き継いだ事から始まった
その三代目が部長だった師匠を経営側に引き込んでしまったのだ
しかも

 あの師匠が飛び級で専務だなんて、せめてヒラ取締役からだろ・・・
 三代目も乱心は程々にしてくれよな
 子供達はまだ小さいというのに、先を見れば不安しかないよ
 もう、会社が泥船にしか見えない・・・

会社に着きオフィスに入ると、以前とは比べものにならないぐらい華やかな光景が広がっている
一応は企画営業部という部署は残っているけど、中身は以前の面影を残しつつ大きく変わってしまった
元々は二つあった部署をくっつけて名前に箔を付けただけらしいけど
部署内で分けて元に戻したといったところかな

 くっつけたり分けたり・・・
 前から思ってたけど、いい加減な会社だ

先輩の高岡さんや同期の村上、そして後輩の西岡が配属された課は「プランニング セクション」

 つまり企画課だろ!

プランナーとかプランニングディレクターとか呼ばれて羨ましい奴らだ
それに、メンバーの半数ちょいを女性が占めて見た目は華やかな部署なんだよね

そして僕の肩書はというと「企画営業部 営業課課長兼主任」 人に名刺を見せるのも恥ずかしい肩書だ

 もっとよく考えろよ!
 元々ウチには課長とか係長とかいう役職は無かっただろ!
 主任って係長ぐらいのランクじゃないのか!?
 なんで課長兼主任なんだよ!主任だけでいいよ!

師匠は「そのうちカッコイイ名前にしてやる」と言ってくれたけど、あれから何年経った?

 (あんた専務なんだろ、早く何とかしてくれよ・・・)

まぁ、たぶんだけど、そんな僕の悩みなんて小さいものなんだろう
あっちの高岡さん組は女性が多くて華やかに見えるけど
あれだ、女のあれだ、高岡さんは色々と気苦労が絶えないみたいだし
村上は「俺って最近無口になってないか?」なんて言っている
口数は充分多い方だと思うけど、何らかの制限が掛かっているのだろう
中途採用や新卒を積極的に取り入れたのは、こっちと一緒だけど
男ばかりのこっちの方が気楽でいいね

「おう、野上 朝礼終わったか?」
「まだです」
 (師匠、時間見てくださいよ なんで重役出勤しないんですか・・・)
「そうか、朝礼が終わったら一服するぞ 早く朝礼を終わらせろ」
 (毎度毎度、ここに顔を出す度に・・・ 専務って暇なのか!?)
「朝一の一服は暫く無理です 今日から後藤くんが来るので」
「そうか そうだったな・・・」
 (師匠・・・ 寂しそうな背中をこっちに向けないでください・・・ ごめんなさい)
ここ数年で会社は大きく変わったけど、変わらない師匠を見ると心が安らぐんだよね

そして師匠と入れ替わりに部長の上島さんが一人の男性を連れてオフィスに入ってきた
「朝礼を始めるぞ」
今朝はオシャレな名前の課と一緒に朝礼で上島さんが前に立っている
「今日から皆の仲間になる後藤くんだ」
 (これが僕に押し付けてきた例の四代目か、真面目そうだな)
「後藤です!宜しくお願いいたします!」
 (おお・・・ 気合入ってるな・・・)
「彼が営業課の課長で主任の野上、君の直接の上司になる」
 (上島さん・・・ その紹介やめてくれ・・・)
「ご指導のほど宜しくお願いいたします!」
「はい よろしく・・・」
 (硬い!硬すぎるだろ!こんなカッチカチな人を指導なんてできないよ・・・)
僕にとって部下の教育は面倒事だ 師匠の教えが素晴らし過ぎて仕事に関しては自由人なんだよね
彼は28歳、他所の釜の飯を食っていたので基礎は出来ていると思うんだけど

 後藤くんは僕には合わないだろ・・・ なんで僕なんだよ
 社長の息子とかそんなの関係なしに無理だ・・・
 現場の経験なんか無しで取締役にしちゃえよ・・・

「野上主任、上島部長からお聞きしました」
「ん?何を?」
「ショッピングモール、アウトレットモールの内装を立て続けに受注された件です」
「ああ、あれね・・・」
 (あれは死んだ、三・四回死んだ 思い出したくない あんな大型物件、調子に乗って2件も取りに行くんじゃなかった・・・)
「如月専務も野上主任は我が社の英雄だと仰っていました」
 (違う、それは違う それは僕が伝説の主任と結婚した事を言ってるんだ)
「まぁ、その話はまたの機会にしよう」
「はい!」
 (声大きいな・・・)
「とりあえず、お世話になる各部署に挨拶してから客先回ろうか」
「はい!」
 (ずっとその調子か!?疲れないのか? 疲れるだろ!僕が)
「後藤くん、先ず肩の力を抜こう」
「はい!」
「そうだな・・・ 後藤くんは競馬に興味ある?」
「はい?」

 師匠、いいんですね
 僕の好きにしちゃいますよ
 如月イズム叩き込んじゃいますよ 四代目に
 (ああ・・・ 好き勝手してたあの頃に戻りたい・・・ 最近は新人を連れ回してばっかりだ・・・)


疲れた、今日も疲れた
この疲れをリセットしたくなると、家路についた足が自然と速まる
「ただいま」
おかえりなさいの代わりに聞こえてきたのは
「宗佑!こっちに来なさい!」
という威勢のいい声だった
 
 会社でも家でも声の大きい人ばかり
 うん 元気な事は良い事だ

 (それにしても宗佑のやつ、今日は何やらかしたんだ・・・)

リビングのドアを開けると、そこはファンタスティックな世界だった
床に散りばめられたティッシュが見慣れたリビングを幻想的な空間に仕立て上げている
「ただいま・・・」
「おかえりなさい、夕食は少し待って」
「はい・・・」
腰に手を当て仁王立ちする凛子さんが見下ろしているのは、小さな体で懸命にティッシュを拾う息子の姿だ
凛子さんの背が高い分、余計に宗佑が小さく見える
この凛子さんの目を盗んでここまでの作戦を展開するとは大したやつだ、と感心はしたが
 (宗佑・・・)

 宗佑はまだ3歳、なんだか可哀そうだ
 手伝ってあげたい なんならパパが床に散りばめられたティッシュを全部拾い集めてあげてもいい
 しかし、そんな事はママが許さないだろう
 がんばれ、宗佑

本当は叱る役目は父親の僕の方が相応しいんだろうけど
やっぱり一緒にいる時間が長い凛子さんが叱ることが多くなっちゃうんだよね 申し訳なく思っています
そしてお姉ちゃんの凛華はというと、我関せずでお絵描きに夢中になっている
「凛華、宗佑を手伝ってやらないのか?」
「うん」
 (一言か・・・ クールだね)
「今日はパパとお風呂に入ろうか」
「ママと入る」
「そうか・・・」
 (もう少し優しい言い方できないかな・・・ がんばって仕事を早く終わらせたのに・・・)
「凛華、テーブルの上を片付けなさい」
「はーい」
「パパ、着替えてきて」
「はい・・・」
見渡すとリビングの床は大方片付いていた
 (宗佑 もう一息だ、がんばれ しかし・・・)

 なぜ楽しそうにティッシュ拾いをやってるんだ?
 おまえ、叱られてるんだぞ
 新しい遊びを覚えやがったな・・・

「もう、こんな事しちゃダメよ」
と念を押されお叱りタイムは終了、何故か叱られてない僕もホッとしてリビングを出た

着替えて戻ってくると、いつもの我が家の風景が広がっている
あんなに叱られていたのに、宗佑は夕食の準備をする凛子さんにくっついていて
「向こうで待ってなさい」
と言われても「うん」と返事するだけで離れようとしない

 甘えん坊だな
 そんなにママの事が好きなら叱られるような事しなければいいのに
 でも、無理なんだよね 男の子だから
 叱って甘えられて、甘えて叱られて
 叱られる方も甘えられる方もどっちも大変だね

そんな宗佑に凛子さんは随分手を焼いているようだ
外に出ると色んな物を拾って来たり自ら汚れに突撃して行ったりと、僕からすれば宗佑の気持ちは何となく理解できるけど
凛子さんからすれば宗佑の行動は理解不能らしいんだよね 凛華も時々宗佑を冷めた目で見ている事がある

 女は男の好奇心とか冒険心ってものが分からないのかな・・・

まぁ、ある程度の事は自由にさせてるようだけど、宗佑は今日もやりすぎたようだ
甘えん坊なところが気にはなるけど、師匠が「男は飯食わせて遊ばせとけば勝手に育つ」と言っていたので大丈夫だろう
それより、心配なのは凛華の方だ
以前、凛子さんの実家で見せてもらった子供の頃の凛子さんの写真
目の前の凛華は、その凛子さんに似てしまっている
どうせ似るのなら100%似てくれた方が気が楽だった
しかし、残念なことに僕の緩んだ血が絶妙に混ざっちゃってるから
たまらなく愛おしい容貌になってしまっている

 親の色目であってほしい

そう何度願った事か
しかし現実は残酷で、どうやら僕は神様に試練を与えられたようだ

 この世の全ての男から凛華を守る!

「大きくなったらパパのお嫁さんになる」
 (え!?凛華、今なんて言った)
「はは・・・ 急にどうしたんだ」
 (これは夢にまで見た愛娘からの・・・)
「たっくんのママがね、そういうとパパが喜ぶって 嬉しかった?」
「ああ、嬉しいよ」
 (恵美さんか・・・ 変なこと凛華に教えるなよ!でも、ありがとう!)

 恵美さん 土下座でも何でもするから、凛華にだけは手を出さないでくれ

そう強く願った夕食前のひと時だった


[41] 色は思案の外  最後のティッシュ :2017/09/30 (土) 09:04 ID:8k5TZFtA No.25065
僕は自分の部屋に籠りパソコンを起ち上げて、アダルトなショッピングサイトを閲覧している
以前は僕一人の部屋として使っていたけど、今は二人の部屋という認識でいる部屋だ
元々あった椅子と机は入れ替え、座卓の上にパソコンとオグリキャップ
カーペットの上にクッションを二つ並べて、それにお尻を置いている
そして並んで置いてあるもう一つのクッション、その主を僕は待っている

僕がリビングを出る時は、凛子さんはヨガを終えヨガマットの片付けを始めていた
今夜の凛子さんも美しかった
宗佑は凛子さんのヨガが終わるまで、隣でお行儀よくママを眺めていたけど
宗佑の目に映っていたママは、僕が7年前に初めて見たヨガマットの上の凛子さんとほとんど変わっていない

あの頃から変わった事といえば、お母さんになった事、そして復帰したパート先のホームセンターでは
フォークリフトを自在に操り他のパートやアルバイトを纏め上げて「師団長」と呼ばれているところかな
その「師団長」については、凛子さんと同じホームセンターにパートに出ている近所の方から聞いた話だから信憑性は高い
僕の上司だった時の「吉田隊長」と比べると随分昇格しているようだ

 「隊長」や「軍曹」は字名としてありそうだけど「師団長」は初めて聞きましたよ・・・
 ホームセンターのパートに復帰して数ヶ月でそれって、どんな働きぶりを見せてるんですか・・・
 そして、玉掛けの資格も取得しようとしていますね 貴女は何を目指しているんですか?

宗佑を幼稚園に預ける事ができるようになるとパートに出始め
家の事を優先させながらも、時間を作ってジムに通ったり料理教室に通ったりとアクティブに活動している
僕と二人で暮らしていた時とは勝手が変わったはずなんだけど、それをものともしない様子だ

 ママになってから随分パワフルになりましたね
 流石です


僕の耳は階段を上がってくる足音を追い
その足音が僕の部屋の前で止まると、ノックも無しにドアが開く
そして、トレーが座卓の上に置かれ湯飲みが二つパソコンの前に並べられると
隣に座った凛子さんとパジャマ越しに肩を着け合った
「やっと寝てくれたわ」
「ありがとう なんで僕の時は寝てくれないのかな」
「変な話しを聞かせるからでしょ」
「変なっていうより興味ありそうな事を・・・」
「だから興奮して寝なくなるのよ」
「そうか・・・」
「ふふっ せっかく寝かせる前は大人しくさせてるのに」
「今日も宗佑はお行儀よくママのヨガを眺めてたね」
「うん・・・」
「ん?」
「もぉ・・・」
「どうした?」
「わかってるでしょ」
「ははっ 凛子」
「うん 宗太さん」

時々だけど、二人になると凛子さんは甘えん坊になるんだよね
そして、どこで切り替わっているのか 最近は見極めが難しくなってきた気がする
結婚する前からの事だけど、彼女の甘えスイッチが何所にあるのかサッパリわからない
怒りのスイッチは分かっているのに・・・

開いたサイトでのショッピングは後回しにして、甘えん坊になった凛子さんを受け止めた
彼女は子供たちを厳しく躾けているけど、それ以上に優しい母の顔を向けている
その顔は僕には向けてくれない、子供たちだけの特権だ
でも、甘えた凛子さんを受け止められるのは僕だけの特権なんだよね

クッションを肩の下に敷いて二人で寝転がった
「今日も大きな声で宗佑を叱っちゃった・・・」
「ははっ 一生懸命ティッシュを拾ってたね」
「うん・・・」
「リビングに入って驚いたよ 今日のティッシュはやりすぎだな、凛華も呆れてたみたいだし」
「ふふっ そうね」
「ティッシュ拾ってる時も何か楽しそうだったし、凛子の事を怖がっては無かったみたいだよ」
「うん」
「それに、ずっと凛子にくっついてたし、甘やかさずに甘えさせるって大変だね」
「うん」
「やっぱり心配だな 宗佑のやつ甘えん坊過ぎないか?」
「子供は親にくっついたり離れたりしながら育っていくらしいわよ」
「そうなんだ 凛華は僕から離れっぱなしみたいだけど・・・」
「お嫁さんになるって言ってもらったんでしょ?」
「あれは恵美さんが」
「宗太さんが喜んでくれるって言われたからよ」
「そうかな・・・」
「うん、そうよ」
 (凛子さんは子供たちの事を色々わかってるんだな・・・ 僕と違って)
「ありがとう」
「急にどうしたの?」
「子供の事も家の事も色々と、何となくね」
「うん」
今夜はセクシーな雰囲気は無く穏やかな二人の時間を過ごしている
大人のオモチャを買った後は、このまま二人で子供たちが寝ている寝室に向かう事になりそうだ

でも、セックスになった時は凄いんだよね
子供を産んでから凛子さんの感じ方が変わったんだ
僕が感じる膣の挿入感は赤ちゃんが出てきたんだから変わるのは仕方ないと思うんだけど
それ以上に変わったのが、抱いた時に感じ取っている抱き心地というか何というか
凛子さんの反応に深みが出たというか何というか
ついさっきまで眺めていたパソコンには拘束具が映し出されていた
凛華が生まれてから封印してきた拘束プレイを再開したとき、凛子さんはどんな反応を見せてくれるのだろうか

 それを考えると、もう・・・

「凛子」
「どうしたの?」
「もう一人の息子がママに甘えたがってるよ」
「もう一人の?」
僕は下腹部を凛子さんに押し付けた
「ほら、宗太Jrがママにキスして欲しいって」
「ふふっ」
「ん?」
「宗太ジュニアって何なのよ」
「だから、僕が生まれた時からの息子の宗太Jr・・・」
「バカな事言ってないで お買い物しましょ、遅くなるわよ」
「えっ! Jrは?」
「甘えるのは我慢させなさい」
「それが、聞かん坊で・・・」
「そこは父親の宗太くんが躾なさい 親の務めよ」
「はい・・・」
 (この気持ちを抑えろだなんて・・・ 鬼ですか・・・)
凛子さんがママになって変わった事
それは気が無い時は僕からの誘いをハッキリと断るようになった事なんだよね
たぶん、切っ掛けは育児の疲れからだったと思う
最初は遠慮がちに断られたんだけどね・・・

 今日は甘えたかっただけなんだね
 気が無い凛子さんを誘った僕が悪い
 次はもっと上手に口説いて、その気にさせよう



会社の中では初々しい研修中の新入社員を見かけるようになったけど
営業課では今年は新卒を採っていないので僕は気楽に過ごしている
面倒を見ている社長の息子の後藤くんは僕の指導の成果が出始めたのか
入社時のカッチカチと比べると良い感じで緩くなってくれた

 順調だ、もう後藤くんも主任離れの時期だな
 そしてそろそろ、若手達には営業課伝統の地獄を見てもらおう
 一件あるんだよね、取れそうな大きな物件が
 よし、取っちゃおう
 (決めた、これは伊藤に任せる 君がリーダーだ、若手を使って何とかしてね)

営業課には大先輩の佐々木さんが居るから安心だ
影は薄いけど数々のプロジェクトリーダーを補佐してきた猛者なんだ 僕も大変お世話になった

 上手く使えば有能なんだよね
 高岡さんは佐々木さんを活かせてなかったみたいだけど
 伊藤はどうかな?

若い課で多少の不安はあるけど、大体の事は順調にきている
不満は人任せにできない業務が増えた事かな
 (師匠 役職が枷になって、教えの真髄「人任せ」を全力発揮できていません そろそろ解任してください)


そして季節は春から夏に向かおうという日曜日の朝
お義父さんが緩んだ顔で凛華と宗佑を迎えにきた
「父さん いつも言ってるけど、二人を甘やかさないでね」
「ああ、分かってる」
「本当に分かってるの?」
「分かってるって まったく、口うるさい所は母さん似だな」
「お義父さん、お願いしますね」
「はっはっは 宗太くん、心配しなくていいよ 二人揃って心配性だなんて、相変わらず仲が良いな」
 (お義父さん・・・)

 お義父さんは「分かってる」って言ったけど
 見えちゃってるんだよね、凛子さんに叱られるお義父さんの姿が・・・
 間に入る僕の身にもなってくださいよ

幼稚園に行くのを嫌がってグズる宗佑も「吉田のじいじ」は好きなようで今朝はご機嫌だ 優しいばあばにも会えるからね
凛華と宗佑を見送った後、僕らは洋室に入り仕事着に着替えた
僕はいつものビジネススーツ、凛子さんもフォーマルなパンツスーツ
そして洋室から出勤して向かった先はオフィスと言う名の寝室だ

「主任」
「どうしたの?」
「主任・・・」
「あっ ちょっと、野上くん」
「お願いを聞いてもらえますか」
「その前に手を離しなさい」
「主任を枷で拘束したいんです」
「何言ってるの!ふざけてるの!?」
「本気です アナルも犯したい」
「バカなこと言ってないで 手を離しなさい」
「嫌です」
「離しなさい!」
「主任!」
「だめっ あッ だめっ、やめなさい!」
「無理です もう止められません!」
「野上くん!だめっ!」
「主任のここを・・・」
「あッ だめよ! そこはッ」
「ここを・・・」
「野上くん! やめなさいッ」
「主任、手が邪魔です この行儀の悪い手には大人しくなってもらいますよ」
「あッ 野上くん お願い、やめてッ」

俗にいうイメージプレイってやつかな 月に一度のお楽しみなんだよね
甘いオフィスラブってのもやってみたけど、凛子さんはこっちの方が燃えるみたいだ
思い切ってお願いした時は変態扱いされるかと思ったけど
今では凛子さんも前夜の打ち合わせから乗り気になってくれているので楽しい
それに何より

 リアルだ というより本物なんだけど

「はぁッ はあぁん だめっ・・・」
「どうしました?」
「だめっ い・・・ いッ・・・」
「イッてください」
「ぐうぅッ うッ! んんーッ!」
「犯されて何回もイクなんて 主任ってスケベだったんですね」
「はぁ あぁ はぁ・・・ 言わないで・・・」
「続けますよ」
「もう許して・・・」
「だめです、まだアナルを犯してませんから」
「それだけは許して・・・」
「だめです 犯します」
「嬉し・・・  酷いっ あぁんっ」

凛子さんとのエッチを考えると頭の中にアイデアがどんどん湧いてくる
夫婦仲は良好、仕事も若手が育ってきてくれて順調そのもの
それに、最近は競馬も絶好調というオマケつきだ

 こんなに良い事ばかりだと逆に怖くなるよね



         おしまい


[42] Re: 色は思案の外  ふぐり太 :2017/10/02 (月) 20:48 ID:oocOFCoM No.25074
上司と部下のイメージプレイで夫婦円満ですねw
宗太くんの近況が詰まった締めの投稿お疲れ様でした
まだ更新があるのでしょうか?
最後に「おしまい」と書いてあったので気になっています
期待しながら更新を待ってます
一先ず お疲れ様でした

[43] Re: 色は思案の外  でく :2017/10/02 (月) 20:49 ID:L7XBD4vQ No.25075
一気に読ませていただきました。お疲れさまでした。凛子さんに惚れました。次回作、楽しみにしてます。

[44] Re: 色は思案の外  abu :2017/10/04 (水) 10:35 ID:brSXk0Pg No.25081
更新、そして完結ありがとうございました。
短期間での一挙集中完結すばらしすぎますよ。
もう宗太くんの心の声が大好きで思わず笑うことがしばしば。
取り敢えず第1部完でしょうか。
また師匠との掛け合いを楽しみにお待ちします。

ほんと面白かったです。(^_^)v


[45] Re: 色は思案の外  最後のティッシュ :2017/10/06 (金) 06:42 ID:M3yrFNaY No.25092
ふぐり太様、でく様、abu様 レスありがとうございます

書いた自分自身も好きな作品で今は頭の切り替えに苦労しています
少し先になるかもしれませんが、このスレッドに投稿しますので
よければまた感想をお聞かせください


[46] Re: 色は思案の外  たのむよ :2017/10/19 (木) 17:04 ID:4pjgu/5c No.25157
次を期待してます。

[47] Re: 色は思案の外  最後のティッシュ :2017/10/25 (水) 22:09 ID:GRTln.F6 No.25211
競馬はGIの季節に入りましたね
次は天皇賞(秋)、エリザベス・マイル・ジャパン・チャンピオンズと続き年末には有馬記念
そして年が明ければ金杯と馬に思いを馳せる季節です
そんな日々を送っていますが、ようやく次回作に着手しました
というか、短編を挟むつもりで書いていたモノが思うように書けずに破棄しちゃったんで間が空いてしまったんですけどねw
ということですので、もうしばらくお待ちください


[48] Re: 色は思案の外  最後のティッシュ :2017/12/26 (火) 22:49 ID:KaDFHXQ. No.25423
お久しぶりです

随分間が空いてしまいましたが、一応少しずつですが新作を書いていました
とりあえず年内に一度投稿しようと思っていましたので
短めですが投稿します


[49] 色は思案の外  最後のティッシュ :2017/12/26 (火) 22:51 ID:KaDFHXQ. No.25424
大学最後の年末、珍しく雪が降ったクリスマスは友人と過ごした
彼氏という存在を避けるようになったのは高校一年生の夏
お互い好意を持って付き合っていたハズなのに、キスという肉体的な接触が目の前に迫った時
その行為が堪え難いほどに汚らわしく感じ拒んでしまった
恋人の関係になれても男女の関係にはなれないと分かってからは、お付き合いの申し出があっても断っている

 恋愛だけが人生じゃないって割り切ったつもりだけど
 やっぱり、友達から聞かされる恋愛話は耳が痛くなるのよね・・・

両親と年を越すために実家へ向かう足が重い
セックスに対する嫌悪感を私に植え付けた二人と顔を合わせる事になるから・・・


駅に着くと一台の見慣れた車が目に入り、ドアが開いて母さんが降りてきた
34歳の時に私を産み今は56歳のはずなんだけど、その容姿は四十代前半ぐらいに見える
一緒に暮らし、毎日当たり前のように顔を合わせていた時は意識する事はなかったけど
離れて暮らし顔を見るのは年に一度か二度になると、他の五十代の女性とは一線を画している事に気付かされた

『私の美貌に余計な装飾はいらない』

そう言い放っているかのような薄化粧にラフな衣服
厚手の冬服を着ていても分かる、私が子供だった頃から変わらないプロポーション
それを一層輝かせているのは180近い身長
この女帝のようなオーラを纏った女性が私の母で実家の近所の有名人

「一年振りね」
「うん・・・」
「少し前にこの近くに喫茶店ができたの レトロな雰囲気で良いお店よ」
「そう・・・」
「家に帰る前に寄るから付き合って」
「うん」
母さんは居心地の良い空間を見つける事が得意な人
私と弟が小さな頃から雰囲気の良いお店を見つけては連れて行ってくれて
その甲斐あっての事か、大学を卒業した後は建築設計の会社に就職する事が決まっている

母さんが「良い」と言ったお店は、本当に良い雰囲気のお店で心が安らぐ

 私の気持ちが見透かされているみたい・・・

そして目の前にした実家の玄関
この中で父さんが私を待っている
父さんと母さん、別々に顔を合わせるのは大丈夫だけど
二人が揃っているところを見ると、中学二年生の時に覗き見てしまった二人の寝室を思い出してしまう

「ただいま」
「あ、おかえり あれ?背伸びた?」
「伸びてない! 178のままよ」
 (気にしてるのに・・・)
「はは・・・ そうか・・・ でも、そんなに怒る事ないのに・・・」
「その話は、もう止めて」
 (そんな事より気にならないの?)
「そういえば就職先決まったんだって?」
「うん」
 (そうよ、私が父さんと話したいのはその事よ)
父さんは家では仕事の話しなんてしない、勤め先の話しなんて聞いた記憶がない
でも、建築関係の仕事をしている事ぐらい知っている
 (何かアドバイスのような事を・・・)
「卒業旅行とか行くのか?」
「行かない」
「そうか 父さんも単位取ってからは入社するまでフルでバイトしてたからな」
 (そうじゃない!母さんから私が何の会社に入るのか聞いてないの!?)
「それより父さんの仕事の事・・・」
「仕事?家にいる時ぐらい仕事の事は忘れたいな・・・」
「そう・・・」
 (役に立たないわね!娘の話しも聞けないの!?)

「荷物を部屋に置いてきなさい」
「はーい」
「返事は伸ばさない!」
「はい」
母さんに言われてリビングを出た
一年振りの実家は相変わらずで、いつもの父さんと母さん
でも、あの二人には秘密があり その秘密の行為を私は知っている

料理が上手で聡明で、それでいて更に美人の母さん
小学校に上がった時は、クラスの半分の男子の初恋の相手は母さんだったわ
いつも母さんに叱られてばかりで、どこか頼りない所はあるけど優しい父さん
何人か人が集まれば、いつの間にか輪の中心にいる不思議な一面を持っているのよね

他の人から見れば仲の良い普通の夫婦なんだけど・・・


今日は大晦日 リビングでは父さんと日課のヨガを終えた母さんが並んで座り、テレビを観ながら年越しを待っているけど
寝る前のひと時に二人が並んで座る こんな夜は・・・
「もう寝るね」
「あら、寝ちゃうの? 後二時間ほどで年が明けるのよ」
「うん でも、もう寝る」
「そう あ、そうそう 父さんね、少し先の話しだけど役員になるのよ」
 (え?)
「言わないでくれよ・・・ 忘れてたのに・・・」
 (どういうこと?出世する事が嬉しくないの?)
「なに言ってるの、経営側に立つのよ 覚悟を決めてしっかりしなさい」
「はい・・・」
相変わらず父さんは母さんに叱られている
 (こんな父さんでも重役になれる会社って・・・ どんな会社に勤めてるのよ・・・)

本当は「おめでとう」の一言でも言えばよかったかもしれないけど
二人の様子に呆れて言いそびれてしまった
階段を上がり入った部屋は私が高校を卒業するまで使っていた部屋で
母さんが掃除してくれているのか一年振りでも隅々まで綺麗にしてある
私がお風呂に入っている間に暖房を入れてくれたらしく温かい
ベッドに寝転んで見る部屋の風景も懐かしく居心地が良い
弟が隣の部屋を使っていた時は壁越しに物音が聞こえてきていたけど、今は何も聞こえてこない
両親は私達の好きなようにさせてくれて、弟は中学を卒業すると同時に家を出て料理人の道を歩み始めた

静かで心地の良い気分の中で眠気を覚え始めた時、部屋に近付いてくる足音が耳に入ってきた
 (これは母さんの足音・・・)
「入るわよ」
「うん」
私が身体を起こすと、部屋に入ってきた母さんがベッドに腰を下ろす
「この家が嫌い?」
 (母さんらしい真っ直ぐな質問ね・・・)
「別に・・・」
「そう、それならいいけど 近くに住んでいるんだから時々帰ってきなさい」
「うん・・・」
「父さんに何か聞きたい事があったんじゃないの?」
「うん・・・」
「不安なんでしょ?」
「うん・・・ 少しだけ・・・」
「ふふっ 考え過ぎて悪い方に考えてしまうところは私に似ちゃったわね」
「母さんはそんな事ないでしょ」
「あるわよ せっかく頭の良い所は父さんに似たのに、心臓の強い所も似ればよかったわね」
「え・・・ 父さんが頭が良いって・・・」
「ふふっ 本当よ」
「そんなウソ言って誰が得するのよ・・・」
「本当よ、高校は偏差値70台の進学校を出てるのよ」
「そうは見えないんだけど・・・」
「信じられないのなら田舎のおじいちゃんに聞いてみなさい」
「じゃぁ、大学も?」
「ううん、自分の名前が書ければ入れるような大学よ」
「え・・・ 意味分からないんだけど・・・」
「ちょっとした反抗だったらしいわよ 中学を卒業したら大工になるつもりでいたらしいけど、おじいちゃんに反対されたって言ってたわ」
「そうなんだ・・・」
 (全然頭良くないじゃない!頭悪過ぎでしょ!)
「だからよ、あなた達の進路の事には何も口出さなかったのは やりたいようにやってきたでしょ?」
「うん・・・」
「聞きたい事があるなら何でも聞きいてみなさい 何でも答えてくれると思うわ」
「うん」
 (競馬の事なら何でも答えてくれそうだけど・・・)
初めて聞いた父さんが父さんになる前の話し
母さんの事なら、高校の時はバスケ部の主将でインターハイの準決勝まで行ったという事ぐらいは聞いた事あるけど
父さんも学生だった事があるのよね 想像できないけど・・・

中学の二年の頃から両親とは向い合って話をしなくなった事もあり、目に映る二人しか見ていなかった
どんな恋愛をして結ばれたのかなんて、そんな話は一度もしてくれた事が無い
母さんが部屋から出て行って一時間ほど経った頃、私の心臓は少し鼓動を速める
思い出しているのは二人並んで寛ぐ両親の様子で、今頃あの二人は・・・
そっとドアを開けて耳を澄ませてみても階段の下からは何も聞こえてこない
息を殺して階段を一段一段確かめるように降り、二段ほど残して足を止めて耳を澄ませてみる

中学の二年生だったあの夜、私は喉の渇きを覚え部屋を出た
一階の廊下を目前にして私の足を止めさせたのは、耳に入ってきた聞きなれない声で
その声は両親の寝室から聞こえてくる
恐る恐る足を進め寝室の前に立った時、ハッキリと聞こえたのは母さんが許しを請う声
その声を拒否するかのように父さんが叱咤している
理解できなかった どちらも私が知る父さんと母さんの声じゃない
見たくない気持ちはあったけど、二人の事を心配する気持ちが勝り
そっとドアを開けた私の目に飛び込んできたのは狂気の世界だった
手足の自由を奪われた母さんは許しを請い
そんな母さんを責め立てる父さん
そして二人は裸のあられもない姿で、ドアを開けてしまった私には気付かない程に陶酔していた


男女の関係から私を遠ざけるきっかけとなった中学二年の初夏
あの日から私は何度も両親の寝室を覗き見て
そして、今夜も・・・

リビングには明かりは無い
息を殺して寝室の前に立ち、耳を澄ませてどんなに小さな音でも拾い聞こうと努めてみると
ドアの向こうから母さんの声が聞こえてきた
 (もう始まってるの?)
「どういうことですか?私はこんなつもりで来たわけじゃありません」
 (え?なに?どういうこと?)
「僕はそのつもりだったよ、野上主任」
 (う〜ん・・・ 父さん、母さんと何の話をしてるの?「野上主任」って何の事?)
「帰ります」
「待ちなさい!」
「あッ!手を放してください!取締役!」
 (取締役??)
「放さないよ 今夜、君は僕のモノになるんだ」
「いい加減にしてください」
「よく考えたまえ、僕が持つ権力で君を本社から追い出す事もできるんだぞ」
「あなたに弄ばれるぐらいなら、こんな会社・・・」
「君は僕の事を甘く見ているようだね 僕が一声かければ、この業界に君の再就職先は無くなるんだぞ」
「そんな・・・」
 (え・・・ これって・・・)
「安心しろ、夜が明けるころには君は僕のチンポの虜になっている」
「そんな事にはなりません!」
「どうかな その答えは数時間後には出ているだろう」
「あっ!いやっ!」
「野上主任!諦めて僕の女になるんだ!」
「取締役!やめてください!嫌です!」
 (なんなの・・・ この寸劇は・・・)

 こんなパターンもあったなんて・・・
 いい歳して恥かしくないの!? バカ過ぎるわ! マックスバカ夫婦よ!
 それと 父さん! 家にいる時は仕事の事は忘れたいって私に言ったわよね!
 これはどういうことなの!!


覗き見る気も失せて部屋に戻った私は、何とも言えない腹立たしさで中々眠りに付けなかった


[50] 色は思案の外  最後のティッシュ :2017/12/26 (火) 22:51 ID:KaDFHXQ. No.25425
少々寝不足の朝、年が明けた事を思い出したのは正月番組を映し出すテレビに目を向けた時
 (変なことに聞き耳を立てたせいで大事な事を忘れてた・・・ 最低の年越しだったわ・・・)
そんな朝でも両親は何もなかったかのように振る舞っている

 (もしかして、今朝の母さんは少し機嫌が良い?)

「凛華、何のんびりしてるの 初詣に行くわよ、仕度しなさい」
「はーい・・・」
「返事は伸ばさない!」
「はい」
 (もぉ・・・ 何か言ってやりたいけど言えない 昨日のアレは何だったのよ・・・)

寒空の下、神社に近い交差点で5分ほど待っていると聞き覚えのある声が聞こえてきた
「おう、待ったか?」
 (相変わらずね・・・ 「あけまして」より先に「おう」なんて・・・)
「待たせないでくださいよ、寒いんですから」
 (父さんも普通に答えてるし・・・)
でも母さんは、この二人には流されない
「明けましておめでとうございます」
「おう、おめでとう」
私が物心ついたころから時々家に遊びに来ていた「競馬のオジサン」
乱暴な言葉に雑な性格、たぶん歳は70近いと思うんだけど
 (この性格は死ぬまで変わらないんでしょうね・・・)
その隣で佇む女性はオジサンの奥さんで「ノリちゃん」と呼ばれている可愛いおばあちゃん
いつもニコニコしていて時々競馬のオジサンをたしなめる
 (何故この可愛らしい女性が競馬のオジサンと一緒になったの?理解できないわ・・・)
「凛華ちゃんは相変わらずデカイな」
 (無神経!)
「オジサン!私の事はどうでもいいでしょ」
「まだデカイ事を気にしてるのか?」
「もぉ・・・ ほっといてよ・・・」
 (デカイって言わないでよ・・・)
「はっはっは、デカイ事を気にするところまで母親似か 気にするほどの事じゃねぇだろ まだ子供だな」
 (この男は・・・)
「師匠、その辺で止めた方が・・・」
 (いつまで師弟ごっこしてるのよ! 子供みたいで恥ずかしいでしょ)
「なんだよ、せっかく美人に生まれたんだから自信持てって言ってるだけだろ」
「言いたい事は分かりますが、凛華の機嫌が悪くなってきてるし・・・」
「おう・・・ そうだな・・・」
「それに、背後からの威圧のオーラがハンパないです・・・ 僕の後ろで何が起こってるんですか・・・」
「何って・・・ お前の嫁が怖い顔になってきてるぞ・・・」
 (いい気味だわ 母さんの事が苦手なところも相変わらずね)
「凛華は怒った時の顔まで母親似でしょ、仁王門の前に立たされてる気分ですよ 僕の身になって言葉に気を付けてください」
 (なにが仁王門よ!)
「まぁ・・・ 怒りの持続なんて、せいぜい30分だ」
「そうなんですけどね・・・ でも、二人揃って機嫌が悪くなると2倍の威力なんですよ・・・」
「お前も大変だな」
 (なにが「大変」よ 機嫌が悪くなる母さんの気持ち、良く分かるわ 二人揃うとバカが一層バカになるのよね)

「そういえば、お前」
「なんです?」
「役員になるんだってな」
「え?なんで知ってるんですか?」
「清志に聞いたんだよ」
 (キヨシ?誰の事なの?)
「ああ、社長に聞いたんですか」
「おう、飲みに行った時にな」
 (え?競馬のオジサンと父さんの会社の社長さんって、どういう関係なの?)
「次に会ったら考え直すように言ってくださいよ 僕は部長のままでいいんですから」
「俺が口出す事じゃねぇよ」
「社長とは友達でしょ」
 (へー 友達なんだ)
「会社の事は俺とは関係無ぇだろ」
「去年まで相談役やってたでしょ」
 (え・・・)
「やらされてたんだ、専務を辞めたら悠々自適に暮らすつもりだったのによ お前は何でそんなに嫌がるんだ?出世するんだぞ」
 (うそっ 競馬のオジサンって父さんの会社の役員だったの!?競馬友達じゃなかったの!?)
「師匠も専務になった時はスネてたじゃないですか」
「まあ、そうだったかな・・・」
「それと同じですよ」
 (なんなの、この人たちは・・・ 嫌だとかスネるとか・・・ あなた達は大人でしょ! こんな二人でも重役になれる会社って一体・・・)
「でもな、清志も息子に会社を譲る準備をしてるみたいだからな」
「その事と僕とは関係ないでしょ・・・」
「関係あるだろ 四代目の面倒見てきたのはお前だ、地盤固めみたいなもんだよ」
「僕みたいな緩い地盤じゃ会社が傾きますよ」
「自分で言うなよ・・・」
 (ほんと 自分で言わないでよ・・・)

年明け早々不安にさせられた二人の会話
もし、父さんの会社が潰れたら実家の収入は母さんのパート頼りになる
弟は料理の修行中で私は未だ社会人にもなっていない

 私達じゃ実家の助けにはなれないわ・・・
 考え過ぎるところが私の悪いところって母さんに言われたけど・・・
 やっぱり心配

 (でも、なんで母さんはそんなに笑ってられるの?二人の会話を聞いて不安にならないの?)
父さんと競馬のオジサンの会話を聞いて不安を覚えた私だけど、母さんは違ってた
真っ直ぐに立った美しい姿勢に揺らぎは無く、隣のノリちゃんと男二人の会話に耳を傾けながら笑顔を見せている
その姿は大樹の様に頼りがいがあり、私が子供の頃に憧れた大人の女性

 その母さんが夜になると・・・

「昨日、イッパイしたでしょ」
「うん・・・ でも、今日もしたい気分なんだけど・・・」

見たくないのに覗き見たくなる不思議な感覚に誘われ
夜の廊下、冷たい空気の中で今日も聞き耳を立ててしまっている
私が自分の部屋に上がる前、父さんと母さんはリビングで向い合って座っていたけど
父さんは断る母さんを何度も隣に誘っていた
「今日は大人しく寝なさい」
「うん・・・ でも・・・」
「早く布団に入って目を瞑って」
「うん・・・」
 (子供じゃないんだから・・・)

「凛子さん、寝た?」
「もぉ・・・ 話しかけないでよ・・・ 目が覚めちゃったじゃない」
「ごめん・・・ そっちに行ってもいい?」
「だめ 目と口を閉じで大人しくしてなさい 直ぐに眠れるから」
「行くよ」
「だめって言ったでしょ!」
 (こういう時の父さんは強引になるのよね・・・)
「お邪魔します」
「もぉ・・・ 添い寝するだけよ」
「うん」
 (どうなの?今夜はどうなるの?)
「ちょ・・・ ちょっと・・・ 宗太くん・・・」
「ん?どうかした?」
「してるでしょ! 昨日はあんなに頑張ったのに疲れてないの?」
「うん、凛子さんを見てると元気になれるから」
「もぉ・・・」
「凛子さんの怒った顔も不機嫌な時の顔も好きだよ 笑顔はもっと好き」
「何言ってるのよ・・・」
「こっち向いて」
「うん・・・」
「あ、可愛い」
「ふふっ 変なこと言わないでよ」
「変じゃないだろ」
「もう五十半ばのオバサンよ からかわれてるみたいで面白くないわ」
 (ウソつき 本当は父さんからの褒め言葉を待ってるんでしょ・・・)
「あれ?僕より年上だった?年下だと思ってた」
「もぉ・・・ バカなこと言って・・・」
「ははっ でも、そんな気になっちゃうよ 年末は凛子さんの事ばっかり聞かれて」
「私の事?」
「うん、忘年会の時に迎えに来てくれただろ 若い連中は凛子さんの事知らないから次の日から「若くて綺麗な奥さんですね」って」
「え?そんな事言われてたの?」
「うん、だから僕が30の時に新入社員の凛子さんに手を出したって事にしてる」
 (え?母さんって父さんと同じ会社に勤めてたの?初耳だわ・・・)
「ふふっ バカね、早く本当のことを教えてあげなさい」
「えーっ 伊藤とかとも口裏合わせて楽しんでるんだけど・・・」
 (ほんと、バカね 父さんの会社ってどんな会社なのよ・・・)
「そんなウソ続かないわよ」
「ははっ 本当の事を知った時のあいつらの顔が楽しみだな 凛子さんが僕とか村上の上司だったなんて」
 (ええっ!?母さんって父さんの上司だったの!? そうよね・・・母さんって父さんより年上だものね・・・)
「ふふっ みんな手の掛る部下だったわね」
「凛子さん」
「なあに?」
「僕が一番好きな凛子さんの表情を見せて」
「え?どんな顔すればいいの?」
「キスを待つ顔」
「うん」

今夜も母さんが負けた・・・

そして二人の声の様子が変わってくる
「凛子さん」「宗太くん」と呼び合っていた二人はいつしか「凛子」「宗太さん」と呼び合うようになり
そっと寝室のドアを開けた時、指が二本入る程の隙間から片目に飛び込んできた光景は
うつ伏せに寝かされた母さんのお尻の上で、ゆっくり腰を動かす父さんの姿だった
「どうだ、凛子 年明け一発目のアナルセックスだぞ 気持ちいいか?」
「はあぁ いい いいわぁ」
 (アナル・・・ お尻の穴でセックスなんて・・・ 汚い・・・)
「いいのか?じゃぁ、何点だ?」
「ろく・・・ 60点・・・」
「これならどうだ!」
「はあぁん!70点!70点よ!」
「今から本気出すぞ!」
「あッ!あッ!ダメッ!変になっちゃうっ いやぁ!」
「凛子! 愛してるよ!」
「宗太さん!! 100点!満点よ! 満点ッ!イクーッ!」
 (点数をつける意味が分からないんだけど・・・ やっぱりバカ夫婦ね・・・)

そして二人は事が終わるとお互い強く抱き合って愛の言葉を交わす
汚いセックス、酷いセックスを見せられ、私までも汚された気分にされても
その瞬間だけは少しホッとできる

 (二人が愛し合っている事は伝わってくるけど そこに至るまでの行為が問題なのよ!)


[51] Re: 色は思案の外  ふぐり太 :2018/01/03 (水) 20:04 ID:8FCmsCoE No.25453
明けましておめでとうございます

新作と書いてあったので全く新しい作品のつもりで読みましたが
見覚えがある名前が出てきましたねw
宗太くんと凛子さんは変わらず仲の良い夫婦のようですが
娘から見れば「バカ夫婦」ですねw
どのように展開していくのか楽しみにしてます

[52] Re: 色は思案の外  abu :2018/01/04 (木) 13:56 ID:brSXk0Pg No.25456
明けましておめでとうございます。
私も最初は、『ん??』てなっちゃいました。
で、読んでいくうちに『おぉ』となり、それからは『最後のティッシュさんワールド』へ突入しましたよ。
夫婦ふたりの掛け合いの台詞や登場人物の心の叫びが絶妙で、読んでいる目の速度が終盤には最高速を記録する始末でした。
面白い台詞は読み直ししますしね。
ほんと、私のツボに嵌りまくってます。
やっぱり、宗太くんと凛子さんの話の続編を希望してやみません。
新年を迎えお忙しいとは思いますが、また新作が投稿されることを期待してよろしくお願い申し上げます。



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・誹謗中傷には大人の良識に反するような「汚い言葉」等も当然含まれます。
・規約違反や違法な投稿を発見した場合に、レス投稿で攻撃することは厳禁です。(即時削除)
・規約違反や違法な投稿を発見した場合は、管理人宛に削除依頼等でご連絡ください。
・この掲示板は体験談や小説、エロエロ話等を楽しんでいただくための掲示板ですので、募集を目的とした投稿は厳禁です。(即時削除)
・投稿文冒頭から「メールをください」等の記載がある等、明らかに募集目的のみと思われる投稿も厳禁です。(即時削除)
・ただし、レスの流れの中でメールのやり取りをするのは全く問題ありません。
・ご夫婦、カップルの方に限り、交際BBSと組み合わせてご利用いただく場合は、全く問題ありませんのでドンドンご利用ください。
・なお、交際専用BBSにスレッドを作成できるのはご夫婦、カップルの方のみですのでご注意ください。
・お手数ですが、交際専用BBSと画像掲示板とを組み合わせてご利用いただく場合は、必ずその旨を明記してください。
 【例】「交際BBS(東・西)で募集している〇〇です」、または「募集板(東・西)の No.****** で募集している〇〇です」など。
・上記のような一文を入れていただきますと、管理人が間違ってスレッドを削除してしまうことが無くなります。
・万一、上記内容に違反するような投稿をされた場合は、妻と勃起した男達の各コーナーのご利用を制限させて頂きますでご注意ください。
・当サイトは安全で安心できる楽しい「大人のエロサイト」です。腹を立てるのではなく、楽しくチ●ポを勃ててくださいネ!