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絆のあとさき 5

[1] スレッドオーナー: 小田 :2024/10/14 (月) 11:02 ID:J9iEAGI6 No.195459


予定を遥かに超えて、No.5まできてしまいました。
その理由となると、想定が甘かったの一言でしかありません。

一連の流れの出来事を取捨選択してはいるのですが、その繋がりを持たすために小さな出来事にも
焦点を当てたのが、原因だと思っています。
一年というそう長い期間ではないのですが、大なり小なり記憶に残る出来事も数多くあります。

数多の経験と年月を経て、心情の変化に戸惑い、立ち止まることも多々あるように感じられます。
変わらない、変えられない体への対応方法も、彼女なりに理解出来ているように見えるのですが、
そう簡単なことではないのかもしれません。

コメントを頂いた皆様、読んで頂いていると思われる皆様、遅々として進まない展開が続きますが、
今後共、お付き合い頂けますようお願いします。


[28] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2024/11/10 (日) 16:24 ID:kiqzlcSU No.196214



携帯が切れた後は、空気が淀んだように感じられ、望まない静寂が訪れます。

携帯を持って、ベッドに移動します。
少なくとも、20〜30分は静寂と向き合わなければなりません。
その間に、石黒さんに掛けてもいいのですが、見えない時間には到底勝てそうにありません。
ただただ、空調の流れを聞きながら、待つしかない様です。

ふと、先程の疑問が頭をもたげてきます。
疑似夫婦、夫婦ごっこと認識していたようですが、彼の名前は一度も口にしていません。
名刺を見せると言ったのですから、隠すつもりもない事は明白です。
それなのに、その理由は見えないどころか、携帯でのオーナーとのやり取りでも、二人共、口に
しないのは、不思議な気持です。
オーナーと口裏を合わせているのなら、それはそれで理解出来るのですが、その理由が分かりま
せん。
終わったことですから、目くじらを立てて追及するつもりも毛頭ありませんし、いずみもそれは
分っていると思います。
私が疑問に思ってると分っているでしょうが、時間の経過と共に、その思いが薄れていくことは、
間違いありません。

寝転んでいると、いつの間にか意識が薄れていきます。
どれ程の時間が経ったのか分からないのですが、携帯の着信音で意識が戻って来ます。
傍に置いていた携帯を手に取ると、11時3O分を指しています。
いずみなのは分かっているのですから、一気に目が覚めてきます。


『・・・うふふっ、良かったわ。頑張ってくれて、ありがとう』
『見られるのは気になるからね』
『木下さん?』
『まあね、いずみちゃんとヤレるのは嬉しいけど、今の方が断然頑張れるよ』
『こんなにも違うなんて、感動ものよ、うふっ・・・ねぇ、うふふっ・・・』
『誘ってる?』
『どうかな?・・・どう?』
『ヤルか?』
『うん・・・どうするの?』

数秒でしょうか、何も聞こえません。

『脱げよ・・・バンザイだろ?』
『さっきはいいって言ったのに・・・ここで?・・・うふふっ、ありがとう。二人共全裸、
いいのね?』
『気にするなよ・・・そうだな、手をついて・・・脚を開けよ』
『うん・・・ねぇ、キスして・・・グチュ!うぐぐっ・・・あう!いいわ!いいの!いいの!
凄い!・・・』

”ペチャペチャ”と愛液の摩擦音が小さく聞こえて直ぐに、”ドン!ドン!”と鈍い音が
リズミカルに聞こえます。
オーナーの声も息遣いも聞こえないのですから、息を止める程の集中力で腰を振っている様子が、
手に取るように分かります。

『うぐっ?・・・はははっ、相手が違うだろ?』
『うん・・・いずみちゃん・・・うぐっ、チュバー、チュチュチュー、うぐぐっ・・・』

ユカさんが傍に居たようです。
二人の話し声以外は何も聞こえなかった上に、それに集中していたため、彼女の存在を一瞬忘れて
いました。


[29] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2024/11/10 (日) 21:28 ID:kiqzlcSU No.196220



『ユカ!頭を抱いて・・・そうだ!動かない様に、いいか?・・・どうだ!イキそうか?』

その間も、ピストンの鈍い音は途切れることなく、続いています。

『あう!ううううっ!・・・凄いの!イキそう・・・あうあうあわわっわ・・・うんんん〜っ、
イクー!!』

一際大きな喘ぎ声を発して、逝ったようです。

『凄いわ、強く押さえないと・・・凄い痙攣、止まらないんだもの。笑ってしまうわ』
『二人がかりだからな。腰の動きを止めるのも大変だよ、あはははっ・・・落ち着いたら、
お掃除フェラだろ?・・・おっと!重いね、支えるのも一苦労だよ』

少し遅れて、

『・・・あうううっ・・・ナニが重いの?』
『気が付いた?・・・チュッ、チュッ〜!うふふっ』
『一瞬だけど、飛んでたかな?』
『失神?』
『うん・・・なにも聞こえなかったもの・・・えっ?あっ!?ごめんね?』

床に何かが当たるような音がして、

『ジュル・・・あれ?出さなかったの?』
『希望を叶えただろ?次は僕の番だろ?』
『えっ?・・・そんな約束した?ほんとに?』
『逝きまくってたから覚えてないんだろ?』
『うん・・・おトイレで?』
『もう一度聞くけど、何度も欲しいって言っただろ?』
『ほんとに?覚えてないかな?でも、凄かった、オーナーとは思えない、信じられない思いよ』
『これからマンションに行こうか?』
『それは・・・行きたいけど、時間が取れないの。でも・・・』
『したいだろ?』
『うん・・・どうしようかな?』
『体に聞こうか?・・・ほら!・・・気持ちいいだろ?・・・ユカ!回って来いよ・・・チュバ!、
二人で責めるからな』
『あああっ、あうあぅ・・・チュバ!チュバ!もっともっと・・・そこ!そこ!じらさないで!』
『じゃ、決まりだね?』
『今して、お願い!・・・ねぇ、挿れて!』
『マンションだろ?・・・ユカ!アナルに指を・・・そうだ!・・どうだ!同時責めは?』
『ダメ〜!ダメ!ダメ!・・・挿れて!!・・・』
『そうだな、頭が真っ白になってるだろ?聞えるか?』
『ん?・・・挿れて!お願い!・・・愛してるの、ほんとに愛してるから・・・』
『チンポ?あはははっ』
『チンポ?・・・そうよ、マンコに・・・いずみって言って!いずみのマンコって!』
『いずみ!マンションに決まりだな、いいな?』
『・・・ダメなの?』
『ベッドが良いんだろ?』
『うん・・・ベッドでしたい・・・でも・・・』
『口からチンポが出るくらい突いてやるから。嬉しいだろ?』
『うん・・・分かった・・・愛してね?』
『可愛いわ。ほんとのいずみちゃんを見たかな?』
『ねぇ、私達って仲良しでしょ?だからね、いずみって。ユカでいい?』
『嬉しいわ・・・いずみ、これでいい?』
『うふふっ、ユカも愛してね?』
『もういいだろ?早く服を着ろよ』
『うん・・・オーナーは早いんだもの。私はこれからだから、着せて欲しいな?ダメ?』
『はははっ、ブラウスとパンツだけでいいだろ?下着はバッグに・・・あはははっ、ノーパン、
ノーブラ、ブラブラさせて行こうか?』
『イヤらしいのね?それがいいのかも?』
『狭いから自分で着ろよ。カウンターから出て待ってるから。ユカも出ろよ』
『寂しいな・・・待っててね?』


[30] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2024/11/16 (土) 11:52 ID:vMmUPaEE No.196355



ガサゴソとかなり大きな音が聞こえて、か細い声で、

『5分後に電話して、お願い!』


テーブルに戻って、腕時計を着けます。
11時45分を回っていますから、15分程の性行為だったようです。

待つのはほんとに長く感じられます。
いずみの要請は理解できますから、それに従わないと石黒さんとの約束が果たせなくなります。
いずみが蒔いた種ですから、自分で解決させるのが本意ですか、この場合は致し方ありません。

しっかり5分後に掛けます。


『はい・・・えっ?ホントに?少し待ってくれる?』

少しとは言えない時間が過ぎていきます。
揉めているのかもしれませんが、自業自得だと小さくない怒りが込み上げてきます。

携帯はそのままですが、全く何も聞こえません。
少し経って、聞こえる足音が少し変わります。
もしかしたら、店に戻ったのかもしれません。

小さな雑音が聞こえて直ぐ、何かにぶつかったかのような音が聞こえます。

『いいわ・・・テーブルね?椅子を下ろしてくれる?早く!』
『いずみちゃん、誤解だよ。気を悪くしたのなら謝るから・・・』
『私も悪いんだから・・・早く済ませてくれない?』
『分かったよ。無理を言って済まなかった、だから・・・』
『スッキリしたいんでしょ?早く脱いで!・・・私も脱ぐから』
『ユカ!止めてくれないか・・・いずみちゃん、脱がなくていいから』
『オトコらしくないわね。ヤリたいって言ったでしょ?』
『いずみちゃん、もういいんじゃない?脱がなくても。一杯楽しんだでしょ?』
『わたし?そうかもしれないけど、オーナーは不満タラタラ、私の事なんて何も気にしない、
ただヤリたいだけのスケベ男じゃない?』
『男ってそういうものなの。いずみちゃんは分かっているのに、こじらせるんだもの。お仕事の
ことね、疑ったオーナーがほんとに悪いと思うわ。さっきの電話がなければ、マンションに
行ったでしょ?』
『その気だったのよ。私の気持ちが分からないなんて、ほんとしらけるわ。疑うにも程がある
でしょ?』
『僕が悪かったから、機嫌を直してくれないか?』
『心配なんでしょ?』
『戸田さん?』
『図星ね?私も非があるからお互い様でしょ?だから、何も話さないわ。今夜の事も何も・・・
これでいいでしょ?』
『有難い。じゃ、仲直りだね?』
『そうね。でも、木下さんとの乱交以外はもう会えないから。分かってるでしょ?』
『寂しいけど、了解だよ。アレだね、どうして名前を言わないんだい?』
『これもお互いね。オーナーはどうしてなの?』
『名前を口にしたら変人になりそうだから。いずみちゃんは?』
『同じよ。それが分かっていて紹介するなんて、オーナーも同じ穴の狢じゃない?』
『はははっ、言えてる。まぁ、セックスを認めてくれるんだから、彼よりは大きく許容されてる
と思ってるよ』
『思い過ぎない様にね?』
『今夜が教訓かな?』
『そうよ、胸に刻まないと。いいわね?』
『いずみちゃん、時間は?』
『ほんとだ!ユカちゃん、ありがとね。ユカって呼べる時が早く来ればいいのにね』
『うん・・・その時は・・・楽しみだわ』
『じゃ、今夜は楽しかったわ、うふっ』


[31] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2024/11/16 (土) 13:06 ID:vMmUPaEE No.196357



暫くと言っても、1〜2分でしょうか、足音が鮮明に聞こえます。

『怒ってる?』
『はははっ、驚くだろ?前戯が必要じゃないか?』
『ホントに?まことにすみませんでした、うふっ』
『待たせ過ぎだろ?石黒さんに早く連絡しろよ』
『あなたも・・・ごめんね?』
『言い訳は後で聞くから、石黒さんだろ?』
『はい!仰せのままに、うふっ』
『はははっ、切るぞ!』
『はい!直ぐ掛けます。あのね、サワちゃんと入れ替わったら、直ぐに掛けるから』
『時間がないだろ?要約が試されるぞ、いいね?』
『はい!頑張ります、うふっ』

全く堪えていると思える節は感じられません。
それがいずみであり、いずみなのですが、お灸も必要な時があると分からせなければ、また同じ
轍を踏まないとも限りません。

腕時計に目をやると、12時に差し掛かっています。
12時の交代は難しいとしても、何とか約束を守れそうです。
それでも、石黒さんがこちらに来た時の心情を考えれば、明るく迎えるのは不謹慎かもしれません。

いずみから掛かってきたのは、15分が経過した頃です。
携帯は、スピーカーにしてテーブルに置きます。
特に意味はないのですが、今から考えれば、一連の出来事に疲れたのがその理由だと言えそうです。
私が気付かなければ、少なくとも今夜は平常心で石黒さんと接していただろう時間を、いずみに
奪われたのですから、内心穏やかではありません。
ただ、いずみが性行為をしていた事実を咎めるつもりも追及することもないのですが、その過程に
問題があることは明白です。
そこは指摘しますが、当然の如く、いずみは分かっているのです。
どのように言い逃れるのか、ある意味、楽しみでもありますが、彼女が内実を白状するのかも
注視したいと思います。


『遅くなってごめんなさい。サワちゃんと交代しました。10分か15分くらいで、あなたのところに
・・・』
『少し時間はあるか・・・いずみ!いい加減にしろよ!』

一瞬、時が止まったような空気感が伝わって来ます。

『・・・あなた・・・ホントにごめんなさい。言い訳はしません、全て私が悪いの』
『反省してるのか?』
『はい・・・』

か細い声ですが、まだ余裕があるようです。

『聞こうか?』


[32] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2024/11/16 (土) 17:40 ID:vMmUPaEE No.196362



『はい・・・オーナーのところに行った事・・・サワちゃんに時間の変更をお願いした事
・・・オーナーのマンションに行こうとした事、全て私が悪いの』
『善悪の話じゃないだろ?欲望に負けたその気持ちが一番の原因じゃないか?』
『うん・・・』
『ぐうの音も出ないのか?』
『何も言えないもの。あなたに指摘されたそれが全てだもの、後悔しかないの。あなたに注意
されなかったから、調子に乗ってしまって。バカな私・・・ほんとに、ごめんなさい』
『誰かに示唆されたとは思えないが、オーナーと事前に決めていた、または、そうしようと
思っていた、どちらか。それ以外に理由があるのなら、話さないか?』
『オーナーとは何も決めていなかった、ほんとにほんとだから。でもね、彼を紹介した手前、
本音が言えないというか、私に察して欲しいような、そんな口振りだったの』
『具体的に話せよ』
『うん・・・私達が名付けたでしょ?ライトセックスって。諦められない様な雰囲気なの。
だからね、早く終わって戻って来てって。それが示唆だと言えなくもないかな?』
『かな?・・・示唆じゃないだろ?分からないのか?』
『ごめんなさい・・・誤魔化そうとか、そういうんじゃないけど、示唆ってあなたが言ったから、
そうかなって。出来たらそうして欲しいみたいな、曖昧だったけど、私にはそう思えたの』
『仮にだよ、戸田さんの前でこの件の説明を求められたら、同じ意見になると思うか?』
『・・・違うかな?オーナーは否定すると思うし、私はそうだって。きっと・・・分からない
けど、なすり合いになるかも?』
『”かも”とか、曖昧な返事はしない様に、いいか?』
『ごめんなさい。でも、ほんとに分からないの、そうなってみないと』
『じゃ、その場を設けてもらおうか?』
『えっ?・・・それは・・・戸田さんに話さないって、携帯で聞こえていたでしょ?』
『決めるのは戸田、僕だろ?いずみに任せているが、判断できないのなら、戸田が出るしかない
だろ?』
『でも・・・黒子でしょ?いいの?表に出て』
『分からないのか?曖昧な口調、優柔不断な態度、そんなことで何ができると言うんだ。
胸に手を当ててよく考えろ!』
『・・・そうだった、やるべきことはハッキリ分かっているのに、欲望に負けてしまって。
今この時からシッカリ判断できるようにします。謝って済ことじゃないのは分かりました』
『見えないだろ?』
『オーナーとは携帯で話した通り、今夜が最後。あなたに指摘されることを考えてじゃないの。
でも、木下さんとの乱交は約束通り。オーナーとのことはこれでいいでしょ?』
『正しい判断だが、減点が大き過ぎるだろ?どう説明するんだ』
『マンションに行くことね?・・・朦朧としていたから何を話したのか、ほんとに覚えていな
くて、オーナーが言ったことがそうだろうって。あっ?これはおトイレでの時ね?
もっとしたいって言ったのならそうだろうと思えて。興奮してたら言っていてもおかしくないもの。
それは分かるでしょ?』
『確認することもない、容認してる行為だからね。それじゃないだろ?』
『マンションの事は、話しの流れでそうなったかもしれないけど、違うわ、分かっていたの、
行けないことは。だから、その話しが出た時からタイミングを計っていたというか、急ブレーキ
なら怪我するかもしれないでしょ?流れの中に身を置いて、そっと方向を変える、それしかない
と思ったの』
『そうは聞こえなかったが、上手く誘導した?そう理解しようか?』
『うん・・・ありがとう。真実しか話していないのよ、それは分かってくれるでしょ?』


[33] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2024/11/17 (日) 12:38 ID:3ZgMVBeY No.196375



見えない事実を問い質します。

『そうだね。少し戻ろうか?』
『うん・・・気になる事でもあるの?』
『僕に聴かせたのは、カウンターの中だろ?』
『うん・・・ユカちゃんはカウンターの外に居たの、途中から入って来たけど。説明しなくて
ごめんなさい』
『まぁ、そうだろうとは思ったが。そこは狭いのか?』
『うん・・・あっ?オーナーが自主的に外に出たことなの?』
『いずみは何も示唆しなかっただろ?彼が出ないと、携帯には近付けないんだろ?』
『ユカちゃんと話してる時に、オーナーはお洋服を着たのね。ほんと早くて、マンションに
行って早くヤリたいって感じだったの。だって二回目は射精しなかったんだもの。
あのね、ユカちゃんに話し掛けたのは、じらすためだったの。ちょこっと不安だったけど、
上手くいって良かったわ』
『男の心理が読めてる?まぁ、いずみなら手車に乗せられるかな?はははっ』
『うふふっ、良かった!もう怒ってない?』
『どうかな?はははっ』
『あっ?あなたを乗せてるって思ってない?』
『乗せられる方が気が楽だろうね』
『ほんとだ!・・・あれ?サワちゃんは乗せてないから、あなたが乗せたのかも?うふっ』
『いずみマジックかい?』
『だって、サワちゃんって、あなたには逆らえないでしょ?』
『ん?・・・ちょっと待ってくれるか?』


いずみの返事を聞かずに、物音のするドアに向かいます。
ドアノブに手を掛けようとした時、そっとドアが開いて、

「あっ?!分かった?」

笑顔の石黒さんが顔を覗かせます。

「ドアノブをガチャガチャさせてただろ?」
「だって、カードキーと相性が悪いんじゃない?何度目かよ、解錠できたのは」
「はははっ、タッチさせる位置だろ?」
「うん、慣れてないかも?・・・」

部屋に入るなり抱き付いてきます。

「・・・チュッ!・・・・うふふっ、久し振りね。会えて良かったわ」
「いずみが無理を言って悪かったね」
「いいの。小田さんに会えたんだもの」

私の左腕に両手を廻した石黒さんを、テーブルの傍まで連れて来ます。

「謝ったかい?」
「軽く・・・あれって謝罪なの?小田さんを出されたら仕方ないもの」
「だよね・・・聞こえたか?」

”えっ?”と呟いた石黒さんは、テーブルに置いていた携帯に気付いたようです。
彼女が口を開く前に、


『ごめんね、深く反省してるから・・・聞こえてる?』


[34] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2024/11/17 (日) 16:52 ID:3ZgMVBeY No.196379



私の耳元で、

「いずみさんと話してたの?」
「石黒さんが・・・」
「サワでしょ?うふっ」
「サワちゃんだったね。サワちゃんが来る迄の予定だったんだが、長引いてしまったね」

少し大きな声で、

「”だったね”って言わないで!寂しいでしょ?」


『待たされる私も寂しくなるわよ』

テーブルに両手をついて、携帯に顔を近付けた石黒さんが、

『聞き耳を立てていたのですか?』
『それしかないでしょ?他に何もしていないのよ』
『お話は終わりました?』
『そうね・・・あなた、サワちゃんが来たことだし、どうする?』
『もう一度、心から謝罪だろ?』
『うん・・・ほんとにごめんなさい。1時間も削ってしまった事、謝っても謝り切れないけど、
許してくれる?』
『どうしようかな?・・・いずみさんから何か提案でもないですか?』
『埋め合わせ?欲しいものがあれば・・・何でもって言えないけど・・・』
『分かりました。考えてからお返事するでいいですか?』
『いいわよ。今夜ね、色々とあったのね。原因は私にあるから・・・』
『いずみ!それじゃ分からないだろ?』
『うん・・・性欲・・・ちょこっと恥ずかしいけど、欲望に負けてしまって、それで遅くなったの』
『おかしな人と?』
『それはないの。オーナーと・・・ごめんね、自分勝手な事情で、サワちゃんの大事な時間を
使ってしまって。ほんとにごめんなさい』
『その人じゃなくて良かったかな?まだブレーキが掛けられるんだもの、大丈夫だわ』
『うん・・・あなた、話してたらもっと時間を削ってしまうでしょ?』
『そうだね・・・これで許してくれるかな?』
『はい!小田さんに頼まれたら断る事なんてできないもの。いずみさん、利用するのも考えモノ
ですね?』
『そうね、軽すぎた?』
『いずみさんらしくないもの。もっと考えるべきだと・・・偉そうなことを言ってすみません』
『いいのよ、今夜は・・・』
『明日からは・・・手加減をお願いします』
『そうね・・・朝食は主人と、私はタクシーで幼稚園経由で出社するから、始業時間まで二人で
過ごしたら?』
『ほんとに?いいんですか?』
『できる範囲の一つ目かな?今はこれしか言えないけど、分かってね?』
『はい、ありがとうございます』
『じゃ、主人をよろしくね。お休みなさい』
『はい、お休みなさい』


椅子に坐っていた私の手を取った石黒さんは、

「いずみさんって、しおらしいところもあるんですね?」
「はははっ、それがいずみだよ」
「どういうこと?」
「変幻自在だと認識していないと、足をすくわれるよ」
「変り身が早い・・・そう言えば、そうかもしれないわ。お話ししてても、他の事を考えている
って思える時も。お話の流れなんて関係ないみたいに、急に思い付きを話すこともあるの」
「だろ?真剣に取り合わない方がいいかもしれないね、はははっ」
「それでも、それでもね、”そんなのでいいの?”って思える様なアイデアを纏め上げる手腕は、
驚きでしかないわ」
「摩訶不思議がお似合いかな?」
「ほんとだ!でも、明日からが心配かな?」
「手厳しい?だったら僕の名前を出せばいいんじゃないか?」
「そんなことできないわ。私がさっき言ったのよ、忘れてるなんて考えられないもの」
「執念深くはないから、それは心配しなくていいよ。明日になったら忘却の彼方だよ、大丈夫、
請け合うよ」
「それならいいけど。難しく話すって、いずみさんも言ってましたよ。それって、いずみさん
だけかと思っていたのに、私にも。何だか嬉しいかな?」
「馴染んできた証拠かもしれないね」
「うん、きっとそうよ。ホントに嬉しいわ」


[35] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2024/11/17 (日) 21:17 ID:3ZgMVBeY No.196385



本心なのかと思えるのですが、疑う意味も見い出せない程の距離感を感じています。
マリアさんの差し金だと推測しても、究極的には、いずみを守ることがミッションなのは、間違い
ありません。
当然、関係者としての私も擁護されるに値すると判断されていることも、十二分に分かっています。
私も含めた関係者がいずみを守る、言い換えるのなら、警護の意味合いかもしれません。
少し大袈裟な表現になりましたが、それだけ価値があると認められている証拠とも取れます。

「今夜の事は僕からも謝らないといけない。僕をダシに使うのを許したからね、申し訳ない。
いずみに代わって何なりと要望を聞こうかな?」
「いいの?でも、それはいずみさんにお願いしないと、筋が通らないわ。
小田さんとは普通に接して、愛人としての、何と言えばいいのかな、お勤め?古い?」
「はははっ、難しく考えなくていいんだよ。今まで通り・・・ん?今夜は違ったが、今からそう
すればいいんじゃないか?」
「うん・・・では、シャワーから今夜が始まります。早く行こうよ!」

既に日付は変わっているのですから、悠長には構えておれません。
明日の午後の出社予定なのですが、この様子では一日休むことになりそうです。

月一回と決めてはいるのですが、私の仕事の都合とか、今夜のようにいずみの横槍などで、
約束を果たせてはいません。

”今まで通り”と私が口にした流れかもしれませんが、ほんとに普通の性行為、特筆できるような
前戯も体位もありません。
性行為だけをクローズアップすれば、長年生活を共にした夫婦の営みのように思えてきます。

「不思議なんだが、サワちゃんが妻のように感じられるよ」
「えっ?ほんとに?嬉しいなぁ・・・でもそれって、いずみさんが他の男性と関係を持っいる
ことに起因するんじゃない?」
「かもしれないが、穏やかな気持で事に臨めるのは、精神衛生上には非常に好ましいことだよ」
「事に臨むって言う?セックスをするって言えないの?この石頭が!うふふっ」

仰向けに寝ている私の左側で、隙間もない程体を密着させている石黒さんが、こぶしを振りかざ
して、私の頭に下ろしてきます。
いずみの前では、それなりの緊張感を持っているようですが、私と二人の時は、かなりリラックス
していることの現われでしょう。

「はははっ、痛くも何もないね。手加減し過ぎだろ?」
「痛く感じるか、そうじゃないかは、小田さんの受け取り方なの。私が小田さんの許容範囲なのか
知る手がかりかな?うふっ」
「試した?」
「うん・・・試しました」
「で?」
「必要なかったかな?だって、私を妻って・・・信じていいの?」
「サワちゃんの気持ち次第じゃないか?はははっ」
「そういうことね?それなら永遠の妻って言えそうよ」
「有難いが・・・」
「いずみさんでしょ?」
「代わりはいないからね。唯一無二の存在だよ」
「分かるわ、ほんとに尊敬してるの。でも、いずみさんって普通じゃないわ。見た目と中身が
違うって言うでしょ?清楚で・・・どう言えばいいのかな?優しそうかな?それね?お話ししたら
真逆なの。驚きを通り過ぎて笑いそうになるのよ」
「大袈裟だね?まぁ、間違ってるとは言えないが、あれほどギャップが大きいと不信感を持たれる
こともあるようだね」
「分かるなぁ、”ほんと?”って・・・そうだわ、今夜のお相手の男性も、きっとそのギャップに
驚いたと思うわ」
「携帯で話してたね。聞いてるのかい?」


[36] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2024/11/23 (土) 11:37 ID:kyJyjI0c No.196525



「”ライトセックスの代わりにはならない”って、嘆いていたの。”オーナーの紹介だから仕方
ないけど、今夜で終りにしたい”って」
「計画的には見えなかったが。まぁ、僕の登場がそれを助長させたかもしれないね」
「お助けマン?夫婦ごっこって、呆れる発想だわ。そうでしょ?」
「彼は本気だったみたいだよ。”いずみの主人”だと言ったからね」
「笑ってしまうわ。そんな人だとは何となく分かっていたけど」
「ん?・・・何となく?」
「あれ?・・・勇み足?」
「知ってるのか?」
「いずみさんには何も話していないの。相性が良くないとか言ってたし・・・初対面の時からなの。
最初からベッドインのつもりだったみたいなのね、いずみさんは。”出鼻をくじかれた”って、
呆れ顔だったわ」
「オーナーが持ち上げていたんじゃないか?それを真に受けたいずみか、分からないではないね」
「なんか、お人好しのところもあるでしょ?純真無垢みたいな、違うのにそう思わせる仕草とか。
”ほんとにアラフォーなの?”って聞きたくなることもあるでしょ?」
「あるね、大ありだよ。誘っているつもりはないんだろうけど、今夜はオーナーを誘っていた
けどね。そう思わせる雰囲気作りが上手いというか、自然にそれができるんだから、並みの男なら
太刀打ちできないね」
「撃沈?・・・ゲキチンかな?」
「ん?字が違う?」
「そう!・・・激しいオチンチンで、激チン・・・あれ?それならいずみさんが撃沈だわ、うふっ」
「まだ修行が足りないね、はははっ・・・」


他愛ない会話は、ほんとに心が癒されます。
いずみの性事情を一瞬でも忘れられるこの時も、来年にはどうなっているか、この時点ではまだ
分っていません。
石黒さんが口を滑らしたか、意図的かは分からないのですが、いずみが”変な人”と認定した
その男性と石黒さんとの関係性が気になります。

「・・・ところで・・・」
「今夜の男性でしょ?お話しするつもりだったの。さっきも言ったけど、いずみさんには話して
いないから、内緒ね?」
「話さない理由があるのなら、後で聞かせてくれないか?何はともあれ、その男性との関係を
聞きたいね」
「”何はともあれ?”・・・うふふっ、兎に角でいいんじゃない?」

いずみから私の話し方を聞き及んでいる証拠でしょう。
少しの嫌味も含まれている様に受け取れるのは、私のひがみかもしれません。

「まぁ、細かいことは気にしないで、おおらかにお願いしようかな?」
「はい!了解です・・・なんか、天然っていいですね?」
「ん?意味不明だが・・・」
「そうでしょ?ナニを考えてるのか分からなくても、スルーしてもらえるでしょ?」
「損得じゃないだろ?持って生まれた気質だからね、それだけで人間性を測れないよ」
「いずみさんになりたいのに、天然は無理かな?」
「拘っていないか?逸れている、逸らせている、どっちだい?」
「初めて会って直ぐにベッドインの予定がダメになったって、顔色も変えずに、普通通りって
言えばいいかな?いくらなんでも帰って直ぐに話さないでしょ?なんか、天然っていいなって、
そう思わない?」
「はははっ、期待が大きかったんじゃないか?それだけ失望も大きい、分かるじゃないか?」
「それはね。開口一番って私にはできないわ、性行為しか頭にないって思われるでしょ?」
「だから天然なんだよ・・・ん?僕に認識させたい?そうだろ?はははっ」
「気にならないんだもの。なんか、羨ましいかな?」
「それはさておき、いいかな?」


[37] Re: 絆のあとさき 5  小田 :2024/11/23 (土) 15:31 ID:kyJyjI0c No.196526



「ごめんね?愚痴ぽくなって・・・交際クラブのこと話したことがあるでしょ?」
「マリアさんの依頼とか、その男性なの?」
「あの時は急遽だったでしょ?同じ人じゃないの。いずみさんね、名前を話さないのよ。
私も聞かなかったけど、お話しする時って、”誰誰さんが”とか、それが普通でしょ?」
「天然だから?」
「違うと思うわ。意識して避けてるって感じなの。なんか〜、相性の問題みたいな、そんな感じ
かな?」
「長続きしないと判断したからかもしれないね」
「きっとね。その人ね、私も好きじゃないから、名無しでいい?」
「はははっ、もう会うこともないが、サワちゃんは?」
「困るのね。お断りしてるんだけど、社長も大変だと思うわ」
「続いてるの?」
「1ヶ月は会ってないかな?いずみさんと会うようになってから連絡がないけど、いずみさんと
決裂でしょ?明日からが心配だわ」
「彼の性癖は分からないが、結婚ごっこじゃないだろ?」
「なんか、陰湿かな?」
「名前も話さないのに同じ人物とは、そこからだろ?」
「それなの。いずみさんが会う男性って気になるでしょ?」
「任せてるからね・・・ん?サワちゃんが?」
「私だけ?そうよね、大きな心かしら?」
「はははっ、進めろよ」
「いずみさんが初めて会った夜、その人が自撮り、ツーショットなのね、それを送ってきたの」
「彼から?いずみにしては安易だね、ほんとに?」
「オーナーさん経由なの。安易じゃないでしょ?」
「なるほど。それを?」
「初めて会ったのにツーショットってサービスし過ぎでしょ?」
「優しいからね、はははっ」
「いずみさんを愛してるものね?」
「サワちゃんの前では言えないかな?はははっ」
「なんか、新しい夫婦関係みたいな、それもアリね?」
「愛人?」
「それは私、いずみさんはセフレでしょ?」
「時の流れがそれを決めると思うね。もう暫くはそのままがベストとは言えなくても、ベター
なのは間違いないと思ってるよ」
「私はベストでしょ?」
「疑いの余地もないよ、はははっ」
「それって疑いがあるってことの裏返しでしょ?」
「思い取り様だね。信じて間違いないと思わないと、前向きにはなれないだろ?」
「性善説?」
「今夜のこと?」
「ほんと普通、なんか、いいなって。長く寄り添った夫婦みたいな、とても素敵なセックス
だったわ」
「裏返し?」
「えっ?・・・分かるの?」
「感慨深げだからね。真逆が普通になっている、違うかい?」
「その人とは・・・ほんとスケベなの。口にするのも恥ずかしいけど、話そうかな?うふっ」
「はははっ、話したいんだろ?」
「いずみさんも嫌いな人だもの。共通の嫌悪感を分って欲しいかな?」
「聞こうか?」
「プロフィールは?」



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